新潮社が主催する「女による女のためのR-18文学賞」は応募する方も、審査する方も全て女性。2018年「手さぐりの呼吸」で大賞を受賞した清水裕貴の、第二作「花盛りの椅子」(集英社/新刊1980円)は、傑作だと思います。

緑深き山の中に、ひっそりと佇む「森野古家具店」。そこに務める職人見習いの鴻池さんが主役の、連作短編集です。古家具店には、様々な災害で傷ついた家具が集まってきます。東日本大震災、伊勢湾台風、関東大震災、阪神淡路大震災に遭遇した家具と、それを修理する鴻池さんの交わりが綴られます。

災害の前、家具が家具として機能していた頃の記憶を感じとることが出来る彼女は、その家具を通じて、使用していた人の想いと寄り添います。

「私たちは普通なら捨てられてしまうものを拾い上げる。他の人にとってはゴミにしか見えないものでも、そこに堆積している時間を丁寧に取り出せば、暗闇に隠された美しいものが、ふわりと立ち上がってくる。」

「森野古家具店」の社長が、またなかなか良いキャラで、「古家具を直す人は、まず家具に染み込んだ過去を見つめられる人でないといけないんだ。鴻池さんは、家具の気配をきちんと感じ取れる人だと思ったから、僕は雇ったんだよ。」などと言いながら、壊れた家具を集めては持って帰ってきます。「家具の気配」とは不思議な言葉ですが、目利きの社長が仕入れてくる古家具には、ひどい状態にも関わらずどこかに心地の良い気配が潜んでいるらしいのです。

静かに淡々と物語は進んでいきます。災害と破損した家具の話なのに、どの場面にも鮮やかな色彩を感じます。桜貝、雨上がりの空、枇杷のジュース、新緑、緋色の絨毯、夕陽に照らされた部屋、光る十字架等々、非常に鮮明な映像が目の前に浮かんできます。海の音や風の音など聴覚に訴えてくる表現と、こうした視覚に訴えてくるものとのバランスが見事で、全体を通して美しい文章だなぁと感じました。心の中が澄み渡ってゆくような、そんな作品です。次回作が楽しみです。