「女子の古本市」本日最終日となりました。ご来店いただいた皆様、本当にありがとうございました。今からだと間に合わないかもしれませんが、最後まで素敵な本をご紹介します。

これは美しい!と目を見張ったのが。豊岡東江画による「花時」(1600円/出品・クロアゼイユ)です。豊岡東江は、明治10年生まれの画家で、狩野派の技術を身につけて、特に自然描写に優れていました。彼女が描いた植物写生画600種をオールカラーで収録しています。春夏秋冬別に分類されていて、それぞれに解説が付いています。我が国の植物がいかに豊かであるかを、再認識しました。

明治生まれの土門拳は、日本を代表する写真家であることは誰もが知っています。土門の写真の大きな流れに、リアリズム写真と、古寺巡礼写真があります。その二つの流れを交差させながら、土門写真の本質に迫っていったのが岡井耀毅「土門拳の格闘」(1100円/出品・半月舎)です。土門の写真を見ていると、彼とは正反対の演出写真を撮り続けていた植田正治をどう考えていたのかが気になるのですが、本書に「植田正治の演出写真を認めながらも、土門拳の本意は、ドキュメンタリーの本質としての真正リアリリズムを『日演出』のスナップ的手法においていることが看取され、はやくも『絶対日演出』を唱えた萌芽があらわれてきている」という、若き日の土門を捉えた文章に出会い、納得しました。

絶版になった名作絵本ジョン・バーニンガム著、谷川俊太郎訳の「コートニー」(1500円 /出品honeycombBooks)は、名作に相応しい絵本です。野犬収容所の収容されていたコートニーという犬が主人公です。。コートニーがある家族にもらわれて、その家で料理を作ったり、家事をしたりします。家火事が起こった時も、赤ちゃんをひょいと救い出すスーパー犬です。しかし、ある日ふと姿を消してしまいます。老犬だったので、おそらく死んでしまったのでしょう。この絵本、ここで終わりではありません。そのあと、この家族に起こった不思議な出来事!泣かせますね。

最後にご紹介するのは、本の中身ではありません。佐野繁次郎の装幀です。梶山季之「虹を掴む」(700円/出品・榊翠簾堂)、酒井博六「ピラミッド」(700円/出品・榊翠簾堂)。

✳️「女子の古本市」は本日18時で閉店いたします。なお、明日から20日(水)まで臨時休業いたします。

 

いよいよ古本市も明日まで(最終日は18時閉店)。連日、多くのお客様にご来店いただきありがとうございます。だんだん残り少なくなってきましたが、まだまだ面白いものがあります。

雑誌「ブルータス」がまとめて出品されています。(各100円/出品・AMANATOU)面白い特集のものばかりです。「泣ける映画」「映画監督論」「ブルータスのスタジオジブリ特集」といった映画関連。「オトナのマンガ」「今日の糸井重里」「世の中が変わるときに読む263冊」といった本関連。「最高の朝食を」「美味求真」などの食関係のものなど各種あります。私もこの雑誌は、企画が面白い時にはいつも買っています。そして、必要なところだけ切り取って保存しています。切った貼ったして、オリジナルのブルータス作ってみてはいかがでしょう。

映画好きに「円谷英二特撮世界」(800円/出品・星月夜)。円谷は初代ゴジラの産みの親にして、日本特撮映画を立ち上げた巨人です。小中学校時代、夏休みとお正月に東宝系劇場で上映されている円谷映画が楽しみで、どれほどのワクワクして観たことか。彼のSF映画で過ごした少年少女には、懐かしい気分にさせてくれます。この本で初めて知ったのですが、彼が特撮を担当した、殺人鬼を描く「虹男」という1949年の作品は、日本初のパートカラー(一部だけカラーになる映画)作品でした。特撮映画の神様ですが、妙にエロティックなシーンを作る人だったみたいで、子ども心に”萌えました”

 

洋書と日本語版を一緒にした絵本が出ています。アンジェラ・マクアリスター文、アンジェラ・バレット絵による「氷の宮殿」(2冊セットで1000円/.出品・葉月と友だち文庫)です。昔、冷蔵庫のなかった頃、ヨーロッパの屋敷には氷を蓄える蔵があり、その一部は地下に作られて、太陽の光を完全に遮って、一年中氷を蓄えることが可能だった時代のお話です。洋書と日本版の紙質、インクの違いなど見比べてみてください。

⭐️休業のお知らせ 

勝手ながら、2月18日(月)〜20日(水)連休いたします。

 

 

 

犬猫の写真集って、どれも似たり寄ったり。でも、エリオット・アーウィットの「我々は犬である」(600円/出品・橘史館)は、傑作です。多くの名カメラマンが集まるマグナム・フォトのメンバーのアーウィットだけに、犬と街角、犬と人の関わりを見事に捉えています。可愛く、健気で、どこか寂しげな犬たちの表情がなんともいい。どの写真も魅力的ですが、私のお気に入りは、1986年中国で撮られた1枚(P128)、野性味がある精悍な犬の姿です。こういう古風な佇まいの犬っていいな〜。ところで、裏表紙の写真が、犬の格好して、お立ち台に上がっている男性なのですが、これってエリオット・アーウィットなのでしょうか?案外、ベストな作品かも……..。

小谷野敦の「忘れられたベストセラー作家」(800円/出品。半月舎)は、ちょいと違った視線から眺めた文学史で、肩の凝らない本です。話は明治時代の新聞小説から始まります。漱石や藤村が新聞連載小説を書いていたので、新聞小説=文学作品というイメージがありますが、実はそのほとんどが通俗小説で、今はもう忘れられた作家ばかりなのです。樋口一葉にしても、家計を助けるために小説家になろうとしたので、「新聞小説家の半井桃水に入門したのは、『たけくらべ』の様な『芸術小説』を書くつもりだったのではないのである」と著者は推理します。面白いのは、戦後のベストセラーで、”呪われた”になってしまった臼井吉見の「事故のてんまつ」です。これは、1977年自殺した川端康成の、自殺の原因に迫った内容なのですが、川端家からクレームが出て話の雲行きが怪しくなります。川端自身のルーツに関わることで、名誉毀損に当たると民事訴訟に持ち込まれ、敗訴、絶版にされてしまいます。こんな話、今でもよく新聞ネタになっていますが、昔からあったのです。

 

✨話は変わりますが、昨日人気イラストレーターの佐藤ジュンコさんが来店されました。現在、「マヤルカ古書店」で開催されている個展のために来京されているそうです。ミシマ社から出ている彼女の著書「佐藤ジュンコのおなか福福日記」(1620円)、「佐藤ジュンコのひとり飯な日々」(1080円)にサインと可愛いイラストを書いていただきました。ジュンコファンの方はお早めに(各一冊のみです)

 

 

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これは、絶対買い!というのが、松本大洋「ルーヴルの猫」上下セット(1500円/出品1003)。このコミックは、ブログでも以前に紹介しました。ルーブル美術館に住んでいる猫たちと、不思議な少女のお話です。ラスト、新しい世界に一歩踏み出す一匹の猫の姿が、眩しく輝きます。「ピンポン」時代の松本の躍動感あふれる画風も大好きでしたが、谷川俊太郎と組んだ「かないくん」、くどうなおこと組んだ「『いる』じゃん」辺りから、繊細なタッチの雰囲気や深い物語性が押し出されていて、この「ルーブルの猫」は、そんな今の松本の実力を発揮した作品です。ファンタジー文学の香りあるれる本です。

岡部伊都子の作品をまとめて出されている中に、めずらしい一冊がありました。「自然の象」(600円/出品・徒然舎)です。1974年から読売新聞で連載の始まったエッセイの79年のテーマが「自然の象」でした。それをまとめたのが本書です。

「鴨川大橋を渡っていて、南の空に長く連なる白いうろこ雲を見た。 さっさと刷毛で描いたようなリズミカルな白い斑点。なかには息づくばかりの筆勢のかすれや。渦巻の濃淡などがあって、この中空の巻積雲は、見飽かぬ造形の妙に秋を象徴する。鰯雲とも、鯖雲ともよばれる、美しい秋雲の相(すがた)だ。」

こういう文章を読んでいると、それだけで心 が落ち着いてきます。川西裕三郎によるモダンな感覚の版画が数多く使われています。カバーの「星空」という美しい作品も本書の価値を高めていると思います。

恐らく、私家版だと思いますが、古書市ならではの珍しい本が、写真家藤井保の「熊楠残像」(2200円/出品・ますく堂)です。和紙の表紙を開けると、飛び出すのが熊楠のデスマスク!その後に続くのが熊楠のコレクション、ヒキガエル、ヨウジウオ、ミミガイ、ハマガニ、イモリなどを撮影した標本写真。中上健次の序文が付いているだけの本ですが、各地の古本屋さんの在庫をチェックしてみると、売り切れが多く、一店だけ2500円つけていました。本の大きさは385mm × 265mm × 6mm と大きめです。

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「女子の古本市」には、料理関連の本が毎回沢山出ます。本日は、そんな本をご紹介してみます。

先ずは、ちょっとひねった一冊。ジョン・フィッシャー作「アリスの国の不思議なお料理」(1000円/出品・明楽堂)です。中身は「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」に出てくる食べ物を作ってみるとどうなるという発想で書かれた、空想レシピ本です。「鏡の国のミルク」「かんしゃく持ちマスタード」「気違い帽子屋のドーナッツ」「小石もどきケーキ」など、一応レシピは載っていますが、読んで楽しむ料理本です。巻末にルイス・キャロルの「精神の栄養学」という講演が収録されています。キャロルファンには見逃せません。各料理の最初に挿入されているイラストも、奇妙で、不思議なものが多くあって、飽きません。「羊の脚のロースト」で、ラムローストが、二本足で立って、お辞儀をしているのには笑いました。

パン好きなら、ぱんとたまねぎ著「パン語辞典」(700円/出品・榊翠簾堂)です。パンの種類や、歴史などの基本的情報はもちろんのこと、パンに関わる言葉を集めに集めた本です。あいうえお順に並んでいます。「あんどーなっつ」の項目はこうです「パン生地に餡を包み油であげた球形のパン。平べったい形もあります。おすすめは、朝の5時に開店し、8時には閉店するという幻の『とらや』(北九州)のあんドーナッツ。一つ40円で、地元民は10個ぐらいまとめ買いします。」

さすが、以前パンのミニプレスを発行していた、ぱんとたまねぎさん!「し」の項目に「死のパン」という不気味なパンが登場します。曰く「紀元前2400年〜1250年の間にエジプトで作られていたパン。亡くなった方の、死後の生活のためにとパンをお墓の中に入れていました」それって、酒好きの人の墓前にビールをそなえると同じ発想でしょうか。

「京都」という項目が「き」にあります。中身は、京都人ならよく知っていることです。

最後に「みんなの朝ごはん日記」(700円/出品・honeycombBOOKS)という利用度満点の一冊。25人の朝ごはん写真日記です。写真を公開している人たちの簡単なプロフィールが記載されています。例えば、薬膳アドバイザーの香織さんは、平日の朝ごはん作りの時間は20分、休日は30分というスタイルで、野菜中心の食卓を見ることができます。トマトの水分だけで煮込んだ無水カレーが美味しそうでした。

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「すべての若者に捧ぐ」と帯に書かれた本、何だと思いますか? 「おじさん図鑑」(300円/出品・榊翠簾堂)という「おじさんになる前に、おじさんを知るべき」貴重な本。おじさんについて詳細なジャンル分けが楽しい。「普通のスーツのおじさん」に始まって、「お疲れのおじさん」「たそがれるおじさん」「ハイウエストのおじさん」「うるさそうなおじさん」等々、数十種類に区別されたおじさんが登場します。あ、こんな人いる、いるとページをめくり(もちろん自分のことは棚上げ)、著者のイラストレーターなかむらるみの、おじさんへの愛情が感じられるタッチのイラストに、笑いが出てきます。途中に挟み込まれるコラムもなかなかのもので、例えば「おじさんにモテる女性たち」にある、「気さくなねえさんタイプ」「むっちりダサめな影ありタイプ」「『おじさま』と言えるおっとりタイプ」には吹いてしまいました。著者曰く「かわいいおじさんとは、口元に締まりがあり、シャイな雰囲気を持っていること。」 これは、おじさんも若者も関係なく心がけたい。

先週の土曜日、左京区図書館で、装丁家の矢萩多聞さんとトークショーを行いました。

ご来店の折に何度かお話したことはあっても、特別親しい関係ではありません。それが、トークを始めるや否やポンポンと会話が繋がり、和やかに進みました。その多聞さんも執筆されている「本を贈る」(1200円/出品・葉月と友だち文庫)が出ています。昨年の9月に出されたばかりの新刊で、当ブログでも紹介しましが、いい本です。一冊の本が書店に並ぶまで、どれだけ多くの人が関わり、愛情を持って送り出しているのかが紹介されています。本を愛する者には必読の一冊です。

ご承知の方も多いと思いますが、多聞さんは、インドのタバブックスを日本に輸入し紹介しています。何故そんなことをしているのかを、「本を贈る」の中で書いておられます。そこで「小さな暮らし」について言及されていました。我々のトークショーの最後も、その小さな暮らし、或いは小商いの話で幕を閉じましたが、今回、再読して、多聞さんが語ったことを思い出していました。

哲学者ショウペンハウエルの「読書について」(250円/出品・緑の小道)の帯に、出品者が書いている言葉が付いています。「ちょっと毒舌?なぐらいの文章も、読んでいて、気持ちがよく、面白いです」と。今回、出品された文庫本の大半に、緑の小道さんは、オリジナルのブックカバーを付けてコメントを書かれていますが、そのコメントに惹かれて読んでみようかな、という気になります。もちろん、このカバー付きで販売しています。「読書について」のカバーでは、本書のこんな文章も紹介されていました。

「良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである」ごもっとも。年をとるとつくづくそう思います。

 

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書店に関係した本は、山のように出ていますが、海外の作家15人を集めたアンソロジーは珍しいのではないでしょうか。ヘンリー・ヒッチングス編集による「この星の忘れられない本屋の話」(1000円/出品・本は人生のおやつです)。編集者ヒッチングスが、作家たちに自分の人生のどこかで関わりを持った書店、あるいは古本屋にまつわる話を書いてもらいました。作家たちは、ウクライナ、コロンビア、旧ユーゴスラビア、中国、エジプト、インド等々世界各地から選ばれています。トルコ出身のエリフ・シャファクの「物語がわたしの故郷」にこんな羨ましい文章が登場します。

「フェリーに乗って行き来しながら、ヨーロッパ側の本屋では古典文学やアカデミックな本を買い、アジア側の本屋ではカウンターカルチャー系の本屋雑誌やファン雑誌を入手していました。」

フェリーに乗れば、アジア側にも、ヨーロッパ側にも行けるイスタンブールならではの地理的メリット。作家を育てたのは、街の本屋だったんだ、と納得の一冊でした。

以前、ブログでも確か紹介した雑誌「MONKEY」の「音楽の聞こえる話」(400円/出品・クロアゼイユ)は、私には価値のある一冊でした。今、最も好きな作家小山田浩子に出会ったのが、この雑誌に収録されている「動物園の迷子」でした。見当がつかない小説とでも言いましょうか。まるで、文章の中で、こちらが迷子になってしまう物語なのですが、そのシュールで不思議な世界に浸っていると、何故か気分がいいのです。

柴崎友香に心引かれたのも、ここに掲載された「バックグラウンドミュージック」でした。葬儀のために、久々に故郷の島に戻ってきた姉と弟、二人の少しの時間を描いた短編です。この中に、姉のこんな独白があります。

「どこにいるにしても、なにをしているにしても、好きな音楽をかけられればいいと思う。好きな音楽が聞こえていれば、なんとかやっていける」

よくある台詞ですが、この物語の中では光り輝いていました。この短編を読んでから、柴崎の新刊は手にします。好きになれそうな作家に出会えるところが、文芸雑誌のいい所です。

 

人気作家酒井駒子の傑作絵本が、こんな価格で出品されています。「くまとやまねこ」(500円/出品・星月夜)、と「きつねのかみさま」(400円/出品・星月夜)です。「きつねのかみさま」は、公園に置き忘れた縄跳びを取りに行った二人の少女がみたもの、それは縄跳びで遊ぶきつねたち。彼らの輪の中にはいって一緒に遊ぶ少女。その躍動感、楽しさが魅力です。

2005年文春新書から出た「随筆 本が崩れる」で、本好きにはファンが多い草森伸一。彼の「随筆『散歩で散歩』コンパクトカメラの新冒険」(献呈著名入1400円/出品・徒然舎)は、「私の散歩癖は、今にはじまったことではない。子供のころから、ずっと続いている。」という書き出しから分かるように、散歩エッセイ集です。散歩の時は、必ずコンパクトカメラを持ち、好奇心の向くままシャッターをきった写真が添えられています。家が崩壊するほどの本を持っている著者だけに、随所に飛び出す文学談義が面白く読めます。

あとがきで小沢昭一が「この本は、散歩について、まったく散歩するように書いてあります。著者自らは『饒舌体』などとおっしゃってますが、私は『散歩体』と申上げたい。」と書かれています。なお、装画は長新太、装丁は矢吹伸彦という豪華メンバーです。

先日、訃報が伝えられた橋本治の本が2冊出ています。一冊は「『三島由紀夫』とはなにものだったのか」(1000円/出品・雨の実)、「浄瑠璃を読もう」(1200円/出品・半月舎)です。後者は雑誌「考える人」に連載していた当時から読んでいましたが、橋本の知識量、解説力に脱帽した記憶があります。浄瑠璃の本だからと言って、こ難しいものではなく、ウフフと笑える箇所もあります。

 

個人的に注目している漫画家に宮崎夏次系がいます。手塚治虫や石森章太郎に親しんできた人間には、この崩した線で描かれる人物造りに、拒否感もあると思います(私もそうでした)。しかし、「夢から覚めたあの子とはきっと上手に喋れない」(250円/出品・viola)は、世の不条理を描きつつ、明日の希望を登場人物たちが見つけてゆく素敵な物語です。本の帯の「言葉に出来ず葬ってきた感情に光をあてた」という言葉、上手いこと言うなぁ〜と感心しました。同じ作家の「僕は問題ありません」(250円/出品・viola)も出ています。

私の世代にとって、植草甚一は、アメリカ・ヨーロッパの新しい文化を教えてくれた人です。新しい映画も音楽もアートも彼の口から語られたものは、すべて観たい、聞きたいと思ったものです。1975年に出版した「いつも夢中になったり飽きてしまったり」(1200円/出品・榊翠簾堂)は最近文庫されましたが、彼のポップな感性と新しいものへの飽くなき好奇心を、読者に提供した傑作です。「やさしい本ばかり読んでいた」では、海外の雑誌やら洋書の面白さを教えてもらいました。ジャズ、ロックに興味をお持ちの諸氏にはこの本必読です。どれだけ多くのレコード買ったことか。

ますむらひろしが、宮沢賢治作品の作品漫画化したものは、さまざまな出版社から出ていますが、朝日ソノラマが賢治没後50年記念で出版した「賢治に一番近い」シリーズが、今回まとめて出品されています。「雪渡り+十力の金剛石」、「風の又三郎」、「銀河鉄道の夜(初期形)ブルカニロ博士編」、「銀河鉄道の夜」、「グスコーブドリの伝記」、「猫の事務所+どんぐりと山猫」(各1200円/出品・明楽堂)。大判のコミックなので、ますむらの細かいタッチもよく解ります。個人的趣味ですが、「銀河鉄道の夜」は「初期形ブルカニロ博士」の方が、感動的だと思います。ぜひこの機会に、初期形、本編とも読んでみて下さい。これら大型版はすべて絶版です。

もう一点ご紹介。ヘェ〜、五味太郎の俳句!と驚いた「俳句プラスアルファ象」(600円/出品・石英書房)。「冬の日は 帽子眼深かに 過ぎゆけり」「熔け崩れゆく 仕様にて角砂糖」「月の皿 銀の魚を盛りつけて」などの俳句に、彼のイラストを組み合わせた作品集です。

「春風は けものの腹のあたたかさ」 この作品集の中で好きな一句です。

日本文学好きなら、こんなアンソロジーは持っていたいシリーズでしょう。講談社文芸文庫が、全10巻で出した「戦後短編小説再発見」です。117篇の短編小説を集めたアンソロジーで、今回は、第1巻「青春の光と影」、第3巻「さまざまなな恋愛」、第4巻「漂流する家族」(各400円/出品・古本ハレクモ)の3冊が出ています。「漂流する家族」というテーマで集められた家族についての作品集が面白い。昭和27年発表の安岡章太郎「愛玩」、昭和29年発表の久生十蘭「母子像」、昭和30年発表の幸田文「雛」辺りの作品には、戦争の陰影が残っています。80年代に発表された尾辻克彦、津島佑子、千刈あがたらの作品は、現代の家族の姿が描かれています。ゾッとしたのが黒井千次の「隠れ鬼」です。

「夜の食事が終わると妻は家出をした」という書き出しで始まります。日常生活に潜む異界の物語です。

中々、こんな安い価格では出ないので、これを機に集めてみてはいかがでしょうか。

 

近藤ようこの漫画も何点かまとめて出品されています。最近では、「死者の書」や「夢十夜」など文芸作品の漫画化でユニークな作品を発表していますが、80年代から90年代にかけて出された、人生の孤独、憂い、そして優しさを描いた作品を集めたものも捨てがたい味わいがあります。80年代に書かれた傑作短篇を集めた「春来る鬼」(400円/出品・星月夜)、90年代に「通販生活」に掲載された短篇を集めた「アネモネ駅」(400円/出品・星月夜)は、オススメです。「アネモネ駅」の解説で、群よう子が近藤作品を「小さな心の痛みと大きな心の安らぎを与えてもらい、ほっとする」と書いていますが、その通りだなぁ、と思います。

写真家、森山大道が、80年代に刊行されていた写真雑誌「写真時代」に連載した自分の作品とコメントをまとめた「写真から/写真へ」(600円 /出品・にゃん湖堂)は、この写真家を知ることができる一冊です。著者は、当時のコメントはあまりに稚拙で、グチっぽいと自己批判していますが、「どうしようもない自分を抱えて、街に出ては写真を撮り、部屋にこもっては写真を思うという時間のなかにいることだけはたしか」とも書いています。この時代を丸ごと生きた写真家のリアルな姿が詰まっています。