東大東洋文化研究所の教授安富歩の本のご紹介、と書き出すとなんか難しそうな本かなぁ〜と引いてしまわれそうですが、ちょっと違います。先ず、表紙をご覧下さい。大きく「男性のフリはやめました」と書かれた横に写っている方が教授です。本のタイトルは「ありのままの私」(ぴあ)

若き日に、「自分は男性のフリをしている」ことに気づいた著者は、そのストレスから抜け出るために、男性の服装を脱ぎました。では、女装趣味か?いえそうではありません。こう書いてあります。

「私は『女装』をしているのではないのです。ただ、普通に服を着ているだけなのです。それが女性の服なのです。なので、私がしているのは『女装』ではなく『女性装』と言うのです」

この本は、著者の女性装から始まり、自由に生きること、自分らしく生きること、そして異なるものを排斥するこの国の窮屈さが、軽やかな文体で書かれています。

最初に女性服を着た時の印象「それは柔らかくて薄い、ということでした」。それが自分の身体にフィットして、心まで軽くなってくることを知った著者は、多くのバリエーションを持つ女性服の豊かな世界へと入っていきます。最初はオズオズと、やがて、その姿で社会に出ていきます。講演会に出たとき、会場にいた女性から「おきれいですよ」と言われて、一歩前に出る事ができたのだそうです。そして、教授会にも女性装で登場します。

話はちがいますが、同じ色のスーツ姿のサラリーマンがぞろぞろと出て来ると、私は気色悪さを感じてしまいます。個性も無いし、それにまるでスーツが戦闘服みたいで、組織の暴力をそのまま背負っているイメージがするからです。

さて、やがて、おネエ好きのTV界からもお声がかかります。最初の声をかけてきたのはフジTV。マツコ・デラックスを看板にした「アウト×デラックス」でした。この番組以外では、保守的なTV界でかなり嫌なこともあったそうですが、「アウト×デラックス」は彼を「男装をやめた東大教授」ときちんと紹介して、主張も視聴者にわかりやすく的確に編集されていたそうです。

けれども一方で、LGBTに対する差別がひどいテレビ界への苦言も書かれています。「日本のテレビが下らないのは、『わかりやすさ』と称して、視聴者が事前に抱いているステレオタイプに寄りかかった番組を作るからです。そして対象となる人や出来事に対して、ステレオタイプを押し付けるのです。これが大変な暴力を生み出します。これが差別なのです」ステレオタイプに挑戦する心構えがなければ、早晩視聴者からは見放されるというのは、全くその通りです。

この本で私が最も面白いと思うところは、マツコデラックスという存在を、歴史学者、網野善彦の「無縁・公界・楽ー日本中世の自由と平和」で述べている「無縁」の原理に体現者ではないかという考え方です。

 

 

★安藤誠ネイチャートークショー「安藤塾」今年も開催決定しました。

北海道のネイチャーガイドで、釧路ヒッコリー・ウインドオーナー安藤誠さん(写真右・愛犬キャンディと)のトークショーを10月25日(水)19時30分より開催します。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 


 

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