庭に植えられた桜の苗木が、40年ほど経った現在二階家の屋根をおおうばかりに大きくなり、その桜の木を「叔父さん」と呼んで、暮らすご夫婦の素敵な写真展が始まりました。

2002年から京都発文芸誌「APIED」を発行されている金城静穂さんが、大きな桜の木の家の住人である吉田さんご夫妻の暮らしを、写真とエッセイで構成した本「桜の木が一本」(1980円/税込)を出版されました。この本については今年1月の「店長日誌」で紹介しています。

吉田一之さんは綴れ織の作家。吉田道子さんは児童文学者。慎ましやかで、豊かなお二人の毎日が、道子さんの文章と酒谷薫さんの写真で綴られた一冊です。酒谷さんは、吉田さんとお母さんが知り合いという関係で、幼少の頃から桜の木の家には馴染んでおられたとか。そのせいか、写真には彼自身の懐かしい想いもつまっているような暖かさがにじみ出ています。

一之さんが大動脈解離で倒れられてから、生と死を強く意識されたようで「先に思いを馳せるのではなく、今を生き切る。そうしたい。成長した暁にではなく、今、その瞬間を生きる子どものように。生きているこの短くて膨大な時間。束になってしまう時間の一瞬をいきるのだ。そう思うと、さらに二重写しの風景の中の束の間を強く感じる。」と書かれています。静かな写真に、そういう思いが秘められているようで、目を凝らして見てしまいました。愛しい時間が切り取られています。

発行人の金城さんもまた、吉田夫妻とは長いお付き合いの中で、お二人の家の佇まいや暮らしやお人柄を大切に記録しておきたかったのだろうと、写真展を見ていてしみじみ思います。今回の写真展には、一之さんの綴れ織の作品を並べていただきました。緻密でモダンな作品もぜひご覧くださいませ。道子さんの児童書も同時に販売しております。

尚、「APIED」のバックナンバーも揃えました。「APIED」は、毎回一つのテーマを決めて、内外の文学を紹介する文学専門のミニプレスです。最近のラインナップは、33号が「萩原朔太郎」、34号が「ジョージ・オーウェル」、35号が「チーホフ」です。価格は770円とお安めで飼いやすい価格なので、文学好きには好評の雑誌です。(女房)

「桜の木が一本 」出版展示会は7月22日(水)〜8月2日(日) 13:00〜19:00

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