先日、劇場で観るのを見逃した、ヴィム・ベンダース監督の「Pina/ピナ」を観た。かっこいい!の一言でした。そして、その時、何故か上林暁の一連の私小説が脳裏を横切った。似ている、そんな馬鹿な。お前の頭イカレテルんちゃうか?と言われそうなのだが。

「Pina/ピナ」はご承知のように、ドイツの誇るピナ・パウシュの舞踏をドキュメントした作品です。しかし、「パリ・テキサス」、「ベルリン天使の歌」等のヴィム・ベンダース監督は、舞踏を単純に追っかけるような映画を作るわけがありません。絶妙なトリックを使ったり、街中の雑踏、あるいは現代建築の硬質感のある空間での舞踏とのコラボで、映像で舞踏を捉える巧みな演出を見せます。ピナも凄いけど、おいらも凄いぜとカメラの後ろでほくそ笑んでいる彼の姿が見えてきます。だから、かっこいいんです。ピナなんて知らなくても、エンドロールのサウンドで、思わずピナ風の踊りをしてみたくなります。

このサントラあれば欲しいです。開店前のお掃除に使って、奇妙な動きで硝子拭きやります。きっと、ご近所からは、あ〜あぁ、ついに脳みそおかしならはったわ〜という声が聞こえてきそうですが。

この映画、もちろん他のベンダース映画もそうですが、カメラが微妙にゆらぐのが気持ちよくなります。ハリウッド映画みたいに、人の動体視力を無視した如き、派手な動きではありませんが、微妙に左に、右に揺らぐのです。そして、これって、上林の小説に似ていると唐突に感じました。

上林暁は、私小説、特に妻の入院中の事を扱った病院ものに定評があります。銀閣寺の古書店「善行堂」店主、山本善行さんが選んだ小説集「星を撒いた街」(夏葉社)に収録されている「花の精」に主人公の視線のゆらぎを感じるのは私だけでしょうか。夕暮れ迫る、寂しい駅の降り立ち、サナトリウムに向かい、戻ってくるまでを描いた辺りの描写に、特にそれを感じました。

或は、「星を撒いた街」冒頭で、主人公が友人、沼田の家目指して歩く描写でも、ゆらぎを感じます。蛇足ながら、初めてこの小説を読んだ時、ラストシーンで突然、エリック。ドルフィーの吹くバスクラリネットの重苦しく喘ぐサウンドが聞こえてきた、極めて音楽的小説でもありました。それだけ文章が研ぎ澄まされてていて、あらゆる感性を刺激する程の完成度を持っているという事でしょう。

全く関連のないものが、突如関係があったごとくに蘇ってくる瞬間がある。その突拍子もない関連づけには、我ながらヘキヘキすることもありますが、それもまた面白いと感じるようになりました。これも、年のおかげですかね。

 

 

 

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新しいミニプレスの仲間が増えました。タイトルは[Bon Appetiit/ボナペティ」雑誌のテーマは「つくること」です。

パラパラとめくると、あぁ、大橋歩が編集していた「アルネ」風ね、と思われる方もいらっしゃるかともしれません。でも、キラリと光る記事を見逃してはいけません。今回、バックナンバーから揃えましたが、例えば4号では、このブログでも紹介した大竹昭子さんが主宰されている「カタリココ」という朗読とトークイベントに関しての記事が載っています。「カタリココ」は大竹さんの造語で、「語り」と「ココ」を組み合わせてあります。様々な場所で、様々な人達を呼んで、本の、そして言葉の楽しさを分かち合うイベントです。何故、こんなイベントを始めたのか、という質問に彼女はこう答えます

「人のため、本のため、自分のため」

最新12号は、「今だから、自分らしく真っ当な店」というコンセプトで、喫茶店オーナー、アンティークファブリック主宰者、生活雑貨屋さんが登場します。「静謐」という言葉がピッタリのお店とオーナーの言葉です。

ところで、連載記事に、一度行ってみたい書店「森岡書店」オーナー森岡督行の対談「本と人」は、本好きにお薦めです。今回、対談のお相手は生活雑貨店Roundaboutオーナー小林和人さん。対談の俎上にのる書物は、河井寛次郎「いのちの窓」、尾崎放哉「尾崎放哉句集」、ロラン・バルト「愚景」、谷川俊太郎「しりとり」という渋いラインアップです。尾崎放哉「尾崎放哉句集」は全く知りませんでしたが、小林さんはこう言っています

「その言葉の外に広がる、途方もない余白に魅力を感じるんです」

きっと、この人のお店もそんな、余白の魅力を楽しめるのだと思うと、行ってみたくなりまね。

この連載は三度目で、11号、10号でも読めますが、残念ながら11号は品切れだそうです。いずれ、この連載をまとめて、さらに本好きに気に入られるような企画を入れて一冊の本にしていただきたいものです。

表紙に曰く「つくる人の姿を伝える本 ボナペティ」とありますが、正確に言えば「つくる人の静かな姿を伝える本」だと、私は思います。バックナンバー(550円)と「思いつきは神のささやき〜旅するシェフの4000日」(1200円)本日より販売開始です。

 

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本日より、北海道江別市(札幌のお隣だそうです)の「Simple風」主催の澤口弘子さんの、フェルト作品展が始まりました。男子禁制です。(嘘ですが)

古本屋があっという間にブティックに変身しました。暖かそうな手袋、ショール、ベストそして帽子等の作品がズラリ並んでいます。私は帽子が気に入りました。しかし、冠れません。これ、着こなせる男性いたら凄いです!!。写真取ってブログに載せます。お店に飾ってある作品は、すべて手に取って、着ていただいても構いません。これ、可愛い、あれも、となると男子はきっと無理です。いや、その輪に堂々と参加出来る男子いたら、男の中の男ですね。蛇足ながら、女子会にふわぁ〜と参加できて、ニコニコできる力のある男子こそこの国の首相になって欲しいもんですね。消費の半分を引っ張ってる女性のことわかんなさそうな爺さんじゃね。

ご来店された方同士で、似合うわね〜と褒めちぎり大会していただきたいものです。実はもう、なってますが…………。

フェルト作品と一緒に、同じく北海道白糠の茶路めん羊牧場のサフォーク靴下や、羊油せっけん「サボーの丘」も販売中です。ハッキリ言っておきます。高いです。しかし、けれど、but、使用感は最高です。靴下は、私も愛用しております。三足某の靴下ではこんな暖かさは期待できません。身体全体が暖まってきます。石鹸は、羊油から作られた国内初の化粧石けんです。合成の香料、着色料、防腐剤は一切使用していません。お肌の弱い方をはじめ、少なからず愛好者がおられます。牧場の愛らしい羊フォトも販売中です。

さらに、北海道発の雑誌「カイ」の羊特集号やら、北海道紹介マガジン「スロウ」(バックナンバーも在庫しています)果ては立松和平の写真集「釧路湿原」まで揃えております。以前、安藤誠さんの「安藤塾」に来られて、彼の話にすっかり魅了された貴女!なら絶対に来るべき展示会です。北の大地の暖かさにほっこりして下さい。

ご注意ー入店された時に、ぷう〜んと動物の臭いがするかもしれませんが、これが羊の匂いです。一度その匂いに魅入られるともうたまらん!!

こういう企画の時って、ライ・クーダーやボビー・チャールズ、レア・カンケル等のシンガー&ソングライター系のシンプルなサウンドって似合います。さらに北の大地気分を盛り上げてくれます。

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昨今、若い人の海外留学や長期の旅をする人が減りつつあるらしい。わからんでもないですね、ネットが側にあれば世界なんて、いつも一緒。なんで、文化も言葉も違う環境に身を置いて、悪戦苦闘しなけりゃならんの?ごもっとも。でも行ってみなけりゃ、わからんものもあります。

サントリー社長、佐治敬三が書いた「新洋酒天国ー世界の酒の旅」(文藝春秋)。タイトル通り、世界の酒を巡って旅したエッセイです。酒飲みには、酒を学ぶのには最適の本ですが、そうでない人にもこんな文章はいかがでしょう。「数オクターブにも達する幅広いシェリーは、食前、食中、食後を通じて、人の味覚を楽しませるのではないか」そしてイギリスの諺「シェリーの一杯が先行しない食事は、太陽のない曙のようなものだ」をこう自分で訂正します。

「シェリーのない食事は、太陽のない1日のようなものだ」

ということで、「異国にて」というタイトルで、それらしい?本を集めてみました。この手の本は「深夜特急」以降、膨大に出版されていますが、やはり読ませるのは、沢木耕太郎です。「一号線を北上せよ」(サイン入り/講談社)は、彼が彷徨したアジア、ヨーロッパの喧噪の中で身についた、その街角の臭いを見事に言葉に置き換えています。さすが、「深夜特急」の著者です。簡潔で、ストイックな文体は、相変わらず魅力です。若き日、「深夜特急」をポケットに入れて、世界へ飛び出したバックパッカー達には必読です。「一号線を北上せよ」という内なる声に突き動かされて、旅に出ようとする姿が見えてきます。

沖縄、フランスへと住居を変えながら、世界とは何かを発信し続ける作家、池澤夏樹との超ロングインタビューを一冊にした「アジアの感情」(Switch)。池澤には「マシアス・ギリの失脚」、「ハワイイ紀行」、「やさしいオキナワ」、「花を運ぶ妹」そして「セーヌの川辺」と世界各地を(私は海に隣接した街が舞台だと思います)背景にした小説、評論が多数あります。このインタビューは、何故作家は世界を移動するのか、という根源的テーマを様々な角度から俎上に乗せます。第三章「狩猟者」では、知遇を得た写真家、星野道夫の生と死について、どう受け止めたかを語っています。池澤は、かつて星野をこう評価しました。

自然について詳しく知っていること、謙虚にして勇敢という矛盾する資質をもって自然の中にはいってゆくこと。それを人生の姿勢として選びとること、それらの点で星野道夫はまちがいなく狩猟者である。

世界とは何かを得ようと、灼熱のジャングルを、極寒の極地を、熱気溢れる雑踏を彷徨う作家たちも、狩猟者なのかもしれません。

飛行機に乗る時間も暇もない方、いや、乗るのが億劫な方にも一読していただきたい本ばかりです。

 

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と言っても、SMの世界ではありません。打楽器の事です。すぐれた打ち手が叩き出す打楽器の音は、リスナーにとっても、或は叩かれている楽器にとっても快感のはず。私のごとき下手なドラマーに叩かれたドラムも、今叩いている小鼓も、きっと迷惑でしょうね。

小鼓や三味線が活躍する歌舞伎、能、そして文楽、あるいは落語といった古典芸能の本は少しづつ拡張しています。ただ、専門的にならずに、読んで楽しめる本、そして聴いて面白いCDを集めます。基準は、古典芸能なんて知りません、という貴方のためにです。

「歌舞伎名セリフ集」というCD(廃盤)があります。歌舞伎の名作の名シーンの、名台詞を抜粋したものです。

「月もおぼろに白魚の縢りもかすむ春の空」の七五調で始まる「三人吉三」、「ご新造さんえ、おかみさんへ、お富さんえ、いやさお富、久しぶりだなぁ』と、こうして恫喝しましょうのお手本「源氏店」等々、10作品が収録されています。台詞だけなんで、音楽は入っていません。しかし。洗練された日本語を、一流の役者がしゃべるのを聴いていると、気持ちよくなります。もちろん、舞台を知らなくても大丈夫。全部、台詞が載っています。

「知らざぁ言って聞かせやしょう」とか、「問われて名乗るもおこがましいが」なんて台詞は、一度言ってみたいもんです。

歌舞伎ではもう一つ。「芝居の食卓」。これは、舞台に登場する様々な食事を取り上げて解説した本です。嫌みなグルメ本や、食文化解説本にならずに、食べるという事についての上質のエッセイになっているのは、さすが、演劇評論家の第一人者、渡辺保先生の教養の深さによるものです。例えば、桜餅の登場する「法界坊」という芝居の章で、こう書いています。

あの葉の香りと塩味、皮のやわらかさと餡の甘さは、すでにふれたように独特の春の花の予感がするが、その幻想の力が芝居の空間をつくるのである。歴史への回帰。だから「桜餅」はいまでも私を夢にさそう芝居である。

菓子一個というなかれ。これが文化というものだろう。

さて、叩かれる快感といえば、日本の和太鼓集団「鼓童」のCDを外す事は出来ません。彼らの質の高さはライブを見て頂くのがベストですが、SONY の誇る録音システムで製作されたCDも、中々の出来上がりです。和太鼓だけのCDって、退屈?イエイエ、とんでもない。もう目頭が熱くなるなること請け合います。アルバム「鼓」。このジャケット見ただけで、大空に向かって飛び出しそうになるでしょう!えっ、俺だけ?

試聴大歓迎(ほんとはフルパワーでガンガン鳴らしたい!!)なんで、エキサイトして思い切って飛び出してください。


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読まなくなった本を処分したいが、ごみ同然に捨てるのは忍びない、これ本好きな方の偽らざる心境でしょう。しかし、本人の意志とは無関係に、強制的の本が焼かれて処分されたら。

死んだ書物は、ハトのように翅をひらめかして、ポーチの上へ、庭の芝生へ、落下してくる。なかに、また、火花の渦をまいて、空高く舞い上がるものもある。だが、やがてそれも風に吹き飛ばされ、燃えつきると、くろぐろと地上に落ちてくる。

お分かりですね。レイ・ブラッドベリの「華氏451度」の冒頭部分です。小説のタイトルの横にはこう書かれています。

ー本のページに火がつき、燃え上がる温度

50年代、全米に吹き荒れた反共産主義運動マーッカシーズムに、苛ついていたブラッドベリが発表した暗黒のSF小説です。禁書に指定された本を片っ端から焼く仕事の男、モンターグが知る事になるとんでもない秘密。

フランスを代表する映画監督、フランソワ・トリュフォーがこの小説を映画化しました。もちろん、タイトルは一緒の「華氏451度」です。劇場では観ることができませんでしたが、ある夜、テレビの洋画劇場(当時はレンタルビデオなんて便利なものはありません)で偶然この映画に接しました。どういう展開かは、殆ど忘れましたが、ラストシーンは驚愕しました。伝えるべき本の内容を、みんな暗記して、口伝で伝えてゆくというものでした。多くの人が、暗記した内容を反芻しながら、声に出して歩き回るところをカメラは捉えながら、徐々に遠ざかっていきます。まるで、それらの行為が無駄であるかのようなペシミステックな感傷を残しながら。

広大なネットワークがこの星を覆っている現在、この本に出て来るようなことは起こり得ませんが、逆にネットを廻る言葉が、勝手に大きくなり、凶暴化して、第三者に、或は発信者に襲いかかることは起こるかも、いや起こっているのかもしれません。

小説の最後は、こうです。

モンターグは、徐々にではあるが、ことばのいぶきがそよぎだすのを感じた。徐々に沸騰しだすのを感じた。自分の番がきたとき、かれはなにがいえるだろうか

明るい未来が広がるお話ではありませんが、読んでおくべき小説の一冊でしょう。新刊書店員時代、大量に印刷され、大量に送られ、大量に返本されてゆく毎日のどこかで、必ずこの本のタイトルが聞こえて来たのは何故だったんでしょう?

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旧知のHさんとSさんが営むお店が大阪北浜にあります。

「テンダーハーツ」というその店は、きわめて個性的な額を作っていて、また、アンティーク硝子などを使ったオリジナルのアクセサリーもたくさん並べています。

 

この辺りは、古いビル群がある独特の洒落た雰囲気の街で、彼女たちは、持ち前のセンスの良さで色々なイベントを企画して、街全体を盛り上げているみたいです。先日のお店のハロウィーンパーティーも、小さな店内に沢山の人があふれていたとか。

 

もう20年以上前、心斎橋の画廊で、「大人の文化祭」的な催しがあり、そこでお二人とであいました。私は、デザイナーのキタオカさんと二人組で「ピンクゴリラ」という名前で小さな額絵をだしていました。その後、テンダーハーツさん主催の神戸の展覧会に何度か参加者させてもらっていましたが、阪神大震災以後、あまりお会いする機会がありませんでした。キタオカさんはその後もテンダーハーツさんのお店に作品を出していたので、お二人の様子をきいていたし、そのままお付き合いが続いているような気分ではありましたが。

 

今年9月、キタオカさんの版画展がレティシア書房であった折、お越しいただきました。それで、また、ご挨拶を兼ねてDMを持って伺った次第。

 

北浜のお店に行くと、「女の子」?してしまい、アクセサリーをつけたり、おしゃべりしたり、ついつい時間を忘れて、キケンです。

んで、案の定、大好きなイヤリングを二つも買ってしまいました。アクセサリー好きな者にはホントにキケンなお店です。一緒に行った友人も危険地帯に足を踏み入れてしまい、はまっていました。

でも、たまにはいいですよね。

こういう時間を持つのは、幾つになっても楽しい!!

 

次回は、古いビルが飾り付けられるクリスマスあたりに、またお伺いして女子会したいと思っているところです。フフフ(^^)(女房)

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妻は交通事故で意識不明。二人の娘は、仕事一辺倒の父親に距離を置いている。どうしていいか分からない彼に告げられた、妻は浮気をしていて離婚するつもりだったという驚愕の事実。もう、かなりギリギリ状態のお父さん。舞台はハワイ。そして、聞こえて来るはハワイアンギターが奏でるホワ〜ン、ホワ〜ンした音楽。シビアであるのに、何故か滑稽です。映画「ファミリーツリー」のお話です。

これが、ニューヨークみたいな大都会が舞台なら、救いがたい展開ですが、なんせ舞台はハワイ。穏やかな気候と、心地よい風、多くの親戚、そして音楽が、人生の滑稽さを浮き出させて、笑える状況じゃないのに可笑しい。人生の真実ってこんなもんね、と言うところでしょうか。

ここで話は飛びます。ハワイの音楽と言えば、ハワイアンですが、伝統的な奏法によるギターサウンドは、人の気持ちを和ませます。このギター奏法で、日本人が見事なハワイの音楽を作りました。山内雄喜の「プレイズ・ザ・スラック・キー・ギター」というアルバムです。この風土、この紀行ならではの穏やかさが醸し出すサウンドは、エキサイティングでもないし、感動するものではありません。しかし、人を大地の根っこに導いて、優しく、どこまでも優しくしてくれます。人の邪魔をしない、けれど、人を安心させる絶妙の音楽ですね。

ここで、話は、さらに飛びます。ハワイと言えば、私にはアメリカのテレビドラマ「ハワイ・ファイブ・オー」です。確か大阪ガス提供の「刑事コジャック」の後番組でした。ラロ・シフリン(だと思う)のオープニングテーマ曲と映像がかっこ良い連続ドラマでした。この時代のアメリカドラマはどれも、オープニングのサウンド、映像とも、「お〜カッコいいぜ!!」と唸らせるものばかりでした。先の「刑事コジャック」、「スパイ大作戦」等々、これらの番組のおかげで、映画のオープニングフェチになってしまいました。今だにタイトルバックの出方が一番ドキドキします。

映画のオープニングと言えば、デザイナー、ソールバスが手がけた作品は圧巻でした。躍動感が隅々にまで溢れていました。「ウェストサイド物語」のオープニングと言えば、あ〜あれか!と思い出されることと思います。店に一点だけ作品集がありますので、その素晴らしさを見て下さい。この人の映画ポスターは、どれも見事です。

 

そして、話はさらに飛びます。映画ポスターですが、今京都国立近代美術館で「日本の映画ポスター藝術」と題した展示会が行われています。これは、お薦めです。戦前のものから、和田誠や横尾忠則の手がけた作品まで並んでいます。映画を知らなくても、けっこう楽しめます。写真は、漫画家の上村一夫が手がけた「シェルブールの雨傘」です。なんか、日本的な情緒綿々たるポスターです。メイン展示の山口華楊の素晴らしさを堪能した後4階に上がるのをお忘れなきように。

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1954年生まれ海外文学の翻訳家で、ポール・オースター、エドワード・ゴーリー等の翻訳で有名。本人曰く、運動神経ゼロ、方向感覚ゼロ、虫歯ゼロ。趣味入浴という、柴田元幸の「翻訳本」でない本が面白い。

「愛の見切り発車」(新潮社/初版)の扉にこうあります。

最先端の海外文学を全部読んだ気になれるエッセイ集

「全部」と書いてあるところが、自信の現れです。第一部は「マリクレール」に連載されたエッセイ、第二部は「エスクワイア」で連載された、作家インタビュー集、そして第三部は「時事英語研究」に連載された文芸評論と盛りだくさんです。片っ端からペーパーバックを読み漁っていた、自称落ちこぼれアメリカ文学者の美辞麗句に流れない文章が、海外文学なんて読まない!という方にも、確かに、その面白さの一編をわからせてくれます。ちょっと、おとぼけな言い回しも楽しいです。例えば「頭暖まる童話」の書き出しはこうです。

「心温まる」童話はどうも乗れない。だけどこの「ライロニア国物語」は大丈夫。これはいってみれば「頭暖まる」童話である。

「頭暖まる」童話って何だ?と読んでしまいます。或は、「青春のバイブル」的な「ライ麦畑でつかまえて」では、「ライ麦畑」についての論文は、本質的にこの小説にそぐわないと言う。何故なら。論文は正論を要求する。そしてこう続ける。

正論を堂々と言い切ってしまうことは、「ライ麦畑」の主人公を苛む自己懐疑ーそしてそれこそがこの小説の魅力の中心なのだーに似つかわしくないのである。

確かにそうですね、あの主人公のどっちつかずの精神構造に、これが正しいと言っても意味ないことです。

最近、お客様からの推薦で柴田元幸と高橋源一郎の「小説の読み方、書き方、訳し方」を入手しました。この本で一番面白いのは第四章「小説の読み方」で、お二人が海外に紹介したい本をそれぞれ30冊づつ上げて。それを元に日本文学を考える部分です。う〜ン、頭脳明晰な二人が、ノウミソを高速回転させながら丁々発止するのは、読んでいて気持ちいいものです。蛇足ですが、「タカハシ」さんって小説はあまり面白くないのに、こういう文芸評論、エッセイになると拍手喝采の文章ばかりなのは、何故なんでしょうね?

柴田元幸の本は、それ以外の「つまみぐい文学食堂」(角川書店/初版)、「生半可な學者」(白水社Uブックス/初版)もあります。

ところで、私がこの翻訳家に興味を持ったのは、マイベストロック10として、大共感できる10曲を見た時ですが、その中にバーズの「マイ・バック・ページ」があったことです。川本三郎の同名タイトルの本にもなっている名曲です。苦さと甘さのブレンドが絶妙な一曲は、私にとっての若き日のアメリカへの憧れを思い出させます

白か黒かしかこの世にはないと思っていたよ

誰よりも早くいい席で いい景色がみたかったんだ

僕を好きだと言ってくれた 女たちもどこかへ消えた

あのころの僕より今の方がずっと若いさ

自尊心のため無駄な議論を繰り返してきたよ

英雄気取りで多数派の弱さを肯定もしてきたし

僕を素晴らしいと言ってくれた 男達も次の獲物へ飛びついた

あのころの僕より今の方がずっと若いさ

これは、真心ブラザーズが歌っている日本語解釈版ですが、オリジナルより良く理解できます。

 

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DVDに新入荷です。加藤泰監督、藤純子主演「緋牡丹博徒 お竜参上」、そして深作欣二監督、菅原文太主演「県警対組織暴力」という我が青春時代の清い?思い出を作った傑作二本です。

「まぁ、やくざ映画、お下品」「なにが下品じゃ、われぇ〜」となりそうですが、しばらくお付き合い下さい。

かつて三島由紀夫をして「まるでギリシャ悲劇」だと言わしめた、やくざ映画「総長賭博」。お能や歌舞伎なんかと一緒にすると顰蹙ものですが。古典芸能の持っている様式美を見事に継承しているのが東映任侠映画でした。とりわけ、低いカメラポジションから登場人物を見上げて、その情念を描くことに手腕を発揮した加藤泰が、藤純子の有り余る魅力を見せた作品が「緋牡丹博徒 お竜参上」でした。「折目正しい」とはどういう所作か学ぶには最適です。

ところで、その三島由紀夫ですが、椎根和著「平凡パンチの三島由紀夫」(新潮社)という面白いノンフィクションがあります。「平凡パンチ」編集者だった著者が三島の割割腹自殺までの三年間、担当者として見続けた三島の変貌を描いています。三島の、あの読みにくい(私には)文章読んでるよりも、何倍も面白く、キムタクなみのアイドルだった三島がスーパースターへと変身してゆく様は読み応え十分です。

もう一本「県警対組織暴力」は、実録やくざ映画の傑作ですが、今は亡き川谷拓三が、取り調べ室ですっ裸にされて蹴られるシーンでの彼の役者根性と、商業映画で天皇制を批判した希有な作品であったことが忘れられません。深作の本としては、キネマ旬報社の臨時増刊号「深作欣二の軌跡」という資料的価値十分の本を在庫しています。

で、このままでは「お下品な店」で終わってしまいそうなので、入荷した高品質な作品もご紹介。それは小津安二郎「浮草」です。先代の中村鴈治郎、京マチ子、そして若尾文子という映画黄金時代のスターがズラリの文芸ものです。旅芸人一座の哀愁をお見事、というぐらい美しく演出した映画です(このDVDはリマスターしたもので、おそろしく画像が奇麗です)。日本の色とはこんなに美しいと再認識する映画でもあります。小津といえば、「秋日和」「彼岸花」ですが、その原作者里見弴の文章も一級です。「秋日和」にこんな一文があります、

この一年の早かったこと、もう祥月命日が廻って来た。今日も穏やかな秋日和。

もう、小津の映画のテーマですね。人は死に、季節は巡り、何事もなかったように時間は進む。

この「秋日和 彼岸花」という本では、亡くなった父の晩年を回想する息子の独白「自惚鏡」が好きです。全10編の短編が収められています。晩秋〜冬にかけて最適なので、喧しいクリスマスベルを避けて、お一人で静かにお楽しみください。

 

 

 

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