文筆家でイラストレーターの内澤旬子は、現在、小豆島でヤギと暮らしています。「世界屠殺紀行」や「飼い喰い 三匹の豚とわたし」といった食文化に関してのユニークなエッセイがあります。2014年に小豆島に移住し、狩猟、採集生活を行なっているようです。

「カヨと私」(新刊/本の雑誌社2200円)は、その生活の場にやってきたヤギのカヨのことを綴ったものです。

「ヤギは犬や猫と違って、人に甘えたりしない。淡々とした生き物なのかもしれない。今の私にはそのほうがいい。そもそも愛玩のために動物を迎えるならば、犬や猫にする。ヤギを飼おうとしたのは、家の周りの雑草を食べてもらうためなのだから。」

と言いながら、「『明らかに臨月の乳房です』」と牧場の人の説明を受けた時には「ええええっ。カヨったら、いつのまに。いつのまに??それならそうと言ってよ。と話しかけたところで、カヨは知らん顔で、洗面器にこぼれたカキの果肉を舐めている。」

と、一緒に暮らすうちに、なんだかお母さんと娘みたいな関係になってきています。一人の女性と、一匹のヤギの交流が、少しづづ、少しづつ深まってゆくような感じで文章は続いていきます。なんだか、こちらの心落ちついてゆくような本です。

「カヨの要望に真剣に耳を澄ませるうちに、カヨと私の関係性は、予測もつかない方向へと変転してゆく。一頭だけだったときのカヨは、半分人間のようになって私に依存してきたが、交配を境にどんどんヤギの世界に戻っていき、むしろ私がヤギの世界に引きづり込まれていった。

と後書きに彼女は書いています。たった一匹の動物が暮らしの中に入ってくることで、世界が全く違うように見えてくるのです。そういう意味では、これは、動物と人との交流を描いた素敵な文学作品です。随所に描かれているヤギのイラストも、この本の良さを高めています。

もう一点、彼女自身が出したミニプレスが小豆島から送られてきました。タイトルは「こんにちわヤギさん!」(1100円)ヤギを飼ってみたいと思っている人?に向かって書かれた冊子です。こちらにもモノクロのイラストが多数入っています。

与那国島に移住して馬と暮らしている様子を描いて、ロングセラー中の河田桟の「馬語手帳」が好きな方にはオススメです。

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