今日は各地で梅雨入りしたとか。京都も昨夜から雨が降っています。でも、レティシア書房の店内には、ぱぁ〜っと日傘の花が咲きました。梅田香織さんの作られた日傘は、実に楽しいです。

 テキスタイル作家として活躍して来られた梅田さんが、今回の個展のために集めた美しい布を、日傘に仕立てられました。そう、手づくりの日傘。もともと傘のために作られた布ではないので、晴雨両用ではありませんが、どれもみたことないような個性的なプリント柄で、センスの良さが光っています。うんざりするような暑い日でも、こんなに楽しい日傘をさしたら、よっしゃー、と出掛ける気になるというものです。袋付きの折りたたみ傘もあります。(日傘はすべて8000円)

オレンジ地に、フリーダ・カーロの顔をデザインしたプリント、涼しげな水色の蛸柄、可愛いピンクのレンコン柄、などなど、どれもみんな素敵です。飾るのを手伝いながら、広げては、たたみ、また次のを広げて、と展覧会が始まる前から大騒ぎです。鏡もご用意いたしましたので、ゆっくり選んで下さい。もちろん見に来てくださるだけでも大歓迎。ワクワクしますよ。

本屋で開く個展ということで、同じ布で、ブックカバー(新書サイズ・文庫サイズ共1200円)も作っていただきました。裏地も柄違いで丁寧に仕上げられています。そして、フワフワした水玉みたいなブックマークが、梅田テイストで、またなんとも可愛い。(500円〜800円)

梅田さんは、嵯峨美術短期大学を卒業後、国内はもとより、世界各地の様々な展覧会でテキスタイル作品を発表されてきた作家さんです。今回は、初めて、自分が染めたものではなく、買い集めた好きな布で、「商品」を作るということに挑戦していただきました。とても楽しんで作り出されたモノたちは、手に取ってもそのウキウキ感が伝わってくるみたいです。

鬱陶しい日が続きますが、ぜひ元気印の日傘に会いにお越し下さいませ。(女房)

梅田香織「日傘とブックカバーの展覧会」は6月17日(日)まで。月曜日定休。12時〜20時(最終日は18時まで)

 

なお、「染・清流館」(中京区室町錦小路上る)にて、梅田香織さんの参加されている展覧会『絞る締める染める』が開催 中。こちらも6月17日まで(10時〜17時 月曜休)

 

ますむらひろしが、宮沢賢治の童話を漫画にした作品群は、当店の人気シリーズです。

ますむらが、自分の漫画作品として賢治を描こうとした思いと、「銀河鉄道の夜」の謎に迫るチャレンジを綴った「イーハトーブ乱入記」(ちくま新書/古書1000円)が久々に入ってきました。

第一章「賢治がくれた水いろの切符」では、小学校の教科書で賢治と出会ってから、やがてその不思議な世界にはまり込み、そして、まんが家として東京で悪戦苦闘する日々が描かれます。

ビートルズに狂っていた中学時代に、彼は賢治の亡き妹への思いを綴った「永訣の朝」に出会います。詩や小説に全く興味のなかった少年が、不思議な世界に魅入られます。デザイナーに憧れて上京するも悶々とした日が続いた、そんなある日、水俣病の実験調査のため、汚染した魚を食べて、もがき苦しむ猫の画像に遭遇します。死んでゆく猫たちに破壊される自然の姿を見出した彼の、当時の気持ちがこう書かれています。

「鉛に包まれたようなイライラの日々が続き、もはや一枚のイラストでは描ききれない気持ちの中、色褪せてゆく商業デザインへの想いにかわって湧いてくるものがあった。『ああ。マンガが描きたい』」

そして雑誌「ガロ」に「ヨネザアド物語」を発表します。この物語の主人公が、不敵な笑いを終始絶やさない太っちょ猫、ヒデヨシです。大酒は飲む、借金は踏み倒す、平気で人を裏切る、とんでもない不良猫ヒデヨシに、なぜか多くの読者が惹きつけられて行きました。ヒデヨシのハチャメチャな日常を描いた「アタゴオル物語」は、今も人気があります。

数年後、賢治の童話をマンガで、という依頼が舞い込みます。しかし、「金剛石や草の露やあらゆる立派さをあつめたような、きらびやかな銀河の河床」なんて賢治の文章を絵に表せるのか? 「楽しいも苦しい」という時間が始まります。しかも、編集者から「登場人物はすべて猫で」という注文が付く中、「水俣病実験の猫から始まる猫という自然と人との対立。そしてアタゴオルでの猫と人との共存。そうした道へ導き、そして何よりも僕に、『猫=人』と気づかせたのは宮沢賢治その人なのだ。」

数年後、猫が主人公の漫画が登場。やがて「銀河鉄道の夜」は、そのまま猫のジョバンニとカンパネルラで映像化されます。猫が主人公であることに、方々から反対の声も上がりましたが、見事賢治の思想を映像化して、高い評価を得ました。

第二章「謎だらけの銀河鉄道」は、「銀河鉄道の夜」を巡る謎に迫っています。この章を読む前には、「銀河鉄道の夜」並びにその初期形版の同作品をお読み下さい。でないと、さっぱり理解できません。その後、ますむらの解説を読むと、この作品の重層的に張り巡らされた謎の本質が分かってきます。

ところで、この新書はすで絶版です。どれぐらいで売買されているのかネットで調べてみたら、なんと当店価格の3倍以上の高値!!なんなんだ、この価格は!確かに中身は高濃度ですが、高価すぎるというのも……。

 

★お知らせ   勝手ながら、6月4日(月)5日(火)連休いたします。

ギャラリー案内  梅田香織「日傘とブックカバーの展覧会」が6日(水)から始まります。 

小山田浩子の短篇集「庭」(新潮社/古書1400円)は、日々の生活の隙間からふっと顔をだす、ちょっと悪寒の走るような不思議な世界が一杯。読み出したら、この濃厚な文体に絡みとられてしまうやばい小説ですが、小説に限って云えば、もう今年はお腹いっぱい、という気分です。

小山田は2014年「穴」(新潮社/古書600円)で芥川賞を受賞した広島出身の作家です。夫の実家へ引っ越すことになった妻の、田舎での奇妙な体験を描いています。得体の知れない出来事、不思議な人物に獣。実体があるのかないのか…..。明確な答えのないまま物語は終わります。

今回読んだ「庭」も、一歩間違えば、オカルト小説になりかねない瀬戸際で極めて高い文学性を保っています。

「ウシガエルはうちの近所にはいないが、少し離れたところに川にはいて、夜、自転車で通りかかると襲われるという噂を聞いたことがあった。ウシガエルが牛のような鳴き声で鳴いている川のそばを、ライトをつけた自転車で通りかかるとその声がやむ、と、川の方からどたっと濡れた塊が飛んで来て、顔に張りつく。自転車ごと転んで地面に倒れると、同じような塊が川からどたどたぞろぞろ集まってきて、その人の顔をぺろぺろ舐めて食べてしまうのだという。」

「緑菓子」という一編の中の文章は、怪奇小説みたいなグロテスク感一杯ですが、そういう手合いのお話ではありません。写真家で作家の大竹昭子は「目の前の出来事や対象を見つめるうちに、異次元に引き込まれていく。極度の集中力をもって見るゆえに、ごくふつうの日常のなかに異界が出現してしまうのだ。」と書評を書いています。

何の変化もない日常の暮らしの中で、ひそかに生きている草花、植物そして虫たち。その日常の風景が、不条理に変わる瞬間を捉えた世界……..残念ながら、私にはこの短編集をうまく表現する言葉が見つかりません。

しかし、細密画のような描写、言葉の洪水、改行がほとんどなく永々に続きそうな文体にはまり込むと、逃げ出せなくなります。その快感をぜひ味わってください。

★お知らせ 6月4日(月)5日(火)連休いたします

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「阿房と云うのは、人の思わくに調子を合わせてそう云うだけの話で、自分で勿論阿房だなと考えてはいない。用事がなければどこへも行ってはいけないと云うわけはない。なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う。」

という、とぼけた出だしで始まるのが、内田百閒の「第一阿房列車」(新潮文庫/古書200円)です。用事もないのに、ひょいと列車に乗る行程を「阿房列車」と命名、弟子の”ヒマラヤ山系”と旅に出た記録です。二人の軽妙洒脱な会話が楽しめて、旅のお供にピッタリの一冊ではないでしょうか。文庫本の表紙の内田センセはいかめしい顔つきで立っています。

これが、一條裕子によって漫画化され、3巻まで出版されました。第1巻「阿房列車1号」(小学館/古書500円)を入荷しました。どこか浮世離れしていて、小難しいけれでも、ユーモアもある作家として描かれています。

用事もないのに、長距離列車に乗るのだから、一等席をリザーブしたい、しかし、お金がなければ三等席もやむなしか。しかし、二等席には坐りたくない。

「どっちつかずの曖昧な二等には乗りたくない。二等に乗っている人の顔附きは嫌いである」などと、へ理屈をこね回しながら、ああでもない、こうでもないと悩む内田センセの姿が、可愛らしい。内田の無理難題と、わがままぶりに笑いながら、私たちも、この意味のない、しかし極上の旅に参加することになります。

原作にある「鹿児島阿房列車」の巻頭の文章が、私は好きです。

「六月晦日、宵の九時、電気機関車が一声嘶いて、汽車が動き出した。第三七列車博多行各等急行筑紫号の一等コムパアトに、私は国有鉄道のヒマラヤ山系君と乗っている」

「快調で無駄のない出だし」と森まゆみが解説で指摘しています。きりっと引き締まった文体が魅力の、鉄道紀行文学の雰囲気を漫画版も踏襲しています。というより、原作に魅力があるから、コミックに姿を変えても面白いのでしょう。何より列車の絵が上手い。後半(112p)に「西日を受けて 金色にきらきら光るレールの上を走って、第三四列車が這入って来た。」という文章に登場する電気機関車は、その通り、日の光りを一杯受けてきらきら走ります。

原作から読んでも良し。コミックから読んでも良しという「阿房列車」です。

 

「neoneo/ネオネオ」を初めて買ったのは、5号の「音楽ドキュメンタリー100/洋楽編」というタイトルに魅かれてでした。ロック、ソウル、クラシックと、ジャンルを問わず網羅し、音楽映画の歴史が語られていました。そして、もう一つの特集が「亀井文夫 戦争の記録」でした。戦時中、ドキュメンタリー映画「戦ふ兵隊」が反戦的と上映禁止、本人も検挙、投獄された作家の記録です。

その後、6号で「ドキュメンタリーのつくりかた」を総特集。企画から撮影、そして公開までを、様々な現場で活動する人達の声で追いかけています。TV「情熱大陸」のナレーター、坪田等のインタビューも収録されています。

7号では、「ノンフィクション×ドキュメンタリー」と題して、言葉で表現された世界と記録映像の間にあるものを探っていきます。オウム真理教の内側に挑んだ「A2」や、ゴーストライター騒動で注目された作曲家、佐村河内守を追いかけた「FAKE」を撮った、森達也の巻頭インタビューが刺激的です。

8号では、アジア映画の紹介を続けて来た評論家、佐藤忠男の巻頭インタビュー。「アジアのドキュメンタリー」が、「アジアと日本」「民族の歴史」「ジェンダー」「少数民族」というテーマに分けて論じられ、作品ガイドが続きます。池谷薫が、中国の圧政に非暴力で抵抗する人々を描いた「ルンタ」は、、私も観ました。私たちの知らない国、場所で、何が起こっているのかを知ることができる作品が並んでいます。

昨年出た9号の特集は「いのちの記録」です。様々な障害者、高齢者・介護、福祉、難病などの世界を取り上げた作品の特集です。視覚、聴覚障害部門では、前述の「FAKE」もセレクトされています。

そして、最新10号は「環境とネイチャー」特集です。探検家関野吉晴の「グレートジャーニー」は、TVでジリーズ化されて人気になりました。彼が、自らの旅を映像に残す意義を説くインタビューが、先ず面白い。ここで紹介されている作品は、観たものが沢山ありました。気候変動がテーマの「北極のナヌー」、「ビューティフルアイランズ〜気候変動 沈む島の記憶」、森との共生を描く「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」、「レイチェル・カーソンの感性の森」、自然の世界を描く「WATARIDORI」、そして海洋をえがいた古典「沈黙の世界」と傑作が並んでいます。

表層をなぞるだけで終るのではなく、骨太な企画の雑誌で、何事も軽ぅ〜くまとまってしまう風潮のなかでは、敬遠されそうなジャンルですが、当店ではバックナンバーも常備してがっちり販売していきます。(アート書架の下の平台に並んでいます。各1080円)

 

開催中の「本と遊ぶ ブックカバーとしおり展」

品切れになっていましたオバケダイガクさんの辺野古マップのブックカバーを、追加入荷しました。プレゼントなどに、楽しいブックカバーを探して下さい!

 

「たたって葵上を打擲した後も、それで六条御息所の心が晴れたのではない。それどころか、嫉妬に狂って、葵上を殴る自分の姿が、鏡に映ってはっと気づく。ああ、なんて醜いおのれだろう。こうして、彼女は、ますます深く暗い絶望の淵に沈んで行きながら、破れ車に乗って消えて行くのである。」

葵上への嫉妬を抑えられない六条御息所が、生霊となる能の名作「葵上」の解説です。嫉妬に駆られて怒りを爆発させたものの、自己嫌悪で愕然とするなんて、よくある事。それを「葵上」という物語の中で読み解いていきます。

「能」の解説本って、読んでいて面白いものって少ない気がします。「林望が能を読む」(青土社/古書1200円)は、著者が最初に書いているように「能の筋書きを書いたものではない。役者の秘事口伝なんてものを喋々したものでもない。ましてや、役者の演技評のようなものではさらにない。」という一冊です。物語に入り込み、いかにして読み解いていけばよいかを述べたものです。物語を解体して、その奥にあるものを引っ張り出すことがメインになっているので、能のことを知らなくても、結構面白く読めます。

例えば、自分は醜女だと信じている葛城の神が登場する「葛城」。彼女は、醜く呪われた姿を恥じながら、屈折した心情を舞いで表現していきます。けれども、観客から見ていると彼女が付けている面は、決して醜いものではなく、美しいものです。自分の容姿への引け目というのは、他人から見た欠点と一致するものではありません。ひょっとして、この女神の苦悩は、誰の心にも潜むコンプレックスを象徴しているのではないか。そして、こう言います。

「神の出る曲を、自分たちとは関係のない世界の話だと思ってはいけない。むしろ、能は、いつだって神や鬼の姿や心を借りて、私たちに普遍の『なにごとか』を語りかける芸術なのだ」

能は、古くさい伝統芸能だと思っている方も多いかもしれません。けれども、「能楽堂という建物は無いものと思ってください。青空のもと、きらきらする水面に、不思議の橋が浮かんでいる。空中の橋である。そういう超常的空間が、目前に出現している。そこに、この世のものでない『モノ』が現われる。能を観る、というのは、そういう経験なのである」という林の言葉から、想像力をフル回転させて鑑賞する、どうやらもっと自由なものらしいのです。

この世のものでない『モノ』との出会いを求めて、ちょっと能楽堂に出掛けるのも面白いかもしれません。

東京向島の甘夏書店さんが、ユニークな作家さんたちのブックカバーの展覧会を企画してくださいました。たった1週間の開催では勿体ないくらい、素敵なブックカバーや栞が並びました。

今回の参加作家は10名。それぞれユニークです。

以前からミニプレス「オバケダイガク」を扱っているオバケダイガクさんは、「辺野古大浦湾マップ」と「奄美大島海峡ぐるりマップ」を、歩き回ったまま、楽しいイラストにしてブックカバーにされています。(1枚200円・写真左)辺野古の生き物の多様性をみれば、今更ながらこの海を埋め立てて滑走路を作るなんて、本当に無謀な気がします。

イラストレーターの長縄キヌエさんの「お座敷読書少年」のブックカバー(5枚300円・写真右)とメッセージカード(400円)は、なんとも魅力的。昭和な香りが漂っていて、プレゼントに喜ばれること請け合い。そして、アトリエころりんのよつもとさんの手編みの美しいカバー(文庫サイズ2000円〜新書サイズ3500円・写真左)。隅々まで丁寧に作られていて、このカバーをかけた本は、最後までちゃんと大切に読もうと思いますよね。

seaslugsさんの布製のブックカバーには、カバーに合わせて選んだ文庫本付き(1500円・写真下)です(文庫本にブックカバー付きとも言えますが)。自分では選ばないかもしれない本が、気に入ったブックカバーについてきたら、新しい世界が開けるかも!本とカバーのセットを楽しんで下さい。

アトリエむぎばたけさんの、消しゴムはんこによるブックカバー(2枚350円・写真左)は、植物と動物柄。中でも植物は、「ビカクシダ」「サラセニア」など、かなりマイナーなものが素敵にデザインされています。聞けば植物関係の仕事の方とか。一方、ぐるりんさんは、ゴム版画から作られたブックカバーとしおり。シャープな線とおしゃれでユーモラスな絵柄が、ナチュラルカラーの紙にぴったり合っています(4枚250円・写真右)。なお、しおり(120円)の裏には、読書記録帳が印刷されています。

 

茶柱ブックスさんの新作ブックカバーは、カワウソ柄(2枚組300円)と、森の動物 柄(1枚250円)の2種類。なんとも愛らしい。どちらもしおり付き。他にカワウソと猫のしおり(写真左)と、「ここまで読んだ」「ここから読む」のプラカードを掲げた猫のしおりがあります。nemunoki paper itemさんのブックカバー類のデザインを見て、実は今回のブックカバー展をすることを決めました。だいぶ前のことですが、甘夏書店さんで購入された猫柄のブックカバーを頂いて、大好きな猫柄のものを私の本用に使っていました。今回は新作も含めて、ブックマークなどもたくさん出していただきました(ブックカバー5枚270円・写真右)。犬猫ファンの方、必見ですよ。

消しゴム版画のとみこはんさんのブックカバーを、初めて見てとても好きになりました。なんと紅白の蒲鉾と真赤ななるとの目出たい柄です(6枚540円・写真左下)。これが、本にかけられると、不思議にモダンでおしゃれ。猫・カステラ・鯵の開きという妙な取り合わせのブックカバーもありますよ。他にも食べ物関係の(たいやき・赤飯など)ポストカード(1枚162円)がいっぱい

 

そして、やぎ~ぬさんの彫紙アートで作られたブックカバー(1800円・写真右)。5枚以上の色違いの紙を重ねて、彫られています。その美しい仕事にも驚くのですが、描かれているのが、メロンパン・チョココルネ・ジャムトーストなどの甘いパン類で、ギャップに笑ってしまいました。春の甘夏書店でのブックカバー・しおり展に登場以来の人気商品だったとか。

10人の作家の力のこもったブックカバー、ぜひご高覧下さいませ。ホントに1週間では勿体ない!!!(女房)

★「辺野古大浦湾マップ」ブックカバーは初日完売しました。急ぎ追加入荷予定です。

甘夏書店の「本と遊ぶ・ブックカバーとしおり」展は、6月3日(日)まで。

12時〜20時 最終日は18時まで。

 

 

結城昌治「夜の終る時/熱い死角警察小説傑作選」(ちくま文庫/600円)。純文学系のちくま文庫が、結城昌治の警察小説のアンソロジーを組むとは驚きです。

第17回日本推理作家協会賞を受賞した「夜の終る時」を含めた5作品を収録しています。とりわけ表題作の「夜の終る時」は傑作です。警察官が主役の推理小説ですが、ジャンルを乗り越えた良質な小説です。

結城は、48年東京地検に事務員として就職したものの、肺結核で入院。その時、福永武彦と知り合い、推理小説を読むことを薦められ、50年代後半から作品を発表し始めます。そして63年に発表したのが「夜の終る時」です。実直な刑事が捜査中に行方不明になります。その刑事とやくざとの黒い噂が絶えませんでした。しかし、刑事はホテルで他殺死体として発見され、深まる謎を巡って刑事たちが歩き回ります。

小説の構成は、全体の80%が、犯人探しの本格推理。第二部に当たる残り20%が、犯人の視点から描いた倒叙もの、という独特の構成になっています。そして登場する刑事たちは、総じて地味なのです。昨今の警察小説に登場するようなスーパーヒーローはいません。1961年に始まったTVドラマ「七人の刑事」(と言っても、若い方はご存知ないかも…)みたいなシブいおっさんばかりです。

戦時中、おそらく特高だったような刑事が登場します。「被疑者の扱いは荒っぽいし、捜査も勘に頼って科学性に欠けている。」と描かれています。その一方、戦後育ちの刑事たちは、刑事を仕事と割り切り、「平穏な家庭と老後の安定に小さな望みを託している。どうせ出世の見込みもないのに、仕事のために生活を犠牲にするなどというのは、バカげたことだと考えている」連中が、同じ刑事部屋に詰め込まれています。派手な撃合いも、アクションもない、ひたすら歩き回り、考える刑事たちの日々を追いかけた小説です。

そして、ラストに犯人のこんな心情が綴られています。

「ふいに、海の風景が浮かんだ。おれは、待合室に出入りする人々を眺め、千枝の姿を求めながら、死ぬ場所を考えていた。海は、待合室にこもったタバコの煙のむこうに見えた。ざわめきは潮騒のようだった。」

犯罪にのめり込んでいった、男の悲哀までも描き出しています。こんなアンソロジーを出したちくま文庫はさすがですね。なお、昭和38年に出版された単行本(中央公論社/500円)も在庫しています。

「友人と12時に恵比寿駅の恵比寿さんの前で待ち合わせ。おしゃれな本を作ってくれるところがあるので、そこを紹介したいと言ってくれたので、行くことにした。奥さんと一緒に恵比寿をぶらぶら、途中道端に矢車草が咲いていたのでそこでパシャ。矢車草大好き!」

誰の日記の一節かわかりますか?

実は、人形作家四谷シモンの日記です。よくある、町歩き雑誌のライターの文章と思われたか、それともシモンらしいなぁ〜と納得されたでしょうか。「四谷シモン人形日記」(平凡社/古書1200円)の中からの抜粋です。本を開けると、エロチックで、感情があるようなないような人形作品が並んでいます。「機械仕掛けの人形1」というシモンらしい作品の次から、彼の日記が始まります。

「昨日浅草で、どじょう鍋を食べてドロドロになっちゃうかと思ったら、二次会もなく、皆さっさと帰ってしまったので、ドロドロ状態から逃げ出すことになったので、今日はスッキリ」

など、どうということのない文章が続きます。これが、退屈するどころか、何故か気持ちよくなってくるから不思議です。

かと思うと、目玉握りしめて制作に励む姿が登場します。

「ほれ〜天の恵み雨が降っている。今日はこの雨のおかげで、一日幸福な気持ちでいられる。」なんて文章に出会うと、彼の作り出す少女や少年の、どこか彼方を見つめているフワーッとした表情につながります。この本には、付録として描き下ろしポストカードが付いています。

ところで、「四谷シモン全編」(学研/古書1400円)という本の中に、「今年からNHKの大河ドラマに出演しています」という。えっ〜ほんまかいなぁ?という文章にぶつかりました。そういえば、四谷シモンは、唐十郎の赤テントで役者でしたね。

サウンドトラックのアナログレコードを、何点か入荷しました。聴いてもよし、飾ってもよし、というものをご紹介します。

リバイバル上映が決定した「危険な関係」(輸入盤4000円)。60年代の上流階級の退廃的な世界を描いた作品で、ジェラール・フィリップとジャンヌ・モローの、大人の雰囲気にしびれます。ふんだんにモダンジャズを使用していて、ジャケットデザインもスタイリッシュ。ドラムの御大、アート・ブレイキーの横顔の後ろにうっすら浮か上がるフィリップとモローの姿。ジャズと煙草とクールな恋の雰囲気が匂い立つようで、映画のポスターより、こちらの方が私は好きです。

もうひとつフランス映画、ミシェル・ルグランのゴージャスでジャズ感覚に溢れた傑作ミュージカル「ロシュフォールの恋人たち」(輸入盤2LP/8000円)。昨年、監督のジャック・ドミー追悼映画祭で、上映されていました。ドミー&ルグランコンビでは、「シェルブールの雨傘」が人気ですが、ミュージカルの楽しさを十分に味わえるのは断然「ロシュフォールの恋人たち」でしょう。主演の二人、カトリーヌ・ドヌーブ、フランソワーズ・ドルレアックの掛け合いは、フランスのエスプリ一杯です。一日を楽しく過ごすには、先ずこの音楽から(個人的な趣味ですが)。ジャケットを眺めているだけでも楽しい。

3枚目は、映画史上最も年齢の若い二人で演じられた「ロミオとジュリエット」(日本版500円)。レナード・ホワイティングとオリビア・ハッシーの演じる悲恋物語にうっとりされた方も多いと思います。表ジャケットは、オリジナルポスターをそのまま使用しています。二人の見つめ合う表情が初々しい。音楽は、巨匠ニーノ・ロータ。サントラには、一部、劇中の二人のセリフも収録されています。

最後にご紹介するのは、「男と女」のその後を描いた「男と女II」(輸入盤3500円)です。こちらもジャケットデザインがいいです。前作「男と女」で主演を演じた時と、十数年後の二人の横顔をレイアウトしてあります。恋に落ちた若き日の二人と、中年に差し掛かった二人。3枚の写真に時の流れを感じます。

レコードプレイヤーのない方にも、アート作品としてお部屋に飾ってほしいジャケットです。

店内で「危険な関係」のレコードを鳴らしていた時、来店された美しい方がこちら(→)です。ジャンヌ・モローのファンかもしれませんね。