山田英生編著「貧乏まんが」(古書/650円)は面白い企画本です。

「かつて誰もが貧乏だった時代から、『経済成長期』を経て貧乏が見えにくくなった時代、さらに、『バブル経済』崩壊以降の現在につながる格差社会まで、背景に貧乏(貧困)の諸相を織り込んだ作品を選び、戦後庶民の暮らしをうかびあがらせる意図」で編集されたコミックアンソロジーです。つげ義春、つげ忠男、水木しげる、赤塚不二夫、永島信二、谷岡ヤスジ等々17名の作品が並んでいます。

この最後に入っているのが、こうの史代の「長い道」です。貧乏ぐらしを続ける若いふたりを描いた作品で、なけなしのお金を持って銭湯に行った帰りの空の青さが目に染みる作品です。そして、注目したのは、鈴木良雄の「フルーツ宅急便」。ここに登場するのは、貧困の生活環境から、中卒で「非正規」雇用になってしまった若い男女の物語です。楽天的なばら色の未来なんて存在しないのですが、最後にわずかな希望を見せるところに味わいがあります。

 

山川直人の「ハモニカ文庫と詩の漫画」(中古/ 600円)山川直人は、ご存知のように「コーヒーもう一杯」シリーズ等で人気の漫画家です。ちょっとオールドファッションな世界が魅力的です。古びたコーヒーショップ、薄暗い古本屋、静かに音楽が流れる名曲喫茶などなど。山川は、20代後半の漫画家としてデビューしますが、売れ行きは芳しくありませんでした。代表作「「コーヒーもう一杯」の連載が始まったのは40代になってからでした。

萩原魚雷は「『ハモニカ文庫』の羽守町の物語はどこにでもありそうな、ちょっと懐かしい商店街を行き交う人たちの日常を淡々と描いている。主人公らしい主人公はいない。まちが主役の作品と行ってもいいかもしれない。コーヒーの旨い喫茶店、均一台にときどき掘り出し物がある古本屋、ハンバーガーショップ、コロッケが名物の精肉店、最近、あまり見かけなくなった模型屋……。」とこの物語世界を解説し、愛しました。ふと迷い込んだ街角の奥に、こんな古びた商店街がまだあるかもしれませんね。

★イベントのお知らせ

6月5日(水)より「世界ひとめぐり旅路録」展をされる小幡明さんが、14日(金)19時半より、FMひらかたパーソナリティー久保有美さんと一緒に「小幡明の旅の話アレコレ」と題したトークショーを当店にて開催します。(参加費1000円/要予約)

 

 

九条大宮にオープンした「つるかめ書房」へ行ってきました。古い町家の外観はそのままに、内部を巧みにアレンジして、日本料理を出すレストラン、日本茶カフェ、バーを併設しています。レジが一箇所なので、好きな本を持って、カフェでお茶を飲み、まとめてお会計ができるようになっています。

場所は、九条大宮を下がってすぐのところに見えてくるのですが、看板がありません。条例で、こういう町家に商業的な看板は設置できないのだそうです。(写真左)さて、引き戸をガラガラと開けて、中庭を見ながらどんどん奥に行くと、その先に立派な書庫があります。全ての本が丁寧に、美しく並べられています。ちくま文庫、講談社文芸文庫がずらり、しかも安い!

壁面の書架を見てゆくと、星野道夫、石川直樹、石田千、吉田篤弘、庄野潤三などなど当店と似たラインナップ。趣のある古い書庫に、スッキリと並べられた本の数々。文学、エッセイ、暮らし、アートなどが明確な意志に基づいてセレクトされた棚の前で本を眺めていると、時折、吹いてくる風が舞い込み、リラックスしていつまでも居てしまいます。CDと本を何冊かセレクトして、昼食もいただくことにしました。お昼は2500円の和風ランチのコースのみ。音楽の鳴っていない空間、使い込まれた家具に囲まれての食事は、外の賑わいから離れて落ち着いたひと時でした。

ところで、今週末25日(土)26日(日)の二日間、この書庫の二階で古本市が開催されます。当店も参加します。同時開催で陶器市もされるそうなので、ぜひのぞいてみてください。

フリーペーパー入荷ご案内

●海外文学ファン必需の「BOOKMARK」の最新14号が入荷しました。巻頭エッセイはあさのあつこ。特集は「against」、「ノー」と言うことです。

●「ハンケイ500m」49号は、烏丸六条が特集です。烏丸七条と五条という幹線道路の真ん中にある小さな通りですが、実は私の通っていた小学校がこの近くでした。懐かしい…..。

●「SELFBUILD BOOKLIST」これ、「セルフビルドにまつわる連続トーク3『本から広がるセルフビルドの世界』」と題して、誠光社の堀部篤史さんが講師をした時に、製作されたブックレットです。彼が選んだセルフビルドに纏わる本がセレクトされ、解説も書いています。

 

 

★イベントのお知らせ

6月5日(水)より「世界ひとめぐり旅路録」展をされる小幡明さんが、14日(金)19時半より、FMひらかたパーソナリティー久保有美さんと一緒に「小幡明の旅の話アレコレ」と題したトークショーを当店にて開催します。(参加費1000円/要予約)

 

雨上がりの緑の木々が目に美しい本日より、はしづめさやか「緑の時間」展がはじまりました。

 

はしづめさんが、この展覧会に寄せた文章に、小学校の図書館で借りて読んだある本(「広太のイギリス旅行・緑色の休み時間」)の記憶が心にずっと残っていたと書かれています。5月に本屋のギャラリーで個展をすることを決めて、作家の記憶の底に横たわっていた緑の本が蘇ったらしいのです。ずっと前に読んだ本が、時を経て形になって絵に現れるなんて素敵なことです。水彩絵の具の上に色鉛筆で重ねたタッチが優しく、幸せな気持ちになれるような草花の絵がたくさん並びました。はしづめさん自身が、優しい人たちといっぱい出会い、そのご縁を一つ一つ大切にされてきたのだと思います。

絵が納められた額の多くは、木彫をされているお父さんの手作りだということです。個展に向けて、その額と対話しながら絵を描いてきたとお聞きました。そこにも温かな時間を感じます。なお、スウェーディッシュフォークミュージックのCDジャケットのデザインをされた関係で、このCD(2500円)を店内で流しています。お聞きになりたい方はお申し出くださいませ。なんかとってもいい感じに絵と合っています。

今まで作って来られた絵本もいくつか展示されています。小学生の作ったお話に、絵をつけた一点ものなどです。仕掛け絵本もあり、ゆっくりページをめくるのが楽しいです。また、12種類のポストカードは150円で販売しています。普段は編集のお仕事で忙しい毎日だそうですが、小さな自然に向ける優しい眼差しが、小さな本屋に清浄な空気を満たしてくれました。これもご縁。ありがたいことです。(女房)

「緑の時間」はしづめさやか展覧会は、5月21日(火)〜6月2日(日) 12時〜20時 最終日は18時まで月曜日定休 

 

 

 

この「店長日誌」のブログを始めた時には、よもや毎日書くことになるとは思いませんでした。いつの頃からか、更新するために、同時進行で4〜5冊を読んだりしています。書評を頼まれているわけではないので、楽しみながら読んでいるのですが、付箋を付けたり、資料をひっくり返したり、情報を集めたりしていると、ちょいと逃げたくなることがあります。

そんな時に特効薬とも言えるのが、「公安」ものです。警視庁の中でもベールに覆われた部署が暗躍する、しかも現場の刑事たちと対立する物語ならなお結構。と、読まなきゃならん本を横に置いて読んだのが、相馬秀雄「血の轍」(幻冬社文庫/古書300円)でした。500ページ余りの小説ですが、いやぁ〜面白い。ベタな展開満載で、オイオイと突っ込みたくなる場面もありますが、300円でこの面白さは安い。これぞエンタメ小説の王道!

元刑事が殺されて、捜査一課が動き出す。そこへ、なぜか最初から公安が絡んできて、解決を妨害していきます。普通の刑事小説ならば、犯人捜しのストレートな物語が展開するのですが、これは妨害する公安と、それを掻い潜って犯人逮捕に向かう刑事という設定がユニークでした。撃ち合いなし、心理戦のみの刑事ドラマ。

公安が実行する追跡、盗聴、監視を事細かく描写していきます。小型カメラで撮影された監視対象の映像描写で幕が上がります。こんな具合です。

「スピーカーからは水道の音が聞こえる、カメラが女の後ろ姿を捉えたあと、今度は斜め横のアングルから洗面台と鏡の中が映る。サングラスを外した女が口紅を塗り直す。モニター越しだが、かすかに瞳が潤んでいるように見えた」

感情のないカメラが捉えた映像を冷徹な公安が見つめている、という情景です。ところで、公安なんて私たちの生活とは全く無関係と思われますが、果たしてそうなのか、お上に反抗的な輩は、片っぱしから監視しているのではないかという疑問が残ります。膨大な予算をつぎ込んで、最新のハイテク技術で国民を監視していたら、このブログでも、時々国家元首を「アベちゃん」などと書いていますから、ひょっとして私も監視対象かも……..。

 

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団地マニアを自称する三人の男たち。写真家大山顕、脚本家佐藤大、編集者・ライターの速水健朗。職業は様々ですが、団地への愛は深い。この三人のユニットを団地団と呼び、映画、アニメ、マンガなどに登場する団地について語り合ったのが「団地団」(キネマ旬報社/古書1600円)です。「類書なき、超脱線系、団地エンタメ」という言葉通り、大いに笑えます。メンバーが、方々の団地を訪ねた写真(大山顕撮影)が、カラーページで掲載されています。

鼎談は、大友克洋の「童夢」からスタートします。これ、未読の方ぜひお読みください。見事に団地が舞台となっているコミックです。(現在、絶版で古書も値段は上がっていますが)

ワハハと笑ってしまったのは「第3章 団地妻はいかに生まれしか」です。団地映画の転換点が、1971年公開の日活ロマンポルノ第1作「団地妻、昼下がりの情事」です。ここで鋭い指摘があります。メンバーの大山が、ヒロインのセリフを引用して、こう発言します。

「私だってずっと我慢してたのよ!毎日毎日こんなコンクリートの箱の中で同じことの繰り返し。好きなものを食べず、欲しいものも買えない窮屈な収入。息が詰まりそう」

大山「このセリフに込められているような、団地が窮屈だという意義申し立てのようなものって、60年代の団地映画にはなかった感覚だと思うよ。」

60年代は団地に住み、TV、冷蔵庫、電気洗濯機に囲まれて生活するのがステイタスだったのが、70年代は、そういう生活を否定する風潮が登場したというのです。

感心しつつ、笑ったのはマンションポエムという小特集です。マンションポエムとは、マンションの広告コピーのこと。電車や折り込みに登場するコピーが実に興味深い。まるで世界征服みたいなのが「TOKYO が KIBA を向く」、住宅が意志を持っているような「住まいはどこまで人に尽くせるか」「私は、誰にも似ていない」、部屋の一部をポエムに転化したような「帰宅のシーンを気高く演出するエントランス」等々、コピーライターの頑張り満開です。

その極みは、実は阪急不動産が手がける「ジオタワー宝塚」です。「宝塚に、世界を」。各部屋がアテネ風、パリ風、モナコ風とバリエーション豊かな部屋作りのマンションで、CMには宝塚歌劇団員が登場する念の入れようです。

いやはや、オタクの鼎談ってやはり面白い。今やマンションが日常の風景になりましたが、団地が日本を代表する住宅だった時代があったことを教えてくれる好著でした。

★イベントのお知らせ

6月5日(水)より「世界ひとめぐり旅路録」展をされる小幡明さんが、14日(金)19時半より、FMひらかたパーソナリティー久保有美さんと一緒に「小幡明の旅の話アレコレ」と題したトークショーを当店にて開催します。(参加費1000円/要予約)

 

アイヌ文化って、自分たちの生活と縁遠いと思われている方も多いことでしょう。しかし何気なく使っている言葉の中に、アイヌ語のものがあるのです。例えば、ラッコ、トナカイ、オットセイはアイヌ語です。また、昆布という言葉も、その可能性大です。

今回ご紹介するのは、2018年度手塚治虫文化賞大賞を受賞した野田サトルの冒険活劇漫画「ゴールデンカムイ」(17巻まで刊行中)でアイヌ語を監修している、アイヌ文化研究の第一人者、中川裕の「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」(集英社新書/古書600円)です。

「ゴールデンカムイ」の物語は、日露戦争直後の北海道。アイヌが隠していた砂金を巡って入り乱れる悪党たち。その中の帰還兵杉本は、ひょんな事から行動を共にすることになったアイヌの少女アシリパと、危険な旅を続けていきます。戊辰戦争で死んだはずの土方歳三まで登場し、波乱万丈の展開になっていきます。

漫画の方は発売当初からアイヌ人のサヴァイバル術、慣習、知恵が描きこまれていて話題になっていました。本書は、言葉の監修を請け負った中川が、この漫画を紐解きながらアイヌ文化を語ってゆきます。漫画を知らなくても大丈夫です。必要な部分は収録されています。例えば、タイトルにも使われている「カムイ」という言葉を、漫画ではこう描いています。

「私たちは身の回りの役立つもの 力の及ばないもの 全てをカムイ(神)として敬い、感謝の儀礼を通して良い関係を保ってきた 火や水や大地 樹木や動物や自然現象 服や食器などの道具にもすべてカムイがいて 神の国からアイヌの世界に役立つために 送られてきていると 考えられ 粗末に扱ったり 役目を終えた後の 祈りを怠れば 災いをもたらすと されてきた」

アイヌ出身で初の国会議員になった萱野茂さんが、愛用していた言葉「天から役目なしに降ろされた物はひとつもない」がコミックの表紙カバーの袖に毎巻書かれていることから見ても、原作者は、きちんとアイヌ文化を伝えようとしています。

印象的なシーンを一つ。鹿を仕留め解体したアシリパが、帰還兵杉本に、その鹿のはらの中に手を入れるように指示します。そして、こう伝えます。

「鹿は死んで杉本を暖めた。鹿の体温がお前に移ってお前を生かす。私達や動物たちが肉を食べ、残りは木や草や大地の生命に置き換わる。鹿が生き抜いた価値は消えたりしない」

同じ日本の国土で生きてきたアイヌの人たちの深い世界を知ることは、これからの生き方に参考になることは間違いありません。ところで、持っていたコミックが書架を探してもありません。あれ??そうか、一昨年遊びに来た北海道の姪っ子が全部持って帰ったんだ!トホホ……。

 

絵本作家として有名な安野光雅の、ちょっと珍しい本が入りました。

一つは、サブタイトルに「『ちくま日本文学全集』の装画」とあるように、彼が担当したちくま文学全集の装画を集めた「文学の絵本」(筑摩書房/古書800円)です。この本の面白いのは、「表紙の絵のこと」という章にまとめて、安野が一人一人の作家にどうしてこんな絵を描いたのかが、簡単に解説されているところです。

その文章がいいのです。例えば、色川武大はこんな感じです。

「新宿の飲み屋街、看板の文字がめだつ街。色川さんはこの街に来るだれからも愛された不思議な人だった。そばに来る人を拒まず、面白い話を聞かせては、すーうっと眠るのだった。飲めないわたしは遥かにその噂を聞くだけだった。この横丁をひょうひょうと行く、こんな人間にわたしも話を聞きたかった」

そして、ノスタルジックな酒場横丁の風情が描かれた装画の隣には、色川の『風と灯りと煙たち』より、「盛り場は、私にとって、いつもうそ寒い風が吹き抜けているところだった。私は小学生の中途から、学校をサボって盛り場を徘徊する味を知り出した。当時、山の手の方から見ると、浅草は第一級の盛り場であるとともに、悪の華のようにも見えた。」という文章が添えられています。

登場する文学者は60人。装画と解説をみながら、そういう気持ちで絵を描いたのかを知ると、それぞれの作家の本を読んでみようかなとつい思ってしまう、文学案内になっています。

もう一冊ご紹介。「愉快でちょっと切ない安野光雅 初の戯画集」という帯のついた「マッチの気持ち」(文藝春秋/古書1200円)です。これ、主人公はマッチです。変幻自在にその姿を変えるマッチをユーモアたっぷりに描いてあります。

「骨折しました。 たんかにのせられ 救急車で急ぎます すぐに手術です あ こんどは うまくいきました」という文章に、折れたマッチを担架に乗せて運ぶ救急隊員の絵。知らず知らずに気分が軽くなってくる一冊です。お誕生日のプレゼントなどに最適かもしれません。函入りです。

「マッチの紋付きで どちらへ おでかけですか 今夜はライターさんのおめでたいことで あ ライターさんは タキシードと伺っていました」

最後のページは、粋な小話みたいです。マッチの紋付の絵のセンスがいい!

 

どの世界にも、ワン・アンド・オンリー、もう二度と出てこないだろう人物がいますよね。野球なら長嶋、歌手なら美空ひばり、俳優なら高倉健。ジャズの世界でいえば、デューク・エリントン、マイルス・ディビス、そしてビル・エヴァンスです。そのエヴァンスの生涯を描いたドキュメンタリー「ビル・エヴァンス- タイム・リメンバード」(京都シネマ)を観てきました。

元来ジャズはダンス音楽であり、踊りながら綺麗なお姉ちゃんを引っ掛ける手段でした。ご機嫌な気分にさせて、ホテルにしけこむというようなスケベ根性一杯の音楽でした。しかし、映画を見ればわかりますが、彼の演奏姿勢は特異です。猫背でピアノに向かい、ひたすら鍵盤だけを見つめるその姿からは、どうぞ私のことはお構いなく感がいっぱいです。

その音楽は、極めて美しく、ジャズとかクラシックとかいうようなジャンルを超えて、胸に突き刺さってきます。ストイックな音楽は、時にはのめり込んだリスナーの心を貫くような狂気に変貌することがあります。レコード店に勤務していた頃、ソロピアノアルバム「アローン」を買った女性が、夜中に聴くと死にたくなると言ったことを今でも覚えています。

映画は、54年の生涯を追いかけるのですが、この人が自分の死を意識したのはいつ頃なのかということを考えました。ヘロイン中毒から脱出し、最愛の人と結婚するも、女グセの悪さから彼女が地下鉄に飛び込んで自殺した後なのか。再婚して子供もでき後半の人生を始めたものの、またクスリに手を出してしまい、妻と子供に去られた時なのか。或いは、愛する兄が拳銃自殺した後なのか。定かではありませんが、映画の後半に登場する彼の横顔には明らかに死神が取り付いています。しかし、自らが作り出した結晶のように美しい音楽は捨てませんでした。病魔に蝕まれた中で録音された”The Paris Concert “(中古CD/1000円)は、ツアーのピークを録音したものです。

エヴァンスといえば”Waltz for Debby”というアルバム(中古CD/1350円)を推薦する人はほとんどですが、私ならミッシェル・ルグランがオーケストラアレンジと指揮で参加した”From Left to Right”(中古CD/1600円)を推します。

ゴージャスさ、ロマンティシズム、美しいものへの憧憬が詰まった音楽がここにあります。

映画館に行かれる方は、満席で立見が出ていますので、早めにチケットを買い求められることをおすすめします。

 

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ベットサイドにでも置いて、毎日眺めていたい素敵な写真集を2冊入荷しました。

一冊は、先日ブログで「極北のひかり」を紹介した松本紀生の「原野行」(Crevus/古書1700円)です。アラスカを訪ねて20年。この極北の大地で巡り合った、本人曰く「一番きれいな写真を撮りたかった」写真を集めたものです。アラスカの写真といえば、ご承知のように、先駆者として星野道夫がいます。彼が撮ったアラスカの大地、そこに生きる動物たちを捉えた写真を超えてゆくのは、中々困難です。

 

でも、この写真集は、星野的世界を踏襲しつつも独自の世界観を出そうとしています。特に、ザトウグジラのブリーチング(海面に飛び出す動作)を捉えた作品は美しく、何者にも負けない強さを見せてくれます。また、川を遡上してきた紅鮭をがっちり銜えたヒグマの目。死に物狂いで、この地を生き抜こうとする生命の強靭さが伝わってきます。就寝前にパラパラめくれば、いい夢が見れそう。私のお気に入りは、ジャコウウシを正面から捉えた作品。こんな澄んだ目線をしてたんですね。機会?があれば、お会いしたいものです。

もう一冊は、荒木経惟の「東京人生」(basilico/古書1300円)です。こちらは、1962年から2006年まで、彼が撮りためた東京を一冊にまとめたものです。

愛妻陽子さんや、愛猫チロちゃんも登場しますが、なんといっても大都市東京の移ろいゆく姿が見所です。街角で遊ぶ子供たちの生き生きとした姿、東京の下町、高層ビル群、地下鉄、銀座等々を行き交う人々の多様な表情を見ていると、この人たちの人生に思いを馳せます。なにげない日常という意味では、お風呂に入ってホッとしている王貞治とか、やんちゃ少年丸出しで、自分のヨットに乗る石原慎太郎、ちょっと大人っぽくキメタ19歳の赤塚不二夫なども、街並みの写真の間に同じような重さでレイアウトされています。来日した女優シャーロット・ランプリングのくつろいだ微笑みが印象に残りました。

ところで、この写真集の最後は、久世光彦の葬儀に参加した樹木希林の合掌する手先を捉えた一枚です。この人も天国へ旅立ちましたね……..。

 

 

 

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19世紀末イギリスの裕福な家庭に生まれて、文化人に囲まれて育ち、20代後半から作家活動を始め、新しい文学の旗手となって活躍し、59歳で自殺したヴァージニア・ウルフ。彼女の魅力を丸ごと一冊にまとめたミニプレスが入荷しました。タイトルがすごい!「かわいいウルフ」(1944円)ですよ!ヴァージニア・ウルフも「かわいい」で括られるか。研究者なら卒倒しそうなタイトルですが、これ、やわな内容ではありません。面白い!!

この本を企画した小澤みゆきさんは「ヴァージニア・ウルフは、かわいい」と宣言します。

ウルフの小説は、人の意識の揺らめきを流れるようにして描く作家です。また、動植物や、町の風景を執拗なまでに描きこみます。その描写力を小澤さんは、こう語ります。

「人物の言動や意識が実にチャーミングで、人間臭く、茶目っ気にあふれているかがわかります。シリアスさと同じくらい、ユーモアを大切にしていた作家が、ヴァージニア・ウルフなのです。そのシリアスとユーモアを行き来する様子を、私は<かわいい>と形容したいと思います。」

小澤さんは、さらに長編小説の<かわいい>を四つのきり口に分けています。それは、「おままごと」「異世界転生」「かくれんぼ」「演劇」です。そして、ここからウルフの長編小説に切り込んでいきます。ウルフ作品で、最もポピュラーな「ダロウェイ夫人」を「おままごとするウルフ」へ。また、最もポップで針が振り切れて、行き着くとこまで行っちゃった「オーランドー」を「魔界転生<生/性>ラノベ作家」とした小論など、そうくるかと感心しまくりです。

海外文学好きには外せないのが「ヴァージニア・ウルフ短編集」(ちくま文庫/古書950円)を翻訳した西崎憲へのインタビューです。この短編集に入っている、たった2ページの「青と緑」は、散文詩みたいな作品ですが、これ原本を横に音読したらきっといいと思います。

小澤さんは、ウルフの小説紹介だけでなく、「灯台へ」に登場する「牛肉の赤ワイン煮込み」を調理してレポートしています。さらに、ロンドン郊外のキュー王立植物園を舞台にした作品”Kew Garden”を翻訳し、深い理解力の一端を披露してくれます。この小説の冒頭は、極めてウルフらしい滑り出しです。

後半のウルフを巡る映画の話も、オタク的感性爆発で面白く読みました。ところで、昨年観た傑作「ア・ゴースト・ストーリー」が、ウルフの短編をモチーフにしていたとは知りませんでした。

ウルフファンだけでなく、小説大好きの方にオススメの一冊です。

 

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