フィンランドの名監督アキ・カウリスマキの新作映画「希望のかなた」を観てきました。

いい映画です。初めてカウリスマキ作品をご覧になる方は、上映開始後、ゆっくりと呼吸してください。小津安二郎映画をリスペクトする彼の映画は、派手なカメラワークもなければ、起承転結がはっきりとする作品でもありません。実は扱っているテーマは極めて現代的なのに、淡々と、ゆっくりと進行します。先ずは、観る側も呼吸を整え、ふわりふわりと進む映画のリズムに同調させてください。

舞台は現代のフィンランド。多くの難民が戦火を逃れて不法入国し、難民申請をします。映画の主人公の青年もその一人。空爆で一家皆殺しに合い、たった一人の妹とも生き別れの状態で、この国に逃れてきます。難民として受けいれてもらおうと当局に申請するのですが却下され、強制撤去されそうになります。それを救ったのは、とあるレストランのオーナーと従業員。このレストラン自体は、やる気があるのか、ないのか、わからない状況なのですが、彼らは、この青年を救おうとするのです。

と、書くと感動のストーリーみたいですが、そうではありません。彼らも自分たちができることを、淡々と煙草ふかせながら、やっていくだけ。そうして、映画の中程で、ふと、ほんまにこいつらええ奴やなぁ〜、ええなぁ〜とほっこりしている自分に気づきます。レストランの連中だけでなく、知り合いの長距離トラックの運ちゃんなんかも、とんでもない事をして、青年を助けます。へへ、朝飯前よ、と煙草を一服する辺りで、正義漢ぶらないし、全く大げさでないし、いいなぁ〜こんな連中、と拍手したくなってきます。

増加する一方の難民問題をテーマにすると、どう取り組んでも暗く、辛い内容になりがちです。それを、こんなコメディーセンス溢れるやり方で撮るなんて、やはりカウリスマキは才人ですね。困っている人を助ける、その大切なことだけをゴチャゴチャ言わずに作り上げた映画です。

そして、もう一つ。出て来るフィンランドのミュージシャンがカッコいい。トム・ウエイツばりの酔いどれ詩人風のTuomari Nurmioの「音楽か死か」という曲は、最高にいかしたブルースロックでした。