おや、珍しい、しかけ絵本が出品されていました。かかぐ・しかけえほん「羽と翼」(大日本図書850円)です。表紙を広げると、トンボが飛び出します。その次のページを開けると、蛾がむっくり起き上がり、この手の虫がお嫌いな方は、思わずページを閉じそうになりますが、よく出来きています。その次は、蝙蝠と、もうここまでくると拒否感一杯の方もおられるかもしれませんが、次のページを開いて下さい。19世紀、人力による空を飛べない飛行機のオニソプター(羽ばたき機)の模型の可愛いこと。こんな鳥みたいな形で大空を行こうと思っていたんですね。そして最後に登場するのは、今はなき超音速旅客機コンコルド。トンボからここまで進化した(?)しかけ絵本です。

「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルの宝箱みたいな本も出ていました。題して「キャロルインワンダーランド」(新書館1000円)。彼の詩集、友だちへの手紙、彼女の考案によるパズル、キャロル自身が撮影した写真集、とバラエティーに富んだ本です。「病的なまでの彼の言葉いじり癖」と指摘されている「ダブレット」という名のゲームなんて、見ているだけでクラクラしそうです。最後を飾るのは、長い時間をかけてポーズをさせられた少女写真。アブナイ人物と間違えられそうです(実際、裸体写真はかれの遺言で処分されたとか)が、この少女への眼差しが「アリス」を生んだのでしょう。

もう一点、迷路へと誘い込んでくれるのがルイス・キャロル作の「スナーク狩り」(集英社700円)です。モンスターを追いかける9人と1匹のナンセンスストーリー。絵はトーベ・ヤンソン。翻訳は種村弘。ムーミン生みの親の絵は、キャロルの文章に奇妙にシンクロしていきます。種村は原作の持つ韻文的性格を、日本の「五・七・五・五・七・七」のリズムに置き換えて翻訳しているところが注目です。こんな感じです。

「スナークの/いそうな場所だ!/ もう一度/繰り返したぞ/俺たちの/胸に勇気を/」

迷路に迷い込みついでに、もう一冊。小沢信男の「東京骨灰紀行」(筑摩書房800円)。これ、東京巡りの一冊ですが、一味違います。関東大震災と東京大震災で破壊された街の地下、江戸時代のい牢屋屋敷跡、或は仕置場跡、等々に累々と散らばる骨灰を巡る本です。最先端の都市機能を備えたこの街の、「忘れられた東京の記憶をほり起こす、鎮魂行」です。タモリの人気番組「ブラタモリ」でやってくれないかなぁ〜。

 

フランソワーズ・サガンと聞けば、あぁ〜恋愛小説の名手れ、というのが第一印象でしょう。でも、彼女が薬物中毒で、9日程治療入院していたことご存知ですか? その特別療養所で過ごした肉体的、精神的苦闘の日々を描いた文章を見た友人のビュッフェが、描いて出来たのが「毒物」(求龍堂1500円)です。なんといっても、ビュッフェのデッサンです。硬質な線で描くセンスに惚れ込みますよ。

「この解毒の小日記はこれで終わる。解毒の治療は大したこともなく、この日記は体のために良かったのだろう。私はこれから、よくいわれるように、ほんとうに生き、そして書くだろう。終わりに当たって、私には道徳的な言葉も、無道徳的な言葉も見つからない。 私は自分にさよならをいう。」

次に、絵葉書ファン?なら見逃せないのが、この本(写真下)です。お断りしておきますが、、韓国の本なので、全く内容がわかりません。僅かに表紙に”Busan Museum Collection”と英語表記から調べると、釜山市立美術館が発行しているシリーズの一冊みたいです。全500ページにわたって、古い絵葉書を収録、この国の様々な表情を見ることができます。恐らく、戦前或は戦中の九州と釜山を結んでいた定期便の客船の入港時の写真(151ページ)も載っています。この前後の船の写真、私のお気に入りです。お値段は3000円です。

イラストといえば、19世紀初頭に、ドイツロマン派のT.A.ホフマン幻想的実験小説「ホフマン物語」(立風書房1200円)のイラストを手掛けたマリオ・ラボチエッタも見逃せません。イラストレーションが飛躍的に発展したイギリスで、ユニークな作品を描いた人物ですが、実は経歴は不明、その生涯も謎です。幻想的なタッチ、色使いを十分に楽しんでいただきたい一冊です。

 

 

先日、DVDで三島有紀子監督「繕い裁つ人」を観たところでした。神戸を舞台に、仕立て屋の女性の日々を静かに描いていますが、原作は池辺葵のコミックです。その全6巻セット(講談社1500円)が古本市に出品されていました。映画は、コミックの第一話、二話を作品にしているみたいです。台詞もそのまま使っていました。

完璧に作られたコミックの世界を、生身の人間ドラマにするってきっと大変な作業ですが、空気感は見事に映像化されていました。古くからそこにあるモノへの愛しさと、それを大切に扱う職人の世界が、様々に展開していきます。全6巻、ゆっくりと読んでいただきたい作品です。

他にも、コミックが沢山出品されています。「五条大橋を渡って東へ進む」で始まるのは今井大輔「古都こと」(秋田書店全2巻400円)。京都を舞台にした、不器用な男女を描いた話ですが、これ構成がユニークです。第一巻は、女性側視点で、第二巻は男性側視点でそれぞれに描かれています。こうやって全く違う視点から描いていくと、けっこう退屈な話でさえスピーディーな展開になるようです。京都の方なら、お、この光景はあすこかと?推測しながら読むのも面白いコミックです。

当店人気の今日マチ子作品も出ていました。「ぱらいそ」(秋田書店600円)です。長崎の原爆投下に発想を得て描かれた物語ですが、辛く、悲しい物語にもかかわらず、この作者の戦争と戦争が引き起こす様々な犯罪を乗り越えて行こうとする強い姿勢をを感じます。「cocoon」、「アノネ」に続く少女×戦争シリーズの完結編です。ぜひ、揃えて下さい。

アンダーグラウンドな人気で一時期時代をリードした丸尾末広の作品が数点出ています。荒俣宏が丸尾を「プロレタリア文学や前衛不条理劇の復興をうながす人物と目される日がくるかもしれない」と評価した「笑う吸血鬼」(大判コミック/秋田書店1000円)で展開される悪夢の如き世界。他の作品は読んでいませんが、この作品に登場する吸血鬼が抱え持つ深い傷と悲しみを表現する技術には圧倒されました。彼らに救いの日は来るのだろうか……..。文学ではなし得ない、コミックだからこそ可能だった世界です。続編「ハライソ笑う吸血鬼2」(大判コミック/秋田書店1000円)も出ていますので、未読の方はご一緒にどうぞ。

 

 

「女子の古本市ってどーゆー意味ですか?」

はい、女性店主による一箱古本市でございます。

「女子しか買えないの?」そんな事はありません。誰でも買えます。

3年前に第一回目の「女子に古本市」を開催して、地元新聞社さんからの取材もあって、多くのお客様においでいただきました。今回は店舗数も大幅に増えての開催です。参加して頂いたお店は下記の皆さんです。

東京からは、古本石英書房、古書ますく堂、駄々猫舎、旅猫雑貨店、ママ猫の古本やさん、甘夏書店、大阪からは、本は人生のおやつです、兵庫からは、トンカ書店、1003、おひさまゆうびん舎、日課牧歌、古本ハレクモ、岐阜からは徒然舎、滋賀からは半月舎、伊勢から、古本うみうざぎ堂京都からはマヤルカ古書店、nowaki、榊翠簾堂、ヴィオラ書房、ブックスダカラ、明楽堂、星月夜、クロアゼイル

と並びました。また応援団男子(?)として、善行堂、古書ダンデライオンに参加していただきました。明日から、また細かく商品を紹介していきますが、コミックから文芸書までズラリと並んでいます。お値段も安く設定されていますよ。

さて、同時開催で、上仲竜太「girls」展も始まりました。当店では、5回目の個展です。今回は古本市に合わせて、女性を描いたイラストが十数点並びました。

彼のイラストはくっきりした線と、クリアーな色で、ユーモラスな動物などの明るい軽快な絵が多かったのですが、今までのカラフルな作風とは趣きを変えて、様々な女性の姿を撮った写真から、黒ペンで、描いています。真摯に対象を写し取ろうという、原点回帰の試みのようです。

黒人女性の物思いにふける横顔、年を重ねた女性の顔に刻まれたしわなど、美人画ではなく、その人の人生を描き込もうという静かな闘志を感じました。こちらの個展は、古本市と同じく21日(日)までです。

もう一つ、小さな個展を開催しています。猫山青汰さん描くボブ・ディラン肖像画展です。彼女とは、神戸のトンカ書店に行った時に、出会いました。丁度、トンカさんで個展の開催中で、色々とお話をしているうちに、CDコーナーでミニ展示しませんかとお誘いしました。音楽暦の長いディランの表情を、的確に捉えた作品が8点程並んでいます。もちろんこの際CDも揃えました。3枚組CD”tthe Bootleg SeriesVol.1−3”の横に物思いに耽るディランが並んでいます。こちらのミニ個展は2月末までです。(店長&女房)

 

今年も登場します、「福猫袋」本! 東京から出品されている「駄々猫舎」さんは、毎回「福猫袋」本を出されます。封印された袋に猫関係の本1冊が入っています。もちろん、外から中身は見えません。最初、こんなん、売れるの??と半信半疑でしたが、暫くして完売しました。残れば自分で買って、どんな本が入っているのか見たかったのですが…….。

で、今回も付録に「入浴剤入り」のものと、「猫ポストカード」入りの二つの種類が数冊づつ入荷してきました。価格は300円!お手間入りの福袋、買って損なしです。「駄々猫舎」さんからは、可愛らしい「猫文庫ブックカバー」も出品されていますので、どうぞ手に取って下さい。

猫関連の本も沢山入荷しています。

「ネコロジストはエコロジスト。21世紀はやさしいネコロジストの時代になってほしい。」と、初めて飼った猫、寅之介の写真を撮影したフォトジャーナリスト、吉田ルイ子の「わたしはネコロジスト」(ブロンズ新社800円)は、数多ある猫本の中でも、文章、写真とも素敵な一冊です。彼のアップを捉えた写真を眺めると、その深い哲学性に魅了されます。(まぁ、そんなものは実際にはないんですが)

え、星野智幸が猫小説なんて書いてたの?と驚かされたのが、「われら猫の子」(講談社800円)。挿画は藤田嗣治の「猫の教室」を使用しているので、猫が主人公かも思ってしまいましたが、これ初期の作品から、最新作までからセレクトされた短篇集でした。

表題の「われら猫の子」にも、猫なんて一匹も登場しません。それどころか、話はサリン事件勃発した当日の朝、二人の若者の会話から始まります。人間同士の心の違和感や、ズレを描き出す星野文学。独特の視線が移動する雰囲気を猫に例えたタイトルなのでしょうか。この人の長編は、私にはしんどかったのですが、この短篇なら最後まで読めそう。

猫本ではありませんが、岡崎京子初の展示会の公式カタログ「戦場のガールズ・ライフ」(平凡社1200円)が猫本の山の間から出てきました。カタログとはいえ、厚さ8cm強のボリューム。300点以上の原画、若き日のスケッチにイラスト、インタビュー等で構成された岡崎ファンにはマストな一冊です。桜沢エリカ、安野モモヨ、しまおまほの対談「くちびるから散弾銃2015」で、三人が、岡崎のおっぱいの描き方の上手さに共感しているのが面白い対談です。定価なら2484円なので、これはお買い得。中身もとても綺麗で、古本には見えません。

★「女子の古本市」2月9日(火)〜21日(日)までです。その後。22日(月)〜24日(水)まで休業します。

25日(木)〜28日(日)まで、一旦閉店した古書「はんのき」さんが、店内に限定オープン!

 

本日ご紹介するは、いかにも古書市ね、とでも言いたげな本を紹介します。

ポール・モーラン「白鳥の死」(コバルト業書 昭和21年発行1000円)。モーランは1920年代のモダニズム小説家ですが、そんなことはどうでもいいです。これ、装幀が東郷青児なんです。古色蒼然とした本の表紙を飾る青児の愁いを含んだ女性の表情を鑑賞するだけで買いです。

フランス文学から一転、「東京近郊 公営ギャンブル場ガイド」(400円)なんてレアな冊子が出てきました。競輪、競艇、競馬場で食べられるグルメ本です。もつ煮込み料理がどのギャンブル場でも主流を占めているんですね。多摩川競馬の「牛炊」700円、浦和競馬の「天ぷらおにぎり」150円とか美味しそうです。学生時代、友人に連れられて競馬場に行った時、きゅうりの丸かじりを食べている悲哀一杯の男性を見かけましたが、ありました。川口オートで100円で販売中です。

東京からご参加のお店は、京都だからということでご当地本を送って頂きました。「ねっとわーく京都2000年8月号」(400円)。何故これを?と思って中を覗くと、特集が「がんばれ!!まちの本屋さん」なんですね。市内の、いわゆる「まちの本屋さん」6店による座談会も掲載されていますが、皆さん今も経営されているのかな?と調べてみたくなりました。

昭和37年発行の「京都御所」(淡交社800円)を見つけました。御所は、毎日愛犬の散歩には欠かせない場所で、いつも新鮮な雰囲気が味わえるが素敵な空間です。見事な白黒写真で御所を捉えたのは入江泰吉です。

まさか、出会うことはないと思っていた本が箱から出て来た時の驚きと喜びは、本屋冥利に尽きるとでも言う瞬間ですが、今回もありました。「大坊珈琲の時間」(自由空間2500円)です。

75年表参道に開店、38年間変わらぬスタイルで営業を続けた喫茶店「大坊珈琲店」が、ビルの取り壊しにより13年年末に惜しまれつつ閉店しました。コーヒー好きに知られた名店で、店主の大坊勝次さんが作る珈琲に魅了されて多くのファンが通っていました。この本は、閉店直後に、陶芸家金憲鎬(キム・ホノ)さんと店主との対談と店内の写真が載っています。47年生まれの店主のきりっとした表情が素敵です。短く刈り上げた白髪の頭は、私もかくありたいほど魅力的です。陶芸家と珈琲一筋の職人の「流されず、自らの足で凛と立って生きるふたりの姿と言葉を」味わって下さい。

この本や店のことは、当店のお客様と、出版者の方から聞いて知っていましたが、まさかこんな所で出会うとはね。

「女子の古本市」 2月9日(火)〜21(日) 15日(月)定休


次週9日(火)から始まる「女子の古本市」に出る本のご紹介第二弾です。

酒井駒子が表紙の絵を担当した、岩瀬成子著「そのぬくもりはきえない」(偕成社650円)。彼女らしいデッサンの少女「波」ちゃんと、静かに佇む愛犬「ハル」を描いて、この長編小説の世界を表現しています。とある家に飼われている犬の散歩を任されたことから始まる事件を通して、少女の葛藤を描いていきます。駒子ファンなら持っていて欲しい一つです。

この著者のものでは、「朝がだんだん見えてくる」を読んでいました。この小説、70年代初頭、岩国にあって、ベトナム戦争拒否の兵士たちの支援をしていた、べ兵連(ベトナムに平和を!市民連合 作家の小田実が代表)の活動家が、経営していた喫茶店「ほびっと」をモデルにしています。岩国出身の作者は実際にこの喫茶店に出入りしていて、その体験を元に、中学生の女の子の意識の変化を描いた小説です。物語の構成が巧みで読ませる作家です。

同じく、犬が登場するのがクリスティーン・ハリスの「ジャミールの新しい朝」(くもん出版450円)です。トルコの小さな町に一人ぼっちで暮らす少年が、ある日、やせっぽちの犬に出会います。徐々に犬と心通わす少年。しかし、大地震が彼らを襲います。地震というスペクタクルを利用しながら、それまで周囲に対して頑に心閉ざしていた少年の心の変化を描いていきます。ラスト、救助に駆けつけたおじさんが、少年に向かって、この犬は誰のものと問いかけ、少年はこう答えます

「ぼくの犬だよ、ぼくの大事な友だちなんだ。」

爽やかな幕切れ。どちらも子供向けの小説ではありますが、心がボキッと折れそうな時にこそ、大人の貴方に読んでいただきたい作品です。読んだ後は、飾っておいても。

やはり、ホッとさせてくれるのが、坂崎千春の「クウネルがゆく」(マガジンハウス500円)ですね。緑の星グウタラ星の住人、クウネル君の日常を描いた脱力系イラストですが、こんな文章に出会いました。

「郵便局(小さくてもいい)、本屋さん(中くらいがいい)、パン屋さん(もちろんおいしくなくちゃ)、公園(芝生と噴水があれば申し分ない)、この町にはクウネル君が必要とするものが、ちゃんとそろっています」

これって、幸せを感じさてくれる町の定義ですよね。こちらも部屋に飾っておくには良さげな一冊です。

鬱陶しい気分の日々を慰めてくれる本を探してみるのも、この古本市の楽しみですよ。しかも安い!!

 

「女子の古本市」 2月9日(火)〜21(日) 15日(月)定休

 

来週2月9日(火)スタートの「女子の古本市」に参加のお店から、ドンドンと本が届いています。本日から、その予告として、届いた本を紹介していきます。

今日はその第一回目です。先ずは、和田誠ファンなら持ってぜひ持っておきたい「IMAGICA SCREEN GRAFFITI」(IMAGICA)です。縦30cm×横22cmの大きさの画集です。中身は、彼が愛した映画を、ハロルド・ロイドの「用心無用」(23年)から、ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(84年)まで網羅した作品集です。どれも絶妙なタッチで楽しませてくれます。「夫婦善哉」の森繁久弥や、「座頭市」の勝新太郎なんて、その役者の真髄を捉えた作品ですね。映画としては退屈だった「八十日間世界一周」のワンカットは、作品を観ているだけで気球に乗って大空に行く気分です。

この作品集は89年に発行されましたが、元々はIMAGICA のカレンダー用に彼が書いた作品をまとめたもので非売品です。貴重な一冊で、お値段は8000円と高価ですが、入手の困難さを考えると安い買物です。

図録でちょっと面白いものを発見しました。「象徴派ー夢幻美の使徒たち」です。19世紀末ヨーロッパ、特にフランス、ベルギーで活発だった象徴主義芸術を取り上げた図録です。夢、幻想、グロテスク、永遠への憧憬等々様々な言葉が、ポンポンと出てきそうな作品ばかりです。モロー、ルドン、ゴーギャン、ムンク等、人気の画家達の作品が登場してきますが、私がここで取り上げたのは、マックス・クリンガーの作品が掲載されていたことでした。

と言っても、この作家の名前を知ったのはこの図録のおかげでした。ずっと前にヨーロッパのロックバンドのCDのジャケットに彼の「手袋2.行為」(右図参)という作品が使用されていて、音楽以上にその不思議な感覚に惑わされたことがあるので、こんなところで再会するなんて驚きでした。独特の幻想美は、20世紀のシュルレアリスムに影響を与えたみたいです。こちらの図録は2500円です。

 

今回はコミックも色々と登場してきますが、セットものをご紹介。萩尾望都の「残酷な神が支配する」(小学館文庫全10巻セット3500円)。定価で買うと6000円少々ですから、約半額です。性的虐待、近親相姦、同性愛、ドラッグ等々泥沼のサイコサスペンスに挑戦してみてはいかがでしょうか。「第1回手塚治文化賞優秀賞」を獲得した作品でした。

「女子の古本市」 2月9日(火)〜21(日) 15日(月)定休

昭和29年、私の生まれた年、という事実はどうでもいいとして、この年、岩波書店から発行された絵本が何点か入荷いたしました。

先ずは、バージニア・バートンの「ちいさいおうち」(29年4月発行2000円)。彼女の代表作で1942年に長女ドギーのために描かれ、、アメリカでその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に授与しているコールデコット賞を受賞。10年後、ディズニー製作でアニメ化され、54年石井桃子により翻訳されました。大自然の中に建っていた小さな家が、押し寄せる都市化の中で居場所を失い、途方にくれているところを救出されるというお話。都市化される街並みの絵に注目です。

「ドリトル先生」シリーズでお馴染みのヒュー・ロフティングが、23年に発表した「タブスおばあさんと三匹のおはなし」を元に日本版「もりのおばあさん」(29年9月発行2000円)。原書ではロフティング自身が絵を描いているのですが、日本語版では漫画化の横山隆一が担当しています。農場に住むおばあさんとアヒル、犬、豚との日々を描いた作品です。ほぼ全ページにわたって横山が絵を描いているのですが、日本的なタッチが妙に魅力的です。

主人公の少年の躍動感が楽しいマージョリー・フラックの「おかあさんだいすき」(29年4月発行2000円)は、明るい色彩が特徴的な作品です。動物たちに次々に出会っていく少年を追いかけただけの絵本ですが、ページを捲るのが楽しい。この本には作者不明の「おかあさんのあんでくれたぼうし」が収録されています。

 

4冊目は「にほんむかしばなし おそばのくきはなぜあかい」(29年9月発行3000円)です。これ、注目すべきは初山滋が絵を書いていることでしょう。31年武井武雄と共に日本童画協会を設立した童画画家です。60年後半に発表した絵本「もず」で国際アンデルセン賞国内賞を受賞しています。絵本の絵にしては、デザイン性が強く、動きのある線は、今でも古さを感じません。配色も美しく、ビジュアル系を勉強中の若い方にも見ていただきたい作品です。         

最後は、黒人の扱い方に問題ありと判断されて発売できなくなったヘレン・バーマン(文)、フランク・トビアス(絵)による「ちびくろ・さんぼ」(これのみ重版で昭和45年発行3000円)です。こちらは明るくて、モダンな色と線がとても素敵な絵本。1988年、この本は人種差別との指摘で絶版になっています。でも、このキャラは愛すべき存在ですよ。

 

 

★2月9日(火)〜21日(日) 「女子の古本市」開催します。

 今回は、東京・神戸・姫路・岐阜・伊勢・大阪・滋賀・京都などから、24店舗(女性店主)の選書です。

 きっと面白い本に出会えますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良エ犬を持っている猟師はまちがいなく腕がヨロシイし、腕のエエ猟師はまずまちがいなくエエ犬を持ってるもんですナ」

「山人たちの賦」(ヤマケイ文庫500円)に登場する京都北山の奥深い過疎の村に住む猟師、勝山倉之助さんの言葉です。この文庫は、山暮らしに人生を捧げた男たちを追いかけたノンフィクションです。登場するは13人。北海道のクマ撃ち。秋田のマタギ、群馬で、絶壁に棲息する岩茸獲り、長野の山小屋主人、滋賀のイワナの養殖師、奈良にある修験者の宿坊守等々、個性的な方々ばかりです。

著者の甲斐崎圭さんは、自然と関わりながら生きている人々にルポルタージュする作家です。登場する13人の生活の場まで落石、マムシ、ヤマヒル、そして、猪にクマの歓迎を回避しつつ、足を運んでいきます。もう、冒険小説の世界ですね。

特に印象的なのが、修験者の修行の山として有名な、紀伊半島を南北に走る大峰山脈の山奥にたった一人で住む宿坊守のお話。山で捕まえたマムシを瓶にいれて、マムシ酒にするつもりで置いておいたところ、翌日瓶の中で凍死していたのです。これ、真冬の話ではありません。つまりそれぐらい厳しい気候の所に一人で住んでいるのです。こんな場所なら、ひょっとしたら絶滅した日本狼が生きているかもと著者が訊ねると、いるかいないか、どっちとも言えんと明言を避けた上で、こう語ります。

「山ちゅうところはそんなもんや。おると思えばおるやろし、おらんと思えばおらん。夢ですわナ。夢……..。それでよろしい」

大自然を前にした時、この山奥の彼方に、狼や、クマが生きている空間があるかもしれないと想像する力を失いたくないものですね。

著者は、最後で山人の心情をこう表現します。

「山を仕事場にして生きる人たちの心根には山を深く愛しながらも、どうしようもない山への”憎しみ”があったことも私は感じている。ある意味では、山はそれほどに “深い”ともいえるのだが、憎みながらも山を愛し、逃れられずにそこで生きようとする人間の人生は、あまりにも痛烈で、深い。」

そんな深いドラマを十分に堪能できる文庫です。旅のお供に最適かもしれません。

★2月9日(火)〜21日(日) 「女子の古本市」開催します。

 今回は、東京・神戸・姫路・岐阜・伊勢・大阪・滋賀・京都などから、24店舗(女性店主)の選書です。

 きっと面白い本に出会えますよ。