「bootな金物店主 嘆きの100選」(1890円)という面白い本が9月に出ました。著者は、京都山科にある三木屋金物店3代目店主古川勝也さん。11月23日の京都新聞朝刊に紹介記事が掲載されましたが、レティシア書房では、以前から著者が持ち込んで来られていて、既に売れておりました。本日再入荷したので、ご紹介しておきます。

三木屋金物店は、来年100周年を迎えます。しかし、古川さんは、金物屋自体がもはや絶滅危惧種であるということを誰よりも自覚しつつ、お店にある珍しくも可笑しい商品を改めて解説した本を作りました。読んでみると、著者の軽妙で、皮肉たっぷりの文章が笑わしてくれます。

例えば、「ホースリール」の項。

「誰がこんなこざかしいものを考えたのか。使っている人はみんなものすごいストレスを感じているはず。満足度ワースト1の商品アイテムではないか。ホースはロープとおなじようにヨリや向きがあり、もともとあんなものを巻こうとすること自体ムリがあります。確かに見た目は便利そうで体裁もよく、しかもガーデニングという欧州のライフスタイルをいかにも体現していそうなイメージのためか、人々はホースといえば当然のようにこの巻き取り式を買うのです。(中略)通販である水圧で3倍に伸びる魔法ホースなど新製品も出ていますが、文字通り魔法にかけられた絵空事のようで水漏れ、ホース外れなど苦情続出で即不燃物ゴミ捨て場に直行です。結局は地べたにとぐろを巻いて置くのが一番よいという身もフタもないというのが結論なのです。」とこんな具合です。よくもまぁ、こんな商品作ったもんやと頭を傾げるものもあります。

本は「厄よけ火箸」「包丁」「釜くど」「卵焼き・調理」「やかん・鍋」「掃除」「火打クワ・金槌・左官」「鍵」「昔の家の補修」「昔ながらの良き金物」「鋏」「ノコギリ」というジャンルに分かれて紹介されています。面白そうと思われたジャンルをピックアップしてお読みいただき、これはと思うものを発見したら、ぜひお店に。

包丁のところに「境忠義 総霞研青二・三徳包丁八角水牛ツバ165」という長い名前の包丁が載っています。家庭用包丁の最高峰と評価したあとに、こんな文章が続きます。

「それにしても長すぎる品名。口上多く値打ち付け過ぎです。名前の長さにもイヤミがある。私の嫌いな伝統的工芸品に指定されています。しょせん包丁です。」

誰ともわからない職人が作った、ほどほどの価格で購入できるものこそ、日用品の王道だという著者の考えが随所にみられます。

生活スタイルがどんどん変化して、その速さに追いつかない道具達。道具を使いこなす職人さんもいなくなる一方だし、孫子の代まで使えると書かれた道具も修理するところもなくなる。もはや、どこに使う物かもわからないような希少品、と思うとオブジェのような珍しい形の物も、と言う具合に、古い金物屋の倉庫はワンダーランド。これを読むと、量販店にはないものを探しに、専門店に行きたくなります。

ちなみに古川さんは、現代アーティストとして作家活動をしておられて、視点の面白さ、文章の洒脱なのは、その辺りにも関係しているかも。