「国際霊柩送還士」と言っても、多くの方はご存じないと思います。海外で死んだ日本人、あるいは日本で死んだ外国人を遺族の元に送り届ける人のことです。そんな仕事を専門にしている会社が一社だけ日本にはあります。「エアハース・インターナショナル」。ここで働く人たちを追いかけたのが佐々涼子「エンジェルフライト」(集英社/古書800円)です。

ところで、海外から遺体が帰ってくる時、どこに到着すると思いますか。飛行機から出されて、旅客ターミナルに向かうのではなく、貨物ターミナルに向かいます。遺体は貨物扱いなのです。そこで、エアハースの人たちは遺体と対面しますが、国によっては遺体をいい加減な処置で返してくるところもあります。とても正視することができない腐乱状態で戻ってくることもあるそうです。そんな遺体を、パスポートの写真を見ながらその人らしい形にするのが彼らの仕事です。

「遺体は訴えることができない。何かを伝えたくても言葉を持たない。」

だからこそ、家族の元へ、生前の姿に近い形で届けることがエアハースの使命だと言います。

「人は死んだらどうやって故国へと帰るのか。どんな人がどんな想いで運んでいるのか。国境を超えた地で亡くなると、家族はどんな思いを抱くのか。」

壮絶な現場が続きます。この会社にはマニュアルがありません。マニュアル通りに進行することなどないから。どうすればご遺族の寄り添えるのか、それはそこで働く人たちが自分で体得していかねばなりません。

傷だらけの遺体を綺麗に復元して、家族の元に戻す。そうして遺族から感謝されることはあります。しかし、遺族にとってエアハースの人たちを思い出すことは、辛い日々を思い出すことです。むしろ仕事を遺族に忘れ去られるのが良いことなのです。感謝され、忘れ去られる人々なのです。

ところで、著者はなぜこの本を書こうと思ったのか。そのことについて後半で書かれています。小さい時に死んだ弟、そして重い病に倒れた母親のこと。そこから彼女は死について深く考えていくことになり、エアハースの人たちが何を思い、行動しているのかを知りたくて飛び込んだのです。

とても内容の深い、それぞれに考えることの多い一冊です。

残念ながら、売切れです。(近日再入荷予定です)