本日で「夏の古本市」は終了です。毎日、古本市に出品されている本を紹介してきました。各お店から、本が届くと、これは店で買おうととか、自分で読もうかと思う本が沢山あります。しかし、古本市が終わりに近づくに連れて、そんな目星を付けておいた本は、ほぼ買われているのが現状です。(まさか、初日から当店が抜くわけにもいきません)でも、それでも残っているのもあり、お〜ぉ、残っていてくれたのかと、買ってしまいます。で、本日は今回ゲットしたものをご紹介します。

村上春樹のギリシャ・トルコ辺境紀行を、ギリシャ編、トルコ編に分けて、松村映三の写真と一緒に収録したのが「雨天炎天」(らむだ書店/新潮社)です。春樹の紀行は、どれも良くて、私は長編小説より好きです。本作も、文庫本では読みましたが、箱入り2冊セットものは、あまり見ません。北部ギリシャからトルコ最深部へと旅する作家と写真家のハードな旅をまとめたものです。修道院に泊まりながら、ひたすら歩くギリシャ編、その一方で四駆の車で埃だらけの街を疾駆して、兵隊と羊がやたらと目立つトルコ編。喉が渇いてくる辺境踏破物語です。

 

「京都市中京区の千本通りで、千本座という小さな劇場を営む牧野省三は、巡業映画の横田商会を営む横田永之助から映画作りを頼まれた。明治四十二年十月十七日早朝、牧野の数人の撮影隊は、劇場裏の大超寺の境内で横田がパリで買い求めたパテのカメラを回し始めた。」

これ、都筑正昭著「シネマがやってきた」(町家古本はんのき出品/小学館)の一部分です。映画機材が日本に入ってきて、日本映画の曙とも言える時代が始まります。そんな時代を走り抜けた愛すべき活動屋たちのドラマを描いた一冊です。小説並みに面白い!

 

えっ。こんな表紙で、この作家の本??と不思議に思っていたのが、小沼丹の「お下げ髪の詩人」(葉月と友だち文庫出品)です。ユニークで、文学愛好者にはファンの多い幻戯書房が出版したもので、小沼の未刊行少年少女小説集です。1950年代から60年代にかけて少年少女雑誌に発表したものを中心に組まれたアンソロジーです。渋い小説の多い小沼のみずみずしい恋愛小説って興味湧きませんか? また、表紙も小沼らしくないところがいいです。

 

連日38度という猛暑の中、お越しいただいたお客様、お忙しいところ選書していただき、本をお送りいただいたお店の皆様、本当にありがとうございました。当店は、明日より23日までお休みさせていただき、24日より「新・荒野の二人展」が始まります。こちらも、よろしくお願いいたします。

 

 

 

第八回の「夏の古本市」も、いよいよ明日が最終日(18時まで)。というわけで「『夏の古本市』こんな本あんな本」も本日が最終回となりました。紹介した本が次々と旅立ちました。読んでいただきありがとうございました。

小島信夫著「こよなく愛した」(らむだ書店出品/講談社2200円)。個人的読書体験ですが、小島の本は最初に全3巻にもなる「別れる理由」にチャレンジして、途中で挫折して以来、読んでいませんでした。老夫婦の暮らしに流れる孤独、不安、そして愛すべき人生を綴ったエッセイのような短編集ですが、一筋縄でいかない所が、小島の世界です。この人の小説って、スルスルとは読めません。会話のズレや、食い違いを楽しみましょう。最晩年に書かれた「養老」は、かなりユニークな小品です。

文芸評論家の饗庭 孝男が、京都の古寺を歩いて、その風景を綴った「中世を歩く 京都の古寺」(本は人生のおやつです出品/小沢書店1000円*著者献呈署名本)は浄瑠璃寺、神護寺、仁和寺などの古寺を歩きながら中世文学と思想への思いを込めながら、思索したアカデミックな一冊です。

「灰色の空から雪が舞い落ちてくる。その白さに咲きはじめた梅の紅色が入りまじり、黒ずんだ北野の御社の堀がその背後の幻想のようにうかんでいる。これは二月も半ばの、昔からの北野の風景であるが、本殿に続く石畳の道をわが子の合格を祈る母たちが足しげく通ってゆくのは今日の風景であろう。」

で始まるのは北野神社の風景です。観光客でごった返す昨今の古寺の風情と違う、静謐で、ゆっくりとした時間の流れる古寺を著者と共に散策するような名著です。

誰これ?という興味津津の本がありました。若林純著「謎の探検家菅野力夫」(徒然舎出品/青弓社800円)。明治末から昭和初期にかけて世界中を探検した男です。表紙(写真左)のように、探検家ルックでポーズを取り、手には骸骨を持っている姿を写真に撮り、それを絵葉書にして売っていた男。経歴不明、どんな探検を行ったのかも明らかになっていない菅野に興味を持った著者が、彼の足跡を丹念に追いかけるノンフィクションです。彼の撮ったフィルム5700枚、探検旅行を集めたアルバム20冊、膨大なスクラップに旅の記録。膨大な資料の山に挌闘しながら、この怪人の姿をあぶり出していきます。

絵葉書コレクターの間では、菅野の絵葉書は有名なのだそうです。

★「夏の古本市」は明日18日(日)の18時まで開催しています。

勝手ながら、19日(月)〜23日(金)まで休業いたします。

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ、夏の古本市も残り三日。極めて安い本もあって、まとめ買いの方もおられます。まだまだ、掘り出し物があるみたいですよ。

どこの古本市でもそうですが、ちくま文庫が狙い目です。え?この価格で!というものを見つけると嬉しくなってきます。今回もありました。古今亭志ん朝の「風流入門」(待賢ブックセンター出品/100円)。日本の風流を、小唄、和歌俳句、芝居などの言葉から選び、粋な調子で志ん朝が語ってゆきます。

同じく、ちくま文庫の野原一夫「人間檀一雄」(待賢ブックセンター出品/500円)は、あんまり見ない一冊ですね。放浪の一生だった檀一雄と長年接してきた著者が、坂口安吾、太宰治らとの親交や、名作「家宅の人」のバックグラウンドを語ります。この小説の主人公矢島恵子のモデルになった入江杏子にも会い、檀がのめり込んでゆく様を見つめています。無頼派作家というイメージとは違う檀一雄が立ち上がる作品です。

 

阿川弘之の「カレーライスの唄」(本は人生のおやつです出品/500円)は、会社倒産で職を失った主人公が、妻と協力して、美味しいカレーライスの店を開業させてゆく姿を描いたエンタメ小説です。かなりの食通で知られた阿川だけに、こういうテーマでは、極上の旨さで読ませてくれます。

「特製インドカレー百五十円、カレーライス百円、ドライカレー八十円」

1961年2月からスタートした新聞小説後半に登場する、二人のお店のカレーの価格です。平松洋子が解説で「カレーライスひと皿、きっかり百円の潔さ。船出したばかりの小さな店『ありがとう』の空気がぴんぴん跳ねて伝わってくる。」と絶賛しています。

こちらは文庫にしては、やや高いのですが、中々この価格では入手できません。殿山泰司「三文役者の待ち時間」(らむだ書店出品/1000円)。貴重なバイブレーヤー役者殿山は、独特の文体とセンスで多くの本出していて、私も持っています。この文庫は、2章に別れていて、第1章は70年代〜80年代、著者の愛するミステリ、ジャズ、映画を論じたもので、第2章「三文役者の待ち時間」は、単行本未収録を集めたものです。1980年から83年までのミステリー小説、映画へ遍歴を綴りながら、やっぱり役者稼業もおもろいもんやという心情を書いています。

最後にもう一点。神蔵美子の「たまもの」(林海寺社/300円)は、2002年に単行本で出た時に衝撃を受けました。私的フォトドキュメンタリーの傑作です。元夫(評論家の坪内祐三)と別れ、新しい恋人(作家の末井昭)と一緒になった神蔵は、元夫との『特別な関係』を持ったまま、三人の奇妙な生活を送っています。このまま続いてゆくと思っていた関係が壊れてゆき、変わりつつある男たちの自我と自分の自我をファインダー越しに見つめたもので、写真と日記で構成されています。末井昭の作品の映画化で主役を演じた柄本祐が「読み応えが、凄いっす!」と帯に推薦文を書いています。ホントその通りの一冊ですよ、これは。

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(最終日は18時まで)

勝手ながら、19日(月)〜23日(金)まで休業いたします。

 

台風が近畿地方に近づきつつある不安定な天気ですが、古本市は今日も開いております。

京都市左京区にある書店「ホホホ座」は、本好きなら知らない人はいないほどの有名店です。絵本「やましたくんはしゃべらない」(葉月と友だち文庫出品/岩崎書店1000円)は、「ホホホ座」店主の山下賢二さんがユニークな自らの少年時代を描いた素敵な絵本です。彼は小学校に入学してから、卒業するまで学校内で一言も喋らなかったのです。別に病気だったわけではありません。絵を描いた中田いくみが、俺は喋らないと決めた山下くんの表情を生き生きと見せてくれます。固い決意で最後まで押し通す山下くんですが、卒業式の微笑ましく、ちょっと切ないエピソードが素敵です。著者のサイン入りです!

食に関する本は、今回参加しているどの店からも出品されているのですが、最もユニークだっだのがこれです。熊田忠雄「拙者は食えん!サムライ洋食事情」(榊翠廉堂出品/新潮社600円)。この本は、日本が開国し新しい時代を迎えた明治初期、海を渡った幕府の各使節団や、諸藩が海外に送った留学生たちが、初めて目にする洋食といかに向き合ったかを調べ、未知の食文化をどのようにして受け入れていったのかを描いたノン・フィクションです。

米と魚と野菜を食べて育ってきた彼らが、いきなりパン、肉、乳製品に出会った時には、とんでもないカルチャーショックを受けたと思います。著者は、そんな彼らの心情を丹念に拾い出していきます。拒否感の多かった西洋料理ですが、当時日本にはなかったアイスクリームだけは、「たちまち解けて誠に美味なり」と絶賛だったそうです。ユニークな視線で開国当時の歴史を見つめた一冊。

村山槐多と共に大正画壇で活躍し、20歳で亡くなった画家関根正二の生涯を追った「青嵐の関根正二」(徒然舎出品/春秋社600円)は、とてつもなく面白い本です。著者が村山槐多の作品を見に美術館に出かけた時、こんな経験をします。

「『俺を見よ!』 おかしい。ぼくの他には誰もいなかったはずである。横を向くと、黒っぽい服を着た三人の男女が描かれている一枚の肖像画があった。

『?』空耳だろう、絵がしゃべるはずがない、と思い直し、また槐多の絵の世界にひたっていると、今度ははっきりと聞こえてきた。 『俺を書け!』」

まるで小説の滑り出しみたいですが、これが著者と関根正二の出会いでした。「新宿鮫」でお馴染みの大沢在昌が、「この本にあるのは、純粋に、己が目で確かめようとする作家の姿勢だ。問いかけ、答を胸で喰み、さらに素朴に次の問いへの答を探してゆく。美術にはまったくの門外漢である私にも、目がはなせない。」と、帯に推薦の言葉を書いていますが、本当に目が離せない伝記です。

 

 

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(最終日は18時まで)

勝手ながら、19日(月)〜23日(金)まで休業いたします。

 

 

「夏の古本市」も後半に入りました。暑い中、遠方からもお越しいただきありがとうございます。多くの本が旅立っていきましたが、まだまだ面白い本があります。

天本英世という役者をご存知ですか。東宝の映画に数多く出演していた怪優です。戦争映画、怪奇映画、SFものなどジャンルを問わず、ワンカットでも強烈な存在感がありました。彼は、またスペインの詩人ロルカを深く愛する人で、「スペイン巡礼」というエッセイを出していますが、それから2年後に出された「スペイン回想」(テルミネス出品/500円)は、彼のスペイン文化、人々への愛情が込められた一冊です。私は天本のファンだったので、彼が登場する映画があれば熱心に見ていました。「スペイン巡礼」も以前に読んでいましたが、この国への深い思い、フラメンコへの限りない情熱等が蘇ります。ロルカの詩をスペイン語、日本語両方で朗読できる稀有な役者です。

当店でも人気の作家山尾悠子は、シュールレアリスム芸術に強い影響を受け、詩的な文体で幻想的な異次元ワールドを作り出し、最後にはその世界を崩壊させるという作品を送り出してきました。「夢の棲む街/遠近法」(古書柳出品/三一書房2500円)は、あんまり目にしない一冊です。私は文庫版で読みましたが、表題作の「夢の棲む街」は難解な作品でした。「<腸詰宇宙>(とその世界の住人は呼んでいる)は、基底と頂上の存在しない円筒型の塔の内部に存在している。」で始まる「遠近法」のイメージが、無限大に拡散してゆく世界に頭の中がクラクラしつつ、山尾的なSF世界を楽みました。長野まゆみファンは必読です。 

集英社創業85年企画として出された全20巻「戦争と文学」。第9巻「さまざまなな8・15」(半月舎出品/集英社2000円)は、このお盆休みに読んでおきたいアンソロジーです。敗戦が確定した8月15日を境に日本は大きく変わっていきます。敗戦の衝撃、今まで信じていたものが崩壊してゆく様を様々な作家が描いています。中野重治、島尾敏雄、林芙美子、井伏鱒二、太宰治、茨木のり子など、多彩な作家の作品が選ばれています。同封されている月報では、安野光雅の「絵という旗印のために」というインタビューが収録。太平洋戦争開戦時、15歳だった著者の戦争体験を読むことができます。敗戦記念日には、この本ですよ。

できることなら全20巻読破していきたいと思える程に魅力的ラインナップです。

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(最終日は18時まで)

勝手ながら、19日(月)〜23日(金)まで休業いたします。

 

 

絵本もたくさん出ています。

まずは、姫路の絵本専門店「おひさまゆうびん舎」の箱から、二点ご紹介。福音館が発行している「月間たくさんのふしぎ」は、こんな作家が、へぇ〜、こんな画家が参加しているんだと、驚かされる号がよくあります。1982年10月号「宇宙のつくりかた」(おひさまゆうびん舎出品/400円)は、文は池澤夏樹、絵は佐々木マキ担当という豪華布陣です。これは、ほんとに面白い!

続いて、長谷川集平の「あなに」(おひさまゆうびん舎出品/解放出版社/600円)。1976年、長谷川が「はせがわくんきらいや」を発表した時に、出版された谷川俊太郎(作)・和田誠(絵)のコンビで発表された絵本「あな」。この本へのオマージュとして2015年に出されたのが、「あなに」です。「集平さん、素敵な返球ありがとう!穴に埋められた40年の年月が、絵本の中で今日の青空に溶けていきます」と、帯に谷川が書いています。素敵なラストに、込められた思いを知るためにも、谷川の本も読みたくなります。

なんとゲーテ作「ファウスト」(徒然舎出品/西村書店800円)も絵本になっていた!戯曲「ファウスト」は、ご存時の通り、悪魔と契約し自分の魂と引き換えに、やりたい事を好き勝手にやった男の物語です。ファウスト博士、悪魔メフィストが繰り広げる人生の悲喜劇を、細密なウラウス・エンジカートが描いた、大人が楽しめる絵本です。
これを絵本と呼んでいいのかわかりませんが、ジャン・コクトーの「おかしな家族」(古書ダンデライオン出品/講談社800円)は、コクトー唯一のファンタジー作品として有名な作品です。彼が59歳の時に書いたこの本には、太陽と月の夫婦、悪ガキ達、ユーモアいっぱいの犬の家庭教師が登場して、ナンセンスで、不思議な物語を展開していきます。コクトーの卓越したセンスで描かれたデッサンが洒落ています。

エリック・カールの「カンガルーの子どもにも、かあさんいるの」(にゃん湖堂 出品/偕成社500円)は、さすがに魅力的な色彩が素敵。デフォルメされて描かれた動物たちが独特の躍動感を与えていて、楽しくなります。翻訳は佐野洋子です。

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

その後19日(月)〜23日(金)まで休業いたします

 

 

本日、ご紹介するのは池澤夏樹「異国の客」(マヤルカ古書店出品/集英社350円)です。池澤が、フランス在住時代に書き留めた文章を単行本にしたもので、その時代の彼の思索の跡を辿る一冊です。元々、雑誌「すばる」に連載されていて、当時から少し読んでいました。フランスに暮らしながら、日々感じたこと、発見したことが理知的に表現されていて、小説とはまた違う顔を見せてくれます。

「形ばかりの仲良しごっこや、歯止めのない妥協に実効的な意味はない。次々に生じる意見の相違、利害の対立、感情的反発を一定の範囲内に収める。そのために普段から行き来して互いを知る。ある意見が相手方から出てきた時に、その背景まで理解するよう努める。どんな場合にも突き放さない。敵対しかねない相手を理解しようとする努力も姿勢そのものが一つのアピールである。平和というのはそういう手間の成果だ。」

言いたい事だけ言い放ってしまう首相に聴かせたいものです。

このタイトル、なかなか人前では言えません、という衝撃的な小説こだま著「夫のちんぽが入らない」(古書星晴堂出品/扶桑社600円)は、タイトルと中身のギャップがすごい小説です。知合いの新刊書店の方に感想を聞いた時、これはいい本ですというお答えでした。20年に及ぶ夫婦の傷だらけの人生を丸ごと描き出した物語で、強靭な精神に感動します。

「ちんぽが入らない人と交際して二十年が経つ。もうセックスしなくていい。ちんぽが入るか入らないか、こだわらなくていい。子供を産もうとしなくていい。誰とも比べなくてもいい。張り合わなくていい。自分の好きなように生きていい。私たちには私たちの夫婦のかたちがある。少しづつだけれども、まだ迷うこともあるけれど、長いあいだとらわれていた考えから解放されるようになった。」

自分の好きなやり方で生きて何が悪いねん、という社会の常識への批判がこの過激なタイトルに現れています。出産が女性の仕事と言い放つおバカな政治家の鼻先にぶら下げたい本ですね。

 

もう一点、女性が、自分の身体について書いた本を。内澤旬子「身体のいいなり」(林海寺社出品/朝日新聞社300円)です。38歳で乳癌と診断された著者は、癌治療の副作用を和らげるつもりで始めたヨガで、全く予想もしていなかった体質の変化を経験し元気になります。乳腺全摘出を決断し、その後の乳房再建手術で、彼女が見つめたものとは……..。癌の診断以降、何故か健やかになってゆく自分を見つめたエッセイです。

 

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

その後19日(月)〜23日(金)まで休業いたします

 

 

 

 

 

 

はしだのりひこという名前を聞いて、「帰ってきたヨッパライ」を歌っていたフォークシンガーと即答できる方は、50代より上の世代ですね。1945年京都生まれ、北山修、加藤和彦らとフォーククルセイダーズを組み、一世を風靡したバンドのシンガーソングライターです。彼が、主夫業に奮戦した日々を描いた「お父さんゴハンまーだ」(半月舎出品/教育史料出版会500円)は、まだ「主夫」なんて言葉のなかった時代のお父さんの姿がユーモアたっぷりに描かれています。

「子どもの成長によって親が成長する”育ちあい”  いまからでも遅くない。お父さんたちよ、家に帰ろう! そして、家庭にあっても、父親としての企業努力にめざめよう!」

という言葉は、時代を先取りしていましたが、残念ながら2017年にこの世を去りました。

オモロイ個展の図録やなぁ、と思ったのが「ザ・タワー都市と塔のものがたり」(古書柳出品/大阪歴史博物館2500円)です。この展覧会は、2012年2月〜5月に東京都江戸東京博物館で、同年5月〜7月に大阪歴史博物館で開催されました。19世紀から20世紀にかけて、三つの都市パリ、東京、大阪に誕生した塔を中心に、各地の塔と都市がどう結びつき、発展していったのかを考察するものです。パリのエッフェル塔、東京の凌雲閣そして、大阪が誇る通天閣が、写真、絵画、図面等の資料を駆使して丹念に論じられてます。昭和18年に近隣の火災のために、通天閣も延焼し鉄骨が歪み、解体されて300トンの鉄の塊になった通天閣は、軍に鉄骨として供出されますが、利用されることなく明石の浜で風雨に晒されていたそうです。

東京タワーの特集で「たそがれの東京タワー」というタイトルの映画ポスターが登場します。大映のメロドラマ。主題歌はフランク永井「たそがれのテレビ塔」って知ってる人いらっしゃいますか?

萩尾望都が、「残酷な神が支配する」「あぶない丘の家」を雑誌連載していた超忙しい90年代前半に、角川書店の雑誌「The Sneaker Special」に書いたSF小説4作品を単行本にした「ピアリス」(本は人生のおやつです出品/河出書房新社700円)はファンなら見逃せません。発表当時は、「木下司」というペンネームで発表していました。残念ながら、この雑誌は4号で廃刊になり、小説もそこでストップしてしまいました。この単行本には、40点のイラストが収録されています。

 

 

 

 

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

その後19日(月)〜23日(金)まで休業いたします

 

 

岩波書店が、1985年に発売を開始した全8巻「講座日本映画」の、第1巻「日本映画の誕生」、第2巻「無声映画の完成」、第3巻「トーキーの時代」(思いの外出品/岩波書店各800円)。今村昌平、佐藤忠男、新藤兼人、鶴見俊輔、山田洋次を編集委員に迎えたこのシリーズは、日本映画の歴史を研究するのには、最適のシリーズです。特にこの三巻は、日本映画の始まりの頃をテーマにしていて、見たこともない作品や、当時の映画ポスター、役者の写真などが数多く使われていたり、興味深い内容になっています。

「日本の映画事業が、その出発の早々から、やくざと交渉を持たなければならなかったということは、日本映画のあり方に大きく影響していることである」という第1巻に収録されている佐藤忠男の「日本映画の成立した土台」という論考など面白いです。(本シリーズは現在絶版)

映画本の次にご紹介するのは、写真についての本です。小久保彰著「アメリカの現代写真」(空き瓶 Books出品/筑摩書房2000円)は、現代写真の元祖ロバート・フランク、ウィリアム・クラインに始まり、60年代、70年代、多様に変化し続けてきたアメリカ写真界から、70年代後半のニューウェーブ派の活躍を経て、80年代の姿までをパースペクティブに見つめた一冊です。ロック、ジャズのレコードを集めているうちに、そこに使われた写真家の作品に惹かれてアメリカの現代写真に興味を持った私には、刺激的な一冊でした。個人的には、今も強烈な印象を残すのは、黎明期に活躍したウィリアム・クレインでしょう。彼の「ニューヨーク」は、まるで映画のワンカットを見ているみたいです。

 

 

 

3冊目は、佐々涼子の「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」(とほん出品/早川書房500円)です。これは、感動しました!2011年3月、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑み込まれ、機能停止し、出版社への紙に供給が止まってしまう。その危機の中、半年後には復活するという工場長の宣言のもと、とんでもない闘いの日々が始まります。食べ物も十分ない、電気、水道、ガスの供給もままならない状態での手探りでの作業、さらには本社との葛藤と、もうデッドエンド直前の状態です。紙の本を待っている読者のためという目的のためにだけ悪戦苦闘した現場の人間の挫折と希望を描いたノンフィクションです。本に関わる人、本を読む人には、ぜひ読んでほしい一冊です。

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

その後19日(月)〜23日(金)まで休業いたします

 

 

 

 

本日よりレティシア書房「夏の古本市」がスタートしました。本日先ず紹介するのは、らむだ書店さんが出品している武井武雄の画集三点です。

童話の挿絵として軽視されていた子供向けの絵を「童画」と命名し、芸術の域にまで高めた武井武雄は、今も大人気の作家です。今回出ている本は全て限定出版で、ネットではかなりの高値で取引されています。

昭和39年に発行された豪華版「武井武雄童画集」(らむだ書店出品/盛光社/7000円)は、35cm×30cmの大型の版型の画集で、1000部限定の452番目のシリアルナンバーがついています。50年代から60年代にかけて描かれた絵が、16枚。一枚ずつ貼り付けてあります。2点目は「廃園の草」(らむだ書店出品/中央公論社/5000円)で、著者サイン入りです。こちらも限定680部の販売です。最後の一点は、「昼の王と夜の王」(らむだ書店出品/筑摩書房/7000円)。二重函入り、起毛クロス装、「昼の王」と「夜の王」の紙、印刷方法が使い分けられ限定1000部発行で693番目のシリアルナンバーが記載されています。どれも、決して安い本ではありませんが、武井ファンは是非、この機会にお買い求めください。

京都新聞を読んでいる方は沢山おられると思いますが、新聞の夕刊に「現代のことば」というコーナーがあります。京都在住の文化人に、テーマを設けずに、自由にエッセイを書いてもらうコーナーで、田中美知太郎、貝塚茂樹らの人文学者、末永博、猪木正道らの社会学者、志村ふくみ、八木一夫らの芸術家、瀬戸内寂聴、邦光史郎らの小説家、さらには片岡仁左衛門、桂米朝らの芸能人までが書いています。1966年からスタートし、95年までの30年間に掲載されたものの中から、180篇を選んだのが「現代のことば1966-1995」(古書ダンデライオン出品/700円)です。知の巨人たちの時代へ投げかけた言葉を一気に読めるアンソロジーです。(もちろん絶版です)

 

京都在住のエッセイストといえば、人気のあるのが山田稔です。彼の作品も二点出ています。「幸福へのパスポート」(古書柳出品/1000円)、「影とささやき」(古書柳出品/500円)とリーズナブルな価格設定です。前者は、特に彼のフランス留学時代に出会った様々なふれあい、情景を見事に描きこんだ散文の傑作。オススメです。

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

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