往年の名作「ウエストサイドストーリー」をスピルバーグ監督が再映画化すると聞いた時、えっ?なんで今さらと思ったのですが、これは傑作でした。

オリジナルの「ウエストサイドストーリー」の映像表現は凄い!とは思ったものの、当時個人的にはブロードウェイミュージカルってのがどうも…って感じもあり、なんていうかちょっとダレた印象が残っていました。マリア〜マリア〜と歌われてもなぁ〜って….。

でもスピルバーグ監督は、かなりスピーディーに仕上げてくれました。おかげで最後までハイテンションでダンスも歌も堪能することができました。ご存知のように「ウエストサイドストーリー」は、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を、レーナード・バーンスタインたちが、苦心惨憺して現代の青春群像に置き換えたものです。スピルバーグ監督は焼き直しに陥ることなく、さらに原作になった「ロミオとジュリエット」を意識して映像化しています。若い、おそらくほとんど映画では無名の役者たちが、ロミオやジュリエットを現代に生き返らせてくれました。キャスティングが決まった時に、この映画は名作と呼ばれることになる運命だったと言っても大げさではないと思います。それほど出演者全員が躍動しています。

数々の傑作を世に送ってきたスピルバーグ監督ですが、本格的なミュージカルはこれが初めてのはず。でも映画少年がそのまま映画監督になったような彼だけに、往年のMGMミュージカル風の振り付けやカメラワークも挟み込んだりしながらも、独自の映画魔術を繰り広げます。そしてオリジナルに出演した女優リタ・モレノを渋い役に配して、一曲歌わせているあたりにオリジナル版へのオマージュが汲み取れます。

オリジナル版のオープニングもかっこいいものでしたが、こちらも負けず劣らず。のっけからノリノリになっていけます。脚本を担当したトニー・クシュナーはスピルバーグと二作品で仕事をしているので、息があっていたのかもしれません。

映画監督大森一樹は「ナタリー・ウッドもチャキリスもタンブリンもベイマーも出ていない『ウエストサイド』なんて、と思って見ていたのが、いつの間にかスクリーンにのめり込んでラストのタイトルまでスピルバーグの才能を久々に見せつけられた」とコメントを寄せています。誰もが知っているわかりやすいミュージカルですが、アメリカの抱える移民の労働や格差の影をさらに色濃く乗せて、鮮やかに繰り広げられる圧巻のダンスシーンに酔ってください!