本に関するエッセイを多く出している近代ナリコの「女子と作文」(本の雑誌社/古書950円)は、戦前から現代までの様々なスタイルの”女子本”の中から、そこに書かれてきた、あるいは投稿してきた女性たちのリアリティーを紹介した、ちょっと他に類のないエッセイです。

登場する作家は、大橋歩、今井邦子、今西博子、新田まり子、佐川ちか、安井かずみ、落合恵子等々。そして雑誌「オリーブ」の読者の投稿を載せる「オリーブクラブ」の記事も紹介されています。

「アンアン」「平凡パンチ」などで時代の最先端のイラストレーターとして活躍し、「アルネ」で新しいスタイルの暮らしの雑誌を作った大橋歩の仕事と人生を考えたかと思うと、次の章では、大正から昭和にかけて活躍した歌人でエッセイストの今井邦子が、文学で身を立てようと上京した明治42年の彼女の文学生活へと迫っていきます。

今井は、「女子文壇」という投稿を主にした雑誌で活躍し始めます。この雑誌は明治38年創刊で、当初は日露戦争直後という社会情勢の中、体制に迎合的と見えた雑誌でしたが、「しだいにその体質を変え、文学の名のもとに集い、あたらしい生き方を目指す女性たちの声を拾いあげて先鋭化してゆく。」のです。ここには、岡本かの子も参加していました。

「女性の書いたものを読む楽しみは、その表現から、彼女たちが何を欲望していたかをを知ることにある。邦子にとってそれはなにより<文学>だったが、それをいいかえれば、妻でもない母でもない、邦子自身であるということだった。」

著者は「彼女たちが何を欲望していたか」を拠り所として、多くの文献、雑誌を読み漁り、彼女たちへの共感度を増してゆきます。

それは、可愛いものを探し、好きな本や映画について語り、新しいファッションを欲する女の子たちが夢中になっていた「OliveClub」に投稿していた女の子たちの個性的な表現でも同様です。「さんざん言われてきていることとはいえ、『オリーブ』の文化度の高さに感心させられずにはいられない」と書いています。

70年代、新書館という出版社から「フォア・レディース・シリーズ」という単行本が出されていました。寺山修司、白石かずこ、立原エリカらの作家たちに混じって、新たな書き手として、落合恵子、安井かずみが加わります。この二人は書き手であると同時に、本の表紙を飾るモデルとして登場しました。

「その後、かたやスタイリッシュな女のライフスタイルご意見番として、かたや性差別問題に果敢に取り組むフェミニストとして、女性に向けた文筆活動を展開しながらも、その方向性は対照的なふたり。デビューはほぼ同時期のフォア・レディース・シリーズ、表紙を自らが飾ったことまでが一緒だが、おそらく、安井の表紙が、彼女の自己演出という内的欲求によるのにたいして、落合の表紙は、彼女の絶大な人気という外的要求による。安井はみずからしていて、落合はさせられているのである。ふたりのその後のスタンスのちがいにもうなずけるというものである。」

というのが著者の分析です。

「OliveClub」のことは私は知りませんでしたが、この「フォア・レディース・シリーズ」は覚えています。おしゃれでかっこいいイメージが充満していました。