1973年8月、ストックホルムで発生した「銀行強盗人質立てこもり事件」における人質解放後の捜査で、人質が警察に銃を向けるなど犯人に協力して警察に敵対する行動を取っていたことが判明しました。また、解放後も人質が犯人をかばい、警察に非協力的な証言を行ったこともありました。本来ならばありえないような人質と犯人が親密になる状況を「ストックホルム症候群」と呼ぶようになり、その後もハイジャック事件などで、見られるようになりました。

この言葉の語源となった立てこもり事件を映画化したのが、「ストックホルム・ケース」(京都シネマにて上映中)です。犯罪映画というものの、正統派のサスペンスものではありません。いや、笑ってしまうような作り方です。

アメリカ人丸出しの格好で銀行に押し入ったラースは、行員3人を人質にして、犯罪仲間の釈放と逃亡資金を要求します。逃亡用の車を手配する時に、「マックィーンの『ブリット』で彼が乗っていた車を用意しろ」とかいう辺りから、もうメチャクチャです。やがて、事態は膠着して、長期戦に突入していきます。最初は恐怖だけだった女性行員のビアンカとの間に不思議な共感が生まれていきます。

怖いのか、不真面目なのかわからん強盗を演じるイーサン・ホークの演技が面白いです。B・ディランの「明日は遠く」をハモリながら強盗に押し入り、突入した警官を抑え込むや否や、お前も歌え!と脅迫、歌わすという無茶ぶりですが、本当のところ悪人ではないのかもしれません。

後半は、金庫室に閉じ込められた犯人と人質との会話が主になっていきます。そして、あろうことか、ラースとビアンカは結ばれてしまうのです。映画の最初に「事実を元にした物語」というクレジットが出ますが、さすがにこれはフィクションではないかしら。

ラスト、当然ラースたちは逮捕されてしまいます。一方のビアンカは、浜辺で子供と遊ぶ夫を虚ろな視線で見つめています。愛する家族のもとに戻れて幸せなはずなのに、なぜかそうとは見えない表情で幕。彼女が何を思っているのか、映画は何も語ることなく終わります。ヨーロッパ映画らしいエンディングです。

 

★四条河原町にある書店「京都メリーゴーランド」で、昨日より「ミシマ社のヒミツ展」が始まりました。当店でされた時とは一味も二味も違う展覧会です。