WOWOWで録ってもらっていた東出昌大の主演映画「寝ても覚めても」を見ました。劇場公開時、気になっていた一本でした。監督は濱口竜介。数年前に監督した「ハッピーアワー」が高い評価を得ていたので新作も期待していました。

「寝ても覚めても」は、柴崎友香の同名小説の映画化ですが、ちょっとフランス映画的な恋愛映画に仕上がりました。大阪に暮らす21歳の朝子は、風来坊のような男、麦(ばく)と出会い、運命的な恋に落ちますが、ある日麦は朝子の前から忽然と姿を消します。2年後、東京で働いていた朝子は、麦とそっくりな顔の亮平という青年に出会います。最初朝子は、亮平があまりにも麦に似ているので驚き、避けようとするのですが、逆にそんな朝子に亮平が好意を抱きます。やがて朝子も惹かれていきます。

二人が結婚を決めて新しい出発の用意をしている時、彼女の前に突然麦が現れます。と言っても、麦と朝子の運命の再会で盛り上がる物語ではなく、また朝子が麦への想いを振り切って、亮平との愛に生きるという感動的物語にもなりません。道行きみたいに麦と旅に出る朝子ですが、途中であっさり放棄。麦の方も、じゃぁ、ここでバイバイって、おいおい、そんなもんなの??と観客は置いてけぼりです。登場人物に感情移入しにくい構造の映画ですが、そこが心地良いのです。

麦と別れて、彼女は亮平と一緒に住むはずだった新居へ行くのですが、彼は心の整理がつかず当然のように拒否します。しかし結局「俺は一生、お前を信じない」とか言いながら、家に迎えます。ラスト、新居の前を流れる川を見つめる二人をカメラが捉えて、映画は幕を閉じます。ハッピーエンドでもなく、アンハッピーエンドでもない、映画です。

島倉千代子風に「人生いろいろ、男もいろいろ」、ペギー葉山風に「ケ、セラ、セラなるようになる」といったところですね。盛り上げて泣かしたりせず、わかった風な結論も示さない。ちょっと離れたところから、この人間喜劇を見つめているところがフランス映画的でした。あ、そう言えばこの映画、日本・フランス合作で、ヨーロッパでも公開されているそうです。