メイソン・カリー著「天才たちの日課 女性編」(フィルムアート社/古書1300円)は、最初から通して読む必要はなく、知っている作家や、興味深い名前を見つけたら、そこから読んでいけばいいと思います。

創作活動に従事する女性143名が、その創作の妨げになるような日常の些細なこと、襲ってきたフラストレーション、妥協、後悔、その後に来るであろう希望を、彼女たちの言葉から記した本です。取り上げられた作家やアーテイストたちのどれ程を知っていたかというと、知らない方が遥かに多いのですが、短くまとめてあるので、こんな風に乗り越えようとしていたのかと、身近に感じることができるようになっています。

舞踏家で振付師であったピナ・バウシュは、拷問のような苦しみに襲われながら一から作品を作ることを、毎回後悔するのですが、初演の日が過ぎると次の作品を考えているのだといいます。そのパワーはどこから来るのかという問いかけに、こう答えています。

「大切なのは規律を守ること。とにかく仕事をやり続ける。そうしたら突然、なにかが湧いてくるーなにかちっぽけなものが、それがどう化けるかはわからない。でも、誰かが明かりをつけようとしているみたいに感じる。すると、また勇気が湧いてきて、仕事をやり続けられるし、またおもしろくなってくる。」

「ちっぽけなものが湧いてくる」ことって、きっと私たちの仕事の中でもあります。

劇作家のリリアン・ヘルマンは自分の仕事を「高揚、憂鬱、希望」の順に起こる流れにのって進めると語っています。「必ずその順序なの。希望の流れは夕暮れにかけて始まる。だからそのときに、自分に言い聞かせる、今度はきっとうまく行くって」

どこかで、必ず希望がやってくることを信じることは大事な点だと思います。

その一方で、夜遅くまで仕事をし、それを部下にも強要し続けてきたデザイナーのココ・シャネルは、著者によると「シャネルは週六日働き、日曜や祝日を恐れていた。ある親友にこう打ち明けている『休みという言葉を聞くと、不安になるの』」う〜ん、こういう人の下で仕事するのは大変ですね。

かと思えば、短編小説の名手キャサリン・マンスフィールドは、自分の日記の中で「いつものことだけど、こうやってだらだら書いているうちに、私は壁を突破する。それは小川のなかにすごく大きな平たい石を投げ入れるような感じ。」と書き、生涯、休んでは書くという姿勢を保ち続けました。

この本に登場する女性たちの生きた時代も環境も様々です。中には、奴隷として生まれ性的虐待などの苦難の後に、自伝を発行するに至ったものの、南北戦争勃発で忘れられ、20世紀後半に再評価されたハリエット・ジェイコブスような人物も登場します。

彼女たちは自分のなすべきことを、自分のやり方で、試行錯誤しながら、表現者としての地位を得ました。彼女たちの対処法が、そのまま役に立つかどうかはわかりませんが、何かのヒントになるようなことはあるはずです。

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