先日、久しぶりにロマン・ポランスキー監督の「マクベス」を再見しました。

完成したのは1971年。ポランスキーの妻のシャロン・テートが、1969年LA自宅でパーティーの最中、チャールズ・マンソン率いるカルト教団に襲われ惨殺された事件の後に監督した作品だけに、血みどろで、陰鬱な「マクベス」でした。テートはポランスキーの子を身ごもっており、残されたポランスキーの深い悲しみは他人には理解できるものではありません。

ポランスキー版「マクベス」ですが、詳細な論評は山良君美の「セルロイド・ロマンティシズム」(文遊社1300円)をご覧下さい。

で、私がオヤッ?と思ったのはラストです。「マクベス」は王を殺して領主になった男が、王の元の家来達に追い詰めれてゆくのがストーリーです。大体、マクベスが王殺しに走ったのは、森に住む魔女の「あなたは王になる」という甘い囁きを真に受けたからです。その魔女の住まいが、映画ではラストに再び登場して、なんとそこに復讐を成し遂げた王の息子が佇んでいるもです。あたかも、魔女に自分の未来を占ってもらうかの様です。王位を巡って血と暴力は繰り返されることを予告するかの様なエンディングでした。

ラストは原作ってどうだったかと思い、何十年かぶりに再読したところ、そんなシーンはありませんでした。即ち、ポランスキーはマクベスの原作を借りて、人間は永遠に惨劇を繰り返すことを象徴的に描こうとしたのでしょう。

もう一作。ハーマン・メルビルの代表作「白鯨」の再映画化、ロン・ハワード監督作品「白鯨との闘い」は、公開された時、CGを多様したリメイクで、如何にも当世のハリウッドだなぁ〜と観に行かなかったのですが、完全に間違いでした。

これは、再映画化ではありません。なんと、小説の作者のハーマン・メルビルが登場して、白鯨に捕鯨船を木っ端微塵にさせられた乗組員の唯一の生き残りに当時の模様をインタビューし、その話を元にメルビルは白鯨を書いたということを映画にしているのです。

その乗組員の話、特に船をバラバラにされた後は悲惨の極みです。生き残るために衰弱した乗組員の肉を喰ったのですから。メルビルが「白鯨」を書いた切っ掛けが、この映画のような経験であったのかはわかりませんが、あの読みづらく長い原作を、こんな解釈で甦らせた監督の手腕はさすがです。

この映画もラストがお見事です。インタビューを終えて乗組員と別れる時に、大地を掘ったら油が出て来た、という話があるが信じるかと、メルビルが乗組員に訊いたところ、そんなことあるわけない、と答えます。捕鯨の時代が終り、石油の時代へと世界が変わる一瞬を捉えたシーンで、古色蒼然たる捕鯨の時代から、一気に現代へと引き戻されます。原作の「白鯨」とは、全く違う新たな世界を作りあげた傑作でした。やはり、映画を先入観で判断するのは良くないですね。

★2016年の営業を終了させていただきます。今年も大変お世話になりました。お越し頂いたすべてのお客様に感謝したします。また、ギャラリーで個展をして頂いた作家の皆様、本当にステキな作品をありがとうございました。

新年は1月5日(木)より通常営業いたします。来年もよろしくお願いします。(店長&女房)

 

食品産業の大手、ハウス食品の文庫ってご存知でしたでしょうか。昭和63年に「ハウスポケットライブラリー」として5点発行されました。編集はエッセイストの向笠千恵子。カバー裏には発行理由がこんな風に書かれています。

「日ごろおなじみの料理および素材にあらためてスポットをあて、独自の取材調査をもとに、『食』をさらに楽しくいろどる話題を提供させていただきたいと存じます。」

出版されたものは「水の美味帖」、「わさび讃歌」、「グラタンの食卓譜」、「唐辛子遍路」、「ゼリーぷるるん論」です。昭和60年代の本なので、料理本としては少し古い部分があるのは否めませんが、内容的には面白い読み物が一杯で、貴重な写真もありそうです。

例えば「水の美味帖」では「水と日本人と日本語と」というテーマで、水に恵まれた日本人の生活の中での、「水」を使った多くの言い回しが紹介されています。「関西の水事情」では、京都市の南にある御香宮の「御香水」が取り上げられていますが、ここの初詣姿はちょっと変わっていて、水の入るポリタンクや鍋など持参してお参りに来られます。水を汲んで、その水でお雑煮を炊くのが習わしだとか。今もその習慣って残っているんでしょうか?

「唐辛子遍路」は、唐辛子を巡る世界史、日本史、そして内外の地理を知ることができる一冊です。日本では江戸中期に全国に普及。平賀源内の著書「番椒譜」には、多くの七味唐辛子の品種があったことが記載されています。(その図案も見ることができます)また、この時代、江戸の街角で商いをしていた唐辛子売りの商売道具を入れた「かつぎ函」の貴重な写真を見ることができます。この号の後半は、国内外の唐辛子を使った料理のオンパレード。思わずビールが欲しくなってきます。昭和末の食文化を知るのには最適な文庫かもしれません。(各々500円)

そして、素敵な食文化を伝えるミニプレス「1/f」の3号が入荷しました。特集は「祝いと食卓」。「お祝いごとには、いつも食卓の風景が一緒です。その習慣やかたちは人それぞれ。いろんな場所から祝いの風景を切り取ったとき、食卓はどんな風景を見せているのでしょう。」という思いから、両者の関係を改めて見つめ直していく企画です。

その中に楽しそうなエッセイを見つけました。鈴木容子さんの「国分寺クッキーミュージック」。国分寺のある中央線沿いの面白い店が集まっている駅に降りてはウインドウショッピングをして、そしてリッキー・リー・ジョーンズ、ヴァシュティ・バニヤン、ノラ・ジョーンズなどの女性シンガーを聴いていた頃の思い出です。私も大好きなシンガーばかりなので、機会があったら彼女たちの音楽を聴きながら中央線に乗ってみたいです。

 

 

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12月29日〜2017年1月4日まで休業いたします。新年は1月5日から平常通り営業いたします。


 

 

 

 

 

ある日のこと。大手出版社、幻冬舎からお手紙が届きました。はてさて、こんな小さな書店に何用かと思って、封を切ると、牧野伊三夫さんの新刊のご案内でした。

牧野伊三夫さんは画家として、また美術系ミニプレス「四月と十月」の編集者として活躍されている方で、個展を観に行った時にお会いしました。そうか、大手出版社からも注目されているんだと驚き、早速注文しました。タイトルは「かぼちゃを塩で煮る」(1404円)。もちろん、絵もご本人が書いておられます。

「台所に立つことうん十年。頭の中には 寝ても覚めても 食う事ばかりー美味探求の記」と帯に書かれている通り、食に関するエッセイです。表紙に、美味しそうな濃い黄色のカボチャが描かれているとおり「かぼちゃの塩煮」で本は始まります。

小さい時、母親が作る砂糖醤油で甘辛く煮たかぼちゃが苦手だった筆者が、美味しそうなカボチャをスーパーで見つけて買おうか、買うまいか悩んでいたところ、「塩で煮たら美味しいよ」というお店の人の言葉に押されて塩煮に挑戦します。ここからわかるように、通り一遍のグルメ料理評でも、珍しい料理探して世界を駆け回る探訪記でもありません。

極めてフツーの家庭料理のことを綴った内容です。たまに出掛ける山歩きで、口に入れるキャラメルがいかに美味しいかとか。

「夏でも冬でも。夕食の食卓には炭火を使う。食卓の傍らに小さな七輪を置き、夏は羊肉やとうもろこしを焼き、冬は小鍋をかけて湯豆腐やとり鍋などをやる。」

これ、別に風流人を気取っているわけではなく、食事の間、炭が燃えているとホッとするという、著者の気分を文章にしてあるのですが、確かにチリチリと炭が燃えている横で食事をし、一杯やるといのは心落ち着く時間でしょうね。

日々の食事で、旬のものを口に入れてゆっくりと楽しむことをどれだけ出来るかが、人の幸せに繋がるということをこの本で示しています。冬の夜、鮟鱇鍋をすすっていると、「うまくて、おおうとため息が出る。」とありますが、「おおうと」という言葉に、満面の笑みを浮かべて鍋をつついている姿が見えてきます。

著者の本で、マイナー系出版社から出ている「僕は、太陽をのむ」(港の人1296円)は昨年刊行された文庫サイズの本ですが、こちらにはスケッチを含む多くの絵画作品が収録されています。私が好きなのは、「ある春の記録」と題された2011年の冬から春にかけての記録です。数ページに一枚のスケッチがレイアウトされていて、その絵を見ながら、文章を読んでゆくと、日々の何気ない時間に潜む幸せが染み込んできます。何も考えずに、ふらっと電車に乗って、四国までいった道中を描いた「喫茶セザンヌ」などは、あぁ〜こんな旅してみたいね、と思わせる文章です。

 

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「アカシヤの大連」で1970年の芥川賞を受賞した詩人、小説家の清岡卓行。詩情溢れる文体で詩と散文を構築した作家です。彼の死後、「猫の客」を書いた平出隆によって「純粋を貫いた詩家」と評されました。古い屋敷にやってきた猫の軌跡を、独特の感性で描いた「猫の客」で、平出に注目してから、この作家が高い評価をする清岡卓行も読んでみようかなと思いつつ、中々小説には手が出ませんでした。しかし、作家との出会いってあるんですね。

パリで、堂々たる景観を堪能して帰国した清岡が、帰国後、よく使う西武遊園地駅に降り立った時、こんな感想を漏らしています

「夕闇の中で降り立った西武遊園地駅が、実に鄙びて、可憐なほど小さく、つつましく見えたのである。東京の片隅のこの駅はこんなにも美しかったのか、と私は驚いた。すると、そのため新鮮なものにされた懐かしさが、心と体にしみとおってきた。この駅にはパリのどんな壮大な建物にも負けない魅力がある、と私は思った。」

この「郊外の小さな駅」が収録されている同タイトルのエッセイ、「郊外の小さな駅」(朝日新聞社600円)を読んだのが最初。この本は、新聞その他に掲載されていたエッセイをまとめたもので、多くの文芸批評、音楽批評があるかと思えば、東京ドームのオープニングゲーム「巨人阪神戦」を書いています。

「現在の先端技術の粋を集めて人口性の一極点を示しているといわれるこの建築は、外側の自然の雨や風などに対抗して、びくともしない晴朗を内側に秘めてこそ実地に冴えるわけである」と、詩人らしい文章で、東京ドームを讃えています。

清水が平出と会食するシーンが面白いです。最初は、彼の詩集に関する批評がメインテーマだっだのですが、だんだんと野球の話題へとシフトしていきます。草野球チームを持つ程の平出。東大在学中の1949年に、プロ野球の日本野球連盟に就職し、連盟分裂後はそのままセリーグ事務局に勤務して試合の日程編成を担当した清水も、当然のことながら、猛烈な野球ファン。二人の詩人による野球トークが、抜群です。因みに「猛打賞」を発案したのは清水です。

詩人として現代詩壇に登場してきた頃から、平出を認めていた清岡。新たな抒情を世界を作りあげた作家として清水岡を高く評価していた平出。詩を、文学を、そして野球を語り合うことができた素敵な仲間だったのかもしれません。

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「千年女優」、「東京ゴッドファーザーズ」、「妄想代理人」等のオリジナル劇場用アニメで一躍注目されながら、47歳でこの世を去った漫画家、今敏の「海帰線」(美術出版社/絶版1300円)が入荷しました。

海人の卵と言われる、未知なる生物の卵を守る青年の冒険を描いた作品です。衰退する漁業で過疎化する町で、明日の生き方も見えて来ない青年が主人公です。そこへ巨大なリゾート開発が進行します。建設反対、賛成に揺れる町の住民と、リゾート開発会社の思惑が複雑に絡み合う構図の中で、青年は卵に向き合います。海に還そうとする冒険ファンタジーとしても、海の神秘を描いた作品としても読めます。ラストシーンは、きっと映像化したかったに違いない、スペクタクルと美しさに満ちています

一途な青年の話の後には、劇作家の松尾スズキがストーリーを書き、エロ漫画を引っ張り続ける山本直樹が絵を書いた「破戒」(イーストプレス700円)は如何でしょう。狂気と抒情が交錯する奇妙な世界。吹き出す血しぶき、制御不可の暴力、そして歪な笑いが渾然となったコミックです。誰もいない学校のプールでセックスに耽る二人を描いたシーンは山本のエロス満開ですね。

「すいません血みどろで」「いいの、それでいいの」

で終わるスプラッタな状況ながら、静謐感に満ちたラストカットまで、目の離せないシュールなコミックです。

そして、ハードな作品の次は、山川直人の「珈琲色に夜は更けて」(角川書店600円)でブレイクなどいいかも。

現代が舞台ながら、山川は、70年代的四畳半フォーク時代を彷彿させる、生活模様や恋愛描写を得意とします。綿密な描き込みによる版画の様な絵とデフォルメされた人物像が特徴的です。この作品は、売れない漫画家が立ち寄る、様々なカフェで出会う、ほんの一瞬の細やかな物語です。煙草の煙と珈琲の湯気が、淡い幻想を作り出す不思議な世界です。なお、著者は珈琲を入れるのと、ボブ・ディランを聴くのが趣味です。

 

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1894年生まれの武井武雄は、童話の添え物扱いされていた子供向けの絵を「童画」と自ら命名して、芸術の域にまで高めました。大胆な構図、幾何学的な線が、モダンで奇妙な感覚を感じさせてくれる作品群は、今なお高い人気を保っています。

今回入荷した「青の魔法」(弥生書房/1992年発行/初版/帯付き1500円)は、詩人として、また思想家としての一面を捉えた本です。あとがきで、息子の三春氏が「今回おさめられた童画、版画、及びそれにそえられた詩の作品群は終戦後住んだ板橋区南常盤台で製作されたもので父の一生の中では比較的後半生の属するものである。」と語られています。本業は絵描きだが、武井の文章や詩は素晴らしく、創造は留まるところなくますます広く深かったようです。

童画に詩をつけた作品群の中の「落日」の詩は、

「朝日よりも夕日の方が 何かと人に語りかける。 だんだん小さくなって 遠くへ行ってしまう 太陽に人の心は いつまでもついてゆく 西方に浄土があるという のは満更嘘でもない。」

とくに難しい表現があるわけではありません。沈みゆく太陽に人は付いてゆくという見方はそのままイメージできます。

また「星曜日」ではこんなことを表現しています

「遠い星を見ている者は幸である。星に着陸してその無惨な肌にさわるものは不幸だ。もしも愛するものがあったなら遠くにおいて手を伸ばさない事にしょう。征服は又の名を惨敗という。仰ぎみよ、星はいつも君たちの上に居て、春夏秋冬はこの星空と、君たちのベッドとの間を静かに流れていく。星曜日こそ星空の最も美しい日なのだ」

なんて野尻抱影ファンなら、いいなぁ〜と思われるでしょう。この中に「征服は又の名を惨敗という」というドキッとするフレーズがあります。宇宙に進出することも、未開の大地を開拓してゆくっことも、それは人間にとって「惨敗」なのだという考え方は、極めて今日的ではありませんか。

昭和10年から、亡くなる直前まで、武井は小型の私刊本を、百数十冊製作しています。その中から、何点かが採録されています。グロテスクなんだけど、陰惨ではないお化けが登場する「お化け退場」(昭和34年)、88歳の時、製作した「鶏遣いの乙女」は、切り絵を手作業でやらずにレーザー光線カットで光線が自動的に抜いてしまう技術を駆使した実験的作品です。

昭和2年に出された児童書「おもちゃ箱」の中の作品群は、まさしく武井調の人物が並んでいます。これを説明できる言葉を私は持ち合わせていません。ぜひ、作品をご覧になって下さい。昭和2年にこんな絵を書いていたとは…..。武井は戦時中はどうやって暮らしていたんでしょう。生きにくい日々だったでしようね。

 

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「楽しい遊びじゃなきゃ農業自体いつまでたっても誰も関心なんか向けない。本業にする必要なんてない。ゴルフやスキーの代わりに、農業が趣味になってくれればいい。」

と、大胆だけど、いやごもっともという真っ当な事を言い切ったのは小倉崇。彼の著書「渋谷の農家」(本の雑誌社1300円)に出てくる言葉です。

彼は、なんと渋谷のど真ん中、ラブホテルひしめく道玄坂にあるライヴハウスの屋上に畑を作っています。この本は、どうして彼が渋谷で畑を作るようになったのか、全く農業なんて関係なかった男が農業に携わるようになったのかを書いています。

「都会と農村なんて堅苦しく考えず、もっと気楽に、自分たちの遊び場を作るくらいの楽しみ方で、都会の中の畑が増えていけばいい。きっと楽しいはずだ」(写真左が著者)

と思い立った著者は走り始めます。全国でユニークな農業を展開する人達のもとへ出向き、話を聞き、農作業を共にこなし、ネットワークを作っていきます。「有機農家のパイオニアたち」、「自然栽培という生き方」、「農家だからできること」というテーマで、多くの農家が紹介されています。もちろん、そこには現在の農業が抱える問題や、矛盾もあります。が、しかし、それでも自分たちの考える米、野菜を作ろうとする彼らは日夜奮闘しています。

岡山県、蒜山で「蒜山耕藝」という農業ユニットを組む高谷さんの考えはこうです。

「そもそも、自分は美味しいものを作ろうと思っていないんですよね。それよりも、その作物自体の本来の生きる姿になるべく近づけてあげようと思っていて」

著者は、様々な考え方を吸収して、渋谷の畑作りに邁進します。農業の神様は決して甘くないことを痛感しながら、楽しそうに畑に向い、収穫をして、畑のある屋上でパーティイベントを開催します。渋谷のビルの上のあちこちに畑がどんどん立上がってくる日を夢みながら。

こんな事が書かれています。

世間で「きれいごと」なんて言葉は、「きれいごとで世の中、通用しない」的に否定的に捉えらがちですが、

世間で「きれいごと」なんて言葉は、「きれいごとで世の中、通用しない」的に否定的に捉えらがちですが、

「『きれい』な『こと』の何が悪いんだろうといつも思う。汚いことより、きれいなことの方が良いのは当たり前じゃないだろうか。世の中が複雑になって、色んな人間がそれぞれの欲望を剥き出しにすればするほど『きれいごと』は必要になる。それこそが成熟した社会ってことじゃないか。少なくとも、きれいごとを否定する人間にはなりたくない。」

全く、同感です。

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当店には、様々なDMを置くスペースがあります。その中にはフリーペーパーも結構あって、中には、え?これタダ!?と思われるものも少なく有ありません。

以前にもご紹介した、岐阜県高山市の飛騨産業(株)が出している「飛騨」は、最新16号が入ってきましたが、残り僅かになりました。

京都からは、「想いのしおり」が、がんばっていて、11号まで出ています。こちらは、「京都の伝統産業に携わる職人さんの思いを発信し、紡いでゆく」ことを目的に、月1回の職人さんへのインタビュー記事が中心に発行です。今回取り上げられているのは、漆の上塗師三代目西村圭功さん。主に茶道具の仕事をされているのですが、最近では、一般家庭用食器のブランドを立ち上げられています。10号のインタビューは、老舗のカバン、袋物メーカー「一澤三郎帆布」の製作部長、北川信一さんでしたが、元々料理人として働いていたという変わり種です。様々な分野で活躍する人々の働き方を知る、という意味でこの小冊子は貴重です。5号からのバックナンバーは揃っています。

最近、高知県の牧野植物園の発行する「まきの手帖」が入りました。牧野富太郎の業績を顕彰するために、1958年に開業した植物園が発行する小冊子です。牧野の「植物一日一題」、「植物記」(どちらもちくま学芸文庫950円)は、当店でも人気がありますが、この小冊子で、彼の描いた素描を楽しむことができます。彼の著作「牧野式植物図」の下絵として描かれたものや、フィールドワーク先で書いた記録が載っています。ところで、この冊子の表紙で、絵の上に並んでいる鉛筆は、牧野博士がスケッチに使用していたものなのでしょうか? 気になります。

毎回、ユニークなアプローチで、本好きの好奇心を盛り上げている「BOOKMARK」も、最新6号がきました。今回の特集は「明日が語る今日の世界」です。タイトルから分かる通り、未来を描いた作品を集めてあります。カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」、映画化されたアンディ・ウィアー「火星の人」、やはり映画化されたティムール・ブェルメシュの「帰ってきたヒトラー」等々、個性的な作品が並びます。

スペシャルゲストとして星野智幸が登場して、SF小説は政治を描いていると言い切っています。つまり、どんな突拍子もない世界を描いても、何らかの事情で、個人が公の権力に振り回されるのがパターンになっていて、「今、私たちが生きている現実を、誇張したりグロテスクにしたりして反映させている。だから、どんなに突飛な世界に見えても、リアルな感じがするのだ。」と。

いずれもパワーのある面白い小冊子です。私もこんなもの製作しているという方おられましたら、お持ちいただくか、或はお送りいただければ、また店頭に設置しますよ。そういえば、「たまひろい」という横浜ベイスターズのフリーペーパーを何回か持って来てくれた彼女は、シーズンオフかな?

 

本に関する、面白い企画や話題満載のミニプレス「BOOK5」が、本日発売の22号をもって終了することになりました。レティシア書房オープン時から、お世話になり、毎号楽しみながら読んできました。古書店初心者だった私には、学ばせてもらうことも多かった雑誌です。

最終号の特集は年末恒例の「今年のアンケート」です。毎回、豪華メンバーで岡崎武志、世田谷ピンポンズ、林哲夫、萩原魚雷、山川直人、南陀楼綾繁、宇田智子、内堀弘、島田潤一郎、木村衣有子、そして銀閣寺「善行堂」まで、本好きなら知っている人のオンパレードです。

今年出た本のベストではなく、その人の読んだ本のベストなんで、多種多様な、出版された年代もバラバラなものがあげられています。

岡崎さんが、夏葉社の「移動図書館ひまわり号」をベスト3の一冊に上げておられます。「フロンティア精神と『図書』魂の美しい結合。」と評されていますが、同感です。

私が読みたい本として購買リストに入れている、宮田昇「小尾俊人の戦後 みすず書房出発の頃」(みすず書房)は人文出版社みすず書房の戦後を描いたノンフィクションです。推薦者の南陀楼綾繁さんは「小さな出版社や書店を経営している(もしくはこれからはじめようとしている)人にはこの本を読んでほしいと」と書かれていますが、出版社立ち上げの情熱がひしひし伝わってくる本だと思います。

ミニプレス「のんべえ春秋」や「コッペパンの本」で、当店でもお馴染みの木村衣有子さんは、「福島第一原発廃炉図鑑」(太田出版)を上げていましたが、彼女は今、東京と福島を行ったり来たりの生活らしいです。福島第一原発の仕組み、周辺の見所を真正面から描いた本とのこと。興味ありますね。

で、私のベスト3は、よくここまで自分をさらけ出したと感心した山下賢治「ガケ書房の日々」(夏葉社)、泣いてはいけないと思いながらページを捲った河崎秋子「颶風(ぐふう)の王」(角川書店)、没後20年を記念して出版された湯川豊「星野道夫 風の行方を」(新潮社)です。

「BOOK5」の特集では、本以外で印象に残ったことを取り上げるコーナーもあります。その中で、岡崎武志さんがNHKドラマ「夏目漱石の妻」を評価しながら、大河ドラマで関川夏央&谷口ジローのコンビによるコミック「漱石とその時代」を取り上げるべきだとおっしゃってますが、いや、それは是非是非ドラマ化してもらいたいものです。

なお「BOOK5」はバックナンバーも在庫しています。

 

 

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真っ赤な外函を取ると、出てくるのが、やはり赤一色の装幀の表紙。”History of Modern Art”という文字がうっすら浮かび上がっています。トータルで750ページの偉容を誇るこの本は、H.H.アーナスン著「現代美術の歴史」(美術出版社/初版5000円)です。

近現代美術史に始まり、今世紀の現代美術を下記の様に区分して追いかけて行きます

フォービズム→ドイツにおける表現主義→キュビズム→キュビズムの波及→20世紀初期の建築→幻想からダダへ→そして新即物主義→両大戦間のエコール・ド・パリ→シュルレアリスム→建築における国際様式→両大戦間の国際的な抽象美術→両大戦間のアメリカ美術→抽象表現主義とアメリカの新しい彫刻→戦後のヨーロッパ絵画と彫刻→ポップア−ト→1960年代の抽象→建築における国際様式 第二の波動→ポストミニマルの70年代→多元的な70年代→借用の80年代→建築におけるポスト・モダン

読むのに大変な労力の要る大著ですが、白黒、カラー図版を惜しみなく使用しているので、私などは、お気に入りを見つけて、その作家の項目を読み始めるのがベターです。

ところで、こういう美術の作品ってステキなものが多いせいか、CDジャケットに使われていんですね。3枚見つけました。また、アレクサンダー・コールダーの「ロブスターの捕り器と魚のしっぽ」というモビール風の作品は、海外の映画会社のロゴ宣伝に使用されていることを発見しました。映画のオープニングでモビールがゆらゆら揺れている横に会社のロゴが出てくるのをご覧になった方もおられると思います。ひょっとしたら、本の装幀に使われているのも見つかるかも。因みに発売された(1995年)のお値段は25000円です。

さて、豆本を作っておられる、杉本さんの新作が4点届きました。アポリネール「アムステルダムの水夫」、夏目漱石の「硝子戸の中」、小川未明の「橋の上」、石川啄木の「第十八号室より悲しき玩具抜粋」の四冊です。すべて素敵な装幀が施されています。

小川未明の「橋の上」は、和綴じの表紙に夕闇迫る川辺の橋を描いてあるもの。泣き止まない子どもに手こずる夫婦、誰もいない橋の上で、彼らを見つめる黒い影を描いたちょっとゾッとする小川らしい小品ですが、この表紙の絵がその世界にピッタリです。本好きの方へのプレゼントに最適です。ここだけにある本ですから。お値段は横7.5cm×縦9.5cmの豆本各1620円です。(限定販売)

 

 

 

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