木村伊兵衛の写真人生を、六つの章に区分けして編集した「木村伊兵衛-写真に生きる」(Crevis/新刊2970円)は、この写真家の生涯を知るのにふさわしい一冊です。

第一章は「夢の島ー沖縄」。1936年、木村は沖縄に一ヶ月滞在しました。東京で見た琉球舞踊に強く惹かれ、機材を背負って沖縄に向かいました。そこで暮らす人々を撮影した一連の作品は、彼が世にでるきっかけとなりました。

第二章は「肖像と舞台」。最初の個展は1933年、銀座の紀伊国屋ギャラリーで開催された「ライカによる文芸家肖像写真展」でした。小型カメラで臨機応変に対象を捉えています。その後、作家の表情を撮り続けます。50年代中頃、浅草仲見世をブラブラする永井荷風が印象的です。

第三章「昭和の列島風景」は、戦前から戦後にかけて日本各地で撮影された写真が集められています。鈴木志郎康は木村が「いわゆる風景というものを全く撮らずに、人の姿を撮る写真家だ」と述べていますが、その指摘通り、農村に、漁村に、都会に、生き、働く人のヴィヴィッドな姿を捕まえています。私が、木村の作品を見始めたのも、このシリーズでした。

第四章は「ヨーロッパの旅」。1954年初めてヨーロッパに渡り、日常生活をカメラの納めています。パリでは、カルティエ=ブレッソンや、えき美術館で開催中のドアノーとの交流もあったそうで、ドアノー風の洒落た作品も見受けられます。

第五章は「中国の旅」。彼は、戦前戦後に数回中国へ渡っています。私は中国での作品群を初めて見ましたが、庶民を捉えたものが大半で、働いたり、遊んだり、踊ったり、休息したりする人々の表情が魅力的です。1940年に撮影された「帰路」という写真に特に心惹かれました。田園を行く一人の男性の背後に広がる雄大な空が素晴らしい。

最終章は、「秋田の民俗」。これは木村の代表作ですね。1952年から20年間で21回も秋田を訪れ、秋田の人々の姿、彼らのドラマを撮しました。

200数十ページのボリュームある写真集ですが、この値段は安いと思います。

 

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