レティシア書房では、ほぼ毎年、動物保護団体ARKの犬や猫たちの写真展を開催しています。ARKの宣伝のためにボランティアで写真を撮り続けておられるのがプロカメラマン原田京子さん。犬猫たちの表情が素晴らしいので、彼女のARK以外の作品を、ぜひにとお願いしていたところ、やっと実現しました。

「Spanish Sentiment 」と題して、スペインのアンダルシアの風景と、そこで生きる人々の表情を捉えた作品が十数点並びました。DMに使われている老人と散歩に連れて来た愛犬を捉えた作品(写真左)を中央に据えました。老人と、飼主を見上げる愛犬の姿の優しさ、愛おしさ、そして背後に広がる大空と、そこに湧き出る白い雲。色調は、人生の黄昏を暗示するようで哀切に満ちています。

原田さんの動物好きがわかるような、犬だけが被写体になっている作品もあります。暮れなずむ夕陽の前に立ち尽くす一匹の犬。広がる美しい空の色。自然の大きな営みと、今生きている命が、一つの画面に溶け合います。

原田さんは「フィルムで撮った写真は、焼いて行くうちに深さを増し、もう二度とおなじものはできない。」と言います。

遥か彼方にまで続く空の微妙なコントラスト、古い建物のもつ情緒、レストランのざわめき、じっと前をみつめる少女の眼差し、広場の噴水の前の男たちの背中、息づかい。デジタル全盛の中、フィルムで撮られたスペインの柔らかで哀愁に満ちた写真を多くの方にご覧頂きたいと願っています。(女房)

なお、それぞれの作品は、デジタルでプリントアウトしてお届け出来ます。(30000円〜送料別)

 

★毎年恒例になりました『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、10月28日(金)7時30分より開催が決定しました。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

★★カナダ在住で、ドールシープを撮影されている写真家、上村知さんの写真展を11月1日(火)〜13日(日)まで開催します。5日(土)夜に、上村さんによるスライドショー 「極北 カナダ・ユーコン&アラスカの旅と暮し」(7時より)を予定しております(要・予約 同じくレティシア書房までお願いします)

 

 

 

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マガジンハウスが出している月刊誌「Ku:nel」(クウネル)のバックナンバーが、30冊程入荷しました。2004年11月発行の10号から、2014年3月発行の66号まで、全て揃っているわけではないですが、綺麗な状態です。(各300円)

一応女性向けの暮しの本ですが、新刊書店員時代、必ず読んでいました。その濃い内容の一部を紹介します。

10号には日本の動物イラストレーションの先駆者、薮内正幸の60年の軌跡が紹介されています。15歳の時に作ったという「鷲鷹科の種類」の私家版を初めて拝見しました。描いた絵は1万点以上。多くの絵本に使われています。収集されている方もおられます。

46号では、「大切な本はありますか」という特集で、何人かの方の大切な本が紹介されています。エッセイスト宮脇彩さんは、73年アメリカで出版されたマーナ・ディヴィス著、伊丹十三翻訳の「ポテトブックス」を紹介していました。「アメリカからやってきた料理の本であります」という伊丹らしい文章で始まる料理本です。この本の序文は、あのトルーマン・カポーティだったんですね。

と、こんな具合に紹介していけばきりがありませんが、もう一つ。月刊誌のカルチャーコーナーには、必ず書籍、音楽、映画が取り上げられていますが、この雑誌のコーナーはとても充実しています。手当たり次第に本を紹介するのではなく、一人の作家が、毎回紹介され、インタビュー記事をメインに構成されていて、この部分だけ切り取ってファイリングしておくと、面白いものになりそうです。音楽もしかり。基本的にミュージシャンがセレクトするのですが、渋いラインナップとなっています。映画に至っては、毎回毎回、著名な方が担当しています。例えば、44号では、酒井駒子が「ちいさな主役は、ひとりぼっちでよるべない」というテーマで映画を選んでいます。カルチャー欄充実ですね。

「ストーリーのあるモノと暮し」が雑誌のコンセプトで、お金をかけてモノに囲まれて、というスタンスの全くない誌面作りが、新しい豊かさを作り出そうとしています。

ところで、児童文学者石井桃子の有名な「山のトムさん」の1957年発行の初版の装幀を、雑誌の中に見つけました。本好きならではの、こんな探す楽しみも満載です。

 

 

 

 

★毎年恒例になりました『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、10月28日(金)7時30分より開催が決定しました。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

★★カナダ在住で、ドールシープを撮影されている写真家、上村知さんの写真展を11月1日(火)〜13日(日)まで開催します。5日(土)夜に、上村さんによるスライドショー 「極北 カナダ・ユーコン&アラスカの旅と暮し」(7時より)を予定しております

  (要・予約 同じくレティシア書房までお願いします)

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映画館で観たいと思っていた「バクマン」を、ブルーレイで見ることができました。これ、「少年ジャンプ」(実名で登場)を舞台に、高校生漫画家二人の奮闘を描いた青春映画です。漫画雑誌のコンセプトはというと「友情・努力・勝利」と口に出すだけで赤面するのですが、監督の大根仁は、だからどうした!と開き直って、前向き根性努力ものに邁進。その態度良し、拍手です。

で、こういう漫画家の映画だと、机に向かって必死に書いているシーンばかりの退屈な映像につき合わされることになるのですが、そこは違います。一コマ、一コマの漫画が動きだし、走り出します。圧巻はライバル漫画家とバトルするシーン。ペンを槍みたいに構えて大立ち回り。お互いのコミックのワンカットが、手裏剣よろしく飛んでいくというCG効果も満点です。そして、もう一つ重要なのが、ペンの音です。おそらく、かなり試行錯誤した結果でしょう、ペンが走る音が、まるで彼らの青春の疾走を表現するごとく響き渡るのです。この音、映画館で聞いてみたかったですね。

漫画の映画化って、イージーな企画だと批判されますが、文学の映画化と違って、新しい表現方法、あるいは全く違う視点に立つドラマが作りやすいのかもしれません。良い例が、西原理恵子です。彼女のコミック、もしくは人生を映画化した、「酔いがさめたらうちに帰ろう」、「毎日かあさん」、「パ−マネント野バラ」、「上京ものがたり」と映画化していますが、どれも優れた作品でした。

愛読している野田サトル「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミック)。アイヌ民族の生活を丹念に織り込みながら、展開する明治時代のアクション活劇ですが、これは、大河ドラマにして欲しい。今のNHKにアイヌをメインに置いたドラマを作る根性はないでしょうが……..。

石森章太郎が全編台詞なしのコミック(タイトルは忘れましたが)を発表した頃から、今日まで常に新しい表現を模索してきたジャンルであることは間違いありません。新しい感覚の漫画家を、どんどん店頭に並べていきたいと思っています。

 

 

 

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以前にも紹介しましたが、「Spectator」は、年に数回発行される雑誌で、再びバックナンバーが入荷しました。「バック・トゥ・ザ・ランド」(自然に戻ろう)をテーマに掲げていて、

「何の気なしに消費してきた食べ物や電気や水が、どうやって作られているか、それさえ知らなかったことへの反省や、安全な暮しを取り戻そうとする新たな意志があるように思われます。新しい世界のかたちとは?そんなことを考える一旦を担えたら幸いです」と書かれているのを今一度読むと、やはり共感します。

取材の対象も、そのコンセプトに最適な方が登場します。「ぼくは猟師になった」(リトルモア900円)の千松信也へのインタビューは、ボリューム満点で中身も濃い記事です。

「やりたくない仕事をして稼いだ金で石油を買ったりするよりも、自分の時間を使って薪を手に入れたり肉を手に入れるほうが、身体はしんどいかも知れないですけど、やっぱり気持ちは楽です」と語る千松は、理念もないし、自給自足でなくてはならぬという固定観念もありません。「自分にとって楽なほうへ進んでいったら結果としてこうなった」と語っています。

もう一人、当店で人気の作家、内澤旬子も登場します。三匹の豚を飼って、最後に屠殺し、肉を食べるまでのルポルタージュ、「飼い喰い」(岩波書店1400円)の面白さは類を見ない一冊でした。元々は、世界の屠殺現場を訪ね歩く「世界屠殺紀行」(角川文庫600円)や、有名作家の書斎を紹介する「センセイの書斎」(河出文庫500円)、おやじの生態を見事に捉えた希有な一冊「おやじがき」(河出文庫300円)等のイラストルポライターです。

38歳の時、乳がんを宣告され、その後の身体の変化を描いた「身体のいいなり」(朝日新聞出版400円)で、様々な苦しみの中から、これは「意志と身体との戦いだった」と表現しています。

「今まであまりにも身体を無視して、意志だけで生きてきた結果、身体を怒らせてしまった」

だからこそ「身体のいいなり」になるのだと。

ガン告知され、闘病生活を経て、豚を飼うに至る人生についてたっぷりと読めます。

 

 

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60年代末、そのナンセンスな歌詞で物議を醸しだし、一世を風靡した「帰って来たヨッパライ」という曲を巡って、湯浅学はこう書いています。

「世の中は舐めるためにもある。ということを1960年代の大人はいろいろと子供に教えてくれていたと、当時まるっきり小学生だった俺が大人になってからつくづく思った。」

この文章に接して以来、彼の音楽評論には一目置いてきました。その彼の批評集「音楽が降りてくる」(河出書房新社1900円)の中身をぺらぺら捲っていると、「クレージーキャッツ」の、名トロンボーン奏者にしてコメディアン、谷啓について書いてありました。

谷啓のお葬式、式は進むのですが、何故かざわつく葬儀場。やがて、出棺…..と、その時、献花の花の山を突き破ってトロンボーン片手に飛び出す谷啓、そして「目をしばたたかせながら一同に向かった谷さん大きく息を胸に留め、何物かを掴むように軽く指を胸の前にゆっくりと押し出すと一声『ガチョーン!』」

こんな葬式だったら、と著者は彼の訃報に接した時に思ったらしい。クレージー世代の貴方ならわかりますね。そう、あの目をしばたたかせながらの決め台詞、目に浮かびます。

「言葉の意味ではなく。音そのものが説得力を持つ。笑いのエネルギーや創造力の素になる。ということを谷さんは長年我々に伝え続けてきた。」

その谷啓を擁した「クレージーキャッツ」の多面的な魅力を紹介した「ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ。フラフィテイ」(河出書房社2200円)は、文句なしに面白い一冊です。先ず、本全体のデザインがカッコイイ!。ジャズのアルバム風であったり、マガジンハウスが発行するオシャレ雑誌風であったり、とても60年代の古めかしいコメディアンの懐古本ではありません。こ、こんなにクールでスタイリッシュなバンドだっけ?!と思わずにはいられないエディターの冴え渡るセンスに拍手です。クレージーなんて知らないよ、という世代にも手に取っていただきたい一冊です。こんなにもクリエイティブな、お笑い集団がいたんですよ、この国には。

そして、2枚組CD「クレイジーシングルス」(1800円)も聴いてください。「スーダラ節」に始まり、「ホンダラ行進曲」、「遺憾に存じます」そして「アッと驚く為五郎」まで全42曲。ナンセンス極まりない曲の連続に笑い転げていただきましょう。

私のお気に入りは「ハイ、それまでヨ」。湯浅学氏じゃないけれど、世の中舐めて生きてもいいんじゃないの、と思わせてくれた名曲です。

◉「ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ。フラフィテイ」(河出書房社2200円  Sold Out)

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没後20周年「星野道夫の旅」展(京都高島屋10月10日まで)を観てきました。初日だったので、奥様の星野直子さんのギャラリートークも聞くことができました。

彼の本や、写真集で何度も観た作品が数多く展示されていますが、大きく引き延ばされたもので見ると、作品の彼方に広がるアラスカの大自然の微妙な色合いまで、手に取るようです。彼は「アラスカ光と風」の中で、この地をこう語っています。

「アラスカという地は来る者を拒まないかわりに、厳しい自然がその代償を求めてくる。ここでは型にはまった常識は存在せず、だれもがそれぞれのやり方で生きていくだけだ」

星野自身が考え、行動した(シャッターを押した)その瞬間が投影されています。

荒涼たる大地にたった一人で、いつ現れるかもしれないカリブーの群れを、あるいは夜空を舞うオーロラを捉えるまでの長い長い時間、彼は何を考えていたのでしょうか。そんな事を思いながら、作品を観ていました。

「一年に一度、名残惜しく過ぎてゆくもの、この世で何度めぐり合えるのか。その回数をかぞえるほど、人の一生の短さを知ることはないのかもしれません。」

と「旅をする木」で語っています。目前の、カリブー達に、熊たちにもう会うことはないのかもしれない。彼らが生き残る保障もないし、自分自身の人生にも終りがくる、その切なさと、生きていることの愛しさが、シャッターを押し続けさせたのかもしれません。

「短い一生で 心魅かれることに多くは出会わない もし 見つけたら 大切に……..大切に…… 」という文章を残した星野は、彼が心魅かれたアラスカを大切に、最大限にリスペクトを持って接してきました。その結果が、あらゆる生と死が盛り込まれた作品が生まれてきました。

極北の動物たちが、こちらに向ける眼差しをゆっくりと見つめていたいものです。

 

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1990年に自死した北海道出身の作家、佐藤泰志が、最近再評価され、認知されているのは、作品が映画化されて、優れた作品になっているからに違いありません。

2010年「海炭市叙景」が公開され、劇場で観た深い感動が忘れられず、原作に手を出したのは私だけではないはず。88年から連載の始まった原作を熊切和嘉監督が、資金を集めて函館で撮影しました。

「待った。ただひたすら兄の下山を待ち続けた。まるでそれが、わたしの人生の唯一の目的のように。今となっては、そう、いうべきだろう。」で始まる原作の一文は、映画ではエンディングに持ってきているのですが、人々の希望と絶望を北国の冷たい風に託して描ききりました。もうすぐ定年を迎える路面電車運転手、家庭に問題を抱えるプラネタリウム職員等の、男たちの人生の悲哀が見事でした。

続いて、2011年、「そこのみにて光輝く」が呉美穂監督によって映画化されました。私は、これについては原作もまだ読んでなくて、映画も観てないので、なんとも言えません。

そして、今公開中で期待の映画、山下敦弘監督の「オーバーフェンス」。もちろん、観に行きます!佐藤最後の芥川賞候補作品で、作家に挫折しかけた時代に、通っていた職業訓練 学校の体験を元にした作品の映画化です。レビューは、後日このブログに載せる予定です。

さて、佐藤のデビュ−作「移動動物園」は、私の好きな作品で、暑い日々、幼稚園やらデパートの屋上に出張しては、小動物を見せる小さな会社を舞台にした小説です。登場人物は三人の男と女。うだる様な暑さの中、ひたすら動物の世話に明け暮れる姿を描いていて、読んでいると咽喉の渇きが襲ってきます。そして、虚無感がじわじわと浸透してくる気分の悪い小説なのですが、逃れられないんですよね、この世界から。

ぜひ、映画も原作も観て欲しい、希有な作家です。蛇足ながら、この三人の映画監督、皆さん大阪芸術大学出身です。

文庫版「移動動物園」「海炭市叙景」は各400円、「そこのみにて光輝く」は500円にて販売しております。

 

 

 

 

 

 

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  (要・予約 同じくレティシア書房までお願いします)

巷には書評集やら、本の紹介本が溢れかえっています。仕事柄、なるべく目を通すようにはしていますが、買いたいという本は滅多にありません。

その中で、三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」(大和書房500円)は面白い一冊でした。もう、笑えます!書評を読んでいて、むふっ、ぶふぁ〜となるなんて珍しいのでは。入手可能な本が大半です。しかし、原民喜、藤枝静男、上林暁、中村真一郎等興味ある面々が揃った「戦後占領期 短篇小説コレクション4 1949年」(藤原書店2007年)は、探すのが大変かも(一応新刊でまだ出ていますが)

第四章は、なんと丸ごと「東海道四谷怪談」に割いています。鶴屋南北が書いた戯曲が舞台にかかったのが1825年。それから、今日まで延々上演されてきました。ご承知のように、「四谷怪談」は、「忠臣蔵」のパロディーです。南北は「主君のために仇討ちなんて、古くさぁ〜い」と考えていた、という話から始まり、「東海道」と名前が付いているのに、登場する舞台が、全然「東海道」じゃなかったり、話に方々に出てくるオヤジギャグの話など盛り沢山です。そして、無情かつ無常な色合いの濃いエンディングからこう締めくくります。

「むなしい。しかし、死に向かって生きるしかないのだ。『四谷怪談』の登場人物はみな、全身でそう物語る。彼らの哀しみとむなしさと迫力が凝縮したラストシーンは、こだまとなって、現代を生きる私たちの胸にも強く届く」

どちらかと言えば、オフビート気味のこの本に比べて、正統派の書評集としてお薦めは湯川豊「夜の読書」(ちくま文庫750円)です。梨木香歩、池澤夏樹、小川洋子、松屋仁之、など、私好みの作家が並んでいることもあるのですが、何回か江國香織を取り上げています。いわゆる、書評家さんと呼ばれる方々で、江國のような流行作家を何度も取り上げ、きちんと評価している人ってあまりいないと思います。それだけで、この著者の幅広さが理解できます。

話題となったジャック・ロンドン著、柴田元幸訳「火を熾す」(スイッチ・パブリシッング)を取り上げた中で、表題ではなく、収録されている「水の子」というハワイの漁師の話に心ひかれるとして、こう書いています。

「自然のなかに生きる人間の過酷な運命が冒頭の『火を熾す』にあるとすれば、自然のなかに生きる人間のまぶしいほどの輝きがここにはある」

この本の魅力を見事に言い切った批評です。

 

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1950年代アメリカに、既存のアメリカ的価値観や豊かさを拒否する世代、いわゆる「ビート・ジェネレーション」が発生し、文学、音楽、映画に影響を与えました。文学でいえば、「オン・ザ・ロード」のジョン・ケルアック、「裸のランチ」のウィリアム・バロウズ。そして「吠える」の詩人、アレン・ギンズバーグらが、このムーブメントを引っ張りました。

トランジスタ・プレスという小出版社から「ギンズバーグが教えてくれたこと 詩で政治を考える」(1728円)という本が入荷しました。

「国会風に」という詩で、こんな檄を飛ばします

「真実を見出すことはむずかしいけど 偽りは簡単だ 帝国主義の薄っぺらさを 新聞の行間から読み取りなさい この国を 自分たちが心から望むようにしたら 火からフライパンに戻るみたいに 大難敵に挑むこと」

すべての既存の権力に対して猛烈に攻撃する詩人は、サッチャー政権下、重苦しい時代の圧力に反発したパンクロッカー達に受け入れられ、ギンズバーグもステージに上がっています。

彼はまた、スリーマイルアイランドの原発事故以前に原発反対を唱え、線路に座り込み運動をしていました。「人類以前には 自然に生まれなかった新しい元素があるか?」で始まる「死とプルトニウムの歌」は、人間が自ら作り出した死の神の呪いに殺されてゆく運命を見つめた長編詩です。

攻撃は、当然とはいえ、ジョージ・ブッシュに向かいます。「NSA麻薬どっぷりカリプソ」では、「ついきのうの新聞に埋もれていたよ ブッシュはアメリカの麻薬王だってこと」と言い放ちました。

民主主義も憲法も、平気で踏みにじっていく今日の政治の危険性の中で、ギンズバーグの詩を翻訳したヤリタミサコさんは後書きでこう書いています。

「こういうときにギンズバーグは、怒りをユーモアで伝えることができます。私はこの部分を読者と共有したいと思って、この文を書いています」と。

それぞれの詩には、ヤリタさんの解説と思いの詰まった文章が載っていますので、ギンズバーグの詩の理解が一層深まります。先週日曜日、版元トランジスタ・プレスの佐藤さんが、誠光社でのトークイベント前に当店に立ち寄られて、この本のことを初めて知りました。興味のある方は手に取ってみてください。

 

★毎年恒例になりました『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、10月28日(金)7時30分より開催が決定しました。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

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入荷する度に、ご紹介している池澤夏樹編集の日本文学全集ですが、今回は「松尾芭蕉/与謝野蕪村/小林一茶/とくとく歌仙」(河出書房新社1800円)の俳諧。

有名な「閑かさ岩にしみ入蝉の声」を初めて読んだ時、なんだこれ?と全く興味を持てませんでした。が、ボリュームあるこの一一冊に収められた三人の俳句を読んでいると、さっぱり理解できないものもあるのですが、爆発的にイメージが広がるものがあり、目前に白い雲がわぁーとみえたり、田園の向こうを雨が降り出してくるのを眺めていたり、と、面白い経験をさせてもらいました。

とりわけ、小林一茶に引込まれました。一茶の句を選んだ長谷川櫂は、芭蕉や蕪村が古典文学に精通していたのに、一茶には全くその素養がなかったことを踏まえて、こう言い切っています

「一茶は文学における野蛮人だった。では、一茶の俳句を培ったのは何か。それは江戸時代後半の社会を悪戦苦闘しながら生きた一人の人間の生活感覚である。これこそ、一茶が芭蕉や蕪村とちがうところであり、一茶の俳句を読む場合、忘れてはならない視点だろう」

「小便の身ぶるひ笑へきりぎりす」「雀の子そこのけそこのけ御馬が通る」

こんなユーモラスは句を作っていた一茶の後半の人生は、悲惨としか言いようのない日々でした。父親の遺産相続で揉めに揉め、数度の結婚で、五人の子供を授かったのに、片っ端から死別。晩年62歳の時、再婚したものの、即離縁、元々煩っていた中風が再発、言語障害になってしまう。

「淋しさに飯くふ也秋の風」

一茶63歳の句ですが、人生の寂寞さが色濃く出ています。

できれば、若い時に詠んだ

「ゆうぜんとして山を見る蛙哉」

みたいな悠然と構えた蛙になった気分で、山を見上げていたいものです。この時代の新たなポップな感性を持っていた俳人ですね。

65歳で死去した一茶は、残った妻に娘が生まれます。選者は「人生は悲惨だが、滑稽である」と結んでいます。

 

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