「レティシア書房・夏の古本市」も、いよいよ後半に突入。本日はワンコインのお買い得本のご案内です。

え?これ500円なの?というのが内堀弘「古本の時間」(晶文社)です。著者は詩歌専門の古書店「石神井書林」のオーナーです。「ボン書店の幻ーモダニズム出版社の光と影」という名著で知られていますが、こちらは2013年に出版された、本に関するエッセイをまとめたものです。

「古書の世界には、誰にとっても理解できる希少性とは別に、その人の中でしか息づかない、つまり他の誰かにとってはどうでもいいようなものの中に、身を賭すように分け入っていく想いがある。どんな時代であっても、そんな無名の憧れや想いが、この世界を支えているのだと思う。森は横に広がり、樹は上に伸びている、ということか。」

という文章に出会った時、古書の持つ価値の深さを知りました。

作家三木卓は、「路地」「素足と貝殻」等の小説でお馴染みですが、個人的には児童書「イヌのヒロシ」が好きです。三木が1949年から2000年まで、鎌倉の仕事場からみた見続けた日常をまとめた日記「鎌倉日記」」(かまくら春秋社)という本が出ていました。なんとも言えない味わいがある本が、500円とは驚きです。日記文学マニアには外せませんね。

ムフフと笑いながら、文楽の世界を堪能させてくれる三浦しおん「あやつられ文楽鑑賞」(ポプラ社500円)もワンコインなら安い買物です。文楽なんて、まるで知らないド素人だった著者が、この古典芸能に染まってゆくプロセスをユーモアたっぷりに描いています。端正なたたずまいの三味線奏者、鶴澤燕二郎さんの楽屋にインタビューに行った時のこと、最初に口から出た言葉が「あの、足を崩してもいいでしょうか」。その理由が「足が痺れて、立った拍子に三味線に突っ込んだりしたら」というのが傑作です。でも、自分の好きなものを見つけて、どんどんその魅力に取り憑かれてゆく様は、読んでいて、爽やかな気分にさせてくれます。

翻訳家として、小説家として活躍中の西崎憲が選んだ英国短篇小説選集「短編小説日和」(ちくま文庫500円)は短編アンソロジーとして、この翻訳家の英国小説への深い理解と愛情溢れる文庫です。18世紀半ばから20世紀半ばに書かれた膨大な短編小説から、大物ディケンズ、グレアム・グリーン、そして日本では全く評価されていない作家まで網羅し、様々な英国らしさの側面を切り取っています。巻末には著者による短篇小説論が収録されています。英国的なるものを知る手がかりとして読むのも面白いかもしれません。

 

 

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」開催。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!

暑い日が続きますが、ぜひお立ちよりください。

8月21日(月)〜25日(金)は、夏期休業いたします。よろしくお願いします。


「レティシア書房・夏の古本市」の開催中ですが、その間もどんどん本が入荷しています。今日は、その一部のご紹介です。

鳥の絵を描かせたら右に出る者がいない薮内正幸は、多くの絵本、児童書に素晴らしい作品を提供してきました。1973年には(財)日本鳥類保護連盟と、サントリー(株)による愛鳥キャンペーンの新聞広告で、朝日広告賞第二部第グランプリを受賞しました。薮内の「ペン画集 野鳥の四季」(講談社1800円)が入荷しました。日本の四季折々の鳥の姿が、精密に描かれています。何点かカラー作品も収録されていて、木に止まっているつぐみの姿などは、惚れ惚れします。

「海からの贈り物」で多くの読者を得た、アン・モロウ・リンドバーグの娘であるリーブ・リンドバーグが、自分の母親の最後を綴った「母の贈り物」(青土社900円)。帯には、「海からの贈り物」を翻訳した落合恵子が、こんな素晴らしい推薦の言葉を寄せています。

「アン・モロウ・リンドバーグは、本書の著者の母であると同時に、彼女の著作を深く愛し、自立と内反の豊かな『個独』を学んだ世界中の読者のたちの、偉大なる『母』ともいえるだろう。その『母』の最後の日々を描いたこの作品は、人生の午後を生きる人、そして愛するひとの最期の時空に寄り添うすべての人々への、もうひとつの贈り物になるはずだ。」

もう一点。こちらは、当ギャラリーで個展をされた写真家、呑海龍哉さんが海外の各地で撮影した写真と、宿泊したホテルの”実測スケッチ”を一緒にした「ホテルから始まる夢の旅」(2592円)です。アジア、アフリカの各地の日常風景を捉えた写真と、滞在したホテルの部屋を実測して、解説を加えたという、あまり他に類を見ない一冊に仕上がりました。成る程、この国のこんな部屋か、と覗き見している気分が楽しい旅の本です。面白い企画です!

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」開催。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

暑い日が続きますが、お立ちよりください。

8月21日(月)〜25日(金)は、夏期休業いたします。よろしくお願いします。


珍しい絵本アートのシリーズが出品されていました。立風書房が80年代に出版していた「幻の絵本館」シリーズです。そのシリーズの中でも、ナサニエル・ホーソーン作、アーサー・ラッカム絵による「ワンダーブック」(3000円)とウィリアム・M・ティムリン作絵(翻訳は船崎克彦)の「星の帆船」(3000円)は貴重です。ネットでいい物なら、4000円ぐらいの高値です。下鴨の古本市(今年も開催中)で、一昨年、「星の帆船」を発見しましたが価格を見たら5000円でした。(しかも表紙が汚れまくりでした!?)

さて、「ワンダーブック」ですが、作者のナサニエル・ホーソーンは、我が国ではアメリカ文学の古典「緋文字」で有名です。この絵本は、ギリシャ神話、伝説の再構成なのですが、「ほとんど創作に近い」と児童文学者の吉田新一は、あとがきで書いています。「白鯨」「嵐が丘」と共に19世紀三大復讐小説として評価される「緋文字」という暗く、重たい(私は途中で投げ出しました)小説を書いたホーソンが、子ども向けにこんな陽気で明るい話を作り上げています。

絵を担当したアーサー・ラッカムは、絵本黄金時代を代表するイラストレーター。絵本好きならご存知ですね。「クリスマスキャロル」「マザーグース」など多くの作品で使われています。因みにW・ディズニーの長編アニメ「白雪姫」に参加して、背景のデザインを担当していました。

「星の帆船」は、やっと巡り会った一冊です。原作者ウィリアム・M・ティムリンは、建築家で作家ではありません。殆ど無名に近い人物ですが、極めて高度な質を持った本を書き上げました。昨今のファンタジー文学の原点とも言える絵本です。「ゆくてにはイルミネーションをぶちまけたような天の川の光の帯がせまっています。」という文章で船は宇宙の大海原に出航していきます。これって、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と同じ世界観です。ティムリンも賢治も理工系の理論家。だからこそ、こんな美しい物語を描き出せるのかもしれません。

このシリーズは、全10作品でリリースされており、今回9作品が集まっています。その中には岸田矜子訳、ケイト・グリーナウェイの「遊びの絵本」(2000円)なんて楽しい一冊もあります。ゆっくりとご覧下さい。これだけ、揃って出るのは、ホントに珍しい。

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」開催。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

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古本市には、本屋さん関連の面白い本が、何点か必ず出ます。

沖縄の商店街にある「市場の古本屋 ウララ」の店主宇田智子が、お店を始める決心から、開店そして店頭での日々を綴った「那覇の市場で古本屋」(ボーダーインク600円)。店の隣りは漬物屋さんと洋服屋さん、前は鰹節屋さんで、店の大きさは畳三畳という、日本でも狭さではトップではないかと思える小さな店です。メインに扱っているのは沖縄関連の本。元々、大手書店の人文書担当の彼女が、自ら望んだ転勤で沖縄に来たことが発端です。力まず、ナチュラルに生きてゆく姿が眩しい一冊ですね。沖縄に行ったらぜひ訪ねてみたいお店です!

次は、我が国の多くの島々に点在する本屋さんを訪ね歩いた朴順梨の「離島の本屋」(ころから900円)。笠原諸島、伊豆大島、礼文島、奄美大島等、全部で22島の本屋が紹介されていきます。本屋さん紹介の本というよりは、島と本屋さんの日々を見つめる旅行記と言った方がいいかもしれません。旅行気分を誘ってくれます。凄いなぁ、と唸ったのは奄美大島にある「本処あまみ庵」。なんと奄美沖縄の本専門店で。イカ釣りの本から、島尾敏雄、昭和初期の軍事雑誌「日本週報」まで、店主が集めた本が並んでいます。本屋を目指して、22の島を回ってみるのもいい旅になりそうです。

一時、話題になった「痕跡本のすすめ」(太田出版850円)は、愛知県で古書「五っ葉文庫」を営む古沢和宏が集めた痕跡本を巡る本です。古書業界では、本に線を引いたり、何か書き込んだりした本は価値が下がります。しかし彼は、価値がないとされたそんな本に目を向け、想像力と妄想力で、本の持ち主が、なぜこんな書き込みをしたのかを語ります。この本を読んでから、痕跡本に出会うと、思わず見入ってしまう癖がついてしまいました。ここでは、多くの痕跡本が写真で紹介されていますが、まるでアートみたいなものさえあるのが面白いですね。

最後にもう一点。これは小説です。紀田順一郎著「古本屋探偵の事件簿」(創元推理文庫400円)。神保町にある古本屋「書肆・蔵書一代」主人が出した「本の探偵ー何でも見つけます」という広告に惹きつけられてやってくる、奇妙な依頼人達の姿を描いたもので、三つの中編と一つの長編が収録されています。推理小説好き、本探し好きの興味をそそるお話ばかり。本屋をめぐる内容ではありませんが、古書業界の事が色々登場してくるので、是非ご一読を。

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」開催。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

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柴田元幸は、翻訳家であり、作家でもあります。今回の古本市でも、数多く出ていますので、ファンの方は是非チエックしてみてください。

彼自身の本で、「97年夏場所現在、舞の海は見事幕内復帰を果たし、わがことのように嬉しい」とおよそ、海外文学の翻訳家らしからぬ内容でスタートする「愛の見切り発車」(新潮社400円)は、軽妙な文章で海外文学の紹介をしてくれる一冊で、私も愛読しました。

ちょっと変化球的なアンソロジーとしては、ここ20年間ぐらいの間に発表されたアメリカの幻想文学を集めた「どこにもない国』(松柏社400円)もお薦めです。ヨーロッパの凝った文体のその手の小説に比べると、ストレ−トな文体ですが、日常生活にふとしたズレや、奇妙な空間を描き込んでいます。柴田が編集を務める雑誌「MONKEY」も500円で8冊程出ていますので、お早めにどうぞ。

イラストレーターの安西水丸が、1982年に宝島から出した「普通の人」(1000円)は、探しておられる方もあるはず。へたうまタッチで繰り広げられる4コマ漫画の世界。サブカル雑誌の先陣を走っていた雑誌「月刊宝島」に相応しい捩じれたギャグ満載のコミックを集めた一冊。この本、アマゾンや、日本の古本屋でもヒットしない商品なんですよね……。

がらりと変わって、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」関連で一冊。キャロルの原作に、チェコの映像作家ヤン・シュヴァンクマイエルが絵を付けた「不思議の国のアリス」(国書刊行会1800円)は最近のアリスものでは優れた一冊です。シュヴァンクマイエルが、この本のために描いたイラストレーションは、最初に「不思議の国のアリス」の挿画を手掛けたジョン・テニエルへのオマージュだと語っています。そして、彼自身、アリスこそが自分にイマジネーションの源泉だと言い切っていて、それほど彼にとっては、大切な一冊なのです。(すいません、ブログ書き上げた途端売れました)

あんまり、最近見なくなったなぁ、と思ったのが岡崎武志の「雑談王」(晶文社1800円)です。2008年発行で、まだ絶版にはなってないはずですが、新刊書店でも見かけません。この本は書評家としての岡崎の本ではありません。映画、音楽、落語など彼が若い時からワクワクしてきたものをズラリと並べてあります。とりわけ同じ関西人として面白いのが、第四章「私設おおさかお笑い図書館」です。笑福亭仁鶴に始まり、漫才コンビいとし・こいしまで、かつての関西の芸達者を論じた演芸論です。

「生きている間の名前がニワトリ。死んだら戒名がカシワ」といういとし・こいしの十八番を久々に読んで、あったなぁ〜そんな漫才、となつかしく思いだしました。

 

 

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」開催。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

暑い日が続きますが、お立ちよりください。

8月21日(月)〜25日(金)は、夏期休業いたします。よろしくお願いします。


昨日に続き、8月9日(水)からスタートする恒例「レティシア書房・夏の古本市」に出品される本の紹介です。

先ずは、老人の写真集を2冊。

ダンサー田中泯が、インドネシアの各地で行ったパフォーマンスを中心にして撮影された「ウミヒコヤマヒコマイヒコ」(デザイニングジム1100円)。村々で、ひたすら自己の舞踏を繰り広げる田中と、なんか変なおっさんやなと遠巻きに見ている人達との、境目がふっと消滅する瞬間が捉えられています。

もう一冊は、古賀絵里子「浅草善哉」(青幻舎2000円)。明治45年生の平田はなさんと、大正10年生の中村義郎さんという老夫婦の写真集です。二人は昭和32年結婚。それからの長い人生が、一枚一枚の写真に刻み込まれています。表紙がかっこいいですね。残念ながら、義郎さんは2008年に87歳で、はなさんは2010年に98歳でこの世を去られました。

さて、文庫にもこれはゲット!と思われるものがあります。例えば、映画監督の今村昌平企画による「村岡伊平治自伝」(講談社文庫1200円)。誰?村岡伊平って?? これが、とんでもない怪物です。明治中期に海外で一旗揚げようとシンガポールに渡り、女郎屋を開業。その後、東南アジア各地に進出。お国のために女を売るのだと、国内から数多くの娘を連れ出すは、本人は多くの現地妻を持つという、今なら犯罪的な人物です。さらに、日露戦争勃発と共に、各地に愛国婦人会を組織するという明治ナショナリズムを具現化したような男です。時代が作り出した怪物を読む一冊です。

画家、香月泰男の「海拉爾通信」(新潮社/初版/函1200円)が、昭和18年春から20年の終戦まで満州、ソ連で兵役に付いていた時、日本の妻に送った書簡をまとめた本です。書簡と共に、彼が書いた絵葉書も数点挿入されています。香月ファンなら、持っていたい一冊です。

私もいつか買おうと思っていた「佐藤泰志作品集」(クレイン2200円)がありました。名作「海炭市斜景」に始まり、芥川賞候補「きみの鳥はうたえる」、映画化もされた「そこのみにて光輝く」等の代表作から、詩、エッセイまで収録した分厚い一冊です。「佐藤泰志作品集に寄せて」という小冊子には岡崎武志さんが『「海炭市斜景」について』という小論を書いています。

こんな本も出ますよ。「名古屋モーニング図鑑」(LD&KBOOKS400円)。名古屋独特の食文化とも呼べる、モーニングの粋を集めたガイド本です。名古屋に行かれる時にお持ち下さい。「うどんモーニング」なんてのもありますよ。

 

 

 

 

 

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」を店内で開催します。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

暑い日が続きますが、お立ちよりください。

★休業のお知らせ 8月7日(月)8日(火)は古本市の準備のため連休します。 

8月21日(月)〜25日(金)は、夏期休業いたします。よろしくお願いします。


8月9日(水)より「レティシア書房・夏の古本市」がスタートします。(その準備のため7日、8日は連休いたします)近畿エリアだけでなく、関東、中部、山陽から28店舗がご参加くださいます。で、本日より、その一部を紹介していきます。

先ずは、出品者も「お薦め!」と販売カードに書かれているブルーノ・ムナーリ作、須賀敦子訳の「木をかこう」(至光社1000円)です。

ムナーリが描く様々な木々に、須賀敦子の簡潔な翻訳文が載っている絵本です。シンプルな線で描かれた木々を見ていると、散歩に出かけたくなります。この本の側に、詩聖タゴールの寓話詩とベンガルの女流画家の書き下ろしの絵本「ベンガルの苦行者」(未知谷1000円)、スペイン文学を代表するラファエル・サンチェス・フェルシオの処女作にスズキコージが絵を付けた「アルファンウイ」(未知谷1000円)等のイマジネーション豊かな文学作品が出てきました。これは楽しそうです。

さらに、オォ〜久しぶりに見ました、ウィリアム・コッツウィンクルの「ドクターラット」(河出書房新社800円)。動物達が一斉に人間に暴動を起こした時、たった一人(いや一匹)味方をしたのが、大学の実験室で滅茶苦茶にされた結果、何故か人間並の知性を持ったネズミ「ドクターラット」でした。グロテスクで、悪意に満ちた幻想文学です。「コロニーで、わたしはドクター・ラットと呼ばれている」という出だしから分かるように、全編一人称でクールにドライに描かれていくところが面白い小説です。ただ、ラストの残酷なところは、まぁ………….?

さて、少しクラシカルな本にも目を向けてみると、1982年に発行されて重版を重ねてきた茨木のり子の「寸志」(花神社700円)がありました。「うんと冷えたの ぐっとやれた さぞかし天国だろう」というフレーズの入った「冷えたビール」なんてこの季節にピッタリですが、ラストはシニカルです。

人気翻訳家、柴田元幸ファンなら持っていて当たり前の「つまみぐい文学食堂」(角川文庫300円)、「紙の空から」(晶文社800円)、そして、私も初めて見ましたノーマン・ロック著「雪男たちの国」(河出書房新社700円)。病院の地下で発掘されたスコット探検隊の生存者の手記を巡り、これ真実?、妄想?はたまた幻想?・・・と錯綜するお話です。

と、昨日届いたお店の出品の一部を紹介しただけですが、どれも読みたくなってきませんか?

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」を店内で開催します。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

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布作家、早川ユミの新刊「野生のおくりもの」(KTC中央出版1728円)が入荷しました。

「土から生まれる 土は はじまり 土にふれる手によろこび 土のうえにいると、わたしの野生がおどる」

という詩で始まるこの本は、土、そして大地と共に生きる考えを、様々な角度から描いた、いわば彼女の思想の拠り所をまとめた一冊です。

1971年、京都国立近代美術館で開催された「現代の陶芸ーアメリカ・カナダ・メキシコと日本」展で、鯉江良二の「土に還る」という作品に出会ったことが、彼女の分岐点でした。当事14歳だった著者はこう語っています。

「一瞬にして『土に還る』ということばが、わたしのからだにすっぽりはいっていきました。そして、そのあとのわたしの人生には『土に還る』が、こころのまんなかにいつでもあって、わたしの根っこのひとつになったのでした。」

「土に還る」とは、具体的にどう生きてゆくことなのかの思索の旅の始まりです。沖縄へ、アイヌへ、インドへ、とその土着の文化の根源に触れてゆきます。

「土から生まれる思想。沖縄やアイヌの祖先、縄文人にとっても、土は母なる大地だと信じています。縄文土器は母なる女のひとのからだをあらわしたもの、沖縄のひとのお墓は子宮のかたち、アイヌにとっては母なるものは川だといわれています」

母なるもの、女性性を代表するようなものを、現代の文明がぶち壊してきました。これからは、いかにして自然によりそう暮らしへとむかってゆくかを彼女は考えます。この本には、多くの人が登場します。この本に力強い絵を提供したミロコマチコ、フォークシンガーの友部正人、作家の田口ランディといった個性的な面々。京都白川にある「なやカフェ」や、鎌倉にあるパン屋「パラダイスアレイ ブレッド&カンパニー」等の、大地と関わりながら生きている人達の面白い生き方や、考え方が満載です。「くらしに野生の種をまく」指針となりそうです。巻末には、「野生をまなぶ本たち」という有り難い一覧まで付いています。

以前の著作、「種まきびとのものつくり」(2052円)、「種まきびとの台所」(1944円)も入荷しています。

 

 

 

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林の中を全力で走り抜ける兵士。聞こえてくるのは兵士の鼓動と風だけ。立ち止まった兵士に一発の銃弾。死ぬ前に見たのは風に揺れる木々。無駄死としか言いようのない若い兵士こそ、貧しいけれども、勤勉な、どこにでもいる夫婦の一人息子でした。

映画「ヒトラーヘの285枚の葉書」(京都シネマで上映中)は、ここから、平凡な市民である夫婦が自分たちの出来る手段で、息子の命を奪ったヒトラーへの抵抗を描いていきます。

二人は、「ヒトラーを信じるな」と書いた葉書を、市内の至る所に置いていきます。対フランス戦で勝利を納めて、ヨーロッパでもドイツ帝国の優位が確実になってきた時代のベルリンで、こんな葉書を撒き、政権批判を繰り広げるのは、極めて危険な行為です。ゲシュタポと警察の捜査網をかいくぐり、2年間で285枚ものヒトラーへの批判の葉書を書きました。

映画は、ヒッチコックばりのサスペンス映像を組み込みながら、ささやかな抵抗を続ける二人の日々の生活を凝視します。市民としての日々の生活をこなしながら、毎夜、筆跡を隠して葉書を書き、置いてゆく姿に、息子を無駄死にさせたヒトラー政権への、戦争への怒りと悲しみが浮き上がり、心に沁みます。妻を演じたのは、名優エマ・トンプソン。夫役は、ブレンダン・グリーソン。二人の完璧な演技力は、観るものの魂を揺さぶります。

そして、もう一人、捜査をするフランスの若い刑事。彼は、ゲシュタポへの不信と、この夫婦への親近感を持ちながらも、時の巨大な権力には逆らえず、夫婦を処刑台に送ります。その後悔と自己批判の果てに待ち受けていたのは、やはり悲劇でした。おそらく、実際の戦争、例えば、第二次世界大戦下の日本でも、これは間違っていると思っていても、憲兵やら特高がうろつく街中では、黙らざるを得なかった人々は決して少なくなかったのだろうと思います。

285枚の葉書のうち、ほとんどは市民が警察に届けました。しかし、十数枚だけが発見できませんでした。心ある人達が読み、信用できる人へと回したのでしょう。小さな希望は消えなかったということです。

映画の原作は、ドイツ人作家ハンス・ファラダがゲシュタポの記録文書を基に、わずか4週間で書き上げたと言われる「ベルリンに一人死す」です。実在したオットー&エリーゼのハンペル夫妻をモデルにしたこの小説は、1947年の初版発行から60年以上経た2009年に、初めて英訳され世界的なベストセラーとなりました。2014年、日本でもみすず書房から翻訳本が出版されました。

 

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幸田文の随筆は、その文章の上手さに惹きつけられて、チョイチョイ読んでいましたが、こんなネイチャー・ライティング的な本も出していたのです。彼女の最後の長編「崩れ」(講談社950円)です。

この本の紹介をする前にネイチャー・ライティングを一般的に定義しておきましょう。基本的に自然環境を巡るノンフィクション文学をこう呼びます。。自然科学系の客観的な自然観察とは異なり、自然環境をめぐって「作家の思索や哲学的思考」が中心となるのが特徴です。おそらく原点は、アメリカならソローの「森の生活」、日本なら野尻抱影の著作あたりではないかと思われます。芦澤一洋の「アーヴィングを読んだ日」(小沢書店/絶版 950円)がそのアンソロジーとして優れた一冊です。

さて、幸田文の「崩れ」は日本の大自然の中で、各地で起きる山崩れ、河川の氾濫等を現地に出向き取材したものです。昭和51年11月から52年12月まで、雑誌「婦人之友」に連載されていたものを単行本にしてあります。どこから読み出してもいいのですが、第八章「十月なかば、富山県も常願寺川をさかのぼって、立山連峯のうちの一つ、鳶山の崩壊を見にでかけた。」がお薦めです。

砂防のメッカといわれる難所で、崩壊も荒廃も凄まじい場所なのだそうです。見に行きたいという欲求と、老体の自分が、そんな環境で耐えられるのかという不安のせめぎ合いの中、出かけてゆくところは、スリリングな出足です。幸田はその行程をリアリストの目線で見つめ、的確な日本語に置き換えて、読者に荒涼たる現場をつぶさに見せてくれます。リアルな自然描写のなかに、「作家の思索や哲学的思考」が巧みに織り交ぜられています。強力に背負われて、急峻な道を上り、その崩壊の現場に立った時、彼女はこう書き記しています。

「見た一瞬に、これが崩壊というものの本源の姿かな、と動じたほど圧迫感があった。むろん崩れである以上、そして山である以上、崩壊物は低いほうへ崩れ落ちるという一定の法則はありながら、その壊れぶりが無体というか乱脈というか、なにかこう、土石は得意勝手にめいめい好きな方向へあばれだしたのではなかったー私の目はそう見た。」

そして「おそらくここはその昔の崩れの時、人が誰もかつて聞いたことのないような、人間の耳の機能を超えるような、破裂音を発したのにちがいなかろう、と思わされたのである。気がついたら首筋が凝っていた。」と、長く佇むべきではないと確信しています。

「崩壊についての書物は、読んでもわかるところが少なくなかった。」と自分の読書体験を綴り、だからこそ誰でも容易に理解できる荒々しい日本の自然の姿を書こうとしたのかもしれません。そして、その果てにある風景に、帯にあるように「生あるものの哀しみを見つめる」ことに向かいます。

日常生活の様々な風景を描いたエッセイとは全く別の世界ですが、ネイチャー・ライティングの力量まで持っていた作家の大きさを知る一冊です。

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」を店内で開催します。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

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