「レティシア書房夏の古本市」もいよいよ明日まで。というわけで、出品されている本のご紹介は最終回になりました。

レコードを買う時、ジャケットの良さで中身のこと考えない”ジャケ買い”があります。本でも同様に装幀で買うこともありますが、この古本市にも、そんな本がありました。

細かく描かれた70年代の若者達の様々なスタイルが目を引く表紙は、イラストレーター小林泰彦の「若者の街」(晶文社1000円)です。収録されたスケッチは70年から73年までの3年間です。たった3年間とはいえ、「若い世界の風俗にあってはわずかではなく、この間にずいぶんいろいろな変化があったと思うし、それはまたいまも変わりつつあるものにつながっています。」と小林は書いています。アメリカの星条旗をかたどったTシャツなんて、もう着ている人はいないだろうけど、トラッド派は健在だし、古い布地で作った服を着ている人は大勢います。70年代に青春を過ごした人には、たまらんノスタルジックな一冊です。

写真の格好良さでは、立松和平「晩年」(人文書院800円)も際立っています。立松が身のまわりの死者を描いた短篇集の表紙に、鬼海弘雄の写真集「東京夢譚」の中で、文京区大塚のとある風景を撮ったものが使用されています。人っ子一人いない坂道にあるホテルと向こうに広がるビル群を捉えた殺風景な都会の一場面です。奇妙に静まり返った風景が、この短篇集の描く世界を捉えています。

函入文芸書の、函の絵と題字を中川一政が描いた尾崎一雄の随筆集「單線の驛」(講談社700円)は、味のある装幀です。「單線の駅」に、御殿場線というローカル線が登場します。この御殿場線にある小さな駅、下曽我部駅で下車して、駅の周囲を「ここで降りて北ある曽我山という低山に向かって十分ほど歩くと、もう山麓の大地」と尾崎は書いています。おそらく函の絵は、そのどこにでもあるような日本の田舎の風景を描いたのではないでしょうか。春霞がかかったような風情のある風景です。いや、もしかすると「中学を出るまで私は田舎で育った。二十年前小田原市に編入されたが、市とは名ばかりで、低い山の南麓台地にある畑の多い農村である」と尾崎が書いている故郷が描かれたのかもしれません。

最後にご紹介するは、もう楽しい!としか言いようのない一冊です。和田誠「Record Covers in Wadaland」(アルテス2000円)です。和田は多くのレコードジャケットを手掛けています。一見ジャズ等の洋楽が多いように見えますが、”水戸黄門”役者、西村昇の「三文役者の歌 まぁそんなもんさ」とか、舟木一夫「渡世人」とか、こんなアルバムまでやってるんだ!と驚き、さらにその質の高い仕事ぶりに感心します。なお、この本にも載っているジャズミュージシャン渡辺貞夫のアルバム「ENCORE JAZZ&BOSSA」は、古本市の期間中、壁に飾っていました。(アルバムは売り物です)

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」開催。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!暑い日が続きますが、ぜひお立ちよりください。

8月21日(月)〜25日(金)は、夏期休業いたします。よろしくお願いします。