イギリス在住のコラムニストのブレイディみかこは、労働者階級の子供達を通じて英国の現状をあぶり出し、それでもどっこい生きている姿をビビッドに描いてきました。

今回は、労働者階級のうだつの上がらないおっさん群像を描いて、EU離脱に揺れる大国の姿を見せてくれます。「ワイルドサイドをほっつき歩け」(筑摩書房/古書950円)です。

ここに登場するおっさんたちは、BBCが発表した階級表(英国は階級社会であるというのは常識)によると「トラディショナル・ワーキング・クラス」に該当します。著者はこの階級の人をこのように解説しています。

「収入は低いが、資産が全くないわけではない。自分と同じような職業の人々と交際している。フイットネスジムに通うとかソーシャルメディアを使うというような現代風の文化はあまり取り入れない。ダンプの運転手、清掃職員、電気技師などの仕事をしていることが多い。」

著者は、連れ合いの男友達のおっさんや、女ともだちの旦那たちとの付き合いの中から、彼らの人生観や国の将来の展望を、いつものパワフル母さん調で語ります。

「海外には、英国はすでにEUを離脱したものと思っている人たちもいるが、実はまだEUの中にいる。離脱の条件に関する取り決めがぐちゃぐちゃといつまでもまとまらず、もはやすっかり国民がダレている状態」だというのが現状だとか。

政府の緊縮財政政策による医療体制の崩壊、景気悪化による失業、酒で身を持ち崩して妻に逃げられる、等々おっさんたちを取り巻く環境は厳しさが増しています。

「寝ゲロはやべえんだよ。喉に詰まって死んだりするから。年をとったら食道も繊細になるから。自重して飲まないと。」

「うん、俺たちの年になると泥酔するのも命がけ」

などとぼやきながらぐいぐいビールを飲んでいるおっさんたちを、見守る著者の愛情がかいま見えてきます。「おめえ、アンチトランプデモに行ったろ」と友人のデモ参加をワイワイ言い合ったりしながら、おっさんたちは前に進んでいこうとします。帯に「絶望している暇はない」と書かれていますが、その通りの忙しい日々が続いていきます。人情ドラマを見ているような気分になりました。

「労働者の立場が弱すぎる現代に求められている新しい労働者階級の姿とは、多様な人種とジェンダーと性的指向と宗教と生活習慣と文化を持ち、それでも『カネと雇用』の一点突破で繋がれる、そんなグループに違いない」という著者の言葉が力強く響いてくる一冊です。おっさん、頑張ろ!!