「淡雪や下駄の音ゆく上七軒」

京都の方は、北野神社近くの花街上七軒のことはご存知ですよね。北野神社に向かう道すがらにお茶屋さんやら、和菓子屋さんが並んでいますが、祇園より静かな佇まい(夜の街の状況は知りませんが)です。その花街の初春を歌った一句、詠んだのは安西水丸です。

平山雄一監修・編集による「水丸さんのゴーシチゴ」(ピア/古書1200円)は、とびきり素敵な一冊です。

「僕は水丸さんと”ぴあ句会”で出会った。文字どおり”ぴあ”の社長の矢内廣さんが中心となって運営されている句会で、俳句の上手い下手もなく、時には先生と弟子の境もなく、全員ざっくばらんに意見を言い合う。笑いの絶えない句会」とあとがきにあります。

本書は安西の俳句と彼のイラストをマッチングさせたもので、安西ワールドをいっぱい楽しめます。

「ひとり来て麦の青さにむせており」

という一句には、麦畑を走り去るランニング姿の少年の後ろ姿の作品が添えられています。この本は、巻末に全俳句の読み方(ひらがな表記)と季語が書かれてます。本作品の季語は「青麦」で春の季語です。でも、絵からは初夏の雰囲気があります。太陽の眩しさが感じられるからでしょうか。

「仏壇の柿の静かに熟れゆきて」

これは、季語が「柿」で秋というのは、私にもすぐにわかります。

「掬う手に光こぼるる初湯かな」

季語は「初湯」で冬。この句には、安西作品によく登場するちょっと影のある女性が温泉に浸かっている作と、こちらもドンピシャです。2018年に本書は発行されているので、2014年に亡くなった彼の死後に編集されました。監修の平山は、句とイラストのマッチングに悩んだそうです。でも、安西水丸事務所の助けで、あんまり表に出てこなかった作品を使うことができたとかで、極上の仕上がりになりました。

「すべてのマッチングを終えた初冬の日、水丸さんのお墓詣りに行った。丸みを帯びた墓石に水をかけると、石の黒い表面に『水』の文字がフワリと浮かんだ。『ふふふ』という水丸さんの笑い声が聴こえたようだった。」安西と平山の信頼関係を感じる文章です。

「桜の下猫と寝ころぶ呑気かな」

今の季節にぴったりの一句です。

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