インド洋に浮かぶセイロン(現在はスリランカ)と聞いて思い起こすのは、おそらく「紅茶」でしょうね。セイロン紅茶は紅茶の代名詞になる程有名です。しかし140年前、ここはコーヒーの一大産地でした。それが、紅茶の国になってしまったのは、言うまでもなく、この国を支配していたイギリスの占領地政策によるものでした。

そんな国でコーヒー豆を栽培し、フェアトレードで取引をできる体制を作った清田和之の「コーヒーを通して見たフェアトレード」(書肆侃々房/新刊1650円)は、スリランカの辛い歴史の中から、新たなビジネスを始めた著者のコーヒーへの熱い思いが伝わる一冊です。著者は、熊本で有機無農薬専門のコーヒー販売店「ナチュラルコーヒー」を経営しています。

1948年イギリスから独立し、1972年現地語で「聖なる、光り輝く島」と言う意味の「スリランカ」に国名を変更しました。しかし1800年代、紅茶の国際貿易でトップシェアを独占していた英国は、コーヒー畑を一掃し、紅茶畑に変えてしまっていたのです。それが現在にもつなっがています。

著者は、再びスリランカがコーヒー生産国へと生まれ変われるように赴きます。コーヒーの木を栽培し、豆を精製できる土地を探し山奥へと入っていきます。

ブラジルをはじめとして、コーヒー労働者の悲惨な労働環境を見た著者は、問屋や商社を通さずに直接仕入れ、適正な価格で代金を支払うフェアトレードを始めていきますが、そう簡単にはいきません。フェアトレードで大事なことは、継続的な取引です。一回だけ買い叩いてハイ終わりみたいなことはしません。継続して生産者を「買い支える」ことがこの運動の精神なのです。継続的取引を続けるために著者は一歩前進、二歩後退を繰り返していきます。

「私たちに安らぎのひとときをもたらしてくれるコーヒー。それは、誰のどんな手を経て私たちのもとに届いているのか。思いを馳せ、生産者を身近に感じて初めて、いつも飲んでいるコーヒーがかけがえのない一杯だと感じるだろう」この思いがスリランカの人々を動かして行ったのです。農産物の生産者は、コーヒーであれ野菜であれ自然環境をとても大事にしています。有機栽培を実現させる努力に、我々消費者が思いを馳せ、地球の反対側で働くコーヒー農民を知ること、理解することが、本当のフェアトレードではないかと著者は問いかけています。