1933年3月3日、岩手県で昭和三陸地震が発生しました。地震は、遠く北海道浦河郡荻伏村にまで到達します。この日、この村で生まれたのが宇梶静江です。「両手に入るくらいの超未熟児、しかもしわしわで、まるで猿の子のような児でした。」

「大地よ!アイヌの母神、宇梶静江自伝」(藤原書店/古書1800円)という400数十ページの大作を読み終わりました。本の帯に「女の一生」と大きく書かれています。大作ですが、とても読みやすい。まるで本人が読者に向かって、彼女の生涯を語ってくれているような身近な感じがします。アイヌの子として生まれた彼女が、どんな差別を受けながら育ってきたかは、一言では言い表せません。

戦前には「アイヌも混血して和人化された娘が、生活に困ると、小樽あたりに売られていくのです。」

明治32年アイヌ保護という名目で「旧土人保護法」が制定され、アイヌの財産は没収、アイヌ語彙の禁止などアイヌ文化の全てが奪われていきます。それは昭和になっても同じで、自分たちのアイデンティーを搾取されたまま、アイヌたちは生きて行かざるを得ません。「差別だけが横行する教室は、アイヌの生徒には寒々としています」とは、小学校時代の雰囲気です。

でも、そんな苦難に満ちた彼女の生涯を語っただけの本だとしたら、深い感情を呼び起こす一冊にはなっていなかったはずです。

アイヌ民族が持つ深い精神性が、どれほど私たちに必要なものなのかがゆっくりと語られていきます。

16歳の頃、彼女は山の中でシマフクロウに出会います。その姿が、63歳から作ってきた古布絵の作品の中で蘇ります(右写真は個展のポスター)。多くのアイヌの同胞たちと関わりながら、現代文明への問いかけを続けます。

「アイヌの精神性は、きっと地球がもたらす尊いことを心の深くに据えて、敬って生きることではないかと思うのです。だから山の中で茸などに出会うと、敬って感謝する。『ありがとう茸さん、あなたを頂いて食べさせて頂きます、そしてあなたと生きるのです』と言って唄ったり、踊ったりします」

コロナウィルスの感染で、新しい生き方、考え方を模索せざるえない今こそ、読んでほしい一冊です。

本書の最後の方に、当店でも個展をしていただいた版画家の結城幸司さんが登場します。アイヌ伝統文化を映像や音楽、版画で表現し、さらに世界の先住民たちとの交流にも尽力されておられます。彼のことは当ブログでお読みください。

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