モンゴルを舞台にしたKENTARO監督、柳楽優弥主演の「ターコイズの空の下で」(アップリング京都にて上映中)は、題名どおり空が目に染み入る映画。ファンタジーな展開なのに、細部で人間のプリミティブな生をぎゅっと描き出し、リアルな画面を作っています。

日本の大企業の社長の心配は、たった一人の後継である孫のタケシ。あまりにも定石どおりの放蕩息子が、ある時、社長であるおじいちゃんに、戦時中にモンゴルに残してきた娘を探しに行くよう命じられます。お供をするのは、怪しいモンゴル人アムラ。実は、馬泥棒でモンゴルでは指名手配されているような人物です。アムラは日本で、この社長の持ち馬を盗むというところから話が始まります。言葉も喋れなければ、モンゴルのことなんて全く知らない放蕩息子が、アムラとの付き合いを通して、大人へと成長してゆくという、よくある”放蕩息子の帰還”を描いたものではありますが、これは、モンゴルを舞台にしたというだけで成功です。

羊を放牧し、ゲルで生活する人たち。荒々しい、けれども時々美しさも垣間見せてくれるモンゴルの大自然が背景であることで、使い古された物語が新しい魅力を伴って再生されました。

ちょっと泥が付いただけで、日本から着てきた上等のスーツを一生懸命拭くタケシ(だいたいスーツに革靴姿ってのもどうかしてますが)。最初はアムラが引張ってくれていたけど、彼が逮捕されてしまい、一人ぼっちで誰もいない荒野に放り出されます。野犬に襲われ、追い払うために乗っていたバイクに火をつけます。しかし、もう移動手段がない。死ぬかと思った瞬間、現地の女性に助けられます。ここから、タケシは、今までとは違う目線で世界を見ることになります。動物も人間も、同じ次元でこの大地に生きている……。いつしか、タケシはスーツを脱ぎ捨てて、なんとか馬にも乗れるようになっていきます。

風景の素晴らしさはもちろん、ここに登場するモンゴルの人たちの表情がいいのです。どアップで撮られている男の顔も女の顔も、厳しい自然に揉まれて生きてきた強さに溢れ、惚れ惚れします。

こんな分厚い表情の人々に対抗するために、タケシのおじいちゃんには麿赤兒しかなかったのでしょう。言わずと知れた前衛舞踏家ですが、刻まれたシワと厳つい表情が立派です。

ターコイズブルーの空を実際にみてみたい、吹き抜ける風をぜひ肌で感じたい、と思いました。