電話を取ると、「ミニプレス出したんで置いてもらえますか」という奇麗な声の女性でした。

夜、もう閉店間際に、その女性は来られた。拝見する。「本のある部屋」というミニプレス。特集は書店員の座談会「本屋大賞を全力で楽しむ」と、「梅田書店マップで、もっと楽しい本屋巡り」。新刊本のことがメインですが、私には、古本も、新刊本も、ミニプレスも関係ありません。紙の上に字が書かれてある「楽しきもの」です。面白いってこういうことね、とニンマリさせてくれるミニプレスの登場です。次号は11月とか。応援しますよ。因みにこの雑誌のデザインをしているAさんの「妄想本棚」に並んでいる本が、彼女の個性の良く出た楽しい一項ですね。(500円)

 

先日、大阪の版元で、限定販売の書籍を送り出していた湯川書房の「花深き」(小川国夫著)を、ご存知「善行堂」で入手しました。挿絵は平野遼。丁寧な本はこうして作るんだというお手本みたいな一冊です。この大量出版時代には、到底こんな本作りは不可能でしょうが、一日に一度はページをめくりたい魅力に溢れた本らしい本です。置いておくだけで光り輝く、そんな気がします。

 

と思えば、「富嶽三十六景」という全46枚のポストカードを収録したものが入荷しました。これは、なんと藤沢薬品という製薬メーカーが販促で作ったものらしく、各ポストカードには、主力商品の「ノイビタ」、「チオクタン」のロゴの入った代物。当然非売品ながら、ちょっとマニア心くすぐる一品です。

Tagged with:
 

半月ほど前にやって来た猫のヤンチャぶりは、カーテンの垂直上り、開けた箪笥の引き出しへの乱入、仏壇の隙間探検など、エスカレートする一方。

夜中、枕元に必ずやって来て、私の髪の毛で遊ぶので少々睡眠不足であります。

来たばかりの頃は猫用ミルクをシリンダーで飲ませていたのに、今ではドライフードをカリカリカリカリ、小さな歯で一生懸命食べています。

ドライフードを食べだすと水が必要です。猫があまりに小さいので、どんな容器だったら飲むか思案して、ガラス製のコースターを設置すると、誰に教えられたわけでもないのにほどなくピチャピチャやりだしました。

ほどなくコースターでは間に合わなくなり、先代猫レティシアのステンレス製の容器を引っ張りだしました。溺れるかと思うほど小さいくせに、神妙な顔して飲んでいる姿は可愛いもんです。

もうしばらく老いた母の子育ては続きます。(女房) 

 

Tagged with:
 

今日は卓球の試合でした。

午前9時に、府立体育館に向かう。現在私のランクはD級。なんとか今日C級へのステップアップを目論む。試合は数人に分かれたチームごとの総当たり戦。練習をしながら、この親父は足が遅そうとか、こっちの旦那はバックサイドが弱そうとか、試合の対策を考える。

お〜。小学生がいる。1勝儲けた、と思ったのだが、こいつがくせ者だった。

最初の方と試合開始。1セット目を落とすも、その後相手のサーブを読み切り、3勝して勝ちをゲットする。この調子と、一人ほくそ笑みつつ、その小学生の試合を観る。

強い!!!!!!!!!!!!!

卓球のサーブは微妙です。下回転するもの、上回転するもの、横回転するもの、高速で逃げていくもの、無回転で沈んでゆくもの、そしてそのミックス。100人いたら、100種類のサーブがあると言われるぐらいの個性がある。で、その小学生のサーブ、高速で飛んで来て、横下に回転する。返したと思ったら、フワリとした棒玉で、スマッシュを打ち込まれる。もう対戦相手はなす術もなく、ストレート負け。

う〜ん、これはヤバい。私は二人目のちょっと年配の方にも勝ち、この小学生との対戦を迎える。このサーブがもう難関でした。大きくドライブして、しかも逆に回転つけて返さないと、全部スマッシュを打ち込まれる。

悪戦苦闘しているうちに、早くも2セットを取られる。サーブをコーナーギリギリに打って、左右に振ろうにも、なんせ小学生。運動能力は抜群。おまけに動体視力も良さそうで、ブラフのサーブもことごとく見破られゲームセット。小学生M君は、全員にストレート勝ちで、C級へランクアップ。疲れました。

お店には画集、美術関係が入荷しました。写真は沢渡朔「少女アリス」(河出書房73年初版)ちょっと貴重ですが、当店のプライスは3000円です。(古書のネットでは5000円以上の売価です)

 

Tagged with:
 

「飛んだ!」ー「魔女の宅急便」でヒロインが箒に載って飛んだ瞬間に実況アナが叫ぶ台詞です。

宮崎駿は、もうこの言葉を動画で表現したくて、心血を捧げて来た作家というのが、私の宮崎観です。昨日、テレビで「風の谷のナウシカ」を放映していました。何度も観ましたが、やはりナウシカが大空へ飛び出す瞬間には、何度でも胸ときめきますね。翼を左右どちらかに傾け、一気に急降下する、急上昇する瞬間に、この人はすべてを注ぎ込んでいる。一気に変化する重力、温度の急激な降下まで感じる程までの一コマ一コマの緻密な動きには恐れ入ります。

本人は何も語らないけれども、この人はきっと空中戦映画が大好きだったと思う。私がアホみたいにくり返し観ている、第二次大戦のドイツとイギリスの空中戦を描いた「空軍大戦略」。ファーストシーンはドイツの輸送機が、ゆっくりとしたカーブを描いて降下していくシーンで始まり、もう後は華麗な空中戦のオンパレード。「ナウシカ」を観ていると、この映画が観たくなる程に、描写が似ている。宮崎は後年、自分の飛行機好きが高じて、「紅の豚」を作った。こういう趣味性で映画を作ってしまったことに対して、自己批判をしていたが、「飛んだ」という高揚感を味わえる希有な映画であるのは間違いない。

私にとって、宮崎映画は、その時代に対する洞察力や、思いとは別に「飛んだ!」という高揚感の味わえる映画がベストです。「ナウシカ」、「トトロ」、「魔女の宅急便」そして「紅の豚」の飛ぶシーンこそがすべてで、残念ながら、そういう高揚感のない「千と千尋」以降の宮崎はお呼びじゃなくなりました。

ところで、店にある「風の帰る場所」という12年間にわたるインタビュー集はぜひお読み下さい。スリリング極まりないインタビューです。(ロッキンオン900円)

 

Tagged with:
 

先斗町へは、毎日行く。

と言っても、飲みに行くわけではない。愛犬の散歩です。どういう訳か、愛犬マロンは鴨川よりも、先斗町がお好きで、朝の散歩はここと決めている。(別に花街の生まれではないんですが)朝7時ごろの先斗町といのは、一言では表現できない表情です。喧噪の後の寂しさというべきか、酔いどれ男や、女たちの笑い声や、泣き声の残響というべきか、はたまた男と女の欲望の捨て場の臭いというべきか、とにかく独特の雰囲気です。愛犬は、その横町、あの横町に行きつ、戻りつ散策します。

私が、この街に初めて足を踏み入れたのは30年ほど前。この近辺で小さなレコードショップをしていて、お客さんにディスコ関係者や飲み屋さんが多く、お買い上げのレコード代金の集金のため開店前のお店や事務所に訪れた時でした。絵に書いたように厚化粧のママからお代金を頂戴していました。お店は真っ暗、事務所にママさんと二人で数十分いると、やば〜い、という気分になります。逆に開店前のバーに集金に行くと、若いバーテンさんが一心不乱にグラスを磨いている場に出くわします。あれっ、北方謙三の小説に出てきそうな感じでした。そう言えば、バーボンウイスキーの飲み方を教えてくれたのは彼の小説でしたね。気障なハードボイルド小説に酔ってた時代もありましたが、10編の短編を収録した「棒の哀しみ」(新潮社200円)に登場するやくざの自堕落で空虚な生き方は良かったです。これを日活ロマンポルノの名手柛代辰巳監督が奥田瑛二で映画化したのも、気だるさ満点の映画でした。

朝の眩しさと、夜の気だるさが微妙にブレンドした先斗町をリズミカルな動きで散歩する愛犬は、さてさて何を感じているのやら?

 

Tagged with:
 

 先ずは映画+クラシックCD
よくある企画シリーズのCDですが、選んだ映画、選曲共センスの良さと、企画者の映画への深い造詣に拍手したくなる企画です。例えば、第5集はイギリス映画を中心にしたヨーロッパ映画から選ばれています。キューブリックの「バリーリンドン」からヘンデル、ビクトル・エリセの「エル・スール」からグラナドス、そしてラストにデビッド・リーンの古典的映画「逢引」からラマ二ノフと並んでいます。シリーズは全5枚ですが、入手したのは3枚。アメリカ映画編、イタリア映画編どれもこれも渋い選曲です。各500円! 映画、クラシック知らなくても、これは買いです。

DVDも入荷しました。ルイ・マル+マイルスの「死刑台のエレベーター」。画面を観ながら、マイルスが即興で曲を録音したとか、いや楽譜が存在したとか話題の尽きない映画ですが、ジャンヌ・モローの顔を見ると、クールなマイルスのトランペットが聴こえます。お部屋で流しておくだけでも、あの緊張感に酔える作品ですね(DVD1500円)
もう一本、北京オリンピックの開会式なんかの演出で、いつの間にか中国映画の巨匠になってしまったチャン・イーモウが紫禁城で上演したオペラ「トゥーランドット」の舞台裏を追っかけたドキュメンタリー映画「トゥーランドット」。いやぁ〜出てくる人みんな濃いですね(DVD1000円)。

本では無声映画の弁士として有名だった徳川夢聲を生涯を追っかけたノンフィクション「徳川夢聲の世界」(三國一朗著昭和54年青蛙房2000円)。映画「アーティスト」で描かれた世界と同じように、トーキー映画の日本上陸前後の混乱の映画界の推移が面白い一冊です。
ところで、映画本と言えば、川本三郎と村上春樹の「映画をめぐる冒険」どなたか、安く売って下さい。ネットでは7000円ぐらいから販売されてますね。個人的に読みたいんんで、よろしく。

 

前にもご紹介したカフェ「ムーレック」に連休最中、4日に行ってきました。
もちろん幻のコーヒー「カペ・アラミド」を飲むためですが、写真展をされていた上村さん夫妻と、展示中ずっと手伝ってくださっていたY子さんをぜひお連れしたかったのです。


ムーレック」は築100年くらい(?)のお家で、姉妹でカフェを営業しながらアジアとつながっている素敵な場所です。

「ムーレック」というのはタイ語で「小さな(レック)手(ムー)」という意味だそうです。(妹さんがタイに長く住んでおられました。)
子供達の手、そして、一人一人は小さいことしかできないけれど、つながれば大きく実を結ぶ意味もこめられているとか。

「カペ・アラミド」も売り上げの一部がフィリピンの「ハウスオブジョイ」という孤児院の支援に充てられます。
ここは、親のいない子供、虐待を受けている子供などを政府の福祉局の連絡を受けて保護し、ご飯を一緒に食べ、そして学校に通わせるところです。

「ムーレック」のお姉さんの方が、ドキュメンタリー映画の製作者で「ハウスオブジョイ」の依頼で作られた映画も見せていただきました。

上村さんたちは、ゆったりした古い家の佇まいや、展示してあるタイの子供達の写真をすごく気に入ってくれました。

コーヒーの方は、後味がすっきりとしていて、美味しかったです。
幻のコーヒーと言われる珍しいものを頂いた割には、もひとつ味音痴で感想がなんですが。

さて、楽しかった上村さんの「Northean Life」写真展も5月6日に終わりました。
たくさんの方々が見に来てくださいました。再会の和やかな雰囲気、楽しそうな笑い声が小さな本屋に満ちて、我々もいっぱい幸せを頂きました。
レティシア書房の小さな手が、また一つつながりました。
本当にありがとうございました。(女房)

Tagged with:
 

 カナダから飛んで来られた上村知宏さんの写真展「Northern Life-極北の生命」は多くの人にご来場いただきました。またの個展を約束して彼は北の国へ旅立ちました。そして、今日からは「ヒロタノ個展」の始まりです。

廣田美乃さん。京都生まれ。2011年京都市立芸術大学を卒業されて、作家活動をされています。私が彼女を知ったのは、知人の経営する書店でアルバイトをされている時でした。彼女のHPでどんな作品かチェックして、これなら本屋のギャラリーにピッタリと思い、早速個展のお願いをしました。
彼女の絵の特徴は、淡いような、寂しいような、爽やかななような、そして温かいような色彩と、男の子のような、女の子のような性のあちら側とこちら側を浮遊するような登場人物の表情です。

今回の個展のお気に入りは、このブルーの色彩に浮かび上がる少女のような、でも少年でもあるような人物像です。何を語りたいのか、何を見つめているのか、色々想像できるところが良いです。眺めていればいる程、物語が紡ぎ出せそうな雰囲気を持った作品です。
個展は20日(日)までですが、ギャラリーモーニングでも15日〜27日まで開催されます。もちろん内容は異なります。自転車で、二つの会場を巡ってみるのも面白いと思います。

 

 最近ウェルメイドな映画を三本観ました。
「スーパーチューズデイ」、「マネーボール」、「阪急沿線」の三本。最初の一本以外はDVDで観ました。すべて、ウェルメイドな映画でした。
ところで、ウェルメイドってどういう事なん?と思われる方に簡単にお話しますと、上映時間が2時間+10分程度、大げさなドンパチがない、出演者がめったやたらと泣きわめかない、お話はしっかりしている、そしてキャラクターに親近感がある、という事です。

私が映画に夢中だった70年代から90年代あたりまでは、アメリカ映画はそんな映画の宝庫でした。だから、今でも私の映画体内リズムはそんなウェルメイドリズムです。それを、立て続けに観ることが出来ました。ジョージ・クルーニーの「スーパーチューズデイ」は「大統領の陰謀」を頂点とする政治サスペンス映画の香りプンプンの映画でしたし、もう「マネーボール」はこれ以上の野球映画の傑作はない!と思えるぐらい、でも極めてオーソドックスな、映画らしい映画でした。そして、有川浩の原作の良さを保ちながら、古典的グランドオペラ形式の映画の楽しさを味わうことができる「阪急沿線」。

映画だけじゃなく、小説にもそれを求めてしまいます。森絵都「宇宙のみなしご」、(94年講談社 500円)堀江敏幸「未見坂」(08年新潮社 800円)、庄野潤三「貝がらと海の音」(96年新潮社 500円)、池澤夏樹「骨は珊瑚、眼は真珠」(98年文春文庫 300円)とか思い出します。大作でもなく、問題作でもない、表現技術に新しい感覚が盛りだくさんというスタイルの小説でもない。泣かさない、怒らさない、考え込まさない。しかし、その小説の一部が心の深い所に留まり続ける、そんな本がいいいいですね。

映画「阪急沿線」ラスト、色々生きる事でドタバタしたヒロイン二人の台詞はこうでした。「ねぇ、悪くないわね」。
生きるって悪くないわねと軽くステップを踏ませてくれるような本に、映画に、音楽に、私の最高の褒め言葉は、やはり「悪くないね」です。

Tagged with:
 

 私は昭和29年生まれである。この年生まれの男には、その存在から逃げ切れない、その存在と生きざるを得ない奴がいる。その名はゴジラ。

 東宝映画初の特撮映画として、戦後まもない昭和29年。白黒の画面に彼は登場する。これからの核時代の恐怖を背負って、彼は日本に上陸する。映画の中に登場人物の台詞にこんなのがある。
        「いやね〜ピカドン(原爆)から逃げられたのに、今度はゴジラよ、また疎開!」
放射能をまき散らすゴジラは、昨年の原発事故後、核に怯えて生きざるを得ないこの国の状況を先取りしている。ラスト、ゴジラはそのすべてを破壊するオキシデンデストトイヤーという究極の破壊兵器で海の底に沈む。ゴジラさえ殺すこの兵器。今風に言えば、地球を覆い尽くす、すべての生き物を殺す環境破壊の、これ又先取りだ。

核の恐怖、そして来るべき環境破壊を生む第一歩を踏み出した時代に、私たちは生まれた。やがて、ゴジラは東宝映画の屋台骨を支えるべく奮闘努力。次から次へと出てくる怪獣達相手に戦う。これって、より高いハードルを超えることが至上命令の企業戦士そのものの姿だ。そして、いつの間にか、人間の敵だったゴジラは牙を抜かれ、人間の味方にさせられてしまう。これは、お金で縛られ社会から眼を逸らされた我らの姿でもあった。
とまぁ、ゴジラの背中を見ながら、29年生まれの男達は大きくなって、こんな国を作った。いい国なのか、つまらない国なのか単純に答えなんぞ出るわけではない。一度、徹底的に破壊して欲しい願望は膨らむ。もちろんゴジラに。でも、つまらない戦いに疲弊したゴジラは沈黙し、深海へと帰り二度と戻ってこない。

数年前、金子修介が大映の怪獣映画ガメラを復活させた。その第三作で、新しいデザインの京都駅と渋谷の繁華街がもう滅茶苦茶に破壊される。映画館で拍手しました。「もっとやれ!」って。こんな無意味な破壊願望こそ、踏みつぶされるものなのかもしれません。

Tagged with: