最近の日本映画では、スケール、内容共に「シン・ゴジラ」に勝るものはないと確信していました。しかし、これを上回る評価を得た映画がありました。

こうの史代の全3巻に及ぶコミック「この世界の片隅に」を映画化した、同タイトルの映画化作品がそれです。戦時下の昭和19年に広島から呉に18歳で嫁いだ主人公すずの日常を描いたアニメ映画で、監督は片淵須直。

映画はほぼ原作通りの、平和で穏やかな毎日を送っていたすず一家が、日米戦争に巻き込まれてゆく姿を描いていきます。劇中、こんな台詞があります。

「誰もが笑って過ごせればいいのにねぇ〜」

静かにうつろいゆく四季を感じながら、すずとその一家は、ゆったりとした時間の流れの中で、笑みを絶やさずに暮らしていたのですが、戦争がすべてを奪っていきます。アニメならではの透明感のある色彩感覚を駆使して、戦時下の日常が描かれます。感情過多になった画面を見せなかったがために、逆に戦争で奪われた平和な日々の愛しさが胸に迫ります。

ラストシーンがまたすばらしい。なんとか生き延びたすず達は偶然出会った戦争孤児を育てます。エンドクレジットと共に、その子が大きくなってゆく姿が映し出されます。平和で楽しい一家の姿は、しかし、戦争さえなければ、この子は母親とも死別することはなかったはず。私は戦争を憎む、という製作者達の思いが静かに伝わってきます。

エンドクレジットがそこで終わるかと思いきや、名前がズラリと登場します。

映画の製作者はその制作費の一部をクラウドファンディングで調達することを企画しました。その求めに応じて投資した数多くの人達の名前が、最後に登場するのです。一人一人から、私たちも戦争を憎む!という声が聞えてきそうでした。

そうして完成した映画は、最初は小さな劇場で公開されていたのが、大劇場で拡大公開されるにまで至りました。戦争のことを分かっていないゴルフバカの(あの)二人とは違う、良識のある人が、まだまだこの国には沢山いたのです。因みに最初の公開館数は36館でしたが、本年2月時点で約300館。動員数150万人。お見逃しなく。

 

 

 

2月22日はニャンニャンニャンの日!偶然にも今日から「猫」の絵の展覧会が始まりました!

『ねこのように』というタイトルがついていますが、その意図をお尋ねしたところ、

「彼ら(猫)は、とくに野良なんかは、自分のやるべきことをよくわかってて、風のふくまま・気の向くまま・なるようになる、そんな彼らみたいに、僕もとにかく今やるべきことをやって、気持ちよく生きて行きたいなあ、というような意味合いを込めています。」とのお答え。

猫は飼っているとよくわかりますが(うちにもふてぶてしい奴が一匹おります)、本当にわがままで、マイペース。言う事もきかないし!と思いながら、時に甘えるしぐさは可愛く、寝顔は極上。飼主は言いなりです。高原さんは、実はアレルギーで猫と住んだことはないのだそうです。その分、じっくり観察して絵に仕上げていかれるのではないかと思いました。猫の造形そのものが、好きなんですね、きっと。だからでしょうか、高原さんの猫たちは、甘いところがなく、すっきりとした佇まいで、こちらとの距離を測っているように見えます。

 

世の中、猫ブームとかで可愛い猫があふれていますが、ぜひ、クールで美しい高原啓吾の猫に会いにきて下さい。

 

 

なお、作品はすべて販売しております。今回の個展に合わせて「手ぬぐい(640円)」「ポストカード各種(162円)」「トートバッグ(1944円〜)」など、ステキなグッズもあります。(女房)

「ねこのように」展は、2月22日(水)〜3月5日(日) 月曜定休

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山形おきたま発のミニプレス「nda nda!」(750円)が届きました。

特集は「本でつながる人、店、まち」。山形県の置賜(おきたま)エリアで開催されているブックイベント「Book! book! Okitama」を紹介した一冊です。このイベント、会場の川西町フレンドリープラザを中心に近隣の市町村を巻き込んで、数十カ所の会場で本に関する企画を行うという、本好きなら行ってみたい催しです。

日々イベントを開催することで有名な東京の書店「B&B」オーナー、内沼晋太郎とブックカフェ「6次元」オーナー、ナカムラクニオの本で繋がる人と店、そして町をテーマにしたトークショーが採録されています。

そして、当店でも人気の高野文子著「ドミトリーともきんす」(中央公論新社900円)の編集者、田中祥子が、その制作過程を振り返るトークショー「『ドミトリーともきんす』漫画で読み解く詩と科学が交わるころ」に呼ばれた時のことを語ります。

トークショー「装丁家が語る本のあれこれ」に登場した装丁家、桂川潤が、出版危機という言葉に右往左往するよりも、「『本のある風景』が広がりつつある現実」を見つめることの方が大事だと語っていますが、その通りです。

「『本のある風景』に、わたしの生業とする装丁も含まれています。わたしたちは本を手に取り、本をとおして人とつながり、暮らしと地域を見つめなおしていきます。」

これが、あるべき姿だと思いました。

一箱古本市発案者、南陀楼綾繁も登場します。彼はトークショー「ナンダロ〜ド本の旅あるき」とワークショップ「自分新聞を作ってみよう」に参加しています。小さい時、45回転のEPレコードをブーメランよろしく片っ端から投げた話、オレもやったなぁ〜とあの時代を思いだします。LPレコードはあまり飛びませんでしたね。

と、なんだかとても楽しそうなイベントだらけですが、2014年からスタートしました。この本はその3回目をレポートしています。全国発の企画「図書館宿泊」レポートに、読書にピッタリの置賜地方のおやつの紹介など盛り沢山な内容です。

本の危機を叫ぶ一方のマスコミのばかりの中で、地方都市でこんなステキなイベントをやっていることを忘れてはいけないと思います。

置賜で商いをする方々がすすめるこの一冊というコーナーまであって、なんだかそこで暮す人達と、知り合いになれた気がするミニプレスです。

 

★レティシア書房は20日、21日と連休いたします。22日(水)から高原啓吾作品展『ねこのように』が始まります。

 

 

レティシア書房「女子の古本市」も、いよいよ明日までとなりました。出品されている本の紹介も本日が最後です。

遊知やよみ「福家堂本舗」(集英社文庫7冊で1800円)は、全7巻のコミック文庫です。

「難儀どすなあ あそこのおっしょさん気むずかしいよってに 色やら形やらまた難癖つけてきまっせ」

というおかみさんの台詞で始まる、創業450年の京都の老舗和菓子屋の三姉妹の青春物語です。顔見せ興行に出ている歌舞伎役者が、ひょっこりこの菓子屋を訪ねたり、細かい京都の行事を織り込んで描かれていきます。ちなみに前出の台詞を、微妙な京都弁のイントネーションでしゃべるのは、朝ドラでもかなりハードル高そう。実際に創業400年くらいの和菓子屋はあります。京都の老舗はコワイ……。

前から読んでみたかったノンフィクションが出ていました。チベットにある世界最大のツアンポー峡谷に挑んだ角幡唯介著「空白の五マイル」(集英社700円)です。

「世界最大の規模を誇るチベットのツアンポー峡谷、私はそこを探検しようと思っていた。欧州の探検家から地元チベットの冒険的ラマ僧まで含めて、人跡未踏といわれるこの峡谷の初踏査をやってやろうという野心家は、この100年でざっと二十人から三十人はいただろう。」

しかし、誰も完全に成功していない、そんな場所への単独行を綴った紀行ノンフィクションの傑作として、発売当時は高い評価を得ました。ついに、古本市に出たか!誰も買わんかったら、買いまっせ。

今回の古本市には、佐野洋子の本が数店舗から出ていました。今でも文庫では容易に入手できる「わたしいる」の函入のハードカバーは珍しいかも(童話屋/初版1000円)。彼女の作品は、やはりこういう大きな版型で見た方が、その個性がよく分かってきます。もう一点は、「あっちの豚こっちの豚」(諸学館600円)です。元々、87年に小峰書店から発行された時は、作・佐野洋子 絵・広瀬弦という親子競演で出されました。しかし、彼女の死後、佐野自身による原画30点が発見され、これは、その原画を収録した復興版です。巻末には、オリジナル版に収録されている作品21点が採録されていますので、比べてみると面白いですね。

★「女子の古本市」は明日18時までです。20日(月)、21日(火)は連休いたします。

いよいよ、古本市も残り3日となりました。連日、多くのお客様にご来店いただきありがとうございます。さて、本日は、へぇ〜、こんな本があるんだ〜というものを紹介します。主宰者として、出店されている方々の本から、新しい知識や情報を得る事ができるのが何より楽しいです。

先ずは、稲泉連著「復興の書店」(小学館文庫250円)。東日本大震災で被災した書店の数、391店舗(岩手、宮城、吹福島)という壊滅的な数字でした。しかし、三月末早くも再開にこぎ着けた書店が仙台に何店かあります。日々の生活もままならないのに、本屋が必要か??しかし、開店した途端、ななんと長蛇の列!。そうか、本は生活必需品だったのか!その開店までを追いかけたのが本書です。震災直後、流通ルートも大混乱している最中、「生きている本屋も殺す気か」と、煮え切らない大手取次ぎ業者に言い寄り、流通を再開させた地元書店の社長の話など、およそ本に携わる者、紙の本を愛する者は読んでおかねばならないと思いました。

この作家は知りませんでした。著者の名は木原音瀬。調べてみるとBL(ボーイズラブ)系の作家として有名な方だとか。講談社文庫から出ているのが二冊ありました。「美しいこと」(200円)、「箱の中」(200円)です。どちらも表紙に描かれているのは男の子なのですが、とてもステキなセンスだったので、パラパラと読んでみました。。「美しいこと」は、簡単に言えば、才色兼備の女装男子と極めてダサい無能な草食男子のプラトニックラブストーリーで、BL業界語で言うと「ヘタレ攻め」ものに区分されるそうです。もう一方の「箱の中」は、痴漢のえん罪で刑務所に収監された男が、そこにいた殺人犯の男の愛情と優しさに救われてゆく話です。こちらの解説は三浦しおんが書いていて、木原の作品は「真実の愛が、いかに人間を救い、そのひとの生を豊かで深いものにするか」を繰り返し描いていると評しています。

次の紹介する作家の文章の一部を、とあるジャズ喫茶のノートで見ました、それは

「目をとじるんじゃない、耳をふさぐんだ。耳なんかに惑わされるんじゃない。必ずしも耳で音を聞くとは限らないのだ。目をしっかり開けておくことだ。そして、音を視ることだ。」

大音響で響き渡るジャズ喫茶で、こんな文章を書くなんて、カッコイイなんて思ったんでしょうね。その文章の最後のあった清水アリカという作者の名前から、この言葉が「革命のためのサウンドトラック」だったことを知り、早速購入して読みましたが、ワカラン……と、放り投げた作家です。清水の事を調べてみると、同志社大学卒業後、広告業界で仕事を執筆を続け、この小説で「すばる文学賞」を受賞するも、2010年47歳の若さで、この世を去りました、遺した小説はわずか4冊。彼の全小説と未刊行作品、遺稿等をまとめたのが「清水アリカ全集」(河出書房2200円)です。中上健次風のところもあるのですが、あの濃密感はなく、もっとスマートです。もう一度トライしてみようかな。

★古本市は19日(日)までです。20(月)21(火)は連休いたします。

「女子の古本市」では、絵本専門店も参加されていることもあり、夏の古本市に比べて多くの絵本が出ています。大人向け、子ども向け様々な絵本の中から数点ご紹介いたします。

「雪のひとひら」で我が国でも知られるポール・ギャリコの文章に、アンジェラ・バレットが絵を描いた「スノーグース」(あすなろ書房600円)は、第二次世界大戦中のイギリスの人気のない海岸に住む青年画家と傷ついたスノーグースを抱えてきた少女のお話です。静謐で、孤独な影に満ちたタッチの絵にギャリコのストーリーがピッタリなのですが、戦争がすべてをぶち壊すラストは辛い…..。

「走れウサギ」、「カップルズ」等の小説でファンも多い作家ジョン・アップダイクが12ヶ月を詩で表現し、長田弘が翻訳した「十月はハロウィーンの月」(みすず書房600円)は詩と絵(ナンシー・エクホート・バーカート)のコラボによる不思議な絵本です。2月の詩は「ちょき ちょき ハサミの音がする ハートのかたちを 紙から みんなが 切りぬいているのだ ヴァレンタイン・ディのために」で終ります。それぞれの月に登場する子どもたちの絵がステキです。6月の「太陽がいっぱい。よろこびもいっぱい。金の時間に 銀の日々。」の詩には、海辺で遊ぶ少年と少女が描かれていますが、開放感のあるページで、初夏の太陽の眩しさがいっぱい

一度は読んだことのある船乗りシンドバッドの物語は、ペルシャやアラビアの古いお話を集めた「千一夜物語」の一部分ですが、ルドミラ・ゼーマンが絵本にしたのは「シンドバッドのさいごの航海」(岩波書店700円)。この本は先ず、その細密な絵を楽しんでいただきたい絵本です。象の表情なんか実に見事です。ルドミラ・ゼーマンはチェコ出身の絵本作家で、シンドバッドの奇想天外なお話を三冊の絵本にしています。後、二冊も探してみたくなりました。

谷川俊太郎が翻訳した本は二冊出ています。マーガレット・ワイズ・ブラウン(作)、レナード・ワイスガード(絵)のコンビによる「しずかでにぎやかなほん」(童話館出版500円)と「あかいひかり みどりのひかり」(童話館出版500円)です。どちらも、色使いとデザインがかっこいいのですが、特に「しずかでにぎやかなほん」の画面のモダンな感覚は上手いと思いました。谷川の翻訳も自由奔放な構成で絵本に溶け込んでいます。

最後に絵本ではないですが、一点。数年前になくなったイラストレーター、フジモトマサルが表紙の絵を書いている「創作市場研究所01羊のスケッチ」(マリア書房700円)は羊毛やフェルトに関心のある方のために編集された本ですが、フジモトファンは見逃せない一冊です。

「女子の古本市」は19日(日)まで。最終日は18時で閉店いたします。 

 

精神分析の専門家が書いた落語の本って、小難しそうな感じがあります。しかも版元はみすず書房という人文出版社の大御所となると……..。これ藤山直樹「落語の国の精神分析」(1500円)です。「孤独と分裂−落語家の仕事、分析家の仕事」なんて章から始まるので、尚更難しそうですが、著者の文章が平易で、トントンと頭に流れ込んでくるので、面白い一冊です。巻末には立川談春との対談も付いています。

天才的な童画作家、武井武雄の長女三春が父のことを綴った「父の絵具箱」(ファイバーネット800円)もいい本です。お父さんの七回忌を機に、脳裏に浮かんでくる父親の側面を描いた武井武雄の一生です。もちろん、多くの武井作品が掲載されていています。「一生の持ち時間を、父は父流に生き、悠然と使い切ってさっさといなくなってしまった。死ぬ用意など全くしなかった。父らしい引き際であったと思う。」と三春は語ります。中程に収集した郷土玩具に囲まれてニンマリしている武雄の写真をみ見ていると、幸せな時間をいきたからこそ、誕生した多くの作品だったのでしょうね。

ジェーン・グドールという霊長類研究者のことをご存知でしょうか。星野道夫ファンなら、彼の「ゴンベの森へ」に登場する学者だなとお気づきの方もおられるかもしれません。そう、星野がわざわざ会いに、アフリカまで出かけた学者です。チンパンジーと共に生きた彼女の生き方を、自ら文章にしたのが「森の旅人」(角川書店600円)です。「わたしのささやかな思想と信仰のどこかに、読者がなにかをみつけてくださり、人生の旅路の行く手を照らす小さな光として役立てていただければ」と書いています。アフリカの奥地の過酷な環境の中で、チンパンジー達と生きた彼女の魂の遍歴。掲載されている穏やかで、知性的な面立ちの彼女の写真の撮影者は星野道夫でした。

グイグイと小説の世界に引込む力を、最も発揮しているのはたぶん小川洋子だと思います。私は、彼女の本を買って、損をした、時間の無駄遣いをしたという記憶がありません。彼女の長編「ミーナの行進」(中央公論社650円は出品されたお店の熱意が溢れています。)にはポップが二つ付いていて、一つにはお店のブログで紹介したこと、そしてもう一つには、小説の中に登場する司書の青年のこんな言葉が書かれています。

「何の本を読んだかは、どう生きたかの証明でもあるんや」

こんな台詞見たら、読みたくなるよね。

「女子の古本市」は19日(日)まで。最終日は18時で閉店いたします。


 

 

 

「女子の古本市」も後半戦です。まだまだ。面白い本で溢れています。今日は短篇小説をピックアップします。

めったに時代小説は読みません。レティシア書房の古本市でもめったに時代小説は出ないのですが、今回は一点ありました。藤沢周平「日暮れ竹河岸」(文藝春秋400円)です。以前、当店で朗読会を行った時、取り上げられたのが藤沢周平でした。渋いギターを伴奏に、読み上げられる静かな世界に聞き惚れました。この本も19編の市井に生きる人びとの息づかいが描かれています。斬ったはったのない静謐感漂う世界を楽しんでいただきたい一冊です。

講談社文芸文庫から「戦後短篇小説再発見」という全16巻のシリーズが出ています。その第8巻「『私』という迷宮」(400円)。梅崎春生「鏡」、島尾敏雄「夢屑」、吉田健一「一人旅」、遠藤周作「イヤな奴」など11編が収録されています。この中で、島尾敏雄「夢屑」は以前読んだこともあり、再読してみました。夢の断片をつなぎ合わせたような作品ですが、誰もいない図書館でのいい知れぬ不安、最初の数十行はまるでホラー映画の滑り出しみたいな印象だったことを思いだしました。

装丁がステキで手に取ったのが折口真喜子の「踊る猫」(光文社350円)。主役は俳人、与謝蕪村。彼がふと見た妖しい世界を描いた連作小説です。出店者が、この本にポップを書いて挟んでおられましたので、ご紹介します。

「『河童の恋する宿や夏の月』京都を舞台に描かれる少し不思議なものがたりたち。ほっこり暖かい読後感の良質な連作短篇集」

京都の季節の移ろいを描きながら美しくもはかない物語が綴られていきます。本のタイトルにもなった「踊る猫」は残暑厳しい京の夏が舞台です。

最後に異色の一冊。青山南の「アメリカ短篇小説興亡史」(筑摩書房600円)です。今人気の翻訳家、柴田元幸に先行する翻訳家で、アメリカ文学は村上春樹ではなく、この人に紹介してもらった記憶があります。何故、アメリカの短篇小説が面白いのかをめぐるエッセイです。雑誌「ニューヨーカー」が、短篇小説の発展に寄与したことは間違いないのですが、この雑誌は多くの有名作家の原稿をボツにしたことでも有名で、サリンジャーも、何度もボツにされたとか。一度だけ採用寸前までいったものの、やはりボツにされたのが、「ライ麦畑でつかまえて」でした。

「女子の古本市」は19日(日)まで。最終日は18時で閉店いたします。

 

古本市も前半一週間が過ぎようとしています。京都市内だけでなく、寒い中、遠方からも多くのお客様にお越しいただき、ありがとうございます。本日も面白い本を紹介いたします。

我が国における本屋の歴史を知る上で、資料的価値の高い鈴木敏夫著「江戸の本屋」(中公新書上下セット600円)は、上方で生まれた本屋という形態が、江戸時代最初の頃の活字版ブームと共に、広がっていく過程を資料をもとに解説してあります。上巻の「大阪出版界の興隆」は、近松門左衛門の人気に伴って浄瑠璃本がブームとなり、それまで出版界のイニシャティブを取っていた京都に迫る勢いをもった時期を描いていて、地元の話だけに興味津々でした。この新書発行は昭和55年。絶版です。

図録も何点か出ていますが、ロバート・キャパ&コーネル・キャパ「キャパ兄弟子どもたちの世界」(東京冨士美術館700円)は珍しいかも。ロバート・キャパの弟のコーネルも、写真家だったとは知りませんでした。この写真展は、二人が撮影した世界の子どもたちを一堂に並べたものらしく、兄ロバートは、日本軍が侵略する中国大陸に赴き、戦地の子供たちのスナップ写真を撮っています。弟の方は、60年代から70年代にかけて、貧困にあえぐラテンアメリカ諸国を撮影しています。報道写真に近いのですが、子供たちを通して平和への希求を表現しようとする姿勢も見えてきます。なお、弟コーネルの方は2008年90歳でこの世を去りました。

村上春樹関連本って山のように出版されていますが、飯塚恒雄著「ポピュラリティーのレッスン」(シンコーミュージック800円)は、サブタイトルに「村上春樹長編小説音楽ガイド」とあるように、音楽的側面から論じた一冊です。著者は、かつて新谷のり子の「フランシーヌの場合」とか、ベッツィ&クリスの「白い色は恋人の色」などのヒット曲を生んだプロデューサーです。1960年生まれ。アメリカンポップスと荒井由美と村上春樹にはまった青春時代を送った人物です。村上春樹と荒井由美という二人に類似点を探すくだりは、この二人のファン必読です。

音楽関係では、ミュージシャンの矢野顕子のレアな文庫が二点出ています。「きょうも一日楽しかった」、「街を歩けばいいことに当たる」(どちらも角川文庫各300円)写真をいっぱい使った、好奇心旺盛な彼女らしいエッセイ集です。「街を歩けばいいことに当たる」は、矢野顕子ならではのNYガイド。「きょうも一日楽しかった」には、忌野清志郎とのツボ押し、東洋医学談義という楽しい企画もあります。

★古本市は19日(日)18時までです。13日(月)は定休日です。

 

「三三九度」。ご存知ですよね。実際に経験された方も、結婚式場で見られた方も多いと思いますが、神崎宣武著「三三九度 日本的契約の民族誌」(岩波書店500円)は、面白そうです。著者は宮本常一の下で民族学を学んでいて、学者でありながら、稼業の神主を務める方です。この本は「三三九度」に始まり、「親子盃」、「兄弟盃」そして「襲名盃」など、契約の場に必須の酒と盃について論じてあります。第二章「テキヤ社会における盃事」の詳細な論考は、その手の映画が好きな方なら、私も含めて熟読すべき内容です。

最近の京都ものでは、ダントツに面白かった、いしいしんじの「京都ごはん日記」(河出書房新社500円)も出ています。松本から京都へ引越してきてからの京都暮らしを描いた、2009年2月28日から2010年1月までの日記です。日々の献立から、観た映画のこと、食べにいった場所のことなどが詳細に書かれています。

「晩ごはんは、丸太町まで歩いていき、御所のそばのマダム紅蘭で『上品な八宝菜」(メニューにそうある)」なんて文章に出会うと、あそこの中華は美味しいのよねと思いだしてしまいます。」

今や、使う人も少なくなった絵はがき。でも、大きな古本市に行くと、必ず絵はがきだけのコーナーがあって、熱心に探しているお客様を見かけます。そんな絵はがきの歴史をパースペクティブに描いた細馬宏通「絵はがきの時代」(青土社1900円)は貴重な一冊です。聖霊降誕祭の透かし絵はがきなんてもの(実物の写真り)まで存在したんですね。奥が深い世界です。

「奥が深い」と言う意味では、この本も極めて異色です。藤波公浩二著「場所別 性の自由」(駿河台書房600円)という一冊。「セックスはベッドだけのものではない」というサブタイトル通り、まぁ、エロ本の一種と言えばそうなんでしょうが、今なら素っ裸の女子が大胆なポーズで見せるのですが、これみんな着衣のまんまなんで、笑ってしまいます。全然エロっぽくない!少なくとも、ネットに叛乱している画像に比べれば、品があります??

★「女子の古本市」は19日(日)まで開催です。月曜定休日。最終日は18時まで。