2006年、79歳で死去した詩人、茨木のり子の家を写真を中心にしてまとめられた「茨木のり子の家」(平凡社1400円)が入荷しました。

彼女は知人、友人にこんなお別れの葉書を送っています

「この世におさらばすることになりました。これは生前に書き置くものです。私の意志で、葬儀・お別れ会は何もしません。この家も当分の間、無人となりますゆえ、忌慰の品はお花を含め、一切お送り下さいませんように、返送の無礼を重ねるだけだと存じますので、『あの人も逝ったか』と一瞬、たったの一瞬思い出して下さればそれで十分でございます」

そして、彼女はこの世を去り、自宅が残った。その無人の自宅にカメラが入り、かつて彼女が生活した空間を写し取っていきます。

なんて、なんて素敵な空間なのだろう!!TVもPCも、洒落た家具もない家なのですが、ここに住んで、射し込んでくる陽に当たりながら、本を読み、うつらうつらできれば、最高に幸せを感じるに違いありません。

本を開げると最初に、玄関のドアが少し開いている写真が目に飛び込んできます。

お邪魔します、と靴を脱いで玄関を上がると、掃除の行き届いた階段、長年、大事に使われてきた机、ソファー、そして多くの本が収納された本棚。

ふと、小津映画から抜け出た原節子が「お紅茶でもおいれしましょうか」とキッチンの方から声をかけてくれそうな空間と言えば、想像できます?

使い続けられたモノは、使い続けた人の思いが染み込んで、存在感を示しています。使い込まれたエンピツたちを撮影した一枚からは、詩人が言葉を紡ぎ出す作業の重さと喜びが見えてきます。モノにも魂が宿るのです。

彼女の詩にこんなのがあります。

「静かな 日曜日の朝 食卓に珈琲の匂い流れ………とつぶやいてみたい人々は 世界中で さらにさらに増えつづける」

珈琲の濃い匂いが、ふんわりと書斎を、台所を、居間を流れてゆく。何もない静かな時間だけがゆっくりと過ぎてゆく、その贅沢を楽しむ。

甥の宮崎治さんが、大学時代この家に通うのが大好きだったと後書きで書いておられます。

「門灯が灯るころ、伯母の家の呼び鈴を押すと、木製の扉の格子窓が現れ、いつも”いらっしゃい”と小さい声で囁いて、暖かな空間へ招きいれてくれた。」

幸せな時間だったんですね。

 

2014年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したのは、スウェーデン出身のロイ・アンダーソンの「さよなら人類」。

この映画がなぁ〜、と多くの人が思うかもわかりません。ストーリーのある様な、ない様な、主人公がいる様な、いない様な映画ですから。(途中で席を立った方もおられました)

最初は、まごつき、退屈になったり、眠たくなったりしましたが、暫くして、おぉ〜!と、この監督のセンスに痺れました。お話は、冴えない営業のおっさん二人の失敗ばかりの日常を描いてるのですが、二人が売っているのは、パーティーなんかで使うドラキュラの歯とか、歯抜け親父のお面とか、もう時代遅れの全く売れないものばかりです。

一応、二人を主軸にして映画は進みますが、彼等が入ったカフェに、突然馬に乗ったナポレオンの如きスタイルの将軍が乱入し、ロシアに攻め込むと息巻くシュールなシーンが展開します。この時、カフェの向こう側を、配下の軍人達が戦闘服スタイルで馬に乗って、或は槍をもって延々行進していくリアルな姿が見えてきます。な、なんというお金の使い方や!本筋そこのけで、あっけに取られ画面に吸い込まれました。(ご丁寧以にも、この将軍は戦に破れて再度登場します)

モンティパイソンや、ジャックタチの「僕の伯父さん」シリーズと似通ったスタイルという批評家もいましたが、そうかもしれません。不連続なカットを拾い集めてきて、観客がパズルを完成させるような作品ではないでしょうか。(だから、しっかりしたお話に基づいて進行する映画を好む方には、お薦めしません)

監督は、CM製作で幅広く活躍し、その資金でストックホルムに巨大なスタジオを建設。この映画の全39シーンの中、野外撮影は一切行わず、CG全盛の時代にCGをほぼ使わず、スタジオに巨大なセットを組み、ミニチュアの建物やマットペイント(背景画)を多用、目を凝らしても気づかないほどのリアルな街並を再現し、そこに膨大なエキストラ、馬を登場させるなど、とんでもないアナログ巨編を完成させました。そう言う意味では極めて絵画的な作品で、アンダーソンの個展を美術館に見に行った、という感じでした。

ラストがいいんです。バス停で、バスを待つ人々。「今日は何曜日だっけ」とか声をかけたりして待ってます。と、鳩の鳴き声が聞こえてきます。バス停の後ろの自転車屋が開店します。再び鳩の声が静かに聴こえます。で、エンド!!!!!。

こののどかさ。泣けてきました。単純にいえば、どうあがいても「明日は来てしまう」という事なんですね。

 

 

Tagged with:
 

元気のいい、おしゃれなお兄さん二人が持ってきたミニプレスが「微花(かすか)」です。創刊号と2号両方同時販売を開始しました。で、どんな本かと言えば、

「図鑑です。名ざせない植物、との距りの。季刊誌です。その名を知るまでのひとときの季節の。目ざましいものではなくてかすかなものを、他をしのぐものではなく他がこぼすものを。あらしめるもの、またあらしめるようと目ざすこころみです。」とあります。

おいおい、「あらしめるもの、またあらしめるよう」なんて難しい言い回しの文章ですが、まぁ、季節の折々に、慎ましく街中に咲く花々を見つけては写真に撮って、文章を添えた雑誌です。私個人は、もう花の名前と実物の不一致が甚だしい人間です。桜、梅以外全くワカラン、ダメに近い状態です。犬の散歩に御所に行くのに勿体ないことです(最近は「百日紅」をやっと覚えましたが)

しかし、この図鑑「微花」なら、少しは覚えられるかな。「ヒメオドリコソウ」、「カラスノエンドウ」、「キュウリグサ」、「カシワバアジサイ」「ノウゼンカズラ」等々、ちょっと声を出しながら、その植物を見ていると、少しは距離が縮まった気がします。

創刊号には春の植物、2号には夏の植物が取り上げられています。夏の号に載っている「ヒルザキツキミソウ」とか「アガバンサス」が特に印象的です。可憐な花が、そっと咲いている雰囲気が見事に表現されています。

最後のページに連載の形で載っている「参考図書」もぜひお読み下さい。「本をつくるには、本を読むこと。写真、言葉、デザインと微花を構成する要素のそれぞれに、参考とした本の山」と書かれていて、その中から、毎号一冊づつ紹介されています。創刊号では、黒田夏子「感受体のおどり」、第2号は牧野富太郎「花物語」が上がっています。

どんな本かという紹介文などは、75歳で芥川賞を受賞黒した黒田夏子の影響がかなりあり、とのことでした。

成る程ね。

「微花」は季刊誌というスタイルで発行されます。次号は11月上旬予定です。(各500円)

 

★10月23日(金)19時30分

北海道釧路ヒッコリーウインドオーナー&ネイチャーガイドの安藤誠さんのネイチャートーク&スライドショー「安藤塾」 決定。要予約

★11月13日(金)19時30分

世田谷ピンポンズ ライブ 要予約


Tagged with:
 

漫画家で、江戸文化の研究者でもある杉浦日向子の「合葬」を読み終わりました。雑誌「ガロ」に連載され、84年の日本漫画家協会賞・優秀賞を受賞した長編漫画です。

徳川幕府崩壊直後の慶応4年の江戸を舞台に、幕府解体に徹底抗戦して、新政府と最後まで戦った「彰義隊」に入隊した三人の若者の姿を描いていきます。熱狂的に徳川慶喜に忠誠を誓う若者、養子先を追い出されて、フラフラしていた若者、そしてその二人に絆されて、自身は彰義隊の存在意義を疑う若者の三人が、時代の荒波の中に翻弄されて、もがく様を描いた青春漫画とでも言えばいいのでしょうか。

明治政府によって、彰義隊は反政府勢力と断定され、テロリスト集団として追い詰められてゆきます。もちろんこの若者達の未来にも、明るい展望があるわけがありません。杉浦は、少し距離をおいた視線で、若者達の明日のない青春を描いていきます。作者は大げさな悲劇として扱うことを極力避けていきながら、なんでこんな青春選んだのかなぁ〜という若者達のつぶやきを描いていきます。なんだか、ゴダールや、マル、トリュフォ−なんかのヌーベルバーグ映画に登場すして右往左往する若者達みたいな印象さえあります。

「彰義隊」の視点から、いわば内乱でもある上野戦争を描いていきますが、戦争というものがいかに大義名分のないものかが理解できます。その渦中で命を落としてゆく若者達。彼等の無駄死の死屍累々で終わるのかと思ったのですが、そうじゃないんですね。このラスト、希望なのか、絶望なのか、それは読者の想像力にお任せですが、私は涙しました。生きてほしい、と声をかけたくなりました。

今店頭にあるのは2012年に小池書院から再発されたハードカバーです。(絶版1500円)

ところで、この漫画が劇映画になったみたいです。この秋公開予定ですが、脚本がNHK朝ドラの「カーネーション」を書いた渡辺あやというのが興味津々です。監督は、彼女の脚本で自主制作された「カントリーガール」の監督、小林達夫の初の劇場公開作品。あのラストシーンがどう演出されているか、ぜひ劇場で見たい映画です。 

Tagged with:
 

グラフィックデザイナーとして海外での活動を経て、2012年手話絵本を製作して注目を浴び。その後造本作家として活動されている駒形さんの作品のミニフェアが始まりました。

今回展示販売しているのは、本の一部をくり抜いて、様々な表現をしている本が中心です。

例えば、「なみだ」(1520円)。表紙には目から涙が一粒こぼれ、くり抜かれた涙マークが、最終ページにまでストーリーを運んでくれます。小さな女の子が流した涙が、やがて空に上り雨になり、地上へ帰り、それをなめた犬や蟻が女の子の泣いた気持ちをなんとなく察する・・・・、という優しい話が、洗練された形と色で表現されています。子どもたちが触れる絵本としても上質で、大人がページをめくっていっても楽しい。登場する黒い犬の頬に流れる一粒の涙は、とても素敵なワンカットです。

「かぜがはこぶおと」(1950円)の表紙は、♫の形にくり抜かれています。さあ、ここからどんな話へ飛んで行くのか?くり抜かれた♫の中に見えた微かな緑のグラデーションが、ページを繰る度に、深く深く山へと導いてくれます。

緑の中から鳥や、動物たちが現れては消え、やがて空をとんでいるようなふわっとしたワクワク感とともに、風の音が聞こえたような気になりました。

こういう本を言葉で伝えるのは、もちろん文章力の不足もあるのですが本当に難しいです。ぜひ手に取ってお確かめください。どの本も小粋で、切れがいい!という感じです。

小さな本も一点出ています。「空が青いと海も青い」(735円)です。スパイラル状に折り畳まれた小さな本で、色に関する質問。例えば「「空が青いと海も青い。どうして?」、「夕日が赤くなるのはなぜ?」といった問いかけに答えを見つけながら、本を逆さにしたり、横に向けたりと遊べます。

どの本も自分で楽しんで良し、プレゼントにも良し。すべてサンプルを用意してありますので、どうぞ「遊び」に来て下さい。このフェアは10月12日までです(提供ONE STROKE)

 

 

★10月23日(金)19時30分

北海道釧路ヒッコリーウインドオーナー&ネイチャーガイドの安藤誠さんのネイチャートーク&スライドショー「安藤塾」 決定。要予約

★11月13日(金)19時30分

世田谷ピンポンズ ライブ 要予約

 

Tagged with:
 

縦横それぞれ20cm強の正方形のスタイルで、独自の視点で捉えた書籍を発行する『LIXILBOOKLETシリーズ』の新刊と、過去に発売されたものでユニークなものを、30冊ほど入荷しました。

新刊は「鉄道遺構再発見」(1944円)です。これは、廃線になった鉄道の路線上に残る橋梁、隧道、線路等の今の姿、そして過去の歴史を調べて残そうとした労作です。巻頭を飾るのは、膨大な国有林で活躍する森林鉄道で、その規模最大と言われている高知の「魚梁瀬森林鉄道」です。こんな山奥から材木を運んでいたんですね。

その後に続くのは、アーチ橋群の美しいフォルムで有名な北海道「土幌線」、「佐渡金銀鉱山トロッコレール」と一時は日本の成長を支えたものの役目を終え、現在はひっそりと佇んでいる鉄道建造物が登場します。こんな場所が、まだ残っているんだという驚きと、この国は、自動車の国ではなく、鉄道の国だったんだ、いや、未来もそうあって欲しいという希望さえ感じさせてくれます。

バックナンバーでは、一冊丸ごと海藻の写真で構成された「海藻」(1944円)え?これ現代アートじゃないの?と不思議な海藻の世界が展開します。後半は、若手水中写真家の注目株、鍵井靖章の「海の森へ」という作品が並びます。海の中で、海藻と一緒に揺らいでいる錯覚を覚えます。

このシリーズ、どちらかと言えば「種子のデザイン」(1620円)、「考えるキノコ」(1620円)。「クモの網」(1620円)といった自然科学系が目立ちますが、「天辺のモード」(1512円)というタイトルの本は、西洋、そして日本のかつらの歴史を語ってくれる異色の一冊です。高山宏「禿頭王の恥じに始まる/かつらの近代史異説」は一読の価値あります。

もう一点ユニークなのは「20世紀の天使たち」(1944円)。これ、キューピー人形のデザインの変遷を扱ったもので、1909年アメリカのイラストレーター、ローズ・オニールによって発表されたキャラクターが、様々に変遷してゆく様を貴重な写真(きっとコレクターがいるんでしょうね)で見せてくれます。日本にキューピーが入ってきたのが大正時代だというのですから、長い歴史を持っています。巻末の荒俣宏がキューピーの異母兄弟を紹介しいぇいますが、この目の付け所は、さすが博覧強記の荒俣ならではです。

 

★10月23日(金)19時30分

北海道釧路ヒッコリーウインドオーナー&ネイチャーガイドの安藤誠さんのネイチャートーク&スライドショー「安藤塾」 決定。要予約

★11月13日(金)19時30分

世田谷ピンポンズ ライブ 要予約

 

 

これは萩原朔太郎が、久しぶりに故郷群馬に戻った折、かつての故郷の情景が廃滅しているのに愕然とした時の詩の一部です。正確には

「物みなは歳月と共に滅び行く。 ひとり来てさまよへば 流れも速き広瀬川。 何にせかれて止むべき 憂ひのみ永く残りて わが情熱の日も暮れ行けり。」

形あるものは、すべて滅ぶ。これは常々忘れてはならない言葉だと思っています。

今回ご紹介する「エレナ」は、朔太郎1925年発表の「純情小曲集」からの詩句、及びその他の詩集から抜粋された詩をもとに、画家の司修が自分の作品を選んで、一冊の本にまとめたものです。(小沢書店1300円)。この本の最後に収録されているのが、39年発表の詩集「宿命」の中の「物みなは歳月と共に滅び行く」です。

詩と版画のコラボとしてユニークなところは、詩のフレーズに即して作品が載っていることです。

例えば、「昭和四年の冬、妻と離別し二児を抱えて故郷に帰る」と注釈の付いた「帰郷」は「わが故郷に帰れる日」に始まり、「人の憤怒を烈しくせり」に至る全21行に、司修の版画が21枚添えられています。右ページに詩の一行、左ページに作品と、まるで短歌、俳句に作品を付けた装丁です。この詩は、最初に全部を一気に読めるように全文掲載されているので、先ずこれを読んで、詩の世界を味わい、今度は一行一行、そこにある作品を見つめるという構成です。なんか美術館を巡っているような気分ですね。

「わが故郷に帰れる日」の詩句のページにある、暗く沈んだ地平線にのぼる月(惑星?)、「汽笛は闇に吠え叫び」で出会う、荒涼とした風景、「母なき子供等は眠り泣き」で、こちらを見つめるクリスタルな人影の冷たい視線など、読み手も寂寞な感情に打ち拉がれてしまいそうな気分へと導いてくれます。

「ある水族館で、ひさしい間、飢えた蛸が飼われていた。地下の薄暗い岩の影で、青ざめた瑠璃天井の光線が、いつも悲しげに漂っていた」

で始まる「死なない蛸」は、人が生まれた時から持っている、誰も助けてくれない孤独を表現した散文詩ですが、お金も余裕もある時ほど、人生順風な時ほど、ゆっくりと読んで、人はこんな孤独の中で死んでいくんだよとさめざめとした気持ちになりたいものです。そうすれば、案外、人って多くの物を望まなくなるかもしれませんね。

いつかは「物みなは歳月と共に滅び行く。」ですから。

 

 

 

★10月23日(金)19時30分

北海道釧路ヒッコリーウインドオーナー&ネイチャーガイドの安藤誠さんのネイチャートーク&スライドショー「安藤塾」 決定。要予約

 

 

Tagged with:
 

神戸元町に、新しい古書店「1003」(センサン)がオープンしました。

店主の奥村さんとは、春の長岡天神の古本市でお会いして、その時にお店を開くことを聞いていました。ミニプレスも販売したいと、レティシア書房で何点かセレクトされていました。

さて、JR元町駅を降りて、たらたらと南に行くと、中華街の南京町西門が見えてきます。その側の小径を入ると、白い壁の古いビルがあります。一階は炭焼&ワインバル「9」(ナイン)というレストランで、平日はランチもあるらしい。(残念ながら、私が伺った月曜は定休でした)

細い階段を上がって、ドアを開けると素敵な空間が広がります。最初に目に飛び込んできたのは、懐かしい家具みたいな大きなステレオ装置です。しかも、そこから音楽が聴こえてくる(これには、仕掛けがあります)。

家具職人のご主人が製作された棚には、文芸書、絵本、エッセイ等が並んでいます。そして、店主好みの民族学の本の棚もありました。マタギの本を、手に取って読ませてもらいました。その棚で見つけたのが、生島圭三郎の絵による「カムイケチャップ」(福武書店)です。アイヌ語でシマフクロウを「カムイケチャップ」と呼びます。島の王という意味で、この王とシャチの群れとの交流を描いた絵本で、威風堂々たるカムイケチャップの姿が楽しめます。

オープンして、ほぼ一週間の印象をお聞きしていたら、後ろから元気な女性の声が響いてきました。振り返ると、いつもお世話になっている、元町の古書店「トンカ書店」の頓花さんではありませんか。開店のお祝いに来られたみたいです。暫くの間、三人で古書店談義に花がさきました。

今年10月で「トンカ書店」は、なんと10年だそうです。それを記念して、色んなイベントを店内でされるらしいのです。神戸の古書店ばかりを撮影した写真展も企画中だとか。

「1003」の書架は、まだまだ開発中で、どんな本がこれから集まってくるのか楽しみです。是非、来年の古書市には参加してくださいとお願いして、店を後にしました。

絵本「はなとうめのしあわせカフェ」(1400円)の原画展が今日から始まりました。

森の中に、チワワのはなと、ネコのうめのカフェあります。二匹は、朝からカフェの準備に大忙し。さあ開店!というときに、近所のコーギーのぼうやが、お母さんが病気になったので助けを求めに飛び込んできます。はなとうめは、店を閉めてぼうやのお手伝いに奔走するというあたたかなお話です。

 

作者のmomokoさんは、優しく丁寧に、二匹と周りの動物たちや花々の様子を描いています。個展のご相談に来られた時に見せて頂いた本も、隅々まで細かい心配りで描かれていましたが、今日、原画を見たら、その密度の濃さに改めて嬉しくなりました。聞けば、この絵本のカフェで描かれたケーキも、実際自分で作られたものとか。それだけではなく、畑の場面に出てくるイチゴも育てて、スケッチしたというのです。仕事をされながら4年間の月日をかけて、一枚一枚丁寧に仕上げられたらしいのですが、その濃密さになぜかほっとするのです。

思うに、なんでも簡便になって、ちょっとしたアイデアから、いともたやすくアートっぽいものが手に入る今、時間をかけて、決して器用とはいえない描き方が、それ故の力強さでこちらに伝わってくるんですね。因みに、チワワは今momokoさんが飼っているメス犬のはなちゃん(左)。ネコ(右)は庭に遊びにくる子、そしてコーギーは前に飼っていた犬、と実在の動物たち。そのせいか、表情が本当に可愛く、大切にされているのがよくわかります。

2007年に出版された「かわいいどうぶつたちにあいにきませんか」(新風舎 800円)の原画も一緒に並んでいます。こちらも色を重ねて作り上げた動物の絵が、楽しいです。

今回、絵本の一場面を立体的にみてもらおうと、フェルトなどを使って、小さな動物たちを作られました。momokoワールドいっぱいの作品展をご高覧頂ければ幸いです。(女房)

 

 

 

 

 

 ★momoko  絵本「はなとうめのしあわせカフェ」展

9月8日(火)〜20日(日)14日定休日

最終日は19時まで

 

2016年度ARKカレンダー入荷しました。大1000円 卓上800円

アルゼンチンを代表する作家ボルヘスの最初の短篇集「悪党烈伝」(晶文社700円)の中に、「忠臣蔵」の吉良上野介に関する叙述を見つけました。ボルヘスはA・B・ミトフォードの翻訳で、この古典を読んだみたいですが、その中に、え〜っ?という記述がありました。

殿中で、吉良に斬りかかった浅野内匠頭が幕府より切腹を申し付けられた直後をこんな風に書いています。

「内匠頭は切腹と決まった。赤穂城本丸の中庭に緋毛氈の敷かれた高壇が設けられ、切腹を申し付けられた内匠頭があらわす。(略)形どおり腹を十文字に切り、自ら臓腑をひきだして侍らしく死んでいった。白髪の実直そうな男ーこれは家老の大石内蔵助で、この日主君の介錯人をつとめたーが刀を一閃させて首を斬り落とした

太字部分、忠臣蔵をご存知の方なら、そんなばかな!と絶句するでしょうね。

内匠頭は、自分の領地赤穂ではなく、江戸で切腹したはず。でないと歌舞伎、映画等で断末魔の彼が、赤穂から馳せ参じてくる内蔵助の姿を求めて、「内蔵助はまだか」と訴えるシーンがあり得ないということになります。歌舞伎で花道を内蔵助がつつっ〜と走ってくる魅力的なシーンがなくなってしまいます。そして「自ら臓腑をひきだして」なんてスプラッタ映画みたいな描写も、なんだかしっくりと落ちつきません。

もちろん内蔵助が介錯人をしたなんて話も初耳です。まぁ、その方が、その後じっと耐え続けて、最後に仇討ちを果たすというカタルシスが増すのは間違いはありませんが……..。

さらに、主君の仇討ち完遂後、切腹した内蔵助の墓の前で、腹を斬る若侍の話にも言及しています。この侍、敵討ちなんて忘れたふりして夜毎どんちゃん騒ぎをする内蔵助を非難した人物らしく、その自らの行いを恥じて自害したという設定ですが、こんな人物も初めてです。まあ「忠臣蔵」には、もういろんなネタ満載なんで、こういう侍がいたとしても不思議ではありません。

南米に「忠臣蔵」が翻訳されていたことが驚きですが、とんでもなくお話が変わっているのに、さらにビックリです。そして、ボルヘスが、直訳すると「世界の悪党」というこの本に吉良を取り上げているのも仰天です。

できれば、南米で翻訳された「忠臣蔵」も読んでみたいものです。え〜?はぁ〜?という描写が沢山あって楽しめそうです。

 

★10月23日(金)19時30分

北海道釧路ヒッコリーウインドオーナー&ネイチャーガイドの安藤誠さんのネイチャートーク&スライドショー「安藤塾」 決定。要予約

 

 

 

Tagged with: