ローン地獄、児童虐待、性暴力、障害者差別、親の介護、などなどの諸問題を、ちょっとだけ「自分のこと」として引き寄せて考え、文章にした青山ゆみこ「ほんのちょっと当事者」(ミシマ社/新刊1760円)は、笑って、泣かせて、そうだよなと納得させ、最後にまた泣かせてくれる松竹新喜劇みたいに楽しい。そして、実は極めて深刻な状況を生きなければならない我々の姿を浮き彫りにしてくれます。彼女自身は、「ほんのちょっとした」どころではない当事者だったのですが……。

彼女は、小さい時に家庭に来ていた、ある医師に性暴力らしきものを受けています。第4章「あなたの家族が経験したかもしれない性暴力について」でかなり詳しく告白されています。「もう三十年だぜ。それぐらい性暴力は根深い傷跡を残すのだ。そしていまならわかる。あれは治療なんかではなく、単なるわいせつな性行為であったことが。」と総括し、こう書いています。

「性暴力は被害者を何重にも傷つける。たかが痴漢だなんて思わないでほしい。その被害者が、あなたの大切な娘であり、妻であり、家族があるかもしれない。

そして、それは女性に限ったことではない。あなたの大事な息子が、性被害を受けて傷ついているかもしれないのだ。他人事ではない。そう感じて欲しいと切に願う。」

彼女は、様々な体験の中から自分の心の中を見つめていきます。こういうことが、本当の「自分探し」かもしれません。「自分が弱く愚かで、正義とは反対の真反対にいる人間であることを、わたしは日常でもよく思いしらされる。その度に、自分の弱さが誰かに対して暴力に変わるかもしれないと、とても怖くなる。」

「『参院選』元派遣労働者のシングルマザーが立候補へ。「ボロ雑巾のように捨てられた。世の中を変えたい」

これ、参院選に「れいわ新撰組」から立候補した渡辺照子さんのニュースのヘッドラインです。第8章「わたしのトホホな『働き方改革』」の巻頭は、このニュースから始まります。ほんとに、トホホな彼女の就活なのですが、笑って済ませられない現状が見えてきます。「一億総活躍社会」って、どこの国のこと?という有様が語られていきます。

悩み、悲しみ、時にはイラつきながら、「当事者」にならざるを得なかった彼女が最後に対峙したのが、親の看取りでした。彼女は父親と長い長い確執の時間がありました。第9章「父のすててこ」では、母のこと、父のことを振り返ります。しんどい事ばかりだった彼女が、本文最後で「パパ、ありがとう」という言葉を書くことができるまでの物語に、親を見送った人なら涙するかもしれません。

「わたしたちが『生きる』ということは、『なにかの当事者となる』ことなのではないだろうか』という文章が強く響いてくる本です。

 

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