ピーター・バラカンの名前を知っている人は、きっと音楽大好きの人だと思います。1951年ロンドン生まれ、74年に来日。その後、ラジオのパーソナリティとして、各種の番組に出演して、ロック、ポップスを中心にして世界の音楽を紹介してきました。

世界の音楽に対する知識とその素晴らしさを伝える文章力、そして、自分の立ち位置をしっかりと踏まえた上での政治的発言などで、最も信頼している音楽評論家です。「Taking Stock ぼくがどうしても手放せない21世紀の愛聴盤」(駒草出版/古書1300円)は、よくあるベストヒット音楽チャートからは見えてこない素晴らしい音楽を紹介した一冊です。

私にとってバラカンさんは、アフリカ音楽への興味の扉を開けてくれた人です。彼がいなければ、アフリカ、中近東、南米など、いわゆるワールドミュージックなど聞いてこなかったかもしれません。

本書でも、数多くのアフリカ圏の作品が取り上げられています。あっ!これ、彼の愛聴盤だったのかと、嬉しくなってきたのがマリ共和国のサリフ・ケイタの”Moffou”(1500円)です。サリフは、アルビーノ(先天性色素欠乏症)なので、肌はピンク色、髪は金髪です。その病気に対してマリの社会は理解がなくで、迫害を受けてきました。

13世紀に遡るマリ帝国創始者の末裔に当たるサリフは、家庭でも迫害され、音楽活動禁止を宣告されます。その反対を押し切って、世界に飛び出していきます。そんな彼の生い立ちや、そこから生まれてくる音楽を紹介してくれます。本アルバムのオープニングを飾る“Yamore”の素晴らしさをバラカンさんはこう説明しています。

「やさしいラテン風のパーカッションとアコーディオンの演奏に、これこそアフリカの音楽の大きな魅力と言える女性バック・ヴォーカルの反復フレーズに重なるように、サリフの伸びやかな歌がさりげなく滑りだします。」

私たちが持つアフリカの大地のイメージ、そのままの風景が広がってきます。心晴れわたる音楽ってこういうことだと思います。初めて聞いた時、あまりの素晴らしさに呆然としました。「この1曲だけのためにでも欲しくなる名盤」と書いていますが、その通りです。3曲目”Madan”は、体が思わず動きだし、どんな踊り方だっていい、足を踏み鳴らし、手を振り回す。そんな気になる一曲です。この曲を聴きながら、京都市動物園のゴリラと一緒に踊っている自分を夢想しましたね。

バラカンさんの本を読んだら、このCDも、あのCDも欲しい!と思います。音楽ファンには危険な本かも………。