3月末に映画館に行って以来、数ヶ月ぶりに劇場に入りました。やはり、映画は映画館で見るものだと再認識しました。音響、照明、美術など映画に携わるプロの精密な仕事は、大きな画面、音響でしか見えてこない、聴こえてこないものです。

さて久しぶりの映画は、何度も映画化された「若草物語」。1868年に発表されたオルコットの小説は時代があまりにも古く、今の時代では退屈かと思われましたが、まず脚本が見事で、美術・衣装・俳優、すべてが素晴らしく、優れた作品に仕上がっていました。

日本タイトルには「ストーリー・オブ・マイライフ」そして「私の」若草物語になっています。映画は、「若草物語」に描かれた四姉妹の美しく過ぎ去っていった少女時代を丁寧に描きながら、次女のジョーが、自分たちのことを小説にして「若草物語」としてこの作品を世に出すという構成です。

ファーストシーンは、この映画全体のテーマを物語っています。ジョーの書いた短編小説が初めて雑誌に採用されます。その喜びで一杯の彼女は、街を駆け抜けていきます。女性は結婚するしか生きていく手立てのなかった時代、彼女は自分の力で稼いで生きる第一歩を踏み出します。その喜びを見事にファーストシーンで象徴させていました。監督のグレタ・ガーヴイングは、繊細なタッチで姉妹の過去を描きつつ、今を生きるジョーの姿を追いかけていきます。巧みなカットバック手法で少女時代と、大人になった時代を交錯させつつ、女性の新しい人生を語っていきます。優しかった母親、姉妹それぞれの性格、隣人、慎ましいけれど幸せだった日々、初恋、別れ、死、そして新しい出会い。ジョーは長編小説を書き綴りながら一歩ずつ、新しい世界を広げていきます。

出版が決まり、本が製本工場から一冊の本になるまでの描写。ジョーの長年の思いが一冊の本になってゆくのです。彼女に刷り上がったばかりの本が手渡されるこのシーンは、本好きにはぜひ、映画館で対面して欲しいと思います。一冊の本に詰め込まれた思いが溢れて感動しました。