奈良県東吉野村、人口1700人の村にできた人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」を主宰する青木真兵さん海青子さんの夫婦が綴った、1年間の日記と書き下ろしのエッセイを組み合わせた「山學ノオト」(H.A.B/新刊1980円)を入荷しました。

「ルチャ・リブロ」の活動を海青子さんは、こんな風に表現しています。

「ルチャ・リブロはその活動を『社会実験』と称していますが、真ん中にあるのは、あくまでこんな生産性のない日々です。『実験をするぞ!すごい成果を得るぞ』と息巻いて山村に飛び込んだ訳ではなく、山村に住み着いて暮らす内、いつの間にか『実験』が始まっていたような印象です。自分としては、ただ生産性のない日々を生活しているだけなのです」

「生産性のない日々」っていい言葉だと思います。全てを生産性の名の下に数値化し、生産性を上げることに血道をあげて、人間を区分けしてしまうような社会への憤りです。

日記には、日々の活動や村での付き合い、そして彼らを支持する多くの仲間との交流の記録に混じって、二人の、この国の社会のあり方への疑問が提示されています。

「なぜ世間では『不登校ではダメ』なのか。なぜ『学校に行かないこと』がダメなのか。よく考えてみると、『学校に行かない』というアクションと、『ダメ』という価値判断が結びつく必然性などないではないか。」と書かれているのは、「不登校でも大丈夫」の著者、末富晶さんから手紙をもらった日の日記。

総務省が、人口減少が進む地域を指して「過疎」と言うのは、マイナスイメージが付きまとうので、代わりの言葉にすることを検討するという報道について、真平さんは「馬鹿じゃねぇかと思う。確かに言葉でイメージは決まってしまうけれど、人口減少が進んでいないのに、『過疎』と呼ばれ、風評被害に合っているわけではない。現に人口減少は進んでいるのだ。こんな風に、過疎地域の問題に正面から取り組んでいるように見えない中で名前だけ変えることは、臭いものに蓋をするだけのことと思う。」

全くその通り。

なぜ、夫婦が田舎に引っ越して、私設図書館を設立して、ここで生きていこうと決心したのかは、「彼岸の図書館」(夕書房/新刊2200円)に詳しく書かれています。当ブログでも詳細に紹介しました。人が生きるための土台となるべきは、書物だと語られた一冊でした。こちらの本もぜひご一読いただきたいと思います。

日記でおもわず笑ったのが、これです

「久しぶりに片道約一時間かけて福原イオンモールへ。本屋さんに行ったら、橋本徹氏の『トランプに学べ』やホリエモン氏の本が一番目につくところに平済み。すぐ帰りたくなる。」

わかります、その気持ち!

 

昨年「付箋だらけになってしまった」というタイトルで、ブログに載せた「彼岸の図書館」(夕書房/2200円)は、本当に心に残る本でした。本が好きな人や、住むこと・働くこと・食べることなどこれからの生き方に関心のある方々にお薦めしているうち、当店ではロングセラーになっています。

帯に、内田樹が「『ひとり出版社』が出した『ふたり図書館』の話です。書物は商品ではなく、人が生きるための糧であるという古くて新しい知見が語られています。」と、ズバリ言い当てた文章を書いています。

この本の著者でもあり、ルチャ・リブロ図書館を運営する青木真兵さんが、京都に用事があったとかで、先日ひょっこり来店されました。色々とお話をしているうち、この図書館に来られた方が、そこで読んだ本のレビューを出しておられることを知りました。それがが「りぶろ・れびゅう」(825円)です。

「この冊子は、ルチャ・リブロにある本と、ルチャ・リブロにゆかりのある方々を同時に紹介ししてしまおう!という趣旨で編まれています。ルチャ・ルブロには『人文系』以外の本もありますし、さまざまな理由、ご縁、直感に惹かれてご来館くださっています。ぜひ、この冊子をきっかけにルチャ・リブロを知っていただければうれしいですし、なによりルチャ・リブロとみなさんという『一対一』だったこれまでの関係が、本冊子を通じて『予期せぬ方に』ずんずん散らばっていって欲しい。」と、発行の趣旨を青木さんが書かれています。

確かに、様々なジャンルの本が登場します。中井久夫「世に棲む患者」、山崎雅弘「歴史戦と思想戦」といういかにも人文系があるかと思えば、富士正晴や久坂葉子といった文学系もあるし、当店でも販売している「アウト・オブ・民藝」(誠光社)も論じられています。意外だったのが、コミックも何点かそのレビュー対象になっています。私も愛読している、ますむらひろしの「ヨネザアド幻想」が載っていました。書かれた菅原健一さんは、「隠れ家のようなこの図書館で、また新しい世界(ほん)との出会いもあるだろう。」と期待を抱かれ、そこで見つけたのが「ヨネザアド幻想」でした。

ご承知のように、この本に登場するのは、人間の言葉を語るヒデヨシという名の大猫です。ロクでもない奴なんですが、なぜか邪険にされない不思議な猫です。菅原さんは、予備知識なしに読み始めその圧倒的な開放感に驚かされます。全文をご紹介することは出来ないのが残念ですが、ぜひお読みください。本の世界が広がっていきますよ。

「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」は、奈良県東吉野村にあります。ぜひ訪ねたい場所です。