児童書の老舗福音館書店が発行している雑誌「たくさんのふしぎ」は、毎号毎号、おっと思わせる企画で購買意欲を掻き立ててくれます。このブログでも何度か取り上げましたが、今回のおススメは2019年11月号「馬と生きる」(新刊770円)です。

文章を映像作家の澄川嘉彦が、絵を漫画家の五十嵐大介が担当しています。五十嵐についてはこの前も絵本「バスザウルス」を紹介しましたが、馬の絵もやはり素晴らしい。

現在、岩手県花巻市在住の澄川が遠野市に生きる馬と人を紹介していきます。

「『ほーおれ!そおーリゃあ!』 遠野の山の木々の葉をふるわすような大きな声がひびきわたります。見方芳勝さんが馬に気合をいれる声です。声を合図に大きな馬が杉の大木を引っ張りながら山をかけあがってきました。遠野に古くから伝わる馬をつかって木を運ぶ方法で『地駄引き』と言います。」

大きな丸太を引きづりながら飼主と共に山を登る五十嵐の馬の絵が美しい。人馬一体。人と馬の信頼感を感じます。

現在では機械を使って運び出すのが普通で、馬を使っているのは見方さんだけだそうです。

「見方さんは馬のことを話すときによく『生きもの』という言葉を使います。地駄引きは人と馬という生きものどうしが力をあわせ、ひとつになって働く仕事なのです」

人と馬の日々の暮らしや仕事が、具体的に、文章と絵で語られていきます。当店でロングロングセラーになっている「馬語手帳」もそうですが、馬の絵って、とても優しい気持ちにしてくれる魔力があると思います。様々なシーンに登場する馬がある時は気高く、あるときは可愛く描かれます。

見方さんの家の見取り図が載っています。家の中で、馬が寝起きする「馬屋」の位置を読者に知ってもらうためです。座敷に座る見方さんからいつも馬が見えています。

「自分はお酒を飲んでいても、こうやってお茶を飲んでいても、馬を眺め眺めすれば気持ちが落ちつくというんだか安心するんだな。」

日々、愛馬と山に入っていた見方さんでしたが、70歳を超えました。そんな時、地駄引きをやってみたいという若者が現れ、見方さんの下で学び始めたのです。出てくるんですね、こういう人が!数年前足を痛めた見方さんは、彼に地駄引きを任せることにしました。今、見方さんの馬と一緒に山に入っているそうです。