「金沢美術館」「すみだ北斎美術館」など、多くの建築を手がけてきた建築家妹島和世が、大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎建築に携わった数年間をドキュメントした映画「「建築と時間と妹島和世」を観ました。この建築家に特に興味があったわけではなかったのですが、監督をしたのが写真家のホンマタカシでした。写真家中平卓馬を追いかけたドキュメンタリー映画「きわめてよいふうけい」の撮影を担当したことはありますが、映画監督は初めての作品。ちょっと興味が湧いたので映画館へと向かいました。

建築家の脳内にあった抽象的な概念が、有機的な建物へ、具体的なモノとして仕上がってゆくまでを、現場の定点観測を巧みに入れながら、60分少々で描いていきます。

舞台となったのは、大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎(2018年11月完成)です。妹島の頭にあったのは、「公園のような建物」でした。周囲の緑豊かな風景という特性を生かし建物を構想していました。直線でデザインされた建物ではなく、緩やかにカーブする曲線を取り入れた建物で、森の中の丘みたいな印象です。

ホンマは、その様子を低速度撮影という手法で、完成まで撮影していきます。コマ撮りアニメのような感じで、徐々に形を表す建物と周囲の風景を捉えています。花が咲くまでを高速で撮った映像を見たことがあると思いますが、まさにアレです。

妹島が、何度も建築模型を作り、現地に足を運んでは修正を加えてゆく様は、一人の建築家の脳内の抽象と具象を行きつ戻りしているようで興味深い。完成した新校舎は、なだらかな曲線で周囲に溶け込み、校舎の中に光が差し込み、穏やかな風が流れ込んできます。この校舎にあるベンチに座り込んでぼっ〜としていたら、いい時間が過ごせそうです。

建物を作ったというよりは、素敵な景観を生み出したように見えますが、それはこのプロジェクトにとって成功だった、と言えるかもしれません。ホンマ自身は、こういった作品をいくつも製作したいそうですが、機会があれば観てみたいと思いました。

ホンマの著書「たのしい写真 よい子のための写真教室」(平凡社/古書1100円)は、気楽に読める写真論でおすすめです。

 

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