NYで最も愛された書店、イーストサイド74丁目にあったその名は「ブックス&カンパニー」。

恵文社一乗店店長の堀部さんの本「本を開いて、あの頃へ」(サンクチュアリ出版600円)を読んでいたら、「ブックストア ニューヨークで最も愛された書店」(晶文社700円)の事が書いてあった。ジャネット・ワトソンが始めた独立系書店「ブックス&カンパニー」。ポール・オースターらの作家に愛され、多くの朗読会を主催し、本好きの聖域となった書店。この書店を97年閉店の最後まで支えたのが、ウッディ・アレンだった。自身の監督作品「世界中がアイ・ラブ・ユー」にもちらっと登場する。(この人程、本屋がちらっと登場する映画を作る人はいない)

堀部さんは、この本のことを書きながら、こう言っている。

「本を愛好する者たちが、本屋に求める最たることは『そこにしかない店がそこにあり続けてくれる』ことである」

新刊、古本を問わず、真摯に本屋に取り組んでいる諸氏の思いだろう。そこにしかない店を保ち続けるのは並大抵のことではない。本のある空間が至福の時間を醸し出す事で、人は始めて、その人にとっての、いい本に巡り会うのかもしれません。

そういえば、日本映画「読書する女」のエンドタイトルで、ヒロインの書架一杯に置かれた本の部屋。あるいは、「森崎書店の日々」に登場する、小さな古書店の棚の間。どちらにも、本の静かな佇まいが至福の時を演出していました。

ところで、書店員時代、この映画見た?と回りの書店員に聞いて回りましたが、全滅でした。なさけない。本屋大賞受賞セレモニーで、受賞作品の自分で作ったポップ持って、キャッキャッしていた、そこのねえちゃん、そんな暇あったら映画館に行きなさい。

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みすず書房が発行している「大人の本棚」というシリーズ、は本好きにはたまらんラインナップです。

2001年からスタートしたこのシリーズは、ちょい玄人好みの作品集を連発してきました。今、店にあるのは山田稔散文選「別れの手続き」、湯川秀樹博士が60年代初期に発表していた「本の中の世界」、庄野潤三が55年日経に連載していた「ザボンの花」 、名エッセイスト早川良一朗の円熟のエッセイ集「さみしいネコ」そして、吉田健一の「友と書物と」です。

これまでに販売したのが、小津安二郎の軽妙な語り口の「東京物語」、短編の名手。小沼丹の「小さな手袋」そして、野呂邦暢の「夕暮の緑に光」と本好きなら、いいねぇ〜と言ってもらえる作品ばかりです。講談社が出している文芸文庫に近いラインアップですが、このシリーズの方が、グレードは上です。

内容もさることながら、紙の品質、行間、字の大きさ、そして全体のデザインの落ち着いた佇まいが、気持ちを穏やかにしてくれます。私が新刊書店員だった頃から、ご贔屓にされている方は、少なくありませんでした。書物らしい、書物と呼ぶべきシリーズです。だから、古本市にもあまり出ませんし、古本屋さんでもあまり見かけません。ネットでは見かけますが、新刊の価格と変わらない値が付いています。

きっと、買われた方が、大事に持っておられて、ほっとしたい気分の時に、本棚から出しては、パラパラと読んでおられるのではないか、と想像します。本にとっても至福の時を楽しんでいるんだと、売る方もふっと微笑むことのできる貴重なシリーズです。

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展示会に会わせて、音楽をセレクトしています。

と言っても、そんなにコレクションがあるわけではありません。だから、1枚か2枚を選んで何回もかけています。例えば、上村さんの野生のドールシープの写真展の時は、ネィティブアメリカンの血が混じっているリタ・クーリッジのサウンドが、廣田さんの個展の時は、矢野顕子のサウンドが展示会を盛り上げてくれました。

そして、今回展示している斎藤さんのアフリカの素描展に、ピッタリ音楽を見つけてきました。先ずは、マリ出身のミュージシャン、アリ・ファルカ・トゥーレとライ・クーダが組んだ「トーキング・ティンバクトゥー」。アリのサウンドのルーツはアメリカのブルースですが、乾いた大地を吹き抜ける、ちょっと冷たい風を肌で感じさせてくれる豊穣なアフリカンサウンドが、展示されている作品にマッチしています。アフリカの早朝って、こんな感じの透明感があるんだろうと思わせてくれるサウンドプロデュースもお見事です。(CD900円)

もう一枚、渡辺貞夫の「MY DEAR LIFE」。早くから、アフリカのサウンドを取り入れていたナベサダ1990年のアルバム。正当的ジャズサウンドから、よりメロディアスで、ポップな音へと舵を切った時代の作品です。疾走するチータや、ゆっくりと移動する犀の姿が浮かんできます。このアルバムには、ある世代には郷愁を呼ぶ曲が入っています。それは、FM大阪で、毎週土曜日深夜放送されていた「ブラバスサウンドトリップ」で使用されていた「マイ・ディア・ライフ」です。曲の雰囲気は、真冬の昼下がりにコートの襟を立てて歩くみたいなイメージなんですが、このアルバムでは見事アフリカの風土にとけ込んでいます。このアルバムをかけた時、リズムをとりながら作品を見ておられたお客様を発見しました。(CD900円)

こうして、作品をバックアップできる音楽があれば、もっと楽しんでいただけると思っています。ちなみに、アート関係の書架の上に飾ってあるLPジャケットも展示会に合わせています。(まぁ、店主の密やかな愉しみですね)

 

 

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レティシア書房ではただいま「斉藤博素描展  1972年乾期東アフリカ・サバンナの旅にて」が開催中です。

斎藤先生は40年にわたり精華大学で教鞭をとられ、大学長も勤められて、たくさんのアーティストを育てて来られました。そして、今も現代美術の分野でご活躍中です。

 

先生の作品は、普通の家の中ではどうも収まりきりません。それで手元に置く事はあきらめていたのですが、レティシア書房の白い壁に掛けたくて、昨年ギャラリーヒルゲートさんで思い切って『足跡』という作品を購入しました。

 

『足跡』という題名もこれから船出する店の壁にふさわしいと思いました。

いつもレジの後ろの壁にライトアップして飾っています。(個展が終わってもこれだけはありますので、ご覧下さい)

で、そこからもう一歩、これまた思い切って個展をお願いいたしました。

 

かつて、精華大学で展示されていたアフリカの旅のスケッチが大好きだったので、並べて頂けないかと、厚かましいのを覚悟で頼んだところ、きっと開店ご祝儀だろうと思うのですが、快く受けてくださいました。

 

そして、並んだスケッチのいいこと!

想像していたよりずっと本屋の壁に似合うのです。何度も下見を兼ねてきて下さっていたので、もちろん先生のセレクトが成功したのですが、ホントにすっごくいいんです。

 

初日から3日目、作品の入れ替えがありました。

『足跡』の感じがよいということで、スケッチを一つ下ろして、コラージュ作品の追加です。この個展のために急遽作って下さったもう一つの『足跡』。さらにCDの棚の横にも3つめの『足跡』が。(火曜日、水曜日に来られた方、もしお時間があればもう一度お越し下さい)

本がぎっしり並ぶ本屋の片側の壁を、ギャラリーにしようと言い出したのは私でしたが、作品だけをゆっくり見られる空間とは違うので、毎回展示の難しさを痛感しています。

 

これまでの風景画展や、写真展もかなり悩みながら、しかしそれなりに美しく展示できたと思っていたので、きっと先生の素描展はいいぞ!!と確信していました。

そこへ先生がコラージュを掛けて下さった事で、これもイケル!と、また元気がでました。

で、「先生!次回は新しい作品でおねがいできませんか!!!」と、つい叫んでしましました。どこまでも厚かましくてスミマセン。(女房)

 

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東映は、私にとっての聖地です。

任侠、実録、エログロ路線の大量のプログラムピクチャーが、私をこのような真面目で、誠実な人間(笑い)にしてくれました。強きを助け、弱きをくじく。自分には甘く、他人には容赦しないという人生の指針はこの時出来上がりました。

戦時中、満州に作られた満映。傀儡政権のもと、とんでもないアナーキーで、ええ加減な映画を制作していた連中の生き残りが、日本に引き揚げて、設立した映画会社が東映です。よって、この会社のアナーキーな性分と、ええ加減さは大陸譲りです。人の騙し方、貶め方、下品な振る舞い方、そしてスケコマシのやり方まで教えてもらいました。売れる!とわかった路線は徹底的に、観客にそっぽ向かれるまでやり続ける。この経営方針でがんばってきました。そして、多くの職人肌のプログラムピクチャーの監督がいました。

今回、そんな監督の一人、小沢茂弘をインタビュー中心に捉えた貴重な一冊「困った奴ちゃ」(2000円)を入手しました。この本を出版したワイズ出版は、映画がほぼ専門の、しかも日本映画が専門のユニークで、愛すべき出版社です。

で、小沢監督。生涯113本の映画を監督。時代劇から、やくざ映画、果ては「人間魚雷回天特別攻撃隊」まで監督。まぁ、凄いです。作家主義なんぞ、どこ吹く風。もう、いてまぇ路線です。

でも、若山富三郎の後家ご開帳物や、大奥リンチ物や、梅宮パパの絶倫物や、不良番長物、そして頭の中身はぱっぱらぱぁ〜、マッチョだけの千葉ちゃんのゴルゴ13物等を、大学にも行かず、真っ昼間から見ていると、なんで、こんなとこに俺はいるんだという後悔の気持ちで、もう落ち込んだりもしました。

でも、東映社長岡田茂の葬儀で、弔辞を読んだ尊師菅原文太が、偽善にみちたこの社会を引っ剥がす映画を東映が作ります、という様な趣旨の事をおっしゃっていました。 この尊師のお言葉をどこかで信じて、映画館の闇に沈みこんでいたのかもしれません。

 

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ウッディ・アレンの新作「ミッドナイト・イン・パリ」は名人の落語を聴いた後の心地よい酩酊感に浸れる傑作だ!

アメリカ人好みのハイソな生活を求める女と、パリの街の文学的臭いにラリっている男のすれ違いドラマと言えばいいのでしょうか。仲違いした男が、真夜中のパリの街をフラフラしているうちに、ひょっとタイムスリップ。ヘミングウェイ、T.S.エリオッット、ダリにブニュエルまで登場する奇妙なお話ですが、その芳醇な映画作りとお話のもって行き方に、お見事!の一言です。そして、タイムスリップものの作品としてユニークなのは後半。ヒロインがなんと●●●●●●●●してしまい、こんな事を言ってしまう「●●●●●●●●●●●●●●●●●」で、主人公がそんなヒロインに対して、いやそうじゃない「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」。そう、映画のテーマはそこなんですが、言えません。このネタばらしたら、映画を見る意味がなくなってしまいます。ラストシーン、見事なオチで話は終わります。ホント、お後がよろしいようで、です。上映時間も90分。いいですねぇ〜。美味しい

なお、映画にはセーヌ川付近の古本屋の均一台で、本を見つけるシーンやら、一度は行きたい「シェイクスピア&カンパニー」書店も登場します。そういう意味では本好きもぜひ見るべき映画です。

ところで、お店に「洋酒天国43」が入ってきました。特集が「西部と拳銃」なつかしい西部劇の名シーンもあります。拳銃に因んで、カクテルの紹介も「ショット・イン・ザ・アーム」と盛りだくさんで、700円です。

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「「1972年乾期東アフリカ・サバンナの旅にて」と題した素描展開幕です。

日本のアルトサックス奏者、渡辺貞夫が数十年前にアフリカに渡りました。ジャズマンがアフリカに渡った先駆的存在でした。彼は、かの地で土着の音楽に魅入られて、帰国後「ケニヤ・ア・アフリカ」などの多くのアルバムを発表しました。おそらく、彼が内包していた強烈なリズム感と、土着音楽の力強さがマッチングして、ジャズのようで、エスニックのようで、ポップスのようでという具合の見事にブレンドされたサウンドを作りました。

異国の地を訪れた作家なり、ミュージシャンがその土地の醸し出す匂いを思い切り吸い込んで、自分の感性を刺激されて出て来た作品を見るのは、いつでも新鮮きわまりないことです。今日から始まったこの個展も、そんな刺激に満ちています。大砂塵と、灼熱の太陽、が体を吹き抜ける! かっこいい!という言葉だけで表現するのは、作家に対して失礼かもしれませんが、最大限の賛辞を込めて言います。

                           「かっこいい」

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「シートンの本、それも今泉吉晴の訳で。」という本のお探しを、複数の方からお聞きした。

今さらシートン?と思いながらも店頭を探すと、一冊もない。そんな時、運良く「シートン子どもに愛されたナチュラリスト」(福音館2002年)が入荷しました。著者はその今泉さん。ちょっと読んでみようかな、とカウンターに置いた途端、それ下さいとのお声。はぁ〜?。

今も、シートン? もうこうなれば探すしかない。で、「ロボ」(福音館2003年)、「わたしの愛犬ビンゴ」(童心社2010年)そして、売れた「シートン」を再度ゲットしました。始めて知りましたが、どの本にもシートン自身の絵が数多く収録されています。特に「シートン」は、その絵の美しさに驚かされました。「ロボ」の荒野を躍動する狼の姿の画力も楽しみました。

山形と岩手に山小屋を建て、その森に住まいする動物たちを見つめる訳者の今泉さんが、シートンの絵200点を網羅しながら、シートンの全体像に迫った「シートン』(全360ページ)は、森と、そして野生の動物と共に生きたナチュラリスト、シートンという人間の思想を見事に捉えていて、私も欲しくなりました。生涯、動物の心がわかる人を求めたシートンもまた、人間が勝手にに自然に介入して、人間のための自然に変えてしまうことに反対し続けた人でした。

 

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国立近代美術館で開催されている「井田照一版画展」に、お店の開店前に行ってきました。

この作家の事は全く知りませんでした。京都を拠点に創作活動を続け、膨大な作品を残して2006年世を去りました。

展示会場入った所に、展示してあるカラフルな色彩の諸作品を見た時、つまらん、と思ってしまいました。出来損ないのポップアートか。しかし、奥へ、奥へと進むうちに、その表現領域の広がりに驚かされ、繊細で、余白の多い画面構成で、直線が微妙に交差する作品に出会う事ができて、満足でした。出口にあった果物のオレンジを取り上げた作品の中で、青い色で仕上げた作品のザラザラした感覚が妙に、印象に残っています。その後、近くのUNITEさんに行き、ハンバーグランチをいただきました。このお店のハンバーグの微妙な大きさが気に入ってます。帰りしなに某新古書店を覗くと、おっ!辻村益郎さんの表紙彩画&装丁がいい雰囲気のベルヌの「海底二万海里」(1973年福音館)があるでわないか!この小説のマニアとしては買わないわけにはいきません。

 

お店に戻ると、奇妙な本が一冊持ち込まれていました。

「増補四訂八丈島流人銘々伝」(昭和39年第一書房)

流罪の概論から始まり、流刑地として八丈島に送られた人たちの生活を丹念に追っかけたノンフィクション。そして、第二部では、実際に送り込まれた人たを一人一人、紹介するという気の遠くなるような膨大な作業を収録。そして、第三部は「八丈島流人明細帳」流罪決定の日時、島に着いた時の年齢、罪状、出身地、死亡時までを一覧で網羅するという本です。

こんな本が出ていたんですね。葛西重雄、吉田貫三のお二人の著者の執念が生んだ一冊です。

 

 

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本屋を立ち上げるにあたって、ブログを書いたら、と勧めてくれたのは、友人のアキ教授です。

彼女のオススメにはたいてい従うことに決めています。いつも少し高めのハードルを置いてくれるので、ウントコドッコイショと越えていかねばなりませんが、怠け者の私には有り難いことです。

 

パソコンは苦手ながら『レティシア書房の女房』というタイトルで書き始めました。

開店に合わせて本屋のホームページが出来てからは、店長日誌になりました。

ちなみに店主の方は、書籍・映画・音楽など好きな分野を好き放題に、シャウトしています。

 

で、「女房のブログ」でお客様の反応が一番あるのが、マロン&べべ。我が家の犬と猫です。

 

18年前、はじめて猫を飼って、そのとき身近にこんなにたくさん猫好きがいることにビックリしましたが、ご来店のお客様から「べべちゃん可愛いね〜」とか「大丈夫!きっとマロンと子猫は仲良くなりますよ。」とか励まして頂いて、これまたビックリ。お読み頂いて感謝です。

おかげさまで、ようやくお互い同居を認めたらしい2匹は、なんとか同じ部屋でくつろぐ時間を持つにいたりました。

べべのちょっかいに、時々「エエェ〜?!」って困った顔をするマロンもまた可愛い!ってのも親バカですね。

「最近ブログの更新が遅いのは、もしかして子猫の相手ばかりしているせい?」というご指摘もありましたが、ハイ、その通りです。(女房)

 

 

 

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