「まだすこし他人行儀であったのに西瓜のシミで夏と化すシャツ」夏ですね。

「誰かいる気配だけあり誰も居ぬ公衆トイレの個室のなかは」 ちょっとゾッとしますけど、わかります、この気分。

「そんなにも生きるのですかお寂しいでしょうと蝉に同情されて」 一週間しか地上で生きられない蝉から見た人間の生ですが、笑えてきます。

これらの短歌は、書肆侃侃房から出版された寺井奈緒美の短歌集「アーのようなカー」(1836円)に収録されています。九州の出版社書肆侃侃房は、多くの短歌作家の作品集を出しています。滅多に短歌集は読まないのですが、この出版社とお付き合いを始めてから、ポツポツと読んでいます。

この出版社と本格的に取引を始めたのは、文学ムック「たべるのがおそい」を販売してからになります。毎回様々の特集を組み、第一線の作家たちが作品を書いています。最新7号は「ジュヴナイルー秘密の子供たち」で、小山田浩子、西崎憲、映画監督の岩井俊二など多彩な顔ぶれが揃っています。3号「漱石・鏡花・白秋」の特集号の小川洋子、今村夏子、星野智幸、山尾悠子等々、現代文学好きには応えられません。

また、現代韓国女性作家の文学を通して、韓国社会の光と闇を見つめる「韓国女性文学シリーズ」を6点出しています。最新作、ベン・スリンの短編集「惨憺たる光」(1944円)を含めた全作品を集めました。アメリカの文学賞シャーリージャクソン長編部門賞を、初めて韓国の小説家ピョン・ヘヨンが受賞した「ホール」、韓国のスティーブン・キングと呼ばれるチョン・ユジョンの長編ミステリー「七年の夜」等々、どの作品も興味深いものばかりです。個人的に一番読みたいと思っているのが、クォン・ヨソンの短編集「春の宵」です。何も解決されないのに、アルコール依存で酒を飲まずにいられない人たちの絶望、希望を描く作品が並んでいます。こういう作品を読む時は、お酒が要ります。

入荷した途端に売れ行き好調なのが、北村紗衣の「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」(1620円)です。

「私たちはフツーに生きているだけでいろいろな偏見を身につけてしまって、檻に入ったような状態になっています。第一部に入っている『檻に入っているのは、犬じゃなくて私〜ブァージニア・ウルフ『フラッシュ」」では、犬のフラッシュよりもむしろ飼い主のエリザベスが社会という檻に入れられていました。私を檻から出してくれたのは文学とフェミニズムでした。わんこを連れて逃げたい時に、文学や芸術が助けてくれることもあるのです。」

と筆者があとがきで書いている通りフェミニズム批評の本です。自由に批評するために自らの檻をぶち壊そう!とする、シェイクスピア研究者である著者が贈る評論で、早くも重版が決定したとか。全国的に売れてるみたいです。

こんなユニークな本を出している出版社を全面的に応援します。うちで一番多く並べているミシマ社の棚の近くに、書肆侃侃房の棚を新設しましたのでみてください。

 

 

 

 

 

 

★まことに勝手ながら7月1日(月)〜2日(火)連休いたします。よろしくお願いいたします。(レティシア書房)

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)

台湾の高雄にある三餘書店が発行している「時行」(540円)というのミニプレスが届きました。1号が「高雄の窓口」、2号が「古写真in高雄」という特集で、やや小さめのタブロイドタイプの14ページのミニプレスです。もちろん日本に向けて日本語で書かれています。

三餘書店TaKaoBooksは、高雄市内の小さなビルにある書店で、詩、文学、歴史等の新刊本を中心にして、台湾のローカル誌や、zine、フリーペーパーを扱っている書店です。1号を開けると、この書店の紹介と、ミニプレス発行の意図が書かれています。

「台湾には台北と台南しかないとは誰が言ったものか。もう少し下の高雄まで進み、ぜひTaKao Booksから各スポットへ出発してみてほしい。」

そして、まずは、三餘書店TaKaoBooksが紹介されています。当店でロングセラーを続けている「台湾手帳 書店あれこれ」(500円)を見れば、昨今台湾には素敵な本屋がどんどん出来ているようです。この書店もそんな中の一店です。屋号になっている「三餘」とは、「三国志」の中で、夜、雨の日、冬は、読書にいい時間を意味する言葉だそうです。書籍以外に、カフェ、ギャラリーを併設しています。

1号の「高雄の窓口」では、日本でもおなじみの小説家呉明益の展示紹介、地元の人が通う商店や地元アーティストが紹介されています。

1978年生まれのイラストレーター、Croter(本名洪添賢)の作品とインタビューが載っていました。明るい色使いと、鋭い風刺で人気があるとか。全く知らない作家でしたが、猫の頭が戦車の砲塔部分になっているイラストに妙に惹かれてしまいました。

2号は「古写真in高雄」という特集。7枚の古い写真から、高雄の文化や歴史を見るということで、街の歴史を探っています。1958年に撮影された、戦後の日本の闇市とよく似ている堀江市場の一帯の写真などが掲載されています。また、1912年、海軍出身の日本人山田耕作が創設した「山形屋」という書店の、二階建てのシンプルなデザインの建物の写真が掲載されています。この書店、開業から30年を経て、日本占領時代に最も古い書店となりました。しかも、一度も空襲に合わず、現在もレストランが入居して営業しているそうです。

こんな風に古い写真で街の歴史を語りつつ、日本向けのガイド本では書かれない、地元発の新しいスポット紹介盛りだくさんのミニプレスです。一味も二味も違った台湾探訪の雑誌として、オススメします。

 

 

★まことに勝手ながら7月1日(月)〜2日(火)連休いたします。よろしくお願いいたします。(レティシア書房)

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)

 

信頼している映画評論、文芸評論、そしてエッセイストの川本三郎の「台湾、ローカル線、そして荷風」(平凡社/古書1500円)を味わいました。そうなんです。「味わう」という言葉がピタリとハマる一冊なのです。

著者は10年ほど前に妻に先立たれました。その後、一人暮らしを続けていますが、この本は雑誌「東京人」に2015年から18年にかけて連載された「川本三郎 東京つれづれ日誌」をまとめたものです。一人ローカル線に乗り、見知らぬ町を歩き回り、地元のお酒飲む。あるいは、最近何度も訪れている台湾で、地元に生きる人たちと交流を持つ。老境にさしかかった著者の、ゆっくりと流れてゆく時間。

「きれいな名前の町には、それだけで行きたくなる。埼玉県の北東部に、菖蒲町という町がある。現在は久喜市に入っている。五月の菖蒲の季節になると、この街のことを思い出す。以前から一度、行きたいと思っていた。五月の連休が終わったあと、朝から、風がさわやかで、五月晴れ。思い立って菖蒲に出かけた。」

と、こんな感じでひょいと出かけるフットワークの軽さが魅力的です。別に観光地を巡るわけでもなく、田園風景を楽しみ、季節の風を感じながらぶらぶらするだけです。そして、その土地に所縁のある作家が紹介されていきます。例えば、秋晴れの一日、森鴎外の歴史小説に登場する興津の町(静岡市清水区)に出向きます。ここは戦時中、詩人の堀内大學が、家族を連れて疎開していたのだそうです。こうして著者の鉄道の旅に付き合いながら、日本文学史の一部を垣間見ることができます。

「七十代のいま、若い頃に比べれば、はるかに平穏な暮らしに恵まれている。」と、まえがきに書かれています。一人旅を愛し、読書に浸り、新しい映画に興奮する。好きな世界をいくつか持っていることこそが、老後の暮らしを豊かなものにすることを、この本は教えてくれます。確かに、孤独はある。しかし、著者は最も敬愛する永井荷風のこんな言葉で、孤独の良さを表現しています。

「生きている中、わたくしの身に懐かしかったものはさびしさであった。さびしさの在ったばかりにわたくしの生涯には薄いながらにも色彩があった」

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)

♫連休のお知らせ 7月1日(月)〜2日(火)

 

 

ユニークな企画の本「平成日本の音楽の教科書」(新曜社/古書1200円)を読みました。著者は大谷能生。サックス奏者、作曲家、そして音楽評論を中心にした評論家、最近では東大でジャズ理論を教え、「東京大学のアルバート・アイラー 東大ジャズ講義」と題して本にしています。

そんな華々しい活躍をしている人が、この時代、義務教育の音楽の授業で何が教えられているかという、極めて地味な検証作業を本にしました。

ところで、小・中学校時代の音楽の授業が面白かったという記憶がありますか。私は死ぬほど嫌いでした。いけずな女教師に猛反発した覚えがあります。役に立たない授業=退屈、になってしまいました。そう思った人も多かったはず。だから本書は、本当にそうなの?と、「『音楽の教科書』をアタマからトータルに、予断を持たず、一つの読み物として、いわばひらたく読んでみる事」から始めます。

昨今の高校の音楽の授業で使用する教科書にどんな曲が載っているかご存知ですか?

シューベルト、ミスチル、嵐が歌った「ふるさと」、荒井由実、「新世紀エヴァンゲリオン」オープニング曲、宮城県の民謡、現代音楽の武満徹、朝鮮半島で歌われている「トランタリョ」等々、新旧ごちゃ混ぜの世界です。う〜ん、なんだか凄い世界です。

まず小学校の音楽から始まります。思い出してください。小学校時代、必ず歌わされた歌がありました。それは、文部省が選定しているのですが、明治から大正、昭和初期の曲ばかりで戦後の曲はありません。

つまり、「敗戦時の大人が子供の頃に学校で習った歌 ーそれが『尋常小学校唱歌』なわけですがー の中から、戦後の教育体系のなかでも問題がないと判断された歌を復活させたものが、現在の『歌唱共通教材』であり、ここにははっきりと戦前の、という事は明治初期からの音楽教育が引き継がれているという訳です」

だから、退屈なんですね。著者は徹底的に音楽の教科書を読み込み、そこに何が求められているのかを探って行きます。決して、この時代の音楽教科書を批判的に見ているわけではなく、私たちが何を学んでゆくかを論述して行きます、しかも極めて平易に。

ここで、興味深かったのは、いわゆる音痴についての著者の考え方です。

「自分で自分のことを『音痴だ』と思っている人の多くは、音程よりもむしろリズム、特に休符の位置できちんと音を休むことができていない(ということを自分でわかっていない)のが原因ではないか」

様々な発見が、この本にはあふれています。音楽の歴史や、理論に全く触れずに、私たちが受けてきた音楽授業の歴史を振り返らせてくれる本書は、ウルトラC級の離れ業的書物です。

「音楽は、社会的には、いまは完全に『売り物』として扱われています。しかし、学校のなかでは「崇高な芸術』であり、また、『取替えがきかないわたしの個性の表現』として教えられます。この三つは互いに相矛盾していますが、そのどれもが等しく、『音楽』の特質であるのです。」音楽をズバリ言い切った文章です。 

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)


 

 

細見美術館で開催中の「世界を変える美しい本インドタラブックスの挑戦」の内覧会に、昨日行ってきました。タラブックスの本の素晴らしさについては、当ブログでも何回かお伝えしています。「疋田千里さんのミニプレス」「世界を変える美しい本」「絵物語『つなみ』」「タラブックスが目指すもの」等です。

改めてこの出版社のことをご紹介すると、1994年インド南部チェンナイを拠点に、子供や大人向けに、ハンドメイド本やビジュアルブックを中心に出版活動をしています。インド土着芸術や民話を取り上げて、おそらく他の出版社では真似できない手法で素敵な本を出しています。紙で作る本の奥深さを知ることができる作品ばかりです。熱心な愛好者も多く、当店も何度か入荷しましたが、ただいま全て売り切れです。

この展覧会は、1「タラブックスの歴史を刻んだ本」、2「ゴンド芸術と『夜の木」、3「民族画家との本づくり」、4「語りから本へ、本から語りへ」の四つのパートに分かれて、「タラブックス」の全容を見せてくれます。インド各地の民族画家たちと組んできた歴史の中で、特にゴンド族のアーティストとの取り組みで出された、代表作「夜の木」や、彼らとの仕事ぶりも紹介されています。

以前店長日誌「タラブックスが目指すもの」の中で、「『六ヶ月かかります』これは、内外からの注文に対するこの出版社の返事です。どれだけ長い時間がかかろうと、本の職人たちが自信を持って届けられるかが大切な事なのです。良い物は、時間がかかるのです。」と書きましたが、本当に本の職人たちがじっくりと時間をかけて作り出したものがズラリと並んでいます。内覧会の日、少し早めに到着したので、誰もいない展示室で一人で観るという嬉しい初体験をさせてもらいました。幻想的な魔術に絡め取られた気分で、遠くから、獣の鳴き声や人々の踊りの声、太鼓の音が聞こえてくるような時間が流れました。

土着の人々の語りと物語を伝えるのがインドの民族芸術の特徴ですが、タラブックスは、この伝統を尊重し様々な工夫をこらしながら、語りの持つ雰囲気をなんとか本の中に残そうとしています。この展覧会では、その語りに使用される絵物語が、最後の展示スペースで観ることができます。

「世界を変える美しい本 インドタラブックスの挑戦」は、細見美術館で、6月25日から8月18日まで開催です。本を読むこと、物語の世界に浸るのが好きな方、この展覧会は逃せませんよ。

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)

 

観世会館に「黒塚」を見に行きました。安達ヶ原の鬼伝説がもとになっている曲で、以前、先代の市川猿之助で歌舞伎を観て、その美しさと幻想的な舞台、そしてラスト、ロックミュージカル並みの外連味たっぷりの演技と音楽に圧倒されたので、オリジナルを前から観たいと思っていました。

巡礼の旅に出た熊野那智の山伏とその一行は、安達ヶ原で、老婆の住む粗末な小屋に一夜の宿を借りることになります。前半は老婆が自らの苦しい身の上を嘆きながら、糸を繰ります。夜も更けてきて、老婆は「留守中、決して私の寝所を覗かないでください」と頼み、山伏たちのために薪を取りに出かけます。

しかし、この老婆に不信感を覚えた山伏に仕える下男が、密かに寝所を覗くと、そこには大量の死体が積み上げられていたのです。下男の知らせで山伏は、この老婆が鬼だったことを知り、追いかけてきた鬼女に変身した老婆と対峙することになります。山伏は珠数を擦って鬼女の怒りを静めてゆくというお話です。

静かに去ってゆく老婆が、ふと立ち止まり「寝所を見ないで」と山伏に言うところが、おお〜怖わ〜です。ハリウッドのオカルト映画の比ではありません。そして、舞台に設えられた庵を山伏が覗くと、死体の山!、といっても舞台には死体なんぞありません。あるように見せるのが能の面白さ。なんだ、これ!と騒ぐ山伏の不安に同調するように、お囃子の音が一気に緊張感を高めていきます。あの「ジョーズ」で鮫が出る時に鳴る音楽みたいです。

ついに、鬼との対決。パワー全開のお囃子のサウンドと、一糸乱れぬ謡いが、興奮度をアップさせます。追い詰めた鬼が逆襲に転じた時、山伏はなんとマイケル・ジャクソンばりにムーン・ウォーカーで、後ろ向きに舞台を駆け抜けます。さらに、山伏たちが体をくねらせて鬼に立ちむかう場面、えっ?こんなダンサブルな場面って、能にあったの?と驚ろきました。もう、ストリートダンスそこのけの迫力でした。こんなかっこいい音楽と舞台を、室町時代に作っていたんですね。

能にしろ、歌舞伎にしろ、どうしようもなく眠たくなる場面があります。その時は、迷わず寝ることです。きっと、起きろ!ここやで!と舞台が呼んでくれます。そこだけ観てればいいのです。その内に、だんだん起きている時間が長くなってくるものです。この舞台でも、老婆の身の上が語られる場面は寝てしまいました。

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)


 

         

7月3日(水)より、「ことばの生まれる景色」原画展が始まります。この本は、以前ブログでも紹介しましたが、東京の書店「title」店主、辻山良雄さんが書かれた本です。店主が選んだ作家作品世界をnakabanさんが、描いています。

nakabanさんは、1974年広島生まれの画家。絵本だけでなく、本の装丁、アニメーション制作など幅広い活動をされています。最近の装丁では、山尾省三の二冊「五月の風 山尾省三の詩とことば」(野草社2484円)、「火を焚きなさい」(野草社1944円)が、印象的でした。

絵本も素敵で、今回ご紹介するのは、「ぼくとたいようのふね」(BL出版/古書1100円)と「よるのむこう」(白泉社/新刊1728円)です。「旅する」ことをテーマにしているnakabanさんらしい作品です。

「ぼくとたいようのふね」は、少年が夜中、小さな船を持って川に行くところから物語は始まります。「みずにうつった つきのうえにふねをうかべた」少年は、「いってらっしゃい ちいさな ぼく」と言いながら船を送り出します。少年の分身が乗っているかのように、船は川を滑りだします。波を越え、未知の世界へと向かいます。朝を迎えると、小さかった船は、不思議なことに大きな客船となって、さらに航海を続けます。爽やかな風が吹き込んでくるような空と海の絵がいっぱいに広がります。

「よるのむこう」は、帯に「静かな夜、旅に出るような気持ちで、そっとめくってください。ページという車窓を、宝石のように深く美しいシーンが流れてゆく大切な時間に開きたい、大切な人に贈りたい絵本です」と書かれている通り、幻想的な絵本です。「てがとどきそうな あお まよなか れっしゃにゆられ あおいゆめをみていた まどのそとに ひかりが ひとつぶ ふたつぶ」と詩的な言葉が、旅へと連れ出してくれます。「銀河鉄道の夜」のような不思議な世界の入口。深い緑と、濃い青色が支配する絵の中に溶け込んで、次元を超えた旅に誘われます。

nakabanさんの「青色」は、引き込まれるような魅惑的な夜の深い色合いと、夜明けの海や緑の大地に爽快な風が吹き抜けいくような透明な色合いが、どちらも本当に素晴らしいです。

原画展までには、あと数冊入荷予定しています。お楽しみに!

 

●なお、7月1日(月)〜15日(土)誠光社で「nakabanの旅するブックシェルフ誠光社篇〜もうひとつの『ことばの生まれる景色』〜」が開催されます。nakabanさんの世界をお楽しみください。

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再決定。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。     朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)


 

おおば比呂司をご存知ですか?1921年札幌生まれの漫画家&デザイナーです。

幼少から絵画・イラストの才能を発揮。1942年、徴兵で陸軍航空隊入隊して、この時の体験が、後の飛行機デッサン創作に活かされる事となります。除隊後、東京で漫画家として活動を始め、新聞各紙にイラストを描き人気を得ます。京都の和菓子「おたべ」は発売以来、彼のイラストを使用しています。

独創的な飛行機デッサンを十分に発揮した、ちょっとレアな「私の航空博物館」(東京堂出版/古書2500円)を入荷しました。函には、懐かしい複葉機とアポロ月着陸船が一緒に描かれています。ブルーの表紙には、航空ファンなら大喜びそうな戦闘機のデザイン、表紙をめくるとデフォルメされた羽田飛行場のイラストが登場します。以前、この本を古本市で見かけた時、心惹かれて買おうと価格を見て、えっ!こんな高いの?と諦めたことがありました。

この本は彼のイラストを集めていますが、後書きで「飛行機はまさに言うところのフライング・マシンだがそれにまつわる人々もお話はまさに”人生の航跡”であった」と書かれている通り、飛行機にまつわる人々の話、自身の体験をエッセイ風にまとめあげてあります。

「帯広に飛んだ。東亜国内航空の111便は朝の七時十分、帯広に向かってテイクオフする。 お尻がフックラしたYS-11型機が、ロールスロイス・エンジンをキンキンうならせて上昇するときは、ちょっとスピード感があってうれしい。

しかし、空に浮くと、まさに浮いたカンジがするのは、このフックラとしたお尻のせいか……..とおもうのだが地上の流れがのんびりと見える。」

飛行機好きの少年が、ワクワクした気分で空旅を楽しんでいる様が見えてきます。私自身も、彼の飛行機デザインを小さい時から見続けて、飛行機、そして飛行場好きになりました。また、メカニックなデザインばかりでなく、羽田からアンカレッジに向かう時に出る機内食を事細かく描きこんでいるのも面白いです。どちらかといえば、ジェット機よりも、双発のプロペラ機に、作家の愛着や思いが満ち溢れていて楽しめます。

 

♫トーク&ライブ決定 7月13日(土)澤口たまみ(かたり)石澤由男(ベース)

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再決定。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。     朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時会場18時30分スタート (2000円)ご予約ください

 

 

 

 

 

京都駅前伊勢丹デパートにある駅美術館「安珠写真展Invisible Kyoto」(6月30日まで)に行ってきました。この写真家の女性、元々はパリコレ等で活躍する国際的なモデルだったそうです。1990年に「サーカスの少年」を出版して写真家に転向、現在に至っています。

彼女はこの写真展についてこんな風に語っています。

「日本人のスピリチュアリティの概念が根付いた平安京。ここに人生100歳時代を豊かに生きる手がかりがあるかもしれません。命を愛おしみ平和を願う想いは『令和』も変わらないのですから。 私は平安京を知れば知るほど見えない世界を物語からひもとき、写真で寄り添いたいと思うのです」

様々な平安時代の物語の一部を写真の中に取り込んで、独自の世界観を展開していきます。「青馬」という作品(写真右)。平安時代、正月七日に「青馬」を眺めれば年中の邪気から逃れられることが知られていました。中国では青が「春」の象徴だったことから、当時は淡灰色の馬を「青馬」と呼んでいました。平安中期、青馬が白い馬になりその読み方だけが残ったみたいです。壁面一杯に広がる白い馬の姿を見つめていると、心や体にまとわりつく、うっとおしいものが飛んでいきそうです。深呼吸すると馬の呼吸音が聞こえてきます。

渡月橋の松枝を捉えた作品も素敵です。細い枝に苔や虫が寄生しています。その背後に広がる嵐山の自然。自然との共存を絵にしたような作品ですが、平安時代には「自然」という概念は存在せず、人と自然は一体でした。苔、松枝、水が織りなすハーモニーが響いてきます。

私がこの作品展に行った理由は、チラシにあった蛾と女の子のコラージュ風作品(写真左上)に惹かれたこと、さらにこの会場の音楽を細野晴臣が担当していたことです。どんなサウンドを聴かせてくれるのか興味津々でしたが、さすが細野。かすかに、遠くの方から響いてくるノイズ風の音を中心に構成された無機質な音楽が、会場を包みこんでいました。細野ファンなら行かなくてはね!

 

 

 

♫トーク&ライブ決定 7月13日(土)澤口たまみ(かたり)石澤由男(ベース)

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再決定。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。     朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時会場18時30分スタート (2000円)ご予約ください

 

 


 

「ビルのまちに ガオー 夜のハイウェイに ガオー ダダダダ ダーンと たまがくる」

はい、この曲を歌える人は、ぜひ泉麻人著「冗談音楽の怪人三木鶏郎」(新潮選書/古書1000円)を読んでください。1963年、正月より放映の始まったTVアニメ「鉄人28号」(原作/手塚治虫)のテーマ曲です。昭和31年生まれの筆者は「僕にとって三木鶏郎といえば、まず『鉄人28号』なのだ。」と書いていますが、ほぼ同世代の私も、TVの前に居ました。

三木鶏郎の名前を聞いて、あ〜あの人かと思い起こせる人は、おそらく60代から上の世代でしょう。昭和20年代に彼が製作した人気ラジオ番組「日曜娯楽版」は、さすがに聞いたことがありませんが、昭和30年代から、TVに登場する数々のCMソング、例えば「ジンジン仁丹」とか、「カーンカン鐘紡〜」とかは、なんとなく覚えています。中でも、ポップシンガーの弘田三枝子を引っ張り出して、田辺製薬が発売した栄養ドリンク「アスパラ」のCMソングは、よく覚えています。「アスパラ アスパラ アスパラでやりぬこう」のフレーズは、小学校でも皆歌っていました。

戦後のラジオとCMソングで、世の人々を惹きつけた三木鶏郎という人物を、著者は当時の彼を知る人間に会い、また残っている様々な資料を精査し、足を使って取材をしています。「労作」という言葉がぴったりの一冊です。弘田三枝子にもインタビューしているから驚きです。

終戦直後、NHKに歌とコントを持ち込み、変てこな番組を国民的ラジオ番組にしてしまい、その中で使われた時事ネタのコントで多くの政治家を怒らせました。時の首相吉田茂をネタにして笑いにして、息子である吉田健一が、「愚劣な吉田攻撃」と自らの随筆で書いているぐらいです。(今のマスコミには絶対に真似できませんね。)

民間放送局が放送を開始すると、すかさずCMソングを製作し、消費時代の幕開けを牽引しました。日本初のCMソング、小西六写真工業のCMも彼でした。さらに彼は活躍の場を広げ、ディズニー映画「ダンボ」(1954年)の英語の歌を日本語にする仕事に携わります。「わんわん物語」では、翻訳以外にも声優のキャスティングに参加していきます。

いわば戦後の日本のポップカルチャーの先頭を走り抜けた男、三木鶏郎。この男の自伝は、ある面の日本の戦後の姿を見事に捉えています。ちなみに松下電気(現パナソニック)のCMソング「明るいナショナル」は、youtubeで白黒TV映像と共に見ることができます。