中堅の、あるいは新人写真家に贈られる土門拳賞を本年度受賞したのは、ネイチャーフォトグラファー大竹英洋の「The North Woods」( Crevis/新刊2750円)でした。以前、彼の「そして、ぼくは旅に出た」を紹介しました。(売切れ)

ノースウッズは、北米大陸北緯45度から60度にかけて広がる世界最大級の森林地帯です。一年の約半分が冬で、気温がマイナス30度になることもあります。厳しい自然環境とそこに生きる動物たちのありのままの姿が捉えられています。

こういった動植物を撮影した第一人者といえば、星野道夫だと思います。どの写真家にも、星野的な雰囲気があって、彼を超えるのは相当困難な課題だろうと思っていました。

しかし、大竹の作品には、明らかに星野道夫にはないものが生じていると感じます。最初にそう思ったのは、「ハシグロアビ親子」の写真(本書10ページ)でした。親鳥の羽の白い毛先を見つめる子の視線。親鳥の威厳と、あどけない子の親への眼差し。ハシグロアビは、47〜49ページにも再登場します。

「ノースウッズの水辺を象徴する鳥。カナダの1ドルコインにも刻印され、ルーンという英語名の方が馴染みがあるかもしれない。営巣中の婚姻色はオス・メスともに鮮やかで、ひときわ目を引く。また、その鳴き声も特徴的で、一度聞いたら忘れることはできない。アメリカを代表するナチュラリスト、ジョン・ミューアは、北米に移民して間もない頃にウィンスコシン州で過ごし、アビの歌声について『ウィルダネスで聞こえる全ての音の中で、最も野生的で、かつ胸を打つ』と讃えている。」と丁寧な解説を付けています。

161pに冬の到来とともに、南へと帰ってゆくナキハクチョウのつがいを捉えた作品が載っています。「トランペッタースワン」と言う英語名を持つナキハクチョウの美しいフォルムが見事です。絵画のような作品です。

未知の自然が連なる奥地を旅して、その先に見つけた生き物たちの生をフィルムに焼き付けた写真家の情熱がどのページにも見出せる傑作だと思います。この惑星にある素敵な世界を楽しんでください。