書評家の岡崎武志さんの新刊が出れば、ついつい買ってしまうのですが、今回の「人生散歩術」(芸術新聞社1300円)は、彼のベストの本ではないかと、私は思っています。

サブタイトルに「こんなガンバラナイ生き方もある」とあり、そんな人生を実践したと著者が確信した人物たちについて書かれています。選ばれたのは、井伏鱒二、吉田健一、木山捷平、田村隆一、佐野洋子らの作家、フォークシンガーの高田渡、そして落語家の古今亭志ん生です。

井伏は「自分なくしの旅」、高田は「気骨の人生風来坊」、吉田は「上機嫌に生きる、ただそれだけを」、木山は「危機脱出術」、田村は「恋と友とウィスキー」、志ん生は「「貧乏を手なずけた男」というふうにそれぞれタイトルが付けてあり、興味のある人物から読めるようになっています。取り上げられた人達の人生を見つめることで、そうなんだ、そうやって生きればいいんだということを知る本であり、著者も「私にとっては人生の『実用書』なのである。」と言っています。

例えば、古今亭志ん生の川柳を引合に出して、こんな風に書きます。

「人間は何もしないでいても、本来滑稽な存在である。滑稽と思われることを恥辱と思う人間は、それに抗い、精一杯、虚勢と見栄を張る。しかし、そのこと自体が、また滑稽であることを、志ん生は早くから見抜いていた。そして、自分の稼業である落語に存分に生かした。

我々は、何もくよくよと思い悩むことはない。なぜなら、志ん生の落語があるからだ。」

書評家が書いた「処世術」の本としてぜひお読みいただきたい一冊です。

本好きの人達が集まって作られている「本と本屋とわたしの話」の最新13号が届きました。当店の一箱古本市に毎回出店していただいている「古書柳」の中原さんが古書善行堂の思い出話を書かれています。また、いつも愛読している冊子「入谷コピー文庫」の堀内さんが「氷点」にまつわる話をと、本好きの人達の、マニアっぽくならない、小ネタ満載です。(250円)

 

★連休のお知らせ  勝手ながら11月6日(月)7日(火)連休いたします。 

 

 

30cm×21cm、厚さ2.5cmの大型ハードカバー、定価4100円もする「世界の夢の本屋さん」(エクスナレッジ2500円)が入荷しました。

ロンドン、パリ、ローマ、アムステルダム、ブリュッセル、ニューヨークの名書店30数軒を紹介した本です。

「いつの日か、こんな本屋さんを訪れてみたい、こんな本屋さんをつくってみたい」と思わせる書店ばかり。コンテンポラリーなお店もあれば、どっしりとした歴史の重みを感じる風格のある店もあります。前者ならば、ローマの「アリオン・エスポジツィオーニ書店」、曲線のフォルムを生かした書店なんて、日本にはないでしょうね。後者ならば、パリの「ジュソーム書店」。創業185年を迎える老舗で、パリ右岸側の文化を支えながら、この都市を見つめて来た書店というところです。店の外側から撮った写真だけで、中に入ってみたいとあこがれます。店内で本をみていて、ふと見上げると外は雪なんて光景に遭遇したら・・・幸せでしょうね。

どの店も魅力的ですが、そう思う一つの要因として、チープな書架を使っていないことがあります。私も、チェーン店勤務時代に、何度かほんのちょっと贅沢な書架のプランを出したけれど、すべて却下された思い出があります。まぁ、もっともあの低い利益率では致し方ないかもしれません。

海外に行かれる前に、この本でチェックされては如何でしょうか。(住所、電話、HP等の基本情報は記載されています)

国内ならば、岡崎武志さんの「気まぐれ古書店紀行」でしょう。これは98年〜2005年にかけて「彷書月刊」にて連載されたものをまとめたものです。古書店探索の旅に出た著者が、ここは!と思う店を紹介してあります。

「いい古書店に近づくと匂いでわかり、人は早足になる、という法則」

の通り、タッ、タッタと駆け込んだ日本全国の書店が網羅されています。古書店を見つけてワクワクする気分を、軽快なタッチで綴っていきます。海外はすぐに無理でも、国内なら明日からでもステキな古書店巡りが出来そうです。旅のお供には、やはり同じ著者の「古本病のかかり方」(筑摩文庫/絶版680円)がいいと思います。

この中に、大学時代京都で赤貧生活を送っていた頃を描いた「わたしの京都青春古本地図」というエッセイがありますが、お薦めです。アラン「精神と情熱に関する81章」を読んで、線を引いていたことを取り上げ、こう書いています。

「…….若いですねえ。線を引きながら、若き岡崎は何を煩悶していたのでありましょうか(何も考えていなかった可能性が高いが)」

青春の一コマです。