NHK大河ドラマ「いだてん・東京オリムピック噺」が終了しました。翌日の新聞によると、歴代大河ドラマで視聴率ワースト1だったと書かれていましが、私は、ベスト1でした。(といっても大河をしっかり見だしたのはここ10年余りですが)

脚本は宮藤官九郎、音楽は大友良英という朝ドラ「あまちゃん」コンビで、4人の人物が大きく物語を動かしていきます。柔道の創始者嘉納治五郎(役所広司)と、1912年のストックホルムオリンピックに、日本人として初めて出場した陸上選手金栗四三(中村勘九郎)、そして1964年の東京オリンピックの誘致に尽力した田畑政治(阿部サダヲ)。この三人に加えて、落語家の古今亭志ん生(ビートたけし・森山未來)です。反乱万丈の人生模様を戦前、戦中、そして戦後を経て悲願の東京オリンピック開催までを描いたドラマでした。

メインのドラマに寄り添うように、数多くのドラマが絡んでいきます。全てオリンピックにまつわる物語の中で、戦争とオリンピックの問題もきちんと取り上げています。ヒットラー政権のプロパガンダに終始したベルリン大会や、戦前、東京に誘致が決定していたのに、日本の軍部政権による中国侵略により中止になった歴史的事実。さらに競技場から出征した学生たち、東京オリンピックの聖火リレー最終走者が、広島に原爆が投下された日に生まれた青年であったことなど、オリンピックにおける戦争の影をきちんと描いていました。そして、まだまだ差別の大きかった時代の、女性とスポーツの姿もしっかり書かれてました。

「原爆に背を向けることは、平和の祭典になっていない」

最終走者が間接的とはいえ原爆に絡んでいることを、アメリカがどう思うかを慮る政府に対して、田畑が発するセリフです。彼は、オリンピックが人種も国も様々な人たちが集まる大運動会であり、それ以上でもなくそれ以下でもないというスタンスで誘致を進めていきます。ナショナリズムにも、商業主義にも屈することなく進んでゆく姿は爽やかでした。実際の人物がこうだったのか、宮藤官九郎の思いだったのかはわかりません。しかし、ロスアンゼルスのオリンピック以降肥大化し、商業主義と利権争いの渦中にあるオリンピックを原点に戻そうとしていたのかもしれません。ラスト、実際の東京オリンピックの入場行進のシーンに、同じ会場でほんのすこし前に、この同じ場所から学徒動員で学生たちを戦地に送り出す映像をかぶせるという、平和への強い思いが感じられました。

長い時代を描く大河ドラマでスピーディに物語を進行させるために、現在と過去のカットバックやCG映像の駆使など、極めて映画的な手法が持ち込まれていました。その分、わかりにくさが生じていたのだとしたら残念です。志ん生の落語「富久」の中で走る男と、マラソンの金栗四三にまつわる話がパラレルに描かれるし、さらに時代は戦前と戦後と行ったり来たりで、じっくり腰を据えてみないと解りづらいところもあったかもしれませんが、まさにその行ったり来たりの重なり方が、宮藤官九郎の世界。様々な人生の錯綜が見所でした。成り行きを知っている時代劇とは違う、人々が迷走するスピード感が面白かったと思います。(実際、阿部サダヲの速い台詞回しの達者なことに感動しました)さらにタイトルの足がくるくる回る横尾忠則のデザイン(写真左上)も抜群でした。

ところで、音楽を担当した大友良英は、「あまちゃん」と同じく素晴らしいスコアを提供していました。メインテーマでは様々な楽器を駆使して、晴れやかな音楽を楽しませてくれました。彼の対談集「クロニクル」(青土社/古書950円)、稲葉俊郎との対話を集めた「見えないものに、耳をすます」(アノニマスタジオ/古書1400円)を在庫していますので、よかったらお読みください。

 

 

 

 

 

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