温又柔( Wen Yuju)と木村友祐の二人の作家による書簡集「私とあなたのあいだ」(明石書店/新刊1870円)は、サブタイトルに「いま、この国で生きるということ」とあります。

この本は、いまこの国で真っ当に生きていけるのか?という疑問を、台湾生まれで日本語で本を書く温又柔と、虐げられて行き場を失う人々に焦点を当てた作品を出している木村友祐が、語り合います。はっきり言って、かなりしんどい。でもいま私たちが直面している、見たくない、考えたくない状況を目の前に広げてくれます。300ページにも及ぶ往復書簡集ですが、読んでよかったと思う手応え十分の一冊です。

私が本書を読んだのは、こんな文章に出会ったからです。

「飢えの苦しみを味わうことなく、芳醇な餌を与えられながらすくすくと育ったかれらが、痩せっぽちで生まれたきり餌もろくにもらえず喰うものを自力で求めてもがくしかない魚たちにむかって、『おまえは努力が足りない』とあざ笑う姿は、ただもう醜いとしか言いようがありません(いま私も麻生太郎を思い浮かべています)。」

すくすく育ったのは、特権階級の政治家たち。もがいているのは、貧困に苦しむ階級のことです。麻生太郎をこんな風に書いてくれたのを、初めて見ました。木村は「いま私も」と書いているように、温又柔もまた麻生をそういうふうに見ているのです。

空疎な言葉を連発し続けた安倍、国民を見下し続ける麻生のような政治家に実権を握られた日本の政治的社会的状況に、二人の文学者が異議ありの声をあげ、どうあるべきかを語ってゆきます。とりわけ、帰化せずに台湾国籍のまま、国内で文筆活動を続ける温又柔の受けた差別は、いかにこの国が自国以外の人間に優しくないかを実証するものでした。

選挙権がない彼女は、「投票したいなら、帰化するのが礼儀だ」という言葉をぶつけられました。

「礼儀?だれへの?まさか、国への?ならば、日本国籍を所持しながら投票しない有権者のほとんどは、自国に対してものすごく無礼だということになります。」

正論です。本書の持つ力は、二人の言葉の力なのですが、私たちが権力者の言葉のまやかしを打破するための力となるでしょう。

「たとえ、ガイジンで、さらにいえばアジアの、親日であるはずの台湾出身の、それもオンナであるおまえが生意気なことを言うな、と私の口をふさごうとするひとがいても、これからもわたしは、あなたたちこそ、この国の当事者だ、としつこく言い続けます。」と言う、温又柔の側に立っていたいと思います。