店で仕事中、一人でどうしようもなく眠たくなって、メールチェックも後回しっていう魔の時間があります。そんな時の特効薬として、店内を意味なく歩き回ることと、警官小説を読んで頭の中をリフレッシュすることにしています。

そんな一冊として、呉勝浩「ライオン・ブルー」(角川文庫/古書300円)を読んでしまいました。

「登ってきた坂は江狗里(えぐり)坂という。それが由来かは知らないが太腿を抉られる急勾配で、平日の昼時にもかかわらず道路沿いの商店は半分以上がシャッターを降ろし、残りの店舗も静まりかえっている。商店街と名乗ってはいるけれど、軽自動車とすれ違ったほかは一人の町民とも出くわさなかった。」

そんな裏寂れた故郷の町に戻ってきた交番勤務の澤登が主人公です。「急ですまんかったな。人の都合がつかんで、往生しとったんや」と交番の上司がコテコテの関西弁を使うところから、舞台は大阪の開発から取り残された町。

ご多聞にもれず、地元の大物と結託したヤクザや土建屋が登場してくるので、その悪事を暴いてゆく若き警官の物語だろうと思って読む進めていきました。澤登は地元高校の野球部のピッチャーで甲子園にも出たのですが、町の期待を大きく裏切る結果でした。なんか、イマイチ暗い展開やなぁ〜、と立ち止まった時、とんでもない文章が飛び込んできました。

「おれは、こいつで自殺するために警官になったんですよ」

「こいつ」とは「拳銃」のことです。警官なら拳銃で自分の脳みそを吹き飛ばせる、などという主人公が警官小説は滅多に見ることがありません。さらに、犯人探しのラストで、そっ、それはないだろうという、とんでもない展開へとなだれ込みます。普通、この手の小説は、ラストのどんでん返しで、背負い投げされたようなカタルシスが用意されいるものですが、本作は0。登場する男たちは、この地獄の中でもがき続けるのかと、厭世的な気分でページを閉じることになりました。

「●●さん、また会いましょう」お互い地獄で。ホンマ、皆地獄行きです。」

でも、なんか妙に心に残る作品なんですよね……..。廃れてゆく町の雰囲気と、そこにうごめく男たちのニヒリズムが漂う、稀有な警察小説かもしれませんね。

ということで残念ながら、頭の中はリフレッシュはされませんでした。

 

 

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