ジョン・バーニンガム&ヘレン・オクセンバリー(絵)、ビル・サラマン(文)、谷川俊太郎(訳)による絵本「パイロットマイルズ」(BL出版/新刊1650円)は、犬が主役の絵本ですが、いやぁ〜、これはラストでジーンジーンときます。でも、決して犬好きの人ためだけに描かれた本ではありません。

年老いた犬のマイルズは足を悪くしていて、あんまり遊ばなくなったことを心配した飼い主のノーマン。お隣の発明好きのハディさんが作ってくれた飛行機は、コックピットが小さいのでラッセルテリアのマイルズにぴったりでした。昼も夜も、マイルズは大好きな飛行機に乗って飛び続けます。小さなプロペラ機が、月明かりの夜空を飛ぶシーンは、とても美しく、しかしどこか孤独を感じます。

「まもなくマイルズは さんぽに いかなくなった。たべものも ほしがらなくなった。 とぶことさえ やめてしまった。なにか かんがえているようだった。 あるひ マイルズは ねどこから よろめきでて いえから でていった。」

マイルズは、飛行機のところへと向かいます。ノーマンが優しくコックピットに乗せてやると、エンジンがかかり、滑走を始めます。操縦しているマイルズの横顔が見開きで大きく描かれているのですが、彼の表情がなんともいいのです。喜んでいるわけでもなく、悲しんでいるわけでもなく、むしろ無表情で、どこかストイックな顔つきで操縦桿を引き上げます。

自分の命の終わりを知ったマイルズは、自ら向こうの世界へと旅立っていったのでしょう。

「マイルズは とんだ、これまでになくとおく。」

「ノーマンは てを ふった。ひこうきが みえなくなるまで ふりつづけた。ゆっくり ノーマンは うちへ かえった。さよなら マイルズ」

2019年に亡くなったジョン・バーニンガムが残した絵と構想を元にして、妻のヘレン・オクセンバリーが描き、ジョンの旧友ビル・サラマンがストーリーを仕上げました。いつか必ず訪れる大切な人との永遠の別れを、マイルズという一匹の犬に託して描き上げた心に残る絵本でした。