いよいよ、古本市も残り3日となりました。連日、多くのお客様にご来店いただきありがとうございます。さて、本日は、へぇ〜、こんな本があるんだ〜というものを紹介します。主宰者として、出店されている方々の本から、新しい知識や情報を得る事ができるのが何より楽しいです。

先ずは、稲泉連著「復興の書店」(小学館文庫250円)。東日本大震災で被災した書店の数、391店舗(岩手、宮城、吹福島)という壊滅的な数字でした。しかし、三月末早くも再開にこぎ着けた書店が仙台に何店かあります。日々の生活もままならないのに、本屋が必要か??しかし、開店した途端、ななんと長蛇の列!。そうか、本は生活必需品だったのか!その開店までを追いかけたのが本書です。震災直後、流通ルートも大混乱している最中、「生きている本屋も殺す気か」と、煮え切らない大手取次ぎ業者に言い寄り、流通を再開させた地元書店の社長の話など、およそ本に携わる者、紙の本を愛する者は読んでおかねばならないと思いました。

この作家は知りませんでした。著者の名は木原音瀬。調べてみるとBL(ボーイズラブ)系の作家として有名な方だとか。講談社文庫から出ているのが二冊ありました。「美しいこと」(200円)、「箱の中」(200円)です。どちらも表紙に描かれているのは男の子なのですが、とてもステキなセンスだったので、パラパラと読んでみました。。「美しいこと」は、簡単に言えば、才色兼備の女装男子と極めてダサい無能な草食男子のプラトニックラブストーリーで、BL業界語で言うと「ヘタレ攻め」ものに区分されるそうです。もう一方の「箱の中」は、痴漢のえん罪で刑務所に収監された男が、そこにいた殺人犯の男の愛情と優しさに救われてゆく話です。こちらの解説は三浦しおんが書いていて、木原の作品は「真実の愛が、いかに人間を救い、そのひとの生を豊かで深いものにするか」を繰り返し描いていると評しています。

次の紹介する作家の文章の一部を、とあるジャズ喫茶のノートで見ました、それは

「目をとじるんじゃない、耳をふさぐんだ。耳なんかに惑わされるんじゃない。必ずしも耳で音を聞くとは限らないのだ。目をしっかり開けておくことだ。そして、音を視ることだ。」

大音響で響き渡るジャズ喫茶で、こんな文章を書くなんて、カッコイイなんて思ったんでしょうね。その文章の最後のあった清水アリカという作者の名前から、この言葉が「革命のためのサウンドトラック」だったことを知り、早速購入して読みましたが、ワカラン……と、放り投げた作家です。清水の事を調べてみると、同志社大学卒業後、広告業界で仕事を執筆を続け、この小説で「すばる文学賞」を受賞するも、2010年47歳の若さで、この世を去りました、遺した小説はわずか4冊。彼の全小説と未刊行作品、遺稿等をまとめたのが「清水アリカ全集」(河出書房2200円)です。中上健次風のところもあるのですが、あの濃密感はなく、もっとスマートです。もう一度トライしてみようかな。

★古本市は19日(日)までです。20(月)21(火)は連休いたします。

「女子の古本市」では、絵本専門店も参加されていることもあり、夏の古本市に比べて多くの絵本が出ています。大人向け、子ども向け様々な絵本の中から数点ご紹介いたします。

「雪のひとひら」で我が国でも知られるポール・ギャリコの文章に、アンジェラ・バレットが絵を描いた「スノーグース」(あすなろ書房600円)は、第二次世界大戦中のイギリスの人気のない海岸に住む青年画家と傷ついたスノーグースを抱えてきた少女のお話です。静謐で、孤独な影に満ちたタッチの絵にギャリコのストーリーがピッタリなのですが、戦争がすべてをぶち壊すラストは辛い…..。

「走れウサギ」、「カップルズ」等の小説でファンも多い作家ジョン・アップダイクが12ヶ月を詩で表現し、長田弘が翻訳した「十月はハロウィーンの月」(みすず書房600円)は詩と絵(ナンシー・エクホート・バーカート)のコラボによる不思議な絵本です。2月の詩は「ちょき ちょき ハサミの音がする ハートのかたちを 紙から みんなが 切りぬいているのだ ヴァレンタイン・ディのために」で終ります。それぞれの月に登場する子どもたちの絵がステキです。6月の「太陽がいっぱい。よろこびもいっぱい。金の時間に 銀の日々。」の詩には、海辺で遊ぶ少年と少女が描かれていますが、開放感のあるページで、初夏の太陽の眩しさがいっぱい

一度は読んだことのある船乗りシンドバッドの物語は、ペルシャやアラビアの古いお話を集めた「千一夜物語」の一部分ですが、ルドミラ・ゼーマンが絵本にしたのは「シンドバッドのさいごの航海」(岩波書店700円)。この本は先ず、その細密な絵を楽しんでいただきたい絵本です。象の表情なんか実に見事です。ルドミラ・ゼーマンはチェコ出身の絵本作家で、シンドバッドの奇想天外なお話を三冊の絵本にしています。後、二冊も探してみたくなりました。

谷川俊太郎が翻訳した本は二冊出ています。マーガレット・ワイズ・ブラウン(作)、レナード・ワイスガード(絵)のコンビによる「しずかでにぎやかなほん」(童話館出版500円)と「あかいひかり みどりのひかり」(童話館出版500円)です。どちらも、色使いとデザインがかっこいいのですが、特に「しずかでにぎやかなほん」の画面のモダンな感覚は上手いと思いました。谷川の翻訳も自由奔放な構成で絵本に溶け込んでいます。

最後に絵本ではないですが、一点。数年前になくなったイラストレーター、フジモトマサルが表紙の絵を書いている「創作市場研究所01羊のスケッチ」(マリア書房700円)は羊毛やフェルトに関心のある方のために編集された本ですが、フジモトファンは見逃せない一冊です。

「女子の古本市」は19日(日)まで。最終日は18時で閉店いたします。 

 

精神分析の専門家が書いた落語の本って、小難しそうな感じがあります。しかも版元はみすず書房という人文出版社の大御所となると……..。これ藤山直樹「落語の国の精神分析」(1500円)です。「孤独と分裂−落語家の仕事、分析家の仕事」なんて章から始まるので、尚更難しそうですが、著者の文章が平易で、トントンと頭に流れ込んでくるので、面白い一冊です。巻末には立川談春との対談も付いています。

天才的な童画作家、武井武雄の長女三春が父のことを綴った「父の絵具箱」(ファイバーネット800円)もいい本です。お父さんの七回忌を機に、脳裏に浮かんでくる父親の側面を描いた武井武雄の一生です。もちろん、多くの武井作品が掲載されていています。「一生の持ち時間を、父は父流に生き、悠然と使い切ってさっさといなくなってしまった。死ぬ用意など全くしなかった。父らしい引き際であったと思う。」と三春は語ります。中程に収集した郷土玩具に囲まれてニンマリしている武雄の写真をみ見ていると、幸せな時間をいきたからこそ、誕生した多くの作品だったのでしょうね。

ジェーン・グドールという霊長類研究者のことをご存知でしょうか。星野道夫ファンなら、彼の「ゴンベの森へ」に登場する学者だなとお気づきの方もおられるかもしれません。そう、星野がわざわざ会いに、アフリカまで出かけた学者です。チンパンジーと共に生きた彼女の生き方を、自ら文章にしたのが「森の旅人」(角川書店600円)です。「わたしのささやかな思想と信仰のどこかに、読者がなにかをみつけてくださり、人生の旅路の行く手を照らす小さな光として役立てていただければ」と書いています。アフリカの奥地の過酷な環境の中で、チンパンジー達と生きた彼女の魂の遍歴。掲載されている穏やかで、知性的な面立ちの彼女の写真の撮影者は星野道夫でした。

グイグイと小説の世界に引込む力を、最も発揮しているのはたぶん小川洋子だと思います。私は、彼女の本を買って、損をした、時間の無駄遣いをしたという記憶がありません。彼女の長編「ミーナの行進」(中央公論社650円は出品されたお店の熱意が溢れています。)にはポップが二つ付いていて、一つにはお店のブログで紹介したこと、そしてもう一つには、小説の中に登場する司書の青年のこんな言葉が書かれています。

「何の本を読んだかは、どう生きたかの証明でもあるんや」

こんな台詞見たら、読みたくなるよね。

「女子の古本市」は19日(日)まで。最終日は18時で閉店いたします。


 

 

 

「女子の古本市」も後半戦です。まだまだ。面白い本で溢れています。今日は短篇小説をピックアップします。

めったに時代小説は読みません。レティシア書房の古本市でもめったに時代小説は出ないのですが、今回は一点ありました。藤沢周平「日暮れ竹河岸」(文藝春秋400円)です。以前、当店で朗読会を行った時、取り上げられたのが藤沢周平でした。渋いギターを伴奏に、読み上げられる静かな世界に聞き惚れました。この本も19編の市井に生きる人びとの息づかいが描かれています。斬ったはったのない静謐感漂う世界を楽しんでいただきたい一冊です。

講談社文芸文庫から「戦後短篇小説再発見」という全16巻のシリーズが出ています。その第8巻「『私』という迷宮」(400円)。梅崎春生「鏡」、島尾敏雄「夢屑」、吉田健一「一人旅」、遠藤周作「イヤな奴」など11編が収録されています。この中で、島尾敏雄「夢屑」は以前読んだこともあり、再読してみました。夢の断片をつなぎ合わせたような作品ですが、誰もいない図書館でのいい知れぬ不安、最初の数十行はまるでホラー映画の滑り出しみたいな印象だったことを思いだしました。

装丁がステキで手に取ったのが折口真喜子の「踊る猫」(光文社350円)。主役は俳人、与謝蕪村。彼がふと見た妖しい世界を描いた連作小説です。出店者が、この本にポップを書いて挟んでおられましたので、ご紹介します。

「『河童の恋する宿や夏の月』京都を舞台に描かれる少し不思議なものがたりたち。ほっこり暖かい読後感の良質な連作短篇集」

京都の季節の移ろいを描きながら美しくもはかない物語が綴られていきます。本のタイトルにもなった「踊る猫」は残暑厳しい京の夏が舞台です。

最後に異色の一冊。青山南の「アメリカ短篇小説興亡史」(筑摩書房600円)です。今人気の翻訳家、柴田元幸に先行する翻訳家で、アメリカ文学は村上春樹ではなく、この人に紹介してもらった記憶があります。何故、アメリカの短篇小説が面白いのかをめぐるエッセイです。雑誌「ニューヨーカー」が、短篇小説の発展に寄与したことは間違いないのですが、この雑誌は多くの有名作家の原稿をボツにしたことでも有名で、サリンジャーも、何度もボツにされたとか。一度だけ採用寸前までいったものの、やはりボツにされたのが、「ライ麦畑でつかまえて」でした。

「女子の古本市」は19日(日)まで。最終日は18時で閉店いたします。

 

古本市も前半一週間が過ぎようとしています。京都市内だけでなく、寒い中、遠方からも多くのお客様にお越しいただき、ありがとうございます。本日も面白い本を紹介いたします。

我が国における本屋の歴史を知る上で、資料的価値の高い鈴木敏夫著「江戸の本屋」(中公新書上下セット600円)は、上方で生まれた本屋という形態が、江戸時代最初の頃の活字版ブームと共に、広がっていく過程を資料をもとに解説してあります。上巻の「大阪出版界の興隆」は、近松門左衛門の人気に伴って浄瑠璃本がブームとなり、それまで出版界のイニシャティブを取っていた京都に迫る勢いをもった時期を描いていて、地元の話だけに興味津々でした。この新書発行は昭和55年。絶版です。

図録も何点か出ていますが、ロバート・キャパ&コーネル・キャパ「キャパ兄弟子どもたちの世界」(東京冨士美術館700円)は珍しいかも。ロバート・キャパの弟のコーネルも、写真家だったとは知りませんでした。この写真展は、二人が撮影した世界の子どもたちを一堂に並べたものらしく、兄ロバートは、日本軍が侵略する中国大陸に赴き、戦地の子供たちのスナップ写真を撮っています。弟の方は、60年代から70年代にかけて、貧困にあえぐラテンアメリカ諸国を撮影しています。報道写真に近いのですが、子供たちを通して平和への希求を表現しようとする姿勢も見えてきます。なお、弟コーネルの方は2008年90歳でこの世を去りました。

村上春樹関連本って山のように出版されていますが、飯塚恒雄著「ポピュラリティーのレッスン」(シンコーミュージック800円)は、サブタイトルに「村上春樹長編小説音楽ガイド」とあるように、音楽的側面から論じた一冊です。著者は、かつて新谷のり子の「フランシーヌの場合」とか、ベッツィ&クリスの「白い色は恋人の色」などのヒット曲を生んだプロデューサーです。1960年生まれ。アメリカンポップスと荒井由美と村上春樹にはまった青春時代を送った人物です。村上春樹と荒井由美という二人に類似点を探すくだりは、この二人のファン必読です。

音楽関係では、ミュージシャンの矢野顕子のレアな文庫が二点出ています。「きょうも一日楽しかった」、「街を歩けばいいことに当たる」(どちらも角川文庫各300円)写真をいっぱい使った、好奇心旺盛な彼女らしいエッセイ集です。「街を歩けばいいことに当たる」は、矢野顕子ならではのNYガイド。「きょうも一日楽しかった」には、忌野清志郎とのツボ押し、東洋医学談義という楽しい企画もあります。

★古本市は19日(日)18時までです。13日(月)は定休日です。

 

「三三九度」。ご存知ですよね。実際に経験された方も、結婚式場で見られた方も多いと思いますが、神崎宣武著「三三九度 日本的契約の民族誌」(岩波書店500円)は、面白そうです。著者は宮本常一の下で民族学を学んでいて、学者でありながら、稼業の神主を務める方です。この本は「三三九度」に始まり、「親子盃」、「兄弟盃」そして「襲名盃」など、契約の場に必須の酒と盃について論じてあります。第二章「テキヤ社会における盃事」の詳細な論考は、その手の映画が好きな方なら、私も含めて熟読すべき内容です。

最近の京都ものでは、ダントツに面白かった、いしいしんじの「京都ごはん日記」(河出書房新社500円)も出ています。松本から京都へ引越してきてからの京都暮らしを描いた、2009年2月28日から2010年1月までの日記です。日々の献立から、観た映画のこと、食べにいった場所のことなどが詳細に書かれています。

「晩ごはんは、丸太町まで歩いていき、御所のそばのマダム紅蘭で『上品な八宝菜」(メニューにそうある)」なんて文章に出会うと、あそこの中華は美味しいのよねと思いだしてしまいます。」

今や、使う人も少なくなった絵はがき。でも、大きな古本市に行くと、必ず絵はがきだけのコーナーがあって、熱心に探しているお客様を見かけます。そんな絵はがきの歴史をパースペクティブに描いた細馬宏通「絵はがきの時代」(青土社1900円)は貴重な一冊です。聖霊降誕祭の透かし絵はがきなんてもの(実物の写真り)まで存在したんですね。奥が深い世界です。

「奥が深い」と言う意味では、この本も極めて異色です。藤波公浩二著「場所別 性の自由」(駿河台書房600円)という一冊。「セックスはベッドだけのものではない」というサブタイトル通り、まぁ、エロ本の一種と言えばそうなんでしょうが、今なら素っ裸の女子が大胆なポーズで見せるのですが、これみんな着衣のまんまなんで、笑ってしまいます。全然エロっぽくない!少なくとも、ネットに叛乱している画像に比べれば、品があります??

★「女子の古本市」は19日(日)まで開催です。月曜定休日。最終日は18時まで。


 

 

 

ヘレン・K・ニールセン。デンマークの新聞社の特派員で、昭和20年代後半に日本に来ていました。彼女が、故郷デンマークへ帰郷した昭和26年のヨーロッパ滞在期を、「暮らしの手帖」のために送った旅行記「古い国からの新しい手紙」(暮らしの手帖社版2000円)がありました。25cm×13cmの変型の長方形サイズは、ノスタルジックな雰囲気が溢れています。発行は昭和30年。もちろん装丁は花森安治。昔のヨーロッパの街並みを写した写真もステキです。

渋い写真なら、佐伯剛正「1972年作家の肖像」(清流出版1200円)もお薦め。タイトル通り、72年の作家の横顔を捉えた写真集です。これが、かっこいいんですね。白いポロシャツに黒いカーディガン姿で、煙草を手に佇む北杜夫なんて、実にさまになっていて映画の1シーンのよう。髑髏を横にベッドサイドに寛ぐ澁澤龍彦は、さもありなんですし、その文学同様に端正な小川国夫、苦難の時代を生き抜いた長谷川四郎の、男の顔も印象的です。

「それにしても仙洞御所はすでに焼亡し、そこに住んでをられる方はいない。美しい庭だけが、ただまれ人に見られるために、しじふ身じまひをして、黙然と坐っている。美しい老いた狂女のやうに。」

なんて、いかにも三島由紀夫らしい文章で語られる「仙洞御所」。そして井上靖の「桂離宮」、大佛次郎「修学院離宮」と、三人の文豪が描いた「終わらない庭」(淡交社550円)は、ガイド本を遥かに超えたエッセイです。美しい写真と共に楽しめます。

池澤夏樹ファン、星野道夫ファンなら、ぜひ持っておきたいのが池澤夏樹著「未来圏からの風」(パルコ出版600円)です。ヒマラヤ、アラスカ、バリ島と世界を駆け回り、ダライ・ラマら賢者たち膝を交えて、来るべく世界のあり方を語り合った本です。この中に、星野道夫のインタビューが収録されています。二人の著作は、常に揃えようにしていますが、この本は最近は入荷していませんでした。未読の方はぜひどうぞ。

★「女子の古本市」は19日(日)まで開催です。月曜定休日。最終日は18時まで。

 

「ウルトラマンはもともとM78星雲の宇宙警備員で、身長40メートル、重量三万五千トンという巨大なからだを持っていた。ある時、凶悪怪獣ベムラーを怪獣墓場へ護送する途中、逃げられてしまった。」

そうかウルトラマンはチョンボしていたのか……、初めて知りました。中江克己著「おもちゃ戦後文化史」(奏流社1000円)にある一節です。この本、昭和20年代のブリキ製のジープに始まって、昭和50年代のテレビゲームに至るオモチャの変遷を描いた、いわば子どもの世界からみた戦後史です。自分の生まれた時代から読み始めても面白い一冊です。

次にご紹介するは、ヤングアダルト向け(高校生向け?)のジャンルに入る小説ですが、大人が読んでも面白いのです。作者は那須田淳。1995年よりベルリンに在住。作家アクセル・ハッケと画家ミヒャエル・ゾーヴァの共著『ちいさなちいさな王様』など翻訳でも有名な作家で、ご紹介する「一億百万光年先に住むウサギ」(理路社250円)の表紙もミヒャエル・ゾーヴァのウサギが自転車に乗っている作品が使用されています。森絵都のヤングアダルト向け小説のテイストに近い青春ものですが、ラスト、ドリス・デイのポピュラーソング「ケ・セラ・セラ」のレコードが登場して、ちょいと涙が出てきます。

小さな出版社を立ち上げた人達の獅子奮迅ぶりと、マイペースな生き方を描いた傑作ノンフィクション「ひとり”出版社”という働きかた」(河出書房600円)は、いつも入荷する度に売れた本です。ミシマ社、土曜社、夏葉社、サウダージ・ブックス、タバブックス等々、当店とお付き合いの出版社も掲載されています。この本は、出版社の業界本ではなく、小商いで、背伸びせずに、時代に流されずに、いきてゆくための指南書と思って読んでいただきたい一冊です。

もう一冊、異色のノンフィクション「釜ヶ崎のススメ」(洛北出版1000円)。日雇い労働者の街として有名になったこの街を丸ごとルポルタージュした本で、いかにして私たちは生き抜いてゆくのかを考えさせてくれます。でも、決して難しい本では有りません。

「一般的に『西成・釜ヶ崎』は怖い所らしい。しかし私は釜ヶ崎に来て40年、怖いと思った事がない。ただ、西成警察を除いて。それどころか、こんなに人間らしい街、こんなに暖かい街は他地域に無いと思っている。そんな街に生きる子どもたちはと言えば、実に子どもらしい。」

なんて文章を読んだら、中身を覗きたくなりますよね。

毎年、東京の駄々猫さん恒例の人気「福猫袋」ブックもあります。雪にめげずに、ぜひ本と遊びにきてください。

★「女子の古本市」は19日(日)まで開催です。月曜定休日。最終日は18時まで。

 

レティシア書房、冬恒例の「女子の古本市」が始まりました。

東京、岐阜、大阪、兵庫、滋賀そして京都市内から28店舗が出揃いました。本日より最終日まで、毎度お馴染みの「こんな本を見つけた」をブログで開始します。

さて、最初にご紹介するのは、宮沢賢治の「よだかの星」(リブロポート1000円)です。これ賢治の童話に、玉井司の絵をつけた絵本なんですが、これに、あがた森魚が朗読し、彼自身の作詞による「よだかの王冠」を歌ったCDが付いているところが注目の絵本です。

 

数年前に亡くなったイラストレーター、フジモトマサル(亡くなった後、のきなみ著作が値上がり、今でもネットでは高額のものが沢山あります)が歌人の種村弘と組んだ「にょにょにょの記」(文藝春秋700円)は、種村の日記にフジモトがイラストを付けたもので、ユーモアに富んだ世界。モグラのような、アライグマのような不思議なキャラが魅力的です。種村弘の本では、安西水丸と組んだ「いじわるな天使」(アスペクト400円)も出品されています。イラストレーターを比べながら読んでみるのも面白いかもしれません。安西水丸が村上春樹と組んだ「うさぎおいしいフランス人」(文藝春秋1000円)も出ています。これも最近見かけなくなった一冊かもしれません。

種村の歌集が、一点出ていました。タイトルは「シンジケート」(沖積舎1000円)。

「耳で飛ぶ像がほんとにいるならおそろしいよねそいつのうんこ」

デイズニーのダンボのことを歌った作品ですが、確かに、空からうんこが降って来たら….。

 

如何にも古本屋という風情の写真満載の、東京の盛林堂が出した岡崎武志×古本屋ツアー・イン・ジャパンの「古本屋写真集」(1600円)は、非常にレアな写真が見られます。あの銀閣寺の古書店「善行堂」の名物店主が写っていますが、なんと髪の毛が黒い!若〜い日の店主の横顔が拝めます!

もちろん、岡崎さんもお若い姿で写っておられます。

なお、壁面には女子の古本市向けに、松田敏代デッサン作品「彼女」も展示してありますので、ご覧下さい。

 

★「女子の古本市」は19日(日)まで開催です。月曜定休日。最終日は18時まで。

 

 

 

 

 

今、話題の新刊本屋さん「Title」の店主、辻山良雄さんの「本屋はじめました」(苦楽堂1728円)を興味深く読みました。

この方、神戸出身で、早稲田大学を卒業後、西武系列の書店「リブロ」に入社。当時の「リブロ」は、最も知的で、新しいアートにも積極的に取り組んでいる、書店員憧れのお店でした。池袋本店にお邪魔した時は、心臓が止まりそうなぐらいの興奮に襲われた事を思いだします。

多分、書店員なら、こんな職場で思い切り本と格闘してみたいと思ったはずです。しかし、その後の新刊本屋さんの業績不振に、この書店も巻き込まれていき、辻山さんも職場を去らざるを得なくなります。閉店の寂しさと、新しい日が始まる期待の入り交じった複雑な感情は、私も経験したことがあります。

退社後、著者は自分の店を持つべく動き出します。これから新しいことを始めようという方には熟読して欲しいものです。開店までの道程の中で、一カ所、ああ、同じ思いだなぁと強く感じいった部分があります。それは、著者のお母様が亡くなられた時のことです。遺してもらったまとまったお金を前にして、こんな考えが過ります。

「自分はこの年でもう本を売る仕事しかできないかもしれないけれど、そのお金を使って他の人に喜んでもらうには、来る人がその人自身に戻れるような落ち着いた場所、さまざまな人が行き交い新しい知識や考え方を持って帰ることのできるような本屋を、小さくてもよいのでこの世の中に一つつくるしかないのではないかとも、同時にぼんやり思っていました。」

私自身、母の最期を看取ったあと、遺してもらったものを前にして、私のお金じゃない、店のためのお金なんだろうなと、やはり「ぼんやり」思ったものです。

店の物件を探し、レイアウトを決め、本を搬入してゆく様を描いた開店までの日々は、本好きの方なら誰でもワクワクする気分になってきます。開店の朝、ほんとにお客は来るんだろうか?という不安は、みんな同じですね。

この本は最後に「Titleが閉店する日」で終わっています。著者は、別の誰かがこの店を続けるという考えはないということの上で、この店を見た、どこかの誰かが、その人なりに考えて、その人らしい店を始めた時に、Titleが続いてゆくと書かれています。

なるほど、もし、自分の店を気にいってくれた誰かが、私ならこうすると新しい本屋を立ち上げてくれたら、これ程嬉しいことはないでしょう。

本の最後に、著者と誠光堂の堀部店長との「東西本屋店主対談」が掲載されています。こちらも面白い!

★2月8日(水)〜19日(日)レティシア書房恒例「女子の古本市」を開催いたします。

東京、岐阜、神戸、大阪、滋賀、京都から20数店の女性店主がセレクトしたステキな本が、所狭しと並びます。ご来店お待ちしています。