アラスカをメインのフィールドにしていた星野道夫が、一冊だけアフリカに出向いた時の体験を本にしたものが、「アフリカ旅日記」(メディアファクトリー/古書1100円)です。何故、アフリカタンザニアに出向いたのか。それは、チンパンジー研究の世界的権威のジェーン・グドールに会うためでした。彼女はタンザニアのゴンベ国立公園で、チンパンジーの研究・保護活動をしていました。

アフリカへ向かう機内で、星野はこう書いています。

「どれだけ多くの国に出かけても、地球を何周しようと、それだけでは私たちは世界の広さを感じることはできない。いやそれどころか、さまざまな土地を訪れ、速く動けば動くほど、かつて無限の広がりを持っていた世界が有限なものになってゆく。誰かと出会い、その人間を好きになった時、風景は初めて広がりと深さを持つのかもしれない。」

アフリカとアラスカの違いがあるとはいえ、生まれた場所を離れ、新しい土地で生きてゆくことの思いは同じだったはず。彼女を通してアフリカを知る、というのが旅のテーマです。

離陸に失敗した時のことを想定して、乗客全員を後部座席に移動させてから、なんとか離陸するという、とんでもない空の旅を経験して、彼はゴンベに到着します。ゲストハウスに案内された時、必ずドアを閉めること。そうしないとヒヒの襲撃、ヘビの侵入を許してしまう、などと都会人なら逃げ出したくなるような状況なのですが、星野は意に介していません。こうして、彼のゴンベの森紀行が始まります。

グドールと共に森に入り、ここで暮らすチンパンジーを観察し、アフリカの大自然を楽しみながら、自分がアラスカに魅了されていったことを語っています。彼が撮った写真も沢山収録されていて、そちらも楽しめます。

一方で、星野は、農耕・漁業で暮らすゴンベの人々の慎ましい日々にも視線を向けます。そして、道無き道の果てに広がる原野に生きるアラスカ先住民のことを思い出します。

「村の暮らしは急速に変わっていても、彼らを包み込む自然は太古の昔と何も変わっていない。つまり、もし明日から遠い昔に暮らしに戻ろうとすれば、何もかもが用意されているのだ。彼らはピラミッドも神殿も建てはしなかったが、自然を変えなかった。狩猟民が持つ自然観は、私たちが失ってきたひとつの力である。」

「狩猟民の自然観の喪失」は、星野がしばしば書いていたことです。

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