北海道帯広発の「スロウ」(905円)、四国香川発の「IKUNAS 」(756円)、九州長崎発の「らく」1080円)の三誌の新刊が揃いました。

「スロウ 第52号」の特集は「牧草うまれのチーズ」。北海道の各地で、工夫をこらし、様々な挑戦を重ねて個性的なチーズを生産している酪農家が紹介されています。その中で印象的だったのが、「チーズ工房 小栗」の小栗美笑子さんの言葉でした。大半の牧場が効率経営を目指し、配合飼料中心の屋内飼育がメインですが、草食動物の牛を放牧しない事に疑問を持った彼女は、放牧飼育に踏み出します。生産量こそ減ったものの、美味しいチーズを送り出すことができました。

「介護酪農っていう言葉、聞いたことある?舎飼いの場合、朝昼晩食べ物を与えて。排せつ物の片づけもして……。でも、放牧にしたら、牛たちが自分でできることは自分でやってくれるから。労働的にも楽になりました」勇気を出して原点に帰った人の金言だと思います。

「IKUNAS」最新号の特集は「四国で暮らす」です。他府県から四国にやってきて、この地域に魅力を感じて、生活の場を構えて、それぞれの生き方をしている人達が登場します。こういう企画では、トップには無農薬農家や、陶芸家とかが登場する場合が多いのですが、今回は違いました。松山から車で1時間少しかかる、田園風景広がる場所で、オーダーメイドウェディングドレスブランドを展開している女性です。不便さも、ものづくりの糧にできるのですね。

ところで、産業廃棄物で話題になった豊島って、こんなに魅力的な島になっていたんですね。直島と共に瀬戸内芸術際の人気スポットになりましたが、オフシーズンだからこその愉しみ方もあるようです。周囲20キロ程に小さな島をサイクリングして、面白い場所を巡ったり、ドイツから豊島に移ってきた映像&音楽ユニット「ウサギニンゲン」のパフォーマンスを楽しんだりと、とっておきの時間がみつかりそうです。

地元長崎の情報を発信する「らく」最新号(37号)は、10月7日から9日まで行われる勇壮なお祭り「長崎くんち」の特集です。先ず、山頭範之の写真を楽しんでください。写真集と言っても過言ではないぐらいのボリュームです。京都の街中に住んでいると、祇園祭や葵祭のような雅びなものがメインなので、この力強い祭りは新鮮です。満身の力で鉾を引く男たちの姿、ぐいと前方を睨みつける男衆の勇ましい姿などを、写真家はリアルに、美しく捉えています。

ほぼ一冊丸ごと、長崎くんちの特集ですが、市内にできた「ブック船長」という雑貨&書店が紹介されています。長崎にこだわった本、地図、ポストカードを取り揃えた小さな書店です。本やカードを選ぶだけでなく、プロの編集者が本作りの相談にのってくれるコーナーまで完備しています。こちらも見逃せません。

 

 

★吉田篤弘の新刊「京都で考えた」(1620円)が発売されます。

全国発売は10月20日ですが、京都地区先行販売が決まりました。また、ご予約された方には先着でサイン本をお渡しします。先行発売は10月12日(木)です。


 

 

 

 

売れ行き急上昇中(といっても小さな店ですんで、そんなに冊数は多くない)の2冊、つばた英子、しゅういちご夫婦の「ときをためる暮し」「ふたりからひとり」(どちらも自然食品通信社1944円)が、「人生フルーツ」というタイトルでドキュメンタリー映画として今月末に京都シネマで公開されます。この本については、以前に店長日誌にて取り上げましたが、「暮らす」ということの理念が平易な文章で語られている、どの世代にもお薦めできる中身です。

一方、帯広発のミニプレス「スロウ」最新号(905円)にも、つばたさん夫妻と同じように、日々の暮しを丁寧に紡いで生きる歓びを見出している宮本さん夫妻が紹介されています。

札幌で暮らしていたご夫婦が、子供たちの独立を切っ掛けに、田舎暮らしを考え始めたのが2003年。それから試行錯誤の後、なんとログハウスを自分で建ててしまったのです。そして、畑をやりながら、二人で質素だけれども、豊かな暮しを楽しんでおられます。面白かったのは、付箋がベタベタと貼付けられた図鑑類の写真です。ご主人曰く、引っ越してきた時は、山菜の名前も、キノコの種類も、ましてや野鳥の名前なんかも全く知らなかったとか。この記事を書いた記者はこう想像しています。

「すっかりボロボロになった何冊もの図鑑にはたくさんの付箋が貼られていて、いろいろな書き込みがされていた。動植物の名前をひとつづつ知ることも、大きな楽しみになっていることだろう。」と。

スマホ、ネットではなく、紙に図鑑というところが嬉しいですね。鳥の図鑑には、その鳥が庭に訪れた日時が書かれていて、使い込まれた図鑑の写真には親しみを感じました。

創刊50号を迎える「スロウ」は内容盛り沢山で、すべて紹介したいぐらいですが、興味深い記事をご紹介します。それは、「たねたね交換会」です。

野菜の産地は気にするものの、それらの種の産地は気にしないでいいのか、という疑問から始まった交換会は、種の物々交換の場であるばかりでなく、食に対する価値観を分かち合う場所になっています。ルーツを探れば海外からの輸入種であったり、農薬付けだったりする事もあるとか。本来、百姓という言葉には「百の仕事ができる」という意味があり、農家は種取りができて当たり前でした。しかし、今は種苗会社がその仕事をしていて、農家は外されています。だからこそ、種から選び、自分たち育てたいものを作ることで、本当に安全なもの、本当に美味しいものが出来上がる。そんな価値観を持った人達が情報を共有し、より広いネットワークを形成することを目的にしています。

「スロウ」は北海道発信の情報誌ですが、しっかりと暮らしを見つめた本で、誰が読んでも納得がいくと思います。

 

★レティシア書房臨時休業のお知らせ 4月17日(月)18日(火)連休いたします。