原作は、独学で魚の研究者になったさかなクンの自叙伝的エッセイ「さかなクンの一魚一会」。それを、センスの良い作品を送り出し続けている沖田修一監督が映画化しました。南極越冬隊のコックを主人公にした「南極料理人」、林業に携わる人々を描いた「キツツキと雨」、自宅の庭の虫や花を描き続けた画家熊谷守一を山崎努が演じた「モリのいる場所」等、選ぶ舞台や登場人物がユニークすぎて、観る前からワクワクしてしまう監督です。

「さかなのこ」の主人公ミー坊は、もう魚のことしか頭にない高校生です。飽きることなく魚を観察し、お魚新聞を作っては学校に張り出し、毎日魚料理を食べるという、ユニークな生徒です。ミー坊は小さい時、近所では変人扱いされているギョギョおじさん(さかなクンが演じてます)と意気投合して、さらに魚のことしか頭にない人になりました。そして何より幸せなことに、魚に夢中になる子供を応援する母親が、側にいてくれるのです。

さかなクンを彷彿とさせるミー坊を演じているのは、NHK朝の連ドラ「あまちゃん」で国民的アイドルになった、のんです。

映画の冒頭に「男か女かどっちでもいい」というテロップが出ます。なので、彼女が学ランを着て、高校の不良仲間とやりあっても全く違和感はありません。ミー坊に絡んでくる不良仲間や、ペットショップの店長、幼な馴染のモモコも、ちょっとヘンな人たちではありますが、穏やかで憎めない人ばかりです。悪人が一人も出てこない、という極めてレアな映画かもしれません。だから、観ていて、本当に幸せな気分になってくるのです。のんの、飄々とした姿を見ていると、もう本当にどっちでもいい、取るに足らないことのように思えてきます。それよりも、好きなことを見つけ、それを貫き通す自由を映画を観ながら楽しんでほしい。

みんなと違う、普通じゃないことを気にせずに、好きなことを好きにやっていいんだよ、という監督の思いが嬉しい映画です。ラスト、防波堤を一気に走り抜けて、海へと飛びこむミー坊が素敵です。

さかなクンの現在の肩書は、東京海洋大学名誉教授、同大学客員教授。最初はあの喋り方や風体を馬鹿にする人がいたり、芸人と思われたりと、様々なことがあったのではないかと思います。普通に、進学して大学で研究を続け、学者への道を歩むというオーソドックスなやり方ではなく、全く独学でここまできました。「好きこそものの上手なれ」という諺を思い出しました。

☆レティシア書房・夏季休業のお知らせ  

勝手ながら9/11(日)〜15(木)休業いたします。よろしくお願いします。

 

 

Tagged with: