京都に本拠地を置く出版社、ミシマ社の社長三島邦弘さんが本を出しました。タイトルは「パルプ・ノンフィクション」(河出書房・新刊1980円)です。何やら、タランティーノ監督の映画「パルプフィクション」に似たタイトル。あの映画みたいに血飛沫とび散る、業界粛清の本かとビクッとしましたが、そうではありません。

三島さんが出版社を立ち上げ、旧態依然とした書籍業界の常識に挑み、販路を開拓し、会社をどうまとめていったかを描いた、いわば社長一代記なのです。成功者にありがちな、説教臭さはなく、ちょっと失礼して社長の頭の中覗かせてもらいまっせ、へぇ〜こんな事、考えたはったんや、そら大変どしたなぁ〜と、ご本人とお話したくなる本です。

ミシマ社さんとレティシア書房は、開店の頃からのおつきあいです。一冊一冊に、作家と出版社の思いのこもった本を出されてきました。だから当店では、新刊だけではなく既刊本もできる限り置いています。2018年4月「ミシマ社と京都の本屋さん展」の時は社員総出で、当店のギャラリーの壁面を巨大な京都書店地図とミシマ社の本のポップで埋め尽くしてもらいました。

「会社を作る直前のことだ。2006年のある日、寝ていたら突然、やってきた。『出版社をつくりなさい』、天からの声のようなものが聞こえた。」

え?ホンマかいな?そんな風に脱線しながら彼の物語は始まっていきます。脱線しまくるところもあって、はよ進まんかい、と言いたくなったりするのですが、これもまた社長の個性です。

現在日本に流通している本は、出版社が直接書店に届けるものではありません。取次という問屋を経由して、そこから書店の規模、売上に基づいて分配されていきます。ところが、このシステムが今や疲弊し、何ら有効性を持っていない状況にあるのに、改善されていません。その弊害を取り除き、書店の利益を上げる流通形態をミシマ社は作り上げ、会社の方針と出版物に協賛する書店を増やしていきました。

その後、連べ打ちに新しい企画を立ち上げ、現在に至っています。

「中途半端な仕事をしたり、形式的にだけ仕事をするようなことは、この小舟の会社では不要です。本気で、一冊を作り、届ける。これをまっすぐ気持ち良くできる人たちとだけ、これからも働きたい。」とは社長が、部下に放った言葉です。そういう姿勢で作った本をあなたは誠実に売ってくれるんでしょうね、とこちらに言われている気がします。

ミシマ社の本はどれも大事です。だからこそ「ミシマ社」というコーナーを作り、できる限り(狭い店ですが)の在庫を持たせています。作家、出版社、書店そして読者が同一線上に並んでいる。新刊書店時代には、ほとんど感じなかった気分をミシマ社は与えてくれ続けています。一人の青年が立ち上げた出版社の壮大な実験と検証、そして反省の記録として、本好きの人にはぜひお読みいただきたいと思います。

お知らせ コロナウィルス感染拡大の緊急事態下、これ以上感染者を出さないために、4月23日(木)より当面休業中です。予定しておりましたギャラリーの個展もしばらくの間お休みいたします。この「店長日誌」は毎日更新していきますので、読んでいただけたら嬉しいです。ご希望の本があれば、お取り置き、または通販も対応させていただきます。(メールにてご連絡ください。)

★★ 5月7日(木)、9日(土)午後2時より4時ぐらいまで開けています。ご用があれば声をかけてください。(次週からは、開店する日を増やす予定です)