小川洋子、太田光、中沢新一と異種格闘競技のような対談集を出してきた山極寿一先生が、またもや対談集を出しました。それが「虫とゴリラ」(毎日新聞社/古書1100円)です。対談相手は養老孟司先生。解剖学と人類学と学問の違いはあれど、なんとなく似た者同士の組み合わせですが、このお二人が面白くないはずがない。刺激に富んだ対談集でした。

本の紹介に入る前に、先日NHKの番組で山極先生が、哲学者、歴史学者というジャンルの違う学者と、コロナ後について語り合ったことを書いておきます。番組で先生は、「地球は人間が主人公ではない。多くの細菌、多くの生物の住む惑星であり、人間が主人公の如く生態系を破壊している。」と語り、例えば温暖化の影響などでコロナとはまた違う生物が登場する可能性もあるから、生態系、自然環境をあなどることをしてはいけないと言われたのですが、今回のコロナ騒動下で、最も腑に落ちた意見でした。

その思想が本書にも流れています。自然との感動を分かち合う生き方を求めてゆくことの大事さが語られています。元来、秋になれば山から聞こえてくる鹿や猿の繁殖期の鳴き声や、春には鳥の繁殖の鳴き声に、日本人の情緒は影響されてきたはず。しかし、「今、森が空っぽになっちゃたから、気温の変化や、そういうものでしか判断できなくなっちゃった。自然に対する感覚を失って、人間が機械的な反応しかできなくなったいう気がするんです。」と語っています。

洗剤で荒れた河川を下水道整備でもとの状態に戻した時に、「役所がフナを放しやがった。フナなんて一匹もいなかった川なのに。」と養老先生。

すると山極先生が、役所は日本の水田の構造・生物環境を調べずに「『復元すりゃいいでしょう』って、いろんな生き物を放しちゃった。それで生態系が変わり、外来種もずいぶん増えちゃった」と答え、さらに養老先生が「いちばん悪いのはアメリカザリガニ。あいつら、本当にたちが悪い」と切り返していきます。なんだか、飲み屋さんで、ご隠居のうんちくを聞いている感じで、とても楽しい読書時間です。

最後の山極先生の発言は、これからの生き方を考える上で大切なことが語られているので、長いですが、全文載せます。

「日本列島はもうほんとうに多様ですから。この多様というのをうまく反映させた地域づくりと、自然観をつくっていかないと。工業化っていうのは、均一性に向かうんですよ。もちろん海外からくるものは、みんな均質、質保証って言うでしょう。あの質保証っていうのがね、厄介なんです。ある質っていうのをクリアしなくちゃいけない。だから、その質をクリアしないものは、製品にならない。捨てられていくわけです。こぼれ落ちていくものほど、価値がある。だから、うちはいくつもそのこぼれ落ちたものをいただいて食べてますけども。そっちのほうの、価値観を持たなくちゃいけないと思います。」

そして「こぼれ落ちたものが、いちばん面白いんですよ」と養老先生が締めくくりました。

 

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