ビートルズの”ALL You Need Is Love”、邦題「愛こそはすべて」(1967年発表)という曲がかつて大嫌いでした。

リフレインで“All you need is love,All you need is love,All you need is love,love love is all you need love,love,love” と歌われると、「やかましい!」と叫びたくなったものです。多分、愛だ愛だ、とだけでええんかい?と単純に思っていたのが原因です。

ビートルズのアニメ映画「イエローサブマリン」に収録されている彼らの曲をすべて収録した「イエローサブマリン〜ソングトラック」が1999年発売されました。このアルバムに収録されている同曲を、何度も聴き直してゆくうちに、いや待てよ、この曲は奥が深いと思い直すようになりました。

音楽技術、表現、方法論どれを取っても、ビートルズ以上の音楽はないというのは衆目の一致する意見です。技術という点ではこの曲が、コラージュという美術的テクニックを見事に生かしています。作曲、リードボーカルは、J・レノン。最初にフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が使われ、さらにバッハ「2声のインヴェンション番BWV779」、グレン・ミラー楽団の「イン・ザ・ムード」のイントロ部分が使われ、エンディングにはイングランド民謡「グリーン・スリーブス」が巧みにオリジナルメロディーにかぶさってきます。他にも使われているのかもしれませんが、私が言えるのはここまでです。

ところで、イギリス人のレノンが、わざわざフランス革命時に歌われた曲をなぜコラージュしたのでしょうか。「武器を取れ 市民らよ、隊列を組め 進もう 進もう!汚れた血が、我らの畑の畝を満たすまで!」という歌詞が象徴するような戦闘モード一杯の音楽です。多分、レノンはこのモードを皮肉りたかったのではないでしょうか。

「形にならないものを作ろうとしても無理さ 救いようのない人を救おうとしても無理さ そういう場合にには無力に等しい」と否定につぐ否定の後の「愛こそすべて 愛こそすべて 愛、愛があれば 何事もたやすくなる」と一転、ひっくり返る歌詞をぶつける不思議。その奥に光るレノンの平和への眼差しが見えてくる曲です。おそらく、異なった文化、人種など異種のものを否定しがちな今の世界で、最も歌われるべき歌でしょう。

このアルバムは、彼らのオリジナルアルバムではありませんが、複雑な音楽テクニックと多様な表現形態に満ちていて、ビートルズの傑作ではないでしょうか。今、当店にはCD(国内盤1300円)とアートワークの良さがよく分かるアナログ(レア!国内盤3000円)があります。

1970年にアメリカの雑誌「ローリング・ストーン」誌で行われたジョン・レノンへのインタビューをまとめた「ビートルズ革命」(片岡義男訳/古書500円)も入荷しました。ビートルズ結成から解散、小野ヨーコとの出会い、ポールとの確執等々、おそろしい数の質問に答えた一冊です。